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加工 ラオスにおける民事関係法制に関する調査研究7
2016年04月26日

 

加工 ラオスにおける民事関係法制に関する調査研究

法務省HPより

 

 

5.親族法
(1)家族法制の概要

 

 

ラオスには未だ民法典が存在しないことから,家族法が法源としてもっとも重要であり,全 55 条からなり,第 1 条から第 5/1 条までが第 1 部総則とされている。
家族法では,新婦持参金(結納),婚姻,離婚,養子縁組,夫婦関係,夫婦の財産,親子の権利・義務に関する原則,手続と措置について規定し,これらにより,家族を保護および発展させ,家族をラオス社会において文化的で安定した基本組織にし,男女間の自由な意思と平等に基づく婚姻関係を通して家族関係を確立させ,ラオスの伝統や習慣を守りかつ発展させ,家族を国家の発展および平和な社会を構築する基本組織とするとされている(家族法1条)。ラオスでは家族を社会の基本組織とし,夫・妻・子および家事登録簿によって証明される家族関係を構成し,同居するその他のメンバーのことを家族という(家族法 1/1 条)。なお,ここでいう「基本組織」とは,社会における一番小さい組織の単位のことである(家族法 1/3 条 5 号)。その他のメンバーとは,姻族としての父,姻族としての母,祖父母,夫婦の兄弟姉妹,甥姪その他の者をいう(家族法1/3 条 1 号)。また,家族関係では男女は平等とされる(家族法 2 条)。

 

 

 

(2)婚姻の成立

 

(ア)婚姻前の関係
婚姻に関し,男女は自己の意思のみに基づいて婚姻関係を形成し,国や家族の強制などによって婚姻や婚姻相手を強制することは認められない(家族法 3 条)。また,一夫一婦制がとられている(家族法 4 条)。
さらに,婚姻関係前に関する幾つかの規定も存在している。第 1 に,婚約に関する規定が家族法 6 条に存在している。
婚約とは,定義規定である家族法 1/3 条 2 項によると,男女が将来夫婦になるように婚姻をさせる目的で,男女双方の親や媒酌人(仲介人)が共同で覚書を作成し,または,男性側が女性側に高価な品物や金品を委託するという合意であり,両親および女性の親族と男性の親族の間の合意のことをいう(家族法 1/3 条 2 項)。その婚約は,男女が互いに愛情関係を形成しながらも婚姻の要件を満たしていない場合であり,男女が将来夫婦になるように婚姻をさせる目的で,伝統的慣習に基づいて,男女双方の親や媒酌人(仲介人)が共同で覚書を作成し,または,男性側が女性側に高価な品物や金品を委託するという合意で成立する(家族法 6 条) 。

 

 

 

 

第 2 に,婚姻を成立させる手続として,婚姻の申込み(結納)に関する規定がある(家族法 6 条の 2)。これは,男女が互いに愛情関係を形成し,婚姻について同意をしている場合,男性の両親および仲介人(年輩の親戚),または自分が所属している組織の上司を連れて,伝統習慣に従って女性の両親および仲介人(年輩の親戚)に対して,女性との婚姻を申込み,男女の能力や実際の状況に基づいて,結納金や結婚式について合意し,正確な覚書を作成することである。これらの婚約の不履行があった場合や,申込み内容に不履行があった場合,その者に対して損害賠償を請求することができる(家族法 7 条)。規定上,婚姻の申込みは男性側からしか認められていない。しかし,家族法 2 条により男女は平等とされており,この婚姻の申込みは,それまで存在していたラオスの慣習を規定したものである。なお,家族法 6 条および 6/1 条の規定は強行規定ではないため,原則としてその内容を実施せずに合意の上で婚姻届を提出し登録されれば,婚姻はこれにより成立するが,現実には,慣習に従わない場合にその婚姻の登録が為されない可能性がある。

 

 

 

 

 

この婚約および婚姻の申込みに不履行があった場合については家族法 7 条に規定がある。婚約につき,男性側が正当な理由なく不履行をした場合,覚書に記載された通りに未だ女性に渡していない財産,もしくは価値のある物を女性側に渡さなければならず,既に履行済みの財産および価値のある物については,女性のものとされる(同条 1 項)。女性側が正当な理由なく婚約を不履行した場合,覚書に記載された通りに未だ女性に渡していない財産,価値のある物については取り消されなければならず,既に履行済みの財産および価値のある物については,女性側は男性側に返還しなければならない(同条 2 項)。男性もしくは女性の名誉が傷つけられた場合,または結婚式の準備のために支出が生じた場合には,正当な理由なく履行をしない当事者は,損害賠償の責任を負う(同条 3 項)。

なお,結納金についてであるが,未払いのまま婚姻関係に至り,その後に男性側に原因があって離婚となった場合には,結納金が未払いであるときには,離婚後であっても約束通りにそれを支払わなければならない(家族法 7/1 条 1 項)。女性側に原因があった場合には,未払いの結納金はなかったこととされる(同条 2 項)。

 

 

 

婚姻前に性的関係が生じた場合,一方で,男性がその相手の女性と婚姻をしないときには,その男性は慣習および伝統に従い,女性または女性の家族の慰謝料や補償金(回復祝い金)を提供しなければならない。他方で,女性がその男性と婚姻をしない場合には,その女性は上記の金員等を提供する必要はない(家族法 8 条 1 項)。

性的関係により懐胎した場合には,上記の金員に加え,男性は出産費用,産褥期費用,その他の費用についても責任を負う。さらに,理由の如何を問わず,男性はその懐胎した子が 18 歳の成人になるまで,養育の義務を負うこととされている(同条 2 項)。

 

 

 

 

 

(イ)婚姻の要件および手続
婚姻は,男女とも 18 歳以上であること,男女に愛情関係かつ合意があり,婚姻を強制されていないこと,独身または離婚していることが文書により証明されていること,ならびに不十分な精神状態ではない者,重篤な病気にない者,または他者に容易に感染しうる病気にない者でなければならない(家族法 9 条)。婚姻障害事由として,第 1 に,同性であること,配偶者もしくは子の生命および健康に対して脅威となりうる精神的障害があること,もしくは重度の病や伝染症を持っている者の間の婚姻がある(家族法 10 条1項1号)。第 2に,民族による状況ではあるが,同じ姓の者,近親者である父母,父方祖父祖母,母方祖 父祖母やその上の者と子,孫,ひ孫以下の者のような同じ血縁の者,又は,養父母と養子間,義理の父母と義理の子の間,実の兄弟姉妹同士,実の子と養子間,実の子と義理の子間,養子同士間,養子と義理の子間,義理の子同士間,父方母方の叔父叔母と甥や姪間の結婚は禁止されている(同条 1 項 2 号)。
ただし,親が離婚していれば,義理の兄弟姉妹の結婚は可能である(同条 2 項)。以上に反する婚姻は無効である(家族法 17 条)。

 

 

 

 

 

要件としてさらに,ラオスでは一定の手続が必要となる。すなわち,結婚する意思のある男女は,女性または男性が居住する村役場を通じて,郡や自治区の家族登録官に書面による申請書を提出しなければならない(家族法 11 条 1 項)。 登録官は,請求が受理されてから 1 か月以内に婚姻申請書を審査しなければならず(同条 2 項),男女がすべての要件を満たしていると認められた場合には,登録官は関係当事者を出頭させ,3 人の証人の出席のもとで婚姻を登録する(同条 2 項)。このように,家事登録官は一定の内容につき実質的な審査権限を有している。

伝統的な婚姻儀式が一般に行われてはいるが,それは婚姻要件とされてはいない。したがって,婚姻の儀式が挙行されていない場合でも,婚姻の要件を満たし,その婚姻が家事登録法に従って登録されれば,その登録により婚姻が成立する(家族法 12 条1項)。婚姻関係は,婚姻が登録された日から生じる(同条 3 項)。

 

 

 

 

 

 

(ウ) 婚姻の効果
夫婦は平等であり,同等の権利を有している。家庭内の紛争も夫婦が共同して解決することとされ,互いに扶養する義務,子を育て教育する義務を負う(家族法 13 条)。家族の住所についても夫婦が共同してその協議で決定する(家族法 14 条)。家族の姓については,選択的夫婦別姓制が採用されており,共通の姓として夫または妻の姓を使用することも可能であり,婚姻前の姓を維持することもできる(家族法 15 条)。

 

 

 

 

すみれ
「夫婦別姓も選べるんだ。」

 

 

 

 

(エ) 婚姻に関する国際私法
家族法第 4 編第 1 章には渉外的な婚姻,離婚および養子縁組についての規定がある。47 条でラオス国内における渉外的な婚姻,48 条でラオス国内における渉外的な離婚,49 条でラオス人同士の国外における婚姻,そして 50 条でラオス人同士の外国における離婚の準拠法について規定している。
第 4 編第 3 章は渉外的な養子縁組の準拠法について定め,51 条で外国に居住するラオス人とラオスに居住するラオス国籍の子との養子縁組および外国人とラオスに居住するラオス国籍の子との養子縁組について規定している(「国籍法」で外国人を短期間在留する外国人,長期間在留する外国人および無国籍者の 3 種に分類されているが,ここではいずれも外国人として表記する。)。ラオス国内で挙行される婚姻の実質的成立要件には当事者の国籍に関わりなく「ラオス家族法」が適用される(家族法 47 条 2 項)。ラオス人と外国人の間の婚姻がラオスで挙行される場合には「ラオス家事登録法」で定められる婚姻登録を行わなければ有効な婚姻として効力が認められない(同条 4 項)が,外国人間の婚姻の登録は,当事者の本国の在ラオス大使館または領事館で本国法により行うことができる(同条 3 項)。無国籍者間の婚姻登録はラオス法による(同条 3 項)。

 

 

 

 

 

(3) 婚姻の無効および取消し
家族法 4 条,9 条および 10 条に違反する場合,その婚姻は無効とされる(家族法 17 条)。すなわち,一夫一婦制に反する場合,当事者が 18 歳未満,両当事者に婚姻に関する合意がない,または自発的な婚姻でない場合,独身・離婚,死別に関する正式な証明書を有していない場合,精神障害がある場合,重度の病や伝染病を持っている場合,ならびに近親婚に当たる場合である。しかし,無効な婚姻であっても,それを解消するには裁判所の手続が必要となる(家族法 18 条 1 項)。それらの無効な婚姻の解消を請求できるのは,検察官,家事登録官,配偶者の親もしくは,夫または妻である(同条 2 項)。無効な婚姻が解消された場合,婚姻関係は終了するが,婚姻中に懐胎した子または生まれた子は,両者の嫡出子とみなされる(家族法 19 条 1 項)。その無効な婚姻中に取得された財産は,家族法および所有権法(財産法)の規律に従うこととなる(同条 2 項)。

このように,無効な婚姻であっても,裁判所による判断がない限り婚姻関係が継続していることとなる(家族法 16 条 1 号)。

 

 

 

 

(4) 婚姻の解消

 

(ア)婚姻の解消原因
婚姻の解消原因については,上記のように無効な婚姻とされ,その無効が確認された場合を含めて観念されることもあるが,それ以外にもさらに,離婚がなされる場合,離婚に関する合意がなされている場合,配偶者が死亡した場合,ならびに 3 年以上配偶者の消息が不明,もしくは連絡がない場合,または配偶者の死亡を宣告する裁判所の判断があった場合がある(家族法 16 条)。
離婚原因は家族法 20 条に規定がある。第 1 に,不貞行為があった場合がある。第 2 に,一方配偶者,父母もしくは親族に対する暴力もしくは重大な侮辱,または重度の常習的飲酒,麻薬中毒,常習賭博行為もしくは浪費のような,同居を不可能とするような著しい不行跡があった場合がある。第 3 に,家族に予告かつ連絡することなく,もしくは家族の生活に必要な物品を送ることなく 3 年以上家族を遺棄した場合がある。第 4 に,合意なしに夫が僧侶,見習い僧,もしくは修練者となり,または妻が尼僧となり,3 年以上が経過した場合である 。第 5 に,一方配偶者がその消息を家族に 2 年以上知らせなかったとき,または事故により 6 か月以上消息がないときにおける,裁判所による失踪の宣告がなされた
場合である。第 6 に,配偶者が刑法犯としての有罪判決を受け,その刑事罰が 5 年以上の収監を伴うものである場合である。第 7 に,配偶者に同居を不可能とさせる危険で深刻な病気がある場合である。第 8 に,配偶者に同居を不可能とさせる精神疾患がある場合である。第 9 に,配偶者が性的に不能となった場合である。第 10 に,信義にもとる行為および虐待により,同居が不可能となるような不和な状態の場合である。これらの事由に該当する場合であっても,夫は,自己の妻が懐胎している間,または子が1歳に満たないときには,離婚を請求する権利を有さない(家族法 22 条 1 文)。ただし,妻についてはこの限りではない(同 2 文,女性の発展及び保護法 20 条 1 号)。

 

 

 

 

 

 

(イ)離婚手続
離婚の方式に関しては 2008 年家族法に新たな規定が設けられ,当事者の合意による任意離婚が認められるようになった(家族法 21 条 1 項 1 号)。ただし,金銭により離婚を成立させることは認められていない(同条 2 項)。
任意離婚の要件は,第一に,双方が離婚に合意していることである。第二に,双方が,例えば子の監護権のように子に関する争いを有していないことである。第三に,双方が婚姻財産について争いを有していないことである。第四に,双方が借金に関して争いがないことである(同 21/1 条)。この要件を満たしている場合,夫婦は,双方の両親,親族および3 人以上の証人の面前で離婚の申請書を作成し,双方の居住するところの村長に対して離婚の請求を行い,その届出を行う。それに対し,村長は双方に和解を促し,その和解がうまく行かない場合には,村長はさらに双方にその熟慮のために 3 か月の期間を与える(家族法 21//2 条 1 項)。和解に至らなかった場合,村長は離婚の記録を作成し,離婚の登記のために郡,もしくは特別市のレベルにおける家事登録官へそれを送付し,登録官は離婚の証明書を発行し,その謄本を各当事者へと送付する(家族法 21/3 条 2 項)。

裁判離婚の場合,裁判所は次の内容を審査する。すなわち,第 1 に,一方配偶者の離婚請求があり,かつ一方配偶者が離婚に同意していないことである。第 2 に,子の監護権,婚姻財産,または双方の借金の問題について争いがあるかどうかである。第 3 に,家族法20 条における離婚原因のあることである(家族法 21/3 条 1 項)。しかし,裁判所に離婚の請求がなされたとしても,裁判所はただちにその審査を行うわけではない。審査の前に,裁判所はまず双方に和解を進めなければならない。また,民事訴訟法 46 条 1 項によると,離婚事案につき判断を下す前に,裁判所は両当事者の両親および親族を裁判所に召喚し,両当事者の理解等を推し進めるための努力をしなければならないとされている。直ちに両当事者が仲直りに合意できない場合は,彼らに考え直させるために 3 か月の期間を与えなければならない(家族法 21/3 条 2 項、民事訴訟法 46 条 3 項)。当事者間で和解が成立すれば,裁判所はその記録をとり,離婚請求を破棄しなければならない(民事訴訟法 46 条2 項)。

その期間が経過しても和解が成立しない場合に,はじめて裁判所は離婚を審査し承諾を行うこととなる。その離婚判断の際に,裁判所は未成年子の利益の保護,ならびに生計を確保するための労働ができない夫または妻の利益を保護するための方策を打ち出さなければならないとされている(家族法 21/3 条 3 項,民事訴訟法 46 条 4 項)。離婚の判断が下されると,裁判所は離婚の登記のために家事登録局へその判断に関する 2 通の副本を送達し,かつ 1 通の謄本を各当事者へ送達しなければならない(家族法 21/3 条 4 項)。それに基づき離婚の登録がなされる。

なお,同じ相手との再婚は認められるが,婚姻の登録を再度行わなければならない(家族法 25 条)。

 

 

 

 

 

 

(ウ)離婚における子の保護および自己の扶養料の請求
離婚後,子の保護と養育(後見)について同意できない場合,裁判所は,子の利益や法律の規則により,父または母のいずれが子を世話すべきかを決定しなければならない(家族法 23 条 1 項)。離婚した夫婦は,子を世話,養育しかつ教育しなければならないからであり,裁判所は,夫と妻との合意に基づいて,または,夫と妻の問で合意に達することができない場合は,裁判所の決定に基づいて,子が 18 歳の成人に達するまでに支払われる子の養育費について決定することとなる(同 23 条 2 項)。離婚後の子の監護権について,裁判所が父または母のどちらが子の利益にふさわしいかについて決定する場合には,母親が子の監護権に関して優先権を有している(女性の発展及び保護法 20 条)。また,民事訴訟法においては,子が7歳に満たない場合において,母親が子を受け入れない,または子を育てるための手段を有さない場合を除いて,監護権は母親に与えると規定されている。子が7歳以上の場合は,子に最初に看護を受けることにつき尋ねなければならない。更に,父母が子を受け入れることができない,または子を育てることができない場合,裁判所は子が第三者の監護権に服する判断を行うことが認められている(民事訴訟法 47 条)。

 

 

 

 

 

 

離婚後,婚姻関係があったときから病気にかかっていて,かつ自分の必要を満たすことができない夫または妻は,相手方に経済的な能力がある場合に限り,離婚をした後も,相手方による扶養料の負担分を決定するよう裁判所に請求する権利を有する。ただし,扶養料の負担は 2 年を超えないものとされている(家族法 24 条)。また民事訴訟法において,離婚事件に関し,子の扶養料に関する請求がなされる場合,離婚後夫婦財産が存在するときは,裁判所は子の養育をする者のためにその財産の 3 分の 1 を割り当てる判断を行う。夫婦財産が子の扶養のために不十分な場合には,子の扶養について義務を負う当事者は,家族法に規定される各期間の生活費の額を,子の扶養のために月単位で支払うこととの判断がなされる(民事訴訟法 48 条 1 項)。夫婦財産が存在しない場合,子の扶養につき義務を負う当事者が,公務員の最低賃金の半分を基準とし,各期間の生活費の額を月単位で支払うように裁判所は判断を下すとされる。夫婦財産の形態が家族の居住する家屋である場合,監護権を有する親が家屋の取得につき優先権を有する。家屋の価値が監護権を有する親の受領額を超える場合,家屋を取得する当事者は相手方当事者に対し,差額を払い戻さなければならないとされる(民事訴訟法 48 条 2 項)。

 

 

 

 

 

(エ)婚姻財産
離婚時の財産分割について,婚姻前からそれぞれが所有する財産,結婚後に夫もしくは妻に対する相続,遺贈もしくは贈与によって取得された財産であって,最初の形で残っているかまたは他の財産の形態に変わったものは,夫婦のそれぞれの特有財産(各自の所有する財産)とされる(家族法 26 条 1 項)。1 項以外に,夫または妻の特有財産に生じた利子,収入や成果は,夫又または妻のそれぞれの特有財産とみなされる。ただし,夫または妻が生産に貢献する,または夫婦共同で働いて得た収入や成果は婚姻後取得財産(夫婦財産)とみなされる(同条 2 項)。ここでいう夫婦財産とは,夫婦が婚姻中に共同で取得した財産のことであり,価値の低い個人向けの財産は夫婦財産とはされない(同条 3 項)。一方配偶が同居,または別居している間に各自で得るすべての収入は夫婦財産とされる。別居後に家族の利益のために,または夫婦の合意により借り入れられた負債については,夫婦が責任を持つこととなる。ただし,個人の利益のため,または合意なしに借り入れられた場合には,各配偶者がその負債について責任を負わなければならない(同条 4 項)。また,他方の特有財産に対して婚姻財産から支出があった場合,または 3 分の 2 以上の額を特有財産から一方の特有財産に対して支出した場合,その特有財産は夫婦財産になったとみなされる(同条 5 項)。

 

 

 

家族法 26/1 条には,慰謝料に関する規定がある。慰謝料とは家族の構成員の死亡により損害を受けた家族が受ける金銭のことである(家族法 26/1 条 1 項)。これは平等に 3 分割され,死亡者の両親,一方配偶者および子に提供される。死亡者に子がいない場合,この慰謝料は 2 分割され,死亡者の両親および一方配偶者に提供される。死亡者に両親がいない場合,この慰謝料は 2 分割され,一方配偶者および子に提供される。死亡者に両親および子がいない場合,この慰謝料は一方配偶者に提供される。それ以外の場合,この慰謝料の分割方法は,遺産および相続財産基準(相続法)に従うこととなる。ただし,この慰謝料は分割をする前に死亡者の葬儀費用,供養費用,借金返済,および死亡により生じたその他の費用に対して優先的に使用されなければならない(家族法 26/1 条 2 項)。

 

 

 

 

夫婦財産について,各配偶者は,どちらが実際にその財産を取得したのかにかかわらず,平等な権利を有している。夫と妻は,家庭の必要性に従って取得財産を合理的な理由で使用する権利を有する。高価な取得財産の収益を受ける権利および決定権については,事前に相互の同意を得なければならない。例えば,土地の使用権,家の購入,または夫婦財産を担保にする事などである(家族法 27 条)。

夫婦が有する財産に関する持分については,家族法 28 条に規定がある。第 1 に,特有財産は各所有権者の財産とされる(家族法 28 条 1 項 1 号)。第 2 に,夫婦財産は夫もしくは妻との間で半分ずつに分けられる。ただし,裁判所の判断により不貞行為もしくは婚姻財産について詐取や横領が認められた一方配偶者は夫婦財産の 3 分の 1 のみを受領する権利を有する(同条 1 項 2 号)。第 3 に,未成年子が一方の親と生活をする場合,その親は子の監護人として夫婦財産の 3 分の 1 を受領する権利を有する。その残りの財産は夫婦が平等に分割する。夫婦財産が子の監護に不十分な場合,子が 18 歳の成人に達するまでは,家族法 35 条(子を世話養育する親の義務に関する規定)が適用され,両親が離婚後もともに監護を継続する義務を負うこととなる。
夫婦財産は離婚が成立した後に分割される。夫婦が別居し,または不正な方法で夫婦財産を密かに使用し,もしくは夫婦財産に対して不誠実な意思を表明した場合には,夫婦財産はその相手方の申立てにより離婚前に分割することも可能である(家族法 28 条 4 項)。

 

 

 

 

 

(オ)離婚に関する国際私法

 

 

ラオス国内での離婚には,当事者の国籍にかかわりなくラオス法が適用される(家族法48 条 1 項)。ラオス人夫婦がラオスに居住する場合にも同様にラオス法が適用される。ラオス国外でラオス人と外国人,またはラオス人同士が離婚する場合には,離婚地の法による(家族法 48 条 2 項,50 条 1 項)とされており,日本人とラオス人の夫婦またはラオス人の夫婦が日本で離婚する場合には,ラオス国際私法上,準拠法は法廷地法である日本民法となる。

 

 

 

 

(5)実親子関係

 

(ア) 概要
ラオス家族法の規定には,実親子関係の発生,親子の権利・義務関係,養子縁組の制度,および認知制度が存在している。これらの紛争が生じた場合も村紛争調停機関が活用され,それによっても合意に至らない場合に,裁判所による親子関係の事件の審理が行われる。

 

 

 

(イ) 実親子関係と認知制度
実親子関係における権利・義務は子の出生により生じる(家族法 29 条 1 項)。ラオス家族法では,子は法的に婚姻している両親から生まれた者についてだけではなく,婚姻していない両親の子から生まれた子のことも指している。ただし,婚姻していない両親から生まれた子と父との関係ついては,父の認知または父親であることが裁判所により認められる必要がある(同条 2 項)。
認知は,婚姻していない両親から子が生まれた場合になしうる(家族法 30 条 1 項)。任意認知は両親が共同で申請書を家事登録局に提出することで成立する。母が死亡している場合は,父が単独で認知を行うことができる(同条 2 項)。子が成人に達している場合,子の同意がなければ認知をすることができない。この場合に,たとえ父が他の女性と婚姻していたとしても認知をすることに問題はない(同条 3 項)。父が認知をしない場合には,子の母,子の責任者または保護者 は,裁判所に対して認知請求をする権利を有する(同条4 項)。なお,条文上,子は認知請求権を有しない。裁判所が認知を行う基準は,子の母および認知をする父が同居し共に財産を保有している場合,子の母および認知をする父が子を共同で扶養し教育している場合,ならびに認知をする父について父であるという医学的証拠が存在する場合である(同条 5 項)。

 

 

 

 

 

 

(ウ)子に対する父母の権利・義務
両親は,その好みに従い,相互の同意に基づいて子の名について決定する権利を有する。ただし,子は 18 歳に達すると,規定に従ってその名を変更する権利を有する(家族法 31条 1 項)。

 

 

 

すみれ
「自分で名前を変更できるんだ。」

 

 

 

 

子の姓については,ラオスは選択的夫婦別姓制が採用されていることから,両親の姓が同一の場合には,子の姓も同一のものとされる(同条 2 項)。両親が異なる姓を使用している場合は両親の協議に従い,協議で決まらない場合は裁判所の判断する姓を使用することとなる(同条 3 項)。両親の婚姻関係が解消された場合でも,原則として子の姓は変更されない。しかし,両親の婚姻関係が解消した後に監護権を有する親とその子の姓が異なることとなった場合など,子にとって必要とされる場合には子の姓をその監護権を有する親と同一の姓に変更することが認められる(同条 4 項)。姓または名を変更する場合,その申立てはその者の居住する郡および特別市における家事登録局へ申請を提出する(同条 7 項)。なお,子の国籍は両親が同一の国籍を有する場合は,両親の国籍により(同条 5 項),両親が異なる国籍を有する場合には,ラオス国籍法に従い父母のいずれか一方の国籍を取得することとなる(同条 6 項)。

 

 

 

 

 

 

両親は,子に対し愛国心,前進を愛する心,良い市民,親孝行の心を持つ人間,透明性のある生活様式を持つ人間として子を教育しなければならず,かつ子が教育を受けられる状況を作り,社会に貢献できるような状況を作らなければならない(家族法 32 条 1 項)。このような子の教育に対する義務を両親が履行しないとき,親の権利を逸脱しているとき,子に暴力および虐待をするとき,または子が両親に対して忘恩行為を働いた場合には,裁判所は「民事訴訟法 59 条の規定に従い」,親の権利,または子の権利を剥奪することができると規定されている(同 32 条 2 項)。なお,この民事訴訟法 59 条は 2012 年民事訴訟法 49 条に該当する(民訴改正後に家族法の訂正がなされていないのでこのような条文となっている。)。両親の親権剥奪,および子の権利の剥奪の請求は,他方配偶者,親族または検察官によって提起されうる(民事訴訟法 59 条)。ただし,それらの剥奪後も,両親の子を扶養する義務は継続し(家族法 32 条 3 項),そのような両親または子が,その後,子に対して適切にその権利を行使することができるようになったと認められたとき,または子が改心をした場合には,裁判所は両親の権利,または子の権利を回復させることができる(同条 4 項)。

 

 

 

 

 

 

両親は子の権利および利益を保護する義務を負う。両親は 18 歳に達していない未成年の子の法定代理人であり,法廷,職場,学校その他の場所において子の権利および利益を保護する義務を負う(家族法 33 条 1 項)。未成年の子が両親の同意なしに契約を締結した場合,両親は裁判所に対してその契約の取消しを請求できる。子が被告となる訴訟においても,両親はその子を代理する。両親が離婚していた場合であっても,その両親は子のためにすべての民事責任を負わなければならない(同条 2 項)。

また,両親は未成年の子だけではなく,成人であっても働くことのできない障害者等の子を扶養する義務を負う(家族法35 条 1 項)。子を扶養する義務は,両親と子の同居または両親の離婚にかかわらず,その義務を負わなければならず,子の養育費も子が 18 歳になっていない間は,裁判の有効期限に関係なくいつでも請求できる。この養育費を請求するための提訴の期間制限はない。1 人の
子の養育費の金額は,公務員の最低月給の半額を基準とし,その時その時の生活水準に従って計算される(同条 2 項)。ただし,両親が経済的困難に陥った場合には,両親は裁判所に対して,子の扶養料の額の軽減を請求することができる(同条 3 項)。

 

 

 

 

 

 

親子の財産につき,両親が死亡するまで,子は両親の財産についていかなる財産権をもつことはなく,両親は子の財産についていかなる財産権も有さないが,両親は未成年の子の財産を管理する義務を負う。両親および子が共有する財産権がある場合は,その財産権は所有権法(財産法)25 条(共有財産権に関する規定)の規定に従うこととなる(家族法34 条)。
また,子の義務として,両親が高齢,病気,働くことができない,または扶養が必要となったような場合には,子は両親を扶養し援助する義務を負う。その扶養料の額は,両親と子との合意で決定される。その額が合意に至らない場合には,裁判所が子の経済的状況からその扶養料の額について判断を行う。なお,その扶養料は月単位で支払われることとなる(同条 1 項)。両親が家族法 32 条(子を教育する親の義務の規定)に規定するような違法な行為に関与した場合には,子はその義務から免れることができる(同条 2 項)。
なお,離婚後の子の監護権については,前述(4)(ウ)(離婚における子の保護および自己の扶養料の請求)の部分を参照。

 

 

 

 

 

 

(エ)未成年子に対する法定代理権および後見
前述の通り,両親は未成年の子の法定代理人である(家族法 33 条 2 項)。子および無能力者の両親が死亡もしくは親権を剥奪され,または病気もしくは他の理由により扶養が必要とされている場合,子および無能力者の後見人が,子を扶養し,かつ教育する義務を負う(家族法 43 条 1 項)。後見人は子および無能力者の権利および義務を保護する義務を負う(同条 2 項)。後見人は,前述のような両親と同様の権利義務を有する(家族法 45 条)。 後見人の選任は次のようになされる。すなわち,遺棄された者がいた場合,そこの地域の村長は,遺棄された者の通知を受理した後 1 か月以内に,子および無能力者の後見人をその者の近親者の中から指名しなければならない。その近親者がその後見人の指名を受諾しない場合,それ以外の者が子および無能力者の後見人として選任される(家族法 44 条 1 項)。近親者とは,直系血族(両親,祖父母など)および水平的関係にある者(兄弟姉妹,いとこ等)のこととされる。後見人を指名する村長は,定期的に後見人の活動を監督する義務を負う(同条 2 項)。未成年者,無能力者,親の権利を剥奪されたことのある者,または後見人として不適切とされる者を指名することは認められない(同条 3 項)。

 

 

 

 

子および無能力者が成人になり,または行為をする能力を回復した場合,後見は終了する。後見人が自己の義務の履行が不可能となり,または適切に義務を履行することが不可能となった場合,後見人は解任され,または新たな後見人に変更される(同 46 条)。
なお,離婚後の子の保護については,前述(4)(ウ)(離婚における子の保護および自己の扶養料の請求)の部分も参照。

 

 

 

 

(6)養親子関係

 

(ア) 概要 養子縁組は養親と実親の合意により成立する。日本の特別養子縁組のような制度は存在しない。養子縁組制度は「他人の自然子として出生した子」を養子とすることであり,養親子関係が成立した後は,実親子関係に基づく権利義務は終了し,養子は養方の親族となる(家族法 37 条 1 項)。なお,養子縁組をするには,家族法の規定に基づいて作成された証明書を保持しなければならない(同条 2 項)。

 

(イ) 養子縁組の要件
養子縁組が成立するためには,養子が 18 歳未満の未成年であること,養親が成年(18 歳以上)に達していること,養親および養子となる者の年齢差が 18 歳以上あることが必要とされ,かつ,親権が取り消されていない者で,相応しい経済的条件を有する者でなければならない(家族法 38 条 1 項)。また,養親となる者および子の実親の書面による事前の同意が必要である。ただし,実親がその親の権利を剥奪され,または不適当な者もしくは失踪した者と認定された場合は,このような書面による同意は不要である(同条 2 項)。また,養子となる者が 18 歳以上の場合は,その子の同意も必要とされる(同条 3 項)。その後,養親となろうとする者は,養子縁組許可を村長に申し立てねばならない。村長は養子縁組許可申請がなされてから1か月以内に許否を決定しなければならない(家族法 39 条 1 項)。養子縁組が適切と認められる場合には養子縁組許可証が発行され,発行後 3 日以内に家事登録官に送付される。養親にも養子縁組許可証の交付がなされる(同条 2 項)。

単独の成人が養親となりうるか,内縁関係の男女が養親となりうるか,同性婚カップルが養親となりうるかについては明らかではない。なお,聞き取り調査では,統計上 2006 年から 2010 年までの間で,ラオス法で認められた国際養子縁組として,子のいない外国人夫婦を養親として認めた事例があったとのことである。

 

 

(ウ) 養子縁組の効果

 

 

養親子関係は,養子縁組が登録された日から効力を生じる(家族法 41 条 1 項)。養子の姓は養親の請求に基づき養親の姓へと変更がなされる(同条 2 項)。養子の名が不適切であると考えられる場合には,養親の申立てにより,養子の名を変更することができる。ただし,養子が 10 歳に達していた場合には,その養子本人の同意が必要となる(同条 3 項)。養親子関係が成立すると,前述のように,実親子関係は終了し,養子は養方の親族となる(家族法 37 条 1 項)。縁組成立後,養親の同意なしにその養親子関係についての秘密を開
示した者,または養親が死亡している場合に家事登録官の同意なしに子の養子縁組の秘密を開示した者は,刑法 104 条 1 項の規定に基づき刑事責任を負う(家族法 40 条)。

 

 

 

(エ)養子縁組の無効および解消
偽造証書を使った場合,または養親として不適格な者によりなされた養子縁組は,無効である(家族法 42 条 2 項)。養子もしくは養親の利益とならない養子縁組,または家族法38 条(養子縁組の要件に関する規定)に反する養子縁組は取消しの対象となる(同条 3 項)。養子縁組の取消しを請求する権利は,実親,養親または利害関係を持つ者であり(同条 4 項),養子縁組が無効と認められ,または取消しがなされた場合には,養子の地位は裁判所の判断に従い終了する(同条 1 項)。
なお,養親子関係が終了した後に養親と元の養子が婚姻することは禁止されていない。

 

 

 

 

 

 

 

(オ)養子縁組に関する国際私法規定
家族法第 4 編第 3 章に国際養子縁組に関する国際私法規定がある。家族法 51 条は外国に居住するラオス人間の養子縁組,外国に居住する外国人夫婦とラオス人の間の養子縁組,ラオスに居住する外国人夫婦とラオス人の間の養子縁組,ラオスに居住するラオス人夫婦と外国人の養子縁組のいずれにもラオス法を適用すると定めている。したがって,日本に居住する日本人がラオス人未成年者と養子縁組する場合にはラオス法上の養子縁組手続を行い,かつ在日ラオス大使館を通じてラオス政府の承認を求めねばならないことになる。ラオスに居住する日本人がラオス人の未成年と養子縁組する場合も同様にラオス法によることになる。これらのことから考えて,ラオス国際私法上,ラオス人のかかわる養子縁組につき,法の適用に関する通則法 41 条の反致の適用は認められないことになる。