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2016年加工  第165回国会 法務委員会 第5号
2016年04月22日

2016年加工  第165回国会 法務委員会 第5号

 

 

 
平成十八年十二月五日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十二月四日
辞任         補欠選任
千葉 景子君     松下 新平君
前川 清成君     富岡由紀夫君
十二月五日
辞任         補欠選任
松下 新平君     千葉 景子君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長         山下 栄一君
理 事
岡田  広君
簗瀬  進君
木庭健太郎君
委 員
青木 幹雄君
陣内 孝雄君
関谷 勝嗣君
谷川 秀善君
江田 五月君
富岡由紀夫君
松岡  徹君
松下 新平君
浜四津敏子君
仁比 聡平君
近藤 正道君
事務局側
常任委員会専門
員        田中 英明君
参考人
一橋大学大学院
法学研究科教授  中田 裕康君
日本弁護士連合
会信託法及び信
託業法改正対応
チーム座長    深山 雅也君
社団法人信託協
会副会長
みずほ信託銀行
株式会社取締役
社長       池田 輝彦君
─────────────
本日の会議に付した案件
○信託法案(第百六十四回国会内閣提出、第百六
十五回国会衆議院送付)
○信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する
法律案(第百六十四回国会内閣提出、第百六十
五回国会衆議院送付)
─────────────
○委員長(山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨四日、千葉景子君及び前川清成君が委員を辞任され、その補欠として松下新平君及び富岡由紀夫君が選任されました。
─────────────
○委員長(山下栄一君) 信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、一橋大学大学院法学研究科教授中田裕康君、日本弁護士連合会信託法及び信託業法改正対応チーム座長深山雅也君及び社団法人信託協会副会長・みずほ信託銀行株式会社取締役社長池田輝彦君でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方について申し上げます。まず、中田参考人、深山参考人、池田参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
それでは、中田参考人からお願いいたします。中田参考人。

 

 
○参考人(中田裕康君) おはようございます。中田でございます。
私は、一橋大学で民法を担当しています。信託法については、十数年前から研究を始め、現在に至っております。今回の信託法改正に関しましては、法制審議会信託法部会に参加したり、若干の文章を書いたりしたということもありまして、本日意見を申し上げる機会をちょうだいしたものと思います。どうもありがとうございます。もちろん、これから申し上げる意見はすべて個人としてのものでございます。
私の意見は三つの部分から構成されます。
第一は、今回の改正の背景についての私の認識です。第二は、今回の信託法案を二つの観点から吟味するものです。これが中心になります。そして、第三は結論です。
まず、改正の背景について申し上げます。
現在の信託法は、一九二二年に制定されたものですが、その内容は、以来八十四年間、ほぼ変わっていません。それは、信託法が完璧な法律だったからというわけではなく、むしろ信託法が一般には余り利用されてこなかったからではないかと思います。一般の人々はもちろん、法律家や法学部の学生にとっても信託法はなじみが薄く、信託は専ら信託銀行が行う特殊なものだというイメージが強かったような気がしています。

 

 

 

 

 

 

 

これについては、現在の信託法が制定された当時の事情の影響がありそうです。日本で信託制度が本格的に導入されたのは日露戦争の直後、一九〇五年の担保付社債信託法以来のことですが、それから数年たった大正初期には、信託という概念は濫用ぎみに用いられていたようです。そこで、一九二二年に信託法と信託業法がセットで制定されますが、とりわけ業界を規制しようとする信託業法に重点があったと言われています。その後、第二次大戦中の一九四三年に兼営法ができ、信託業を経営基盤の弱い信託会社ではなく銀行にさせる方向が示され、戦後は専ら信託銀行が信託業務を行うことになりました。
こうして、信託とは厳しい業法規制の下で信託銀行が行うものであり、一般の会社や個人とは縁遠いものだというイメージが浸透したようです。さらに、ヨーロッパ大陸法を基本とする日本の私法体系の中で英米法に由来する信託が特殊なものだという印象を与えたという事情もあったのかもしれません。

これに対し、近年新しい動きが出てきました。まず、学界の状況を申し上げます。学界では、かねてから優れた学者が信託法の研究をしていましたが、それは一部にとどまっていました。しかし、一九八〇年代半ばに信託法研究者のグループが信託法改正案を提示したこともあり、研究者のすそ野が広がってきました。特に、一九九〇年代以降、信託に関する研究書や体系書が次々に現れます。現在では若手研究者の本格的研究も登場しています。

 

 

 

 

 

 

このような動きの背景には、次のような問題意識があるように思います。すなわち、信託を業法規制の下での特殊な法律関係に押し込めるのではなく、より一般的な法制度として私法全体の中に位置付けたい、そうすることによって社会が信託という制度のメリットを活用できるようになればよいということです。
これはアカデミックな問題意識ですが、もちろん現実の社会において信託制度に対する需要が高まっていることを反映するものでもあります。例えば、金融商品としての信託が発達するだけでなく、企業が多様な手段で資金を調達するために信託を活用したいという需要が高まっています。民事信託でも、高齢社会を迎え、高齢者が自分の財産を信託し、自分の老後や家族のために活用するという需要があります。その際、市町村や弁護士などを受託者にしたいという例は少なくないようです。弁護士会も積極的に応じようと考えておられるようです。しかし、従来の信託法はこれらの需要に十分に対応できないという問題があります。

 

 

 

 

 

 

こうして、信託がより有効に活用されるようにしたいと、そのためには信託法の現代化が必要だということになります。目を海外に転じますと、信託制度を生んだ英米法においても、近年、信託法の現代化がなされています。このような国内外の潮流の中で、二〇〇四年に信託業法が改正されました。信託業者が受託できる財産に知的財産権を含めるなど、受託可能な財産の範囲が拡大し、また信託業の担い手も拡大しました。そこで、いよいよ信託法自体の改正をということになります。このような背景で登場したのが今回の信託法案であると認識しています。

次に、信託法案の内容と評価に進みます。私は、今回の信託法案の特徴は二つあると思います。一つは、現在社会における信託の利用可能性を高めるものであること、もう一つは信託の信頼性を確保するものであることです。以下、この二つの観点から申し上げます。

まず、利用可能性の向上ですが、これは柔軟で精緻な規律によって図られています。

 

 

 
規律の柔軟さというのはこうです。

第一に、信託における当事者の自治を高めています。まず、信託が多様な態様で成立することを認めています。次に、多くの規律を任意規定としています。また、裁判所の監督を廃止しています。
第二に、受託者が効率的に事務処理をすることを可能にしています。特に、受託者が事務処理を第三者に委託することを広く認めたことが重要です。現在、受託者は自己執行義務を負っていますが、分業化、専門化を背景に第三者に委任することを原則として認めました。
第三に、信託設定後の状況に機動的に対応できるようにしています。例えば、第三者への委託、信託の変更、併合、分割などです。
次に、規律の精緻さというのはこうです。

 

 

 

 

 

第一に、一般的な場面における規律を具体化しています。まず、受託者の忠実義務について、規律を具体化した上で、違反に対する効果を規定しています。また、信託財産に対して強制執行できるのはどのような権利なのかを列挙しています。そのほか、受益権や受益債権の内容、受益債権や損失てん補責任の期間制限などを明確化しています。

第二に、複雑な場面における規律を明確にしています。受益者が多数いる信託について意思決定の方法を明確化しています。先ほど申し上げました信託の変更、併合、分割や信託財産の破産制度もそうです。

第三に、多様な類型の信託を創設し、あるいは許容しています。受益証券発行信託、限定責任信託、受益者の定めのない信託、自己信託などです。
以上が信託の利用可能性の向上です。これに対しては、柔軟さはともかく、精緻さは信託にそぐわないという意見もあるかもしれません。規定はできるだけ簡潔にし、紛争が起きれば裁判所が衡平の観点から解決するのがよいという考え方です。確かにその方が伝統的な信託のイメージに近いのかもしれません。しかし、そのようにすると、信託は予測可能性が低く、かえって使いにくい制度になりそうです。信託によって、どのような権利、義務、責任が生じるのかがはっきりしないと利用がちゅうちょされます。といって、信託法は簡潔にし、信託業法で厳しく規制するということですと、現在と似たようなことになってしまいます。今回の信託法案は、規律の透明性を高めることによって信託を利用しやすいものとしたと評価できると思います。

しかし、利用可能性を高めた結果、弊害が生じるということでは困ります。そこで、新しい信託法の第二の特徴である信託の信頼性の確保が問題となります。そのためには、受益者の利益の保護と社会の利益の保護が図られる必要があります。

 
まず、受益者の利益の保護です。信託の柔軟性だけを追求していると受益者に不利益を及ぼすおそれも生じます。そこで、信託法案は、様々な方法で受益者の利益の保護を図っています。
第一に、受託者の様々な義務を明文で規定するとともに、それが実効性を持つような措置を講じています。受託者の注意義務、忠実義務、公平義務、分別管理義務などが規定されています。受託者が忠実義務に違反する行為をした場合について類型ごとの措置が講じられており、また受益者の損失を推定する規定が置かれています。
第二に、受益者の利益を保護するための機関を整備しています。信託監督人、受益者代理人という新たな機関を置き、また、信託管理人、信託財産管理者という従来からある機関を整備しています。

第三に受益者の権利を拡充しています。新たな権利として、受託者等の行為の差止め請求権、信託の重要な変更に際して多数決で敗れた受益者の利益を保護するための受益権取得請求権があります。また、信託事務や信託財産に関する情報開示請求権のように、既存の権利も整備されています。さらに、信託行為をもってしても受益者の権利行使を制限できない強行性ある規定も明確にされています。

 

 

 

 

 

 

 

第四に、受益者に対する費用償還請求権及び報酬支払請求権は個別合意のある場合に限って生じることとされている点も重要です。
このように、受益者保護について様々の工夫が凝らされています。

最後に、社会の利益の保護が必要です。これがないと信託という制度自体の信頼性も揺らぎます。信託法案は、信託の新しい類型や新しい利用方法を認めています。これらの信託によって社会の利益が害されてはいけません。ここでは三種類の問題があります。
第一は、信託の当事者以外の第三者、例えば債権者の利益の保護を図る必要があります。これは、制度の濫用的な使用が抑えられよう、様々な対応が考えられています。
第二は、新しい信託法自体が他の法制度の規律を損なう言わばバイパスとなるおそれがないかです。もしそうだとすると、信託はうさん臭い制度になってしまいます。

例えば、民事法との関係では、信託法案には、物権法、担保物権法、相続法、法人法、執行法、倒産法などと交錯する領域があります。これらについて、本法案では慎重な検討と対処がなされています。本法案により、むしろ他の法制度の法理がより深められ、その機能を活性化することが期待されます。

 

 

 

 

すみれ
「たしかにですね。」

 

 

 

 

第三に、より根本的なこととして、今回の信託法案は信託そのものの本質を損なうのではないかという意見もあるかもしれません。しかし、私は、信託法案においても、受託者に対する信頼を中核とする信託の本質が変わることはないと考えています。伝統的な信託の周辺に新たな信託の諸類型が配置されていますが、これは伝統的な信託を補完するものであり、それを傷付けるものではないと思います。

最後に結論を申し上げます。私が参加させていただいた法制審議会信託法部会は、一年四か月の間に三十回開催され、一回が六時間に及ぶこともあるという密度の濃いものでした。その間、様々な立場の方々がそれぞれの意見を出し合い、ぎりぎりまで詰めた議論をしたと思います。私自身の意見でも、通ったものと通らなかったものがありますが、全体として見ますと、信託の利用可能性の向上と信頼性の確保がそれぞれ具体化され、よく調和していると思います。

 

 

 

 

 

 

そういうわけですので、この信託法案は現代社会の多様な要請にこたえるものとなっていると思います。その成立を期待する次第でございます。
以上が私の意見です。御清聴ありがとうございました。

○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
次に、深山参考人にお願いいたします。深山参考人。
○参考人(深山雅也君) 私は、日本弁護士連合会におきまして、信託法及び信託業法改正対応チームという委員会の座長を務めておる者ですが、本日は、そのような立場にいることから意見陳述の機会を与えられたものと存じます。

日弁連におきましては、民事法の基本法の一つに数えられる信託法の改正に対しまして、法律実務家の立場から重大な関心を寄せてまいりました。法制審の信託法部会に三名の弁護士が委員ないし幹事として参加しておりましたが、日弁連におきましてバックアップチームと称する委員会を設置し、法制審の信託法部会の開催に合わせて会合を重ね、検討課題について議論をしてまいりました。
私は、このバックアップチームの座長も務めておりましたが、このバックアップチームというのは、日弁連の各種の委員会、例えば消費者問題対策委員会、高齢者・障害者の権利に関する委員会、知的財産制度委員会、債権回収会社に関する委員会、倒産法制検討委員会、司法制度調査会などといった各種の委員会から選出された委員によって構成されておりました。

このように、各種の分野の実務に精通した弁護士が、様々な角度から法制審に出席をしていた弁護士をバックアップするとともに、弁護士の立場からの意見を立法過程の議論に反映していただくということを目指してまいったわけであります。

 

 

 

 

 

 

 

また、昨年七月に公表されました信託法改正要綱試案に対するパブリックコメントの手続におきましても、このバックアップチームから日弁連の各種の委員会に対して意見照会をするとともに、全国の都道府県の弁護士会に対しましても意見照会をし、全国的な意見集約を行い、それを取りまとめて日弁連の意見として法務省に提出した次第であります。
したがいまして、今回審議されております信託法案は、様々な角度から十分な議論が尽くされた上で作成されたものであり、全般的に見て基本的に日弁連の意見にも合致するものであるというふうに認識しているところであります。
そこで、時間も限られておりますので、弁護士会内部において強い関心の寄せられたところを中心に、何点か各論的な意見を申し述べたいと存じます。
まず、今回の改正の基本的な視点についてでありますが、今回の改正においては、金融、融資、資産流動化といったいわゆる商事信託の分野のほかに、高齢者や障害者の財産管理などといった、いわゆる福祉目的の活用が考えられる民事信託分野、さらには公益信託の分野といった様々な信託の活用場面を視野に入れて、現在及び将来の幅広い社会的あるいは経済的ニーズに柔軟かつ的確に対応できる法制度の実現が目指されたものであると存じます。それゆえ、様々な目的に活用できるよう、極力柔軟な制度にすることが今回の改正において最も重視されたものと言えると思いますが、この点については高く評価しているところであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

日弁連の内部において議論を始めた当初においては、資産流動化に代表されるような、いわゆる商事信託分野における経済的ニーズを重視した改正論であり、福祉型信託といった民事信託分野における社会的ニーズに対する配慮が乏しいのではないかといった懸念する意見もございましたが、様々な改正項目の議論が深まる中で、福祉型信託を含む民事信託分野に関しましても柔軟かつ的確に対応できる法制度が目指されているということが理解されてまいりました。
次に、信託法案の特徴的な改正点が幾つか挙げられると思いますが、まず第一点目として、信託法規の多くが任意規定であるということを明示した点を挙げることができます。この信託法案には善管注意義務、忠実義務、あるいは公平義務、分別管理義務、自己執行義務といった各種の受託者の義務が明確かつ具体的に規定されております。
他方、こうした義務の大部分について、信託行為に別段の定めがある場合にはその定めに従うというものとされ、これらの規定の多くは任意法規化されております。この点については、例えば善管注意義務が明文化された点はよいが信託行為で削除されてしまうのではないかであるとか、あるいは、忠実義務の具体的内容として利益相反行為を列記したことはよいことだけれども信託行為で許容されてしまうのではないかといった議論もありました。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そもそも信託という制度は、一定の目的に従って財産の管理処分等を行うことが前提になっておる制度ですので、その信託目的に反することや、信託目的の達成の支障となるようなことはいずれにしても許されないわけであります。そして、受託者の義務の内容や程度についても、信託目的の達成の見地から個別的に定められるべき面がありまして、これを一律に規定することはかえって多様な信託に対応した柔軟な信託設計を阻害することにもなりかねません。
受託者にどのような義務を課すべきかについて、信託行為を行おうとする委託者の意思にゆだねるということは、民事法の大原則である私的自治の原則の見地からも尊重されるべきであろうと存じます。

もっとも、信託を業として行う者について、受託者の義務の軽減を制限すべきかどうかといったことについては、全く別個の問題であろうと考えております。そうした点については、信託業法その他の取締法規によって適正に規律すべきことでありますが、実体法としての信託法における受託者の義務については、以上のように考える次第であります。

 

 

 

 

 

また、任意法規化に関しては、受託者の義務のみならず、例えば委託者の権利についても、信託法上の権利の全部又は一部を有しないというふうに定めることもできる一方で、受託者の監視・監督権能を果たす受益者の諸権利を委託者にも与えるといったことを認めるなど、これを一律化することなく信託行為において柔軟に定められるというふうになっております。こうした委託者の権利についても、任意法規化も信託目的に対応した信託設計について委託者の意思を尊重するというものであり、妥当な規律であると存じます。

 

 

 

 

次に、信託法の特徴的な改正点の二点目として、新しい信託類型を容認し、多様な信託を認めることにしたということが挙げられます。
具体的には、受益証券発行信託、限定責任信託、自己信託、目的信託といった新しい信託の類型が創設されました。受益証券発行信託は、従来、貸付信託や投資信託などに限定して認められていた受益権の有価証券化を一般的に認め、受益権の流通性を高めるものでありますが、受益証券の発行により受益権に対する投資が活性化されるというふうに見込まれるところであります。

 

 

 

 

 

 

 

他方、投資家の保護というものも問題になりますが、この点については、受益原簿の作成が義務付けられ、その備置きや閲覧の制度等が用意されており、そのことによって情報開示が図られる、あるいは善管

注意義務の軽減が禁止されるといった投資家保護の見地からの手当てもなされております。これらの信託法上の手当てに加えて、信託業法あるいは金融商品取引法による規制によって信託の投資家の保護が適正に図られるものと考えております。
また、限定責任信託については、信託財産をもって履行の責任を負う債務について、引き当てとなる財産を信託財産に限定し受託者の固有財産には及ぼさないとする信託類型でありますが、受託者の引受手を確保し、信託制度を広く利用するというために有用な制度であると存じます。
もっとも、信託実務においては責任限定特約という形で個別の契約において既に行われているところであります。それを信託法上の制度として類型化したという面もありますが、これを一つの信託類型として容認した上で法律上の規律を設けるということは、受益者や取引関係者の保護の観点からも有意義であろうと考えられます。
すなわち、限定責任信託というものは、信託行為においてその旨を定め、かつ一定の事項を登記することが効力要件とされておりますし、名称中に限定責任信託という文字を使うことなど、受益者に不測の損害や不利益を生じさせないような配慮がなされております。

今後、事業の信託等が健全に発展していく上では限定責任信託は有用な制度であると考えられますし、他方、福祉型信託の場面におきましても、受託者に過度のリスク負担が生じるおそれがありますと、受託

 

 

 

 

 

 

 

者の引受手が確保できない、その結果、福祉型信託の発展が阻害されるということにもなりかねませんので、福祉型信託を含む民事信託の場面でも限定責任信託は有用な制度であると考えております。

次に、自己信託でありますが、自己信託についてはこれまで種々議論なされたことと存じますが、日弁連としては一定の要件の下に自己信託という信託類型を容認することについて賛成しているところであります。
自己信託の容認に反対する見解の最大の理由は、委託者の債権者において執行不能となる財産を容易に作り出し得るという執行免脱行為に対する懸念であります。しかしながら、委託者の債権者を害する信託は詐害信託にほかならず、民法四百二十四条一項の詐害行為取消しの対象となるものであります。しかも、信託法案におきましては、詐害信託である場合には債権者は詐害行為取消し訴訟を経ることなく信託財産に対する強制執行等を行うことができるものとされております。

 

 

 

 

 

また、自己信託は、公正証書その他の書面で作成されることが成立要件とされ、公正証書以外の書面で作成された場合には、確定日付ある証書によって信託の内容が受益者に通知されることが効力要件となっておりますから、自己信託がなされたこと、あるいはその内容というものは明確にされ、後日その設定時をさかのぼらせるということもできない仕組みとなっております。

そこで、執行免脱行為あるいはその他の脱法的な行為に対するこのような手当てがなされていることを踏まえて、多様な信託類型を容認する見地から、自己信託の創設についても賛成しているところであります。
最後に、目的信託でありますが、特定の受益者のためでなくても、信託財産からの利益を享受すべき一定の者を想定した信託というものも必ずしも否定されるべきではありませんし、公益信託に該当しないものであっても、一定の公共的な目的のために信託という制度を活用することを否定すべきでもないと考えられることから、受益者を定めない信託についても一定の有用性があると考えられます。

そこで、受託者の監視・監督機能を果たす受益者の諸権利を委託者に認めるとした上で、存続期間を二十年に限定するといった手当てがなされていることを踏まえて、日弁連としては目的信託の創設にも賛成しているところであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに、信託法案の特徴的な改正点として、受益者の権利行使の実効性を確保するという見地から、受益者保護のための様々な制度が導入されたということが挙げられます。具体的には、受託者の任務違反行為に対する差止め請求権を認める、これによって任務違反行為の事前防止を可能とするという点、あるいは、検査役の選任を受益者の権限と明記した上で規定を充実させて、信託事務に関する不正な行為の発見する手だてを施している点、あるいは信託監督人という制度を設ける、このような手当てがなされております。
今後、信託という制度が広く国民に利用されるようになるだろうというふうに見込まれることに照らしますと、このような受益者保護のための様々な制度が導入されたことは信託という制度の健全な発展のために極めて重要なことであり、この点についても信託法案を高く評価しているところであります。

ところで、今般設立される受託者監督人には弁護士などが選任されていくことが見込まれていると聞いておりますが、そもそも受益者のために信頼できる者に財産の管理処分を託するという信託制度の本質に照らし、我々弁護士には信託の受託者としてその担い手となることが求められていると存じます。

 

 

 
民事信託、とりわけ福祉型信託におきましては、委託者や受益者が十分な監視監督能力を有しないことが想定されますことから、受託者に対する高度の信頼関係が必要とされるところ、社会的な信頼を有し、なおかつ弁護士倫理や懲戒制度によって自律的に規律されている弁護士は、そうした受託者として最もふさわしい存在であると言えます。そして、従来より弁護士は法律業務を行う中で高齢者等の財産管理や財産、証券に関与しております。また、各弁護士会においても、高齢者等の財産管理センターを設立し、既にそうした役割の一部を担っているとも言えます。

 

 

 

 

 

ところで、今般信託法改正に伴う関係法律の整備等に関する法律案において、信託業法の一部改正がなされ、信託業の定義を定める二条を改正し、信託業法の適用が排除される業務が政令により明記されるとのことですが、以上のような弁護士に期待される役割に照らし、弁護士が法律業務に伴い、あるいは法律業務の一環として信託の引受けを行う場合については、信託業の適用が除外されるという業務に該当することを法律又は政令において明記していただきたいと考えているところであります。
最後に、今般の信託法改正の議論全般に対する意見を申し述べます。

 

 

 

 

 

 

信託法はその成立以来八十年以上にわたって実質改正がなされないまま経過したわけでありますが、今般その抜本的改正がなされ、現代社会の様々なニーズにこたえる制度として生まれ変わろうとしております。したがって、様々な角度からの検討が必要であることは当然のことでありますし、積極的な面、肯定的な面ばかりでなく、否定的な面や言わば病理的な側面というものも見過ごすわけにはいきません。
我々弁護士は万一の事態を想定してリスクヘッジをするということを日常の業務において行っておりますが、今般の信託法改正を考える上でも信託という制度が正常に機能しない場面あるいは濫用的に利用される場面ということも念頭に置いて議論してまいりました。
しかしながら、信託制度の濫用的な利用を警戒する余り、過度に消極的になったりあるいは懐疑的になったりしてしまうと、制度本来の意義や有用性を見失うことにもなりかねません。濫用を過度に意識して、その防止策によって信託制度の有用性や利便性を失わせてしまっては本末転倒であると言わざるを得ません。

日弁連としては、様々な角度から法案作成に向けて議論を尽くしてこられた多くの方々の御努力と英知に敬意を表するとともに、新しい信託法の下での新しい信託制度が一日も早く、幅広く国民に活用されることを願っているところであります。
以上であります。

 

 

 

 

 

 

 

○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
次に、池田参考人にお願いいたします。池田参考人。
○参考人(池田輝彦君) 私は、信託協会副会長をしております、みずほ信託銀行の池田でございます。

本日は、信託法案の御審議に当たり意見を述べさせていただく機会をちょうだいし、厚く御礼を申し上げます。
本日はちょうだいしましたお時間の中で、第一に信託制度の現状と長所、第二に信託法案に対する私どもの基本認識、第三に信託制度に対する信頼の確保の三点について申し上げ、皆様の御理解を賜れば有り難いと考えております。

 

 

 

 

 

まず初めに、信託制度の現状と制度に関する長所の御説明をさせていただきたいと存じます。
御高承のとおり、信託制度は、財産の管理運用を主な目的とする制度でございまして、我が国に信託の概念が導入されて以来ほぼ一世紀が経過いたしております。その間、社会のニーズの高まりや、それに対応した信託関連法の改正などを経まして我が国の経済及び国民生活に欠かせない重要なインフラとなりつつあることを実感しているところでございます。

信託制度の担い手としましては、かつてはいわゆる専業信託銀行だけという時代が長く続きました。その後、外資系信託銀行の参入や、都市銀行や証券会社の子会社による参入、そして地方銀行本体や都市銀行本体による参入が進められてきました。さらに、平成十六年十二月施行の改正信託業法により、信託会社参入のための規律が整い、専門性を生かした特色ある信託会社も登場してまいりました。信託契約代理店や信託受益権販売業者といった信託の利用者の窓口が拡大する仕組みの整備と併せまして、信託の担い手は飛躍的に拡大しております。

 

 

 

 

 

信託制度を活用した商品という意味では、貸付信託といった預金類似商品を中心とする時代から、高度成長期以降はより高度な財産管理運用の機能を発揮して年金信託や有価証券の管理運用を目的とする信託などが導入されております。

近年では、企業の財務改善や資金調達を目的とする資産流動化の分野で重要な役割を果たすなど、信託制度はその活用の幅を広げてまいりました。信託の担い手の拡大と商品の拡大の相乗効果により信託財産の残高は平成十八年三月末現在でおよそ六百五十兆円に達しております。

次に、信託制度の長所でございますが、私どもが長年信託業務に携わってまいりまして常に感じておりますのは、手前みそではございますが、信託制度は非常に優れた制度であり、社会のお役に立てる制度であるということであります。それは、信託の持つ機能が財産管理の仕組みとして社会のニーズにマッチしていることと、信託が法的な安定性と制度としての柔軟性を併せ持っていることの二つに由来しているからであると考えております。

 

 

 

 

 

 

初めの理由であります信託が果たしている機能については、大きく次の三つに分けられます。
一つ目は信託の財産管理機能でありまして、財産の管理処分権が受託者に与えられているということであります。二つ目は転換機能でありまして、信託財産が信託受益権という権利に転換され、信託の目的に応じた形で利用できるということであります。三つ目は倒産隔離機能でありまして、委託者あるいは受託者が倒産しても信託財産は影響を受けないということであります。
もう一つの理由である、信託が法的な安定性と制度としての柔軟性を併せ持っているという点について簡単に御説明します。
法的な安定性という観点から一番重要なことは、受益者、つまり利用者の保護を図ることでありますが、法律上、信託の担い手である受託者に対して忠実義務や善管注意義務、分別管理義務等々の責任が明確に定められています。また、受託者は受益者の利益のために行動するという大原則が根幹にありまして、これも大事な要素であります。制度としての柔軟性と申しますのは、信託そのものは伸縮自在な器であり、その中にいろいろな財産を入れて管理運用したり、あるいは証券化することができるという使い勝手の良さを表しております。

 

 

 

 

 

 

 

この法的な安定性と制度としての柔軟性は車の両輪のようなものでして、どちらが欠けても不安定な制度になってしまいます。使い勝手が良くても受益者の保護が不十分であれば問題が生じますし、逆に受益者の保護が十分に図られましても使い勝手が良くなければ社会のお役には立ちにくいということになります。

このように三つの機能と二つの長所を併せ持った制度である信託を更に世の中に広めていきたい、そのためにはこれらの機能と長所を更に維持強化していきたいというのが私どもの願いであります。
第二の点の信託法案に対する私どもの考え方を端的に申し上げますと、法案に賛成しており、早期成立を希望しているということでございます。
信託法は、大正十一年に制定されて以来、八十年以上にわたりまして実質的な改正がなされないまま現在に至っております。この間、社会経済活動の多様化に伴いまして信託を利用した金融商品が幅広く定着しております。また、資産の流動化目的の信託など、信託法が制定された当時には想定しなかった形態での信託の活用が図られるようになっております。このような変化に対応するためにも、信託法を抜本的に見直す必要が生じております。

 

 

 

 

 

 

今回の抜本改正の内容を一言で申し上げるとすれば、社会経済情勢の変化や財産管理方法の変化に的確に対応するために現代化を図るということでございますが、私どもといたしましては、これを次のように理解しております。
まず第一は、過度に規制的なルールの見直しを図り、受託者の義務に関する規律を明確化することであります。例えば、分業化、専門化が進んだ現代社会に適合するように、信託事務を外部の専門家などに委託しやすくしますと、受益者のために、より高度かつ多様な信託サービスが提供しやすくなります。
第二に、受益者の権利行使のための意思決定ルールが合理化、明確化されることであります。例えば、受益者が多数の場合に多数決で意思決定することが認められますと、お客様のニーズへの機動的な対応が可能になります。

 

 

 

 

 

第三は、多様な信託の利用形態に対応するための制度の整備を図ることであります。例えば、既に社会的インフラとして定着している投資信託や年金などのファンドを統合したり分割したりすることができるよう、信託の併合、分割の制度を創設することが挙げられます。また、信託受益権の有価証券化や担保権を信託により一括して管理する仕組みであります、いわゆるセキュリティートラストの導入といった新しい仕組みの導入もあります。つまり、信託法の現代化とは、規律の明確化と実務に即した合理化が図られることであると認識しております。
この点は、正に先ほど申し上げました、信託の機能や、信託が持つ法的な安定性と制度としての柔軟性という二つの長所を更に強化するものでございます。
このような点からも、私どもとしましては、信託法案の成立に大変期待をしているところでございます。

 

 

 

 

 

 

平成十六年十二月の信託業法の全面改正によりまして、信託サービスの担い手や対象財産の種類が拡大いたしました。これに加え、今般の信託法改正により、創意工夫を凝らした新しいタイプの信託スキームの開発と利用が一層進むことが期待され、社会のニーズに適合するとともに、国民経済の持続的な成長、発展に寄与するものと考えているところでございます。
最後に、信託制度に対する信頼の確保について申し上げます。
今日、信託制度が社会的に一定の信頼を得ておりますのは、私ども信託銀行が、これまで長年にわたり信託法や信託業法等の規律にのっとり、信託の担い手としての責任や義務を果たすことに積極的に努力してまいった結果ではないかと自負しているところでございます。
したがいまして、今般、信託法が抜本的に改正され信託制度の活用範囲が拡大したといたしましても、これまで培ってまいりました信託制度に対する社会的な信頼が損なわれないこと、言い換えれば、信託制度が健全な形で発展することを切に願っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

今般の信託法の改正によりまして、制度の自由度が増すことになりますが、自由の裏には必ず規律というものが必要と考えます。特に信託は、受益者のために財産をお預かりして管理運用する制度ですから、受託者に対してしっかりとした規律が求められるのは当然のことであります。究極の信用制度と言われる信託制度に対する社会的な信頼が損なわれることがないよう切に願っておりますとともに、私どもといたしましても、制度に対する信頼を高めるよう、更に努力を重ねてまいりたいと考えております。

 

 

 

 

 

 

 

以上、私なりの意見を述べさせていただきましたが、信託協会といたしましても、同様の考え方から法案の早期の成立を希望しているところでございます。是非、私どもの考えを御理解いただき、法案の御審議をいただければ有り難いと考えております。

御清聴いただきまして、ありがとうございました。
○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 自由民主党の岡田広です。
今日は、三人の参考人の皆さん、大変お忙しいところ、ありがとうございました。
何点かそれぞれお尋ねをしたいと思いますが、まず、今回の信託法案は、現代信託法の規律を抜本的に検討し信託法制を現代社会に適合する内容に改めたという、参考人の皆さんからもその御発言がありました。大変この意義は、私は極めて大きいものと考えています。この信託法案の趣旨説明によりますと、改正の要点は大きく二つに分けられると思います。第一のポイントが受託者の義務、受益者の権利等に関する規定の整備であると思います。
そこで、まず信託法案において、この受託者の義務の内容が合理化されたことの意義について、これは中田参考人にお尋ねをしたいと思います。
○参考人(中田裕康君) 受託者の義務につきましては、従来から抽象的、一般的な規律、理念ということがあったわけでございます。しかしながら、そうしますと、そのどの範囲で義務があるのか、あるいはないのかということが明確ではない、また義務に違反した場合についても様々な議論があり得るわけです。その点を今回の信託法案は正面からきっちりと法律で規定したと。しかも、単にその理念を掲げるだけではなく、その理念に裏付けられた具体的な要件、効果を整備したということでございます。そのような意義があると考えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 ありがとうございました。
この受託者の義務の内容が改正されたことは、信託の実務への影響も少なくないと思っています。受託者の義務が合理化されたことによって、この信託実務にはどのような影響があって、信託銀行としてこの受託者の義務の改正についてどのような評価をしているのか。これは信託協会の池田参考人にお尋ねをしたいと思います。
○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
私ども信託銀行につきましては、信託法に加えまして、信託業法や兼営法の規律に従って実務を行っていく必要がございます。本改正におきましても、信託業法や兼営法におきましては、原則として受託者の義務を強行規定とするという、これまでの枠組みが維持されております。一方で、現代社会に適合するように合理化を図り、受託者の義務に関する規律を明確化するという信託法の現代化の趣旨を踏まえまして、実務上、不都合の生じている部分について、受益者保護に問題のない範囲で個別に見直される方向であると理解しております。
信託法における合理化及び規律の明確化と、信託業法における実務の円滑化の要請への対応により、お客様の個々のニーズに応じた、よりきめ細かい信託サービスを提供できるようになると考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 是非、利用者にきめ細かいサービスの提供ということをよろしくお願いをしたいと思っています。
この過度に厳格な受託者の義務を合理化することについては賛成でありますが、これによって受益者が不利益を被ることがないように手当てをしなければならないと思います。

この点については、違法行為の差止め請求の制度の創設などによって受益者の権利行使の実効性、機動性を高めているということでありますが、この受益者の権利行使について定める信託法案の規律は、受益者保護の観点から十分なものと言えるのかどうかについて、これは弁護士の立場からどのように考えているのか、深山参考人にお尋ねをしたいと思います。
○参考人(深山雅也君) ただいまお尋ねの点ですが、今御質問の中にもありましたように、今回、受益者保護の観点から差止め請求権、受託者が任務に反した行為をしようとしているときに、事前に差止めをするという制度が導入されました。従来より、そういった行為が行われた際に、原状回復ですとか後日取り消すというようなこと、あるいは損害をてん補させるといった事後的な救済措置は既にあったわけですが、これを事前にチェックできる仕組みを作ったということは非常に大きな意義があると考えております。

それから、これも従来から検査役を裁判所に選任してもらうという制度がありましたが、これについても受益者の権利であるということを明文化して、細かい規定を設けております。検査の結果が十分に受益者に周知されるような手当てをしているところであります。

 

 

 

 

 

 

 

こういったことは、今後受益者が多数発生をする、あるいは様々なタイプの受益者が発生するということを考えますと、非常に重要なことであると考えております。すなわち、受益者を一つの投資家というふうに見たときに投資家の保護ということが重要になりますが、そうした観点からも、情報開示が図られるような仕組みというのが非常に重要であり、そういうことを踏まえて賛成をしているところでございます。

○岡田広君 ありがとうございました。
それでは、この信託法案の第二のポイントであります信託制度について多様な信託の利用形態に対応するための新たな諸制度を導入するということであります。
具体的には、信託法案では自己信託あるいは受託者の定めのない信託などを創設していますが、この信託法案が新しい信託の類型を創設していることの意義について、これは中田参考人と深山参考人にお尋ねしたいと思いますが、新しい類型の信託の民事的な活用の可能性について、信託の受託者としての役割を期待されていることにつきましても、これは深山参考人にお尋ねしたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

○委員長(山下栄一君) それでは、中田、深山、それぞれの参考人から順次御発言願いたいと思います。中田参考人。
○参考人(中田裕康君) 新しい信託の諸類型を置いているというのは、正にそれぞれの需要にこたえるものとして考えられております。
具体的な利用方法については、後ほど他の参考人からお話があるかと存じますけれども、一般的な規律ですと明確ではない、あるいはそれぞれ固有の要請があるという信託類型について規律を置いている、それによってより利用可能性が高まるということでございます。もちろん、それぞれの類型においてはそれぞれ固有の問題があるわけでございますので、それぞれの固有の問題についてもきっちりと詰めた上で制度をつくっている、そういうものだと理解しております。
以上です。
○参考人(深山雅也君) 様々な信託類型は、正に様々なニーズに対応して提案されているものと存じますが、例えば最も議論が多いと承知しております自己信託について申し上げますと、一方では、債権流動化等の商事信託の場面におきましても自己信託の有用性が盛んに説かれております。もちろん、それに対する様々な懸念というものも併せて議論されておりますが、商事信託の場面につきましては、実体法としての信託法のみならず信託業法その他の取締り法規によって濫用の懸念というものが防止される措置もありますし、先ほど申し上げました信託法の中にもそうした手当てがなされております。

 

 

 

 

 

 

 

そこで、民事信託においては、ではその活用の可能性があるのかというお尋ねですが、これもあると考えております。例えば、親族間において自分の財産を配偶者や子供に与える方法としてあらかじめその財産を確保しておきたいと考えた者が、通常の信託類型であれば信頼できる第三者にそれをゆだねるということになるわけですが、そういったファミリー信託のようなものをイメージしていただきますと、もちろんふさわしい第三者がいればその方に託せばいいわけですが、ある意味で最もその受益者となるべき者の細かい事情や状況が分かっているのは委託者自身であります。そういう意味では、最もふさわしい受託者が委託者であるということは少なからず想定されるところであります。元々の信託というその制度が英米においてそういうところから発生したということもありますが、これは何も昔だけの話ではなくて、今後、超高齢社会と言われるような社会を迎えるに当たって極めて重要な点で、活用の場面があるだろうというふうに考えております。

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 ありがとうございました。
制度をつくる場合にはメリットとデメリットとあるわけですけれども、今回の信託法案において新たに設けられた制度についても、しっかりとした弊害防止措置が講じられていなければならないと考えています。衆議院の法務委員会でも、この審議では、自己信託や受益者の定めのない信託について弊害のおそれが問題となったものと聞いております。
この弊害防止措置が講じられているのかについて、この点につきまして中田参考人にお尋ねをしたいと思っています。
○参考人(中田裕康君) まず、自己信託でございますけれども、これは今御指摘のありました具体的な弊害をどうやって防止するのかという問題と、それからさらに、理論的に考えてこういうことがあり得るんだろうかという問題と、両方あるかと存じます。

 

 

 

 

 

ここではその具体的な弊害について防止策を申し上げますと、例えば公正証書等の書面が必要であるということが一つでありますし、それから信託の効力の発生時期が意思表示のときではなくて公正証書などの書面を作成したときというふうに明確にしたということがあります。それから、受益者の定めのない信託は自己信託によっては設定できないとしたということもあります。それから、先ほども御発言がありましたが、委託者の債権者は詐害信託取消しの手続を経ないでいきなり信託財産に対して強制執行をしていくというようになっております。さらに、一般的なことといたしまして、公益確保の観点から、必要があるときは裁判所が信託の終了を命じることができると、こういうように何層もの手当てを講じているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

続きまして、目的信託でございますけれども、これも理論的な問題点とそれから具体的な弊害防止策ということを併せて考えなければいけないわけでございますけれども、例えば、目的信託によって財産が固定化しないかとか、債権者を害しないかというようなことがあるかと思います。そこで、詐害信託の取消しの制度、あるいは先ほども申しました公益確保のための信託終了命令、さらに委託者による監督、それから二十年という期間制限、以上のような措置によりまして弊害を防止しているというものだと思います。
○岡田広君 ありがとうございます。
時間が来ましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

○簗瀬進君 民主党の簗瀬進でございます。
お三人の参考人、本当に今日は有益な御指摘、ありがとうございました。
昨年、この法務委員会でも会社法の議論をさせていただいたんですけれども、会社法、そして今回の信託法と、一連の流れが伝統的な大陸法系の国であった日本に英米法的な考えを強く、またかなりの速いスピードで導入をしてくると、こういうふうな流れになってくるのかなという、そういう印象を私持っているんですけれども。
そういう観点で、例えば、我々の頭はやっぱり所有権概念ということが前提になって物を考えられるように私も大学で学んでまいりましたけれども、例えば今回の自己信託等を見ると、所有あるいは支配の離脱等の考え方がかなり柔軟に、また外から見ると分かりづらくなってくると、まあそこに妙味もあるというお考えもあるだろうと思うんですけれども、これは注意しないとかなりの混乱が出るなということで、お三方のそれぞれのお立場の中でお考えを聞かせていただければと思うんですけれども。

 

 

 

 

 

 

御案内のとおり、今回の信託法の改正、三条で自己信託が認められるようになった、特に信託宣言の場合でございますね。それで、自己信託という形になると、委託者と受託者がイコールの形になる。それから、八条では地位の兼併というようなものが認められるようになりまして、受託者と今度は受益者が一体でもいいという形になる。そして、長い日本の伝統の中で、委託者は同時に受益者であることの方が多いと。言うならば自益信託、自らを受益者とする信託、そういう形が多いと。ということになりますと、自己信託とそれから受託者、受益者の地位の兼併が行われ、そしてそれが自益信託であるという形になりますと、一人の当事者の中で三面関係が突然出てくる形になるわけでございます。非常にこの辺が所有権概念で物を考えていると分かりづらい部分でございまして、そこから次に出てくる問題が、税制上の問題あるいは会計基準の問題、そして様々な受益の状況をどういうふうに社会的に開示をしていくのかというそういう開示の問題、こういうようなものが全部そこから私は出てくるような感じがいたします。
そういう意味で、先ほど出した正に委託者イコール受託者イコール受益者と、三者が一体になったようなそういう関係の中で、支配の離脱というようなものがどういうふうな時点で生じてどういうふうな時点からいわゆる課税対象の事態になるのかというふうなことについてのお考え方を三人の参考人の方から聞かせていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

○委員長(山下栄一君) それでは、順次お願いします。
○参考人(中田裕康君) 英米法と大陸法との調和ができるかどうかということは、これは信託についてかねてから日本のみならず外国でも議論されてきたことかと存じます。何とか信託という制度を日本法の中にうまく位置付けて、それによって活用するということを目指しているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。
ただ、その上で、しかしそうすると所有権は一体どうなるのだろうかということが当然重要な問題として浮かび上がってくるわけでございます。先ほど自己信託について理論的な問題もあり得るということを申し上げたのは、正に今御指摘の点でございます。

 

 

 

 

 

 

と申しますのは、人の所有権あるいは人がそれぞれ持っている財産というのはその人固有の一個のものではないだろうか、それを勝手に分割できるんだろうかというような疑問というのが自然に出てくるわけでございます。そういたしますと、突き詰めて考えると、信託という制度自体が、実は人は一体としての一つの財産を持つ、あるいは一個の所有権を持っているというのと少しずれがある、それを踏まえた上でどうやって制度をつくっていくかということだと思います。

 
番人
「不動産の共有はいっぱいあるしね。」
すみれ
「所有権が少し薄まったらいいな。」

 

 

 

 

 

 

その根底には、受託者に財産を預けるということをどう評価するか、これが後で出てまいります地位の兼併とも関係することでございますけれども、受託者に対する信頼というものを狭く委託者が受託者に対して持っている信頼というように限定しますと、それが兼ねてしまうということはおかしいのではないかという疑問が出てくるかもしれませんが、さらにその受託者に対する信頼というのをより突き詰めて考えますと、委託者の信頼だけではなくて、受益者の信頼、あるいは受益者がいない場合も含めて考えますと、信託という制度が受託者に対して求めている機能あるいはそれを実現するため、つまり信託目的に従って適切に事務処理をするということを制度的に期待している、そういう信頼を保護する制度だというふうに考えますと、これはあり得るものではないかというふうに考えます。

 
すみれ
「制度への信頼ってことかな。人か。」

 

 

 

 

しかし、その上で、自己信託ということが倒産隔離との関係で果たして自分の財産を切り分けていいのだろうかというようなもう一つのレベルの問題が出てくるかと思いますけれども、それについては、先ほど申し上げました様々な弊害防止策によってカバーされているのではないかと存じます。

それから、三者が全部地位を兼併してしまうとおかしいのではないかという、これも直観的に考えると何か変だなという感じがするかもしれませんが、しかしながら、だからじゃそれを無効にしてしまうという選択肢もあるとは思うんですけれども、むしろそれを暫定的な状態というように理解いたしまして、それで一定の期間内にその状態を解消するようにするというようにした方が制度としては使いやすいのではないかというふうに思います。

 

 

 

 

 

 

 

なお、税制、会計につきましては、もちろん重要な点だと思いますが、私専門ではございませんけれども、もちろんその専門の方々が慎重に検討されて明確化されるものと考えております。
○参考人(深山雅也君) 信託における委託者、受託者、受益者、三者が場合によっては一体になるということについての御懸念は、言ってみれば信託にかかわる関係者、とりわけ委託者の債権者であるとか受託者の債権者であるとか、そういった人たちから見て、実は自分の権利を実現する際に引き当てとなるべき財産であると思っていたら実はそれがいつの間にか違っていたというような事態になると非常に問題であるというところが最もその三者が一体になることの問題点が浮き彫りになる場面かと存じます。

 

 

 

 

その点につきましては、例えば委託者の債権者の立場を考えますと、先ほども少し意見を述べましたように、詐害信託という評価が加えられる場合には直接強制執行ができると、詐害行為取消し訴訟を経ずにいきなり強制執行ができるという手当てがなされております。そういう形で、正に債権者を害する形での自己信託というものはそこで相当程度ブレーキが掛かる仕組みになっております。
もちろん、より端的に財産隠匿というようなものであれば、詐害信託というまでもなく、言わば脱法信託として、そもそも信託としては無効であるという評価もあるでしょうし、あるいは裁判所の判断で公益的な見地からそれが否定されるという場面ももちろんあると思いますが、そこまで露骨なものでなくても、詐害性が認定できればそこで防御できるということがあろうかと思います。

また、受託者の債権者にとりましても、基本的にはこういう受託者の固有財産と信託財産というのは観念的に峻別をされて、あるいは物理的にも可能な限り分別をするという仕組みになっておりますが、仮に、そういう中で、実は例えば信託財産に属すると思っていたものがそうではなかったとか、その逆であるとかといった場面において、相殺の期待を保護するという措置もなされております。
そういった手当てを考えますと、相当程度そういった三者が一体になることに伴う混乱といいますか、は避けられるのではないかと。より根本的に言えば、公示という観点において、登録のできる財産については信託の登記がなされます。

 

 

 

 

 

 

 

それを見ればある程度内容が分かるということですし、あるいは受託者には様々な報告義務もありますので、受託をしているということについてある程度情報開示が図られる仕組みにもなっておりますので、そういったことも通じて混乱というものは避けられると。さらにもう一言言えば、自己信託のようなややイレギュラーな信託というのは、ある意味では目立ってしまうと思うんですね。ある意味では、そういう疑いの目で見られてしまう要素が当然あるわけです。ですから、そういう意味では、そういったことが事実上、事前のプレッシャーになって違法な信託行為がなされるということが牽制されるのではないかというふうに考える次第です。

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
自己信託につきましては、私どものような業者におきましても全く新しい領域でありまして、実務への活用方法を中心に今後研究が進むのではないかと考えております。

現時点では、流動化等の分野で債権回収を行うサービサー会社における回収資金の分別管理や、あるいは保険代理店の預かり保険料の分別管理といった利用ニーズがあると聞いておりまして、有用な使い道もあるものと思います。ただし、自己信託は使われ方次第によりましては悪用される懸念があるという指摘もございますので、信託の健全性を確保するため、規律の明確化が図られることが望ましいと考えております。なお、衆議院の附帯決議の三におきまして、会計上及び税務上の取扱いその他の事項に関する検討、周知その他の所要の措置を講ずることとされておりまして、それらについて適切に措置がなされるものと理解しております。

 

 

 

 

 

○簗瀬進君 お答えが多少長めだったものですから、時間なくなってしまいまして。
それじゃ、中田さんと深山さんにそれぞれ一問ずつ最後に聞かせていただければと思うんですが、いわゆる福祉信託の場合に、高齢者や障害者あるいは老後の家族のため等、新しい福祉信託の類型を更につくって進めていかなければならないというお話だったと思うんですけれども、そのときの担い手として、中田参考人が、弁護士あるいは自治体というふうな、そういう二つを挙げたと思うんです。ということで、弁護士が担い手になる場合の、現行法上どこまでできるのか、あるいはここをこう直すべきだと思っているお考えがあるならば、深山参考人にお答えをしていただければと。それから、自治体の方で実情がどうなっているのか。やはり同じように現行法上の限界性とか問題点というようなものがあれば、中田参考人の方で御指摘をいただきたいなと思います。以上です。

 

 

 

 

 

○委員長(山下栄一君) 時間が迫っておりますので、答弁は簡潔に願います。
○参考人(中田裕康君) 自治体の方につきましては、現在の信託法の下で高齢者の財産管理について幾つかの工夫をしているわけでございますけれども、何分規律が不明確なところがあって不安定さがあると、それを今回の信託法によって、より使い勝手が良くなるというふうに期待しております。

 

 

 
○参考人(深山雅也君) 弁護士が受託者としての信託の担い手になるということにつきましては、最もふさわしい存在の一つとして弁護士が考えられてよろしいのではないかと考えておりますが、その理由は、既に実務において福祉型信託の領域で弁護士は活動しているということもありますが、何よりも弁護士が弁護士自身の下に、弁護士倫理あるいは懲戒制度といった制度の下で、自律的に規律をされて社会からの信頼をいただいているということが一つ根拠として挙げられるかと思います。

また、財産管理といいましても様々な法律関係、権利関係がそこには関与してまいりますので、そうした法律家としての判断というものも適正な管理処分の上では必要不可欠ですので、そのような観点からも弁護士が担い手になるということが求められているものと存じます。この点については業法との関係が多少議論の余地があろうかと思って、先ほど業法上の適用除外ということについてのお願いをした次第でありますが、この点についても是非併せて御検討いただければと思います。
○簗瀬進君 終わります。

 

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 本日は、三名の参考人の皆様、大変御多忙の中おいでいただき、貴重な御意見を賜りまして、大変ありがとうございます。公明党の浜四津でございます。
今回の改正で、信託をこれまでの特殊な法律関係から一般的な法律関係に大きく変えることになると言われております。信託へのニーズが高まっていると、そのニーズに対しまして現行法では十分に対応できないということが背景にあるかと思いますが、今回の改正によりまして多くの国民の方々の利用の可能性が広がっていくことが考えられます。中でも、特に高齢者や障害者の方々の財産管理を図るための制度としても着目されているところでございます。
そこで、私は、福祉型信託の活用という視点から、お三方に御意見を賜りたいと思います。

まず初めに、池田参考人にお伺いいたします。
十一月三十日の本委員会の質疑におきまして、福祉型信託として信託銀行は特約付き金銭信託や特別障害者扶養信託を受託しているという旨の答弁がございました。今後、高齢者あるいは障害者福祉の観点から、これらの信託が健全に、有効に利用されることが期待されるところでございます。
そこで、特約付き金銭信託、また特別障害者扶養信託というものは現在どの程度活用されて、利用されているのか、また福祉型信託に対する信託銀行の今後の取組について伺いたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
まず、信託銀行が昭和五十年代より取り組んできております特別障害者に対する贈与税の非課税に基づく制度であります特定贈与信託につきましては、平成十八年九月末の受託残高は信託協会加盟の社員会社全体で千二百十三件、二百七十二億円になっております。また、お客様の多様なニーズに合わせた特約を設定することで、生前贈与やあるいは死後の財産分与などにつきオーダーメードの商品設計が可能となる特約付き金銭信託につきましては、取り扱う信託銀行によって若干商品性が異なりますが、平成十八年九月末の受託残高は信託協会加盟の社員会社全体で四百九十九件、百九十億円となっております。

信託業界におきましては、従来から取り組んできております特定贈与信託だけでなく、お客様のニーズ等を踏まえまして各社とも福祉型の信託について創意工夫しておられるものと思われます。個別会社といたしましても、新しい信託法やお客様のニーズ等を踏まえまして、研究を重ね、引き続き前向きに検討していきたいと、かように思っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 ありがとうございます。
次に、中田参考人にお伺いいたします。
福祉型信託を社会に根付かせるためには、信託法の改正だけにとどまらず、関連法規の見直しあるいは社会全体の意識を変えることが必要であると思われます。衆議院の法務委員会でも、福祉型の信託について幅広い観点から検討を行うことという附帯決議がなされたところでございます。
そこで一点目に、福祉型信託の発展を促す観点から、信託法以外の課題にどのようなものがあるか、御指摘をいただければと思います。
二点目に、英米の国あるいはオーストラリア、ニュージーランドといった国々では信託が大変活用されていると伺っておりますけれども、これらの国々では福祉型信託が十分活用されてきたのか、濫用やあるいは弊害というのがなかったのか、何か問題起きているというようなことがないのか、これから我が国の信託に参考になる点があるのかどうか、この二点についてお伺いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(中田裕康君) まず、福祉型信託を促すために信託法以外の制度として何があるのか、そこでの問題点ということでございますが、もちろん成年後見制度があるわけでございます。その成年後見制度があるから、じゃ福祉型信託が要らないかというと、そうではないわけでして、もちろんその両方がそれぞれ、まあ車の二輪と申しますか、あるいはほかの制度も含めまして、全体として福祉を充実させていくということになろうかと思います。

 

 

 

 

すみれ
「車の2輪か。介護保険と成年後見も車の2輪って最初は言われてたね。3輪、4輪かな。」

 

 

 

 

 

 

それから、外国の国々ではどうかということでございます。
例えば、アメリカで二〇〇〇年に統一信託法典というのがございまして、それは単に商事信託だけではなくて、民事信託についても非常に配慮されたものでございます。当然、信託というと柔軟性があるだけに、逆に濫用されてしまわないか、本来の目的とは違って食い物にされないかというような懸念が当然あるわけでございますが、そこを手当てしていると、そういったものも参考にしながら今回の法案ができていると理解しております。
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
次に、深山参考人にお伺いいたします。
弁護士が福祉型信託の受託者となることについてどうお考えか。殊に弁護士が株式会社を設立して福祉型信託の受託者となるという道もあるという指摘もありますけれども、それについてどうお考えか、お伺いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) 今お尋ねの点ですが、もちろん弁護士も株式会社を設立をし、その会社を通じて活動する自由というものもあろうかと存じます。
信託に関しましては、これまでは株式会社でなければ業としての免許が下りなかったという事情もあり、既にそういった会社が設立されたという話も聞き及んでいますが、では株式会社をつくらないと弁護士が関与できないのかというと、決してそういうことではなかろうと考えております。
もちろん、福祉型信託の担い手として弁護士が活動するのは正にこれからより盛んになる、盛んになるというよりは、より求められてくるという意味では正にこれからが本番というふうには考えておりますが、既に財産管理センターといった弁護士会主導で高齢者あるいは障害者の財産管理を担っていく、そのお手伝いをする役割を弁護士が会を挙げて取り組んでおります。
そこで、今回の信託法改正ということになりましたので、これを機に更に弁護士が受託者として正面に立って高齢者の財産管理等で中心的な役割を担っていくということが正に社会のニーズではないかというふうに考えておる次第であります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 次に、中田参考人にお伺いいたします。
福祉型信託と関係するものとして公益信託がございます。公益信託については改正が今検討されている状況のようですけれども、今後どのような改正が行われるべきとお考えか、お伺いいたします。
○参考人(中田裕康君) 公益信託につきましては、今御指摘のように、百六十四国会で一般社団・財団法人法とそれから公益認定法ができたわけで、更にそれをどのようにして具体化して実施していくかということを経過期間の間に用意しているということだと思います。それを受けまして、公益信託がどのようになされるべきかということが現在の状況かと存じます。

公益法人の方で問題となりました主務官庁制に伴う弊害というのをなくして、それで民間の考え方も反映するような公益認定の機関をつくっていくということでございますが、それは今後の公益信託においてもやはり同じ考え方が妥当するのではないかと存じます。つまり、主務官庁によって監督するというのではなくて、より多様な民間の観点を入れて公益信託を活用していくと。
もちろん、その公益信託の名の下に弊害があってはいけませんから、それに対する規律ということは当然必要でございますけれども、基本的には公益法人の方向と同じ方向が公益信託にも妥当するのではないかと。その上で、公益法人と公益信託との、何と申しますか、その両方が相まってより良い公益制度を実現するというふうになればいいと期待しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 ありがとうございます。
次に、重ねてで申し訳ありません、中田参考人と深山参考人にお伺いさせていただきます。
国民の皆様の多くのニーズにこたえるものとして今回新たな信託が創設されているわけでございますけれども、その一つの目的信託として、例えば災害ボランティアとか、あるいは地域の高齢者介護、あるいは子育て支援、防犯対策、町内会の交流などに活用したいというお声がたくさんあると伺っております。また、企業の側からは目的信託を従業員の福利厚生やあるいは功労者への奨励金支給といった形で利用したいと、こういう要望もあると伺っております。
そのほかに、後継ぎ遺贈型信託、受益者連続型信託と、こういうものも今回創設されることとなっておりまして、例えば委託者は生存中は自らが受益者となって、自らの死亡後は例えば受益者を妻に、妻が死亡後は子供にといった形で財産を承継させられると、こういう信託が創設されているわけでございますけれども、こうした信託につきましては、今後問題なく活用されることとなるのか。
多くの国民の、地域の国民の方々もそうですし、企業の方々にもそういうニーズがあるということですので、それが問題なく活用されることになるのか、あるいは何らかの危惧というものがあるのかどうかについて御意見を承れればと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(中田裕康君) 目的信託につきましては、今御指摘のとおり、純粋に公益ということは言えないかもしれない、狭い意味の公益ではないかもしれないけれども、より広い意味では世の中の役に立つというようなものを実現するために目的信託が使われるということは大いに期待されることかと存じます。

その場合に、それでは弊害がないのかということでございますけれども、これは先ほど目的信託についての弊害防止策ということを御紹介申し上げましたようなことで対応できるのではないかと考えております。

次に、後継ぎ遺贈型信託につきましても御指摘のとおりでございまして、単に家業の維持というだけではなくて、その家族の中にハンディキャップを持っている人がいるという場合にこれが活用されるということになると思います。

ただ、この場合についても、当然弊害をあらかじめ考えた上で対処する必要があるわけでございまして、例えば法定相続制度との関係をどう考えるのか。これについては遺留分制度に服するということを前提として考えていると。そのほか幾つかの制約をこの法案は全体として考えておりますので、懸念についても対応できるのではないかというふうに考えております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) 目的信託の場合ですと、正にその信託目的というものが極めて重要な意味を持ってくると存じます。したがって、例えば信託契約において目的信託が設定される場合、その契約書にどこまでどのように目的を書き込むかということが極めて重要になると思います。

 

 

 

 

 

 

もっとも、新しい制度ですので、今まで実務的な集積があるという状態ではもちろんございませんので、正にこれからその実務の中で目的信託における目的の定め方であるとか、その他委託者にどの程度その権利なり権限を与えるかといったことが積み重ねられてきて、その制度の運用を通じて具体化していくんだろうというふうに考えております。

また、受益者連続の点につきましても、これも同様でございまして、当然、相続制度との関係、それとのアンバランスにならないようにという配慮が必要になりますが、ではどのような受益者連続の信託であれば適法なのかということも今後の実務の積み重ねで出てくる。当然、民法の相続法を意識して解釈論が積み重ねられていくというふうに理解しておりますので、正に実務での集積が重要というふうに考えております。

 
すみれ
「相続法との関係も、実務の積み重ねで解釈を変えられるってことか。」

 
○浜四津敏子君 ありがとうございました。終わります。

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。今日は参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
私からは、いわゆる事業信託という点が一つの論点になっておりますので、ここについてお伺いをしたいと思うんですけれども、産業界から、あるいは経済産業省の類型化でも、その典型として高収益を上げている部門を切り分けていくというやり方、あるいはハイリスク分野への進出、こういうところに信託が期待をされているというふうなことが言われるわけですけれども、こうなりますと、従来の信託、先ほども信託協会の方からありましたが、資産の管理運用という、こういうこれまでの取組からすると随分違ってくるんじゃないかなと思うわけですね。

そこで、それぞれの参考人のお立場から、事業を柔軟に制度設計をしていく、これを信託契約の中でしていくということになるのだろうと思うんですが、現行法と具体的にどう変わるだろうか。その中で、信託される事業のいわゆるガバナンスですね、この点については会社法を始めとした規定に今なっているわけですけれども、その信託される事業のガバナンスというのはどういうふうになるのだろうか、この辺りについて教えていただきたいと思うんですが、中田参考人からお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

○参考人(中田裕康君) 今回の信託法改正によりまして、債務を当初から信託会社とすることができるということは、正に事業信託が可能であるということを示しているものだと存じます。

そうした場合に、事業信託が実際にどのように使われるのかということを考えてみますと、やはり財産と結び付くものでないとなかなか使いにくいのではないかと、信託である以上は。ですから、土地信託とか知的財産権の信託のような、一定の財産が中心だけれども事業性のあるものについて使われるのではないかと思います。
そういたしますと、当然、例えば土地についての公示でありますとかということが通常の信託における規律に重なって、それぞれの目的物に関する規律というのが働いてくるわけでございます。それからさらに、事業ということになりますと、それに伴う様々な法律による規律というのがかぶさってくるわけでございますので、その事業信託においても重層的にと申しますか、規律が働くことになると理解しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) 事業信託につきましては、やはりこれも今後利用が盛んになるだろうと見込まれる類型の一つかと存じますが、御指摘のように、従来、同じようなことをしようとすると、例えば会社の事業の一部を他者あるいは子会社に譲渡する、あるいは会社分割をする、そういった言わば会社法上の制度を利用して行うということが考えられたわけです。それと比較しますと、信託という制度を利用すると、手続的にもコスト的にも非常に簡易にそれが実現できるという利点があろうかと思います。

今回の信託法を見ますと、様々なところで、先般成立しました会社法を言わば模範にしてといいますか、に倣って制度がつくられている部分がございます。そういう意味では、事業の信託ということに関しては会社法の制度や会社法の解釈というものがやはりいろんな形で影響してくるだろうと。そういう意味では、会社法上の制度を使った場合と信託法を使った場合とがバランスよく解釈されるということが今後実務においては定着していくんではないかというふうに考えておる次第です。

 

 
○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
事業の信託につきましては、現在のところ具体的なお客様のニーズをお聞きしておりませんし、実務を踏まえた具体的な研究が今後進められるものと認識しております。私どもといたしましても、お客様のニーズ等に応じまして研究してまいりたいと考えております。

御指摘のような点につきましても、具体的な研究、検討に当たりまして、必要に応じ弁護士などの方々と御相談をしていくということになろうかと思います。

○仁比聡平君 深山参考人に確認なんですけれども、先ほどのお話でいきますと、つまり信託される事業の規律については、会社法を始めとした、他法といいますか、が直接規律をするのではなくて、信託契約によって柔軟に設計されることになるんだけれども、その契約の中に会社法やあるいはその解釈がバランスよく入ってくることが期待されると、そういう御趣旨なんですかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) おっしゃるとおりでございます。
これもその事業の中身、あるいは信託される財産の中身によっていろんなバリエーションが多分これから工夫されるんだろうと思いますんで、もちろんそれによって一律ではないと思うんですが、一つの解釈の指針として会社法の解釈、会社法の解釈が更に従来の商法の解釈というものが下積みになっておりますので、そういうものが反映していくだろうというふうに理解しております。

○仁比聡平君 中田参考人にその点、御見解をお伺いをしたいかなと思うんですが、信託契約の柔軟さというのは、これは先ほど妙味という言葉もありましたけれども、そこが一つの今回の改正のポイントであろうかと思うし、これまで期待もされてきたかと思うわけです。

 

 
民事信託やこれまでの商事信託の中で実務上求められてきた改正という面があることは私も重々承知をしておるわけですけれども、それが一つの事業を信託するということになったときに、これまでに経験のないところに踏み込むことになると。確かに、会社法を始めとした他法の規律がこの信託契約の中に織り込まれればという期待は私も持つわけですけれども、ここについて改正信託法はどういう考え方に立つということになるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(中田裕康君) まず、会社法の規律ということでございますけれども、今般の会社法改正に伴いまして、会社法自体が極めて柔軟な制度になったというふうに認識しております。
そういたしますと、柔軟性という点で信託と会社法が言わば競っているというようなことになってまいりまして、逆に事業信託の方が使われることがそれほどないのではないかと思うわけです。つまり、会社法が柔軟になった結果、一般的な規律は会社法の方がむしろ親しんでいますからそちらに流れるんじゃないか。
ですから、事業信託として使われるのは、先ほど申し上げましたとおり、財産が中心となっているものになるのではないかというのが私の予想でございます。

 
すみれ
「たしかに。」

 
その上で、会社法にある規律が直接適用されるということではないでしょうけれども、それを例えば潜脱するというような場合に、信託法の解釈のレベルで、一般的なレベルで影響してくるということはあると思いますが、信託法は信託法としてその規律を十分用意しているというふうに理解しております。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
実際の事業信託の場合の活動をどう規律するかという意味で監督という面が重要なんだろうという点が先ほど深山参考人からも御指摘があったわけですが、資産の管理運用について、例えば善管注意義務に違反してはいないかというような観点で受託会社をこれまで規制をするという観点と、受託会社が事業を行っているということについて監督をするという観点とはまたちょっと違ってくるのかなという感じもするわけです。
そこで、深山参考人と、それからこれまでもちろん御経験のございます池田参考人に、どのような基準や観点での業法での取締りですね、これが期待されるか、望まれるかという点でもしお考えがあればお聞かせいただきたいと思うんですが、深山参考人から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) 今の御質問の点ですが、会社法と信託法といいますか、両制度を比較しますと、会社における株主は信託における受益者に近い存在、会社を実際に執行する取締役は信託における受託者に近い存在というふうに言えようかと思います。
そういう意味では、会社において株主の利益を追求して取締役が事業活動を行うという仕組みと、受託者が受益者のために事業信託を行う場面というのはかなり似ている面があると。そういう意味で、受託者の責任を考える、あるいは受益者の利益を考える上で、株主の保護であるとか取締役の責任というものが相当程度解釈論においても参考になるだろうと、また法律の仕組みも似通った規律が入っていると、こういうことを先ほども申し上げた次第です。

おっしゃるように、単なる管理と事業というのは相当程度違った面がありますし、そうなると、当然受託者の責任もより単なる管理よりは重くなるということは当然のことと思います。そういう意味で、実質的には受託者の責任というものも、信託の内容に応じて重さに解釈上違いが出てくるということは当然あってしかるべきだろうというふうに考えております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
先ほどお答え申し上げましたが、現在のところ具体的なお客様のニーズをお聞きしておらず、研究が進んでおりません。取組の可能性について申し上げることが現在できる段階にはございません。同様に、監督につきましても今後検討されるものというふうに理解しております。

○仁比聡平君 ありがとうございます。
最後に、二分ほどあるかと思いますが、深山参考人に福祉型信託と弁護士の活動についてちょっとお伺いをしたいと思うんですが、各地で財産管理センターや、あるいは成年後見センターという名称のところもあるかと思いますけれども、高齢者や障害がある方々、その御家族の相談、財産管理を中心にした相談に弁護士がずっと乗ってこられているという、その取組を私も承知をしております。
その中で、弁護士ならではのニーズ、つまり信託銀行やほかの受託会社といいますか、というところではなくて、弁護士ならではのこういうニーズがそういった福祉型信託の中にある、あるいは今後そのニーズがどのような形になっていきそうかという、その辺りの御認識がございましたらお伺いをしたいということと、それから信託業法の規定の改正について日弁連として案を出されているというふうに伺っておりますけれども、先ほど来ちょっと触れてはいただいているんですが、明瞭にどこをどう変えるべきだという点について伺いたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) まず、弁護士が福祉型信託にかかわる際、弁護士ならではのニーズという点でございますが、まず一つは、弁護士とその依頼者というのは、信託にかかわらず、高度の信頼関係が成り立って初めて仕事ができるという関係でございます。そういう意味では、委託者との信頼関係に基づいてかなりプライバシーにも及ぶ情報も含めて託せる対象といいますと、もちろん弁護士だけとは申しませんが、その有力な候補として弁護士が期待されているのではないかというふうに自負をしております。

と同時に、財産を守るという観点からは、やはり不幸にして何らかのトラブルや第三者からの権利侵害があったときに的確にその受益者のために守ってくれる存在という意味で弁護士に期待されている点もあろうかと思います。

 

 

 

 

それと、そういうことも含めまして、弁護士が受託者として担い手になることについて是非明文で認めていただきたいと。少なくとも弁護士会としては解釈論上は現在でも特段問題はないというふうには理解しておりますが、信託業法二条で信託業を定めている条文が見直されるのであれば、そこに弁護士業務を除くということを明記していただきたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
今日は、三人の先生方、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

お話を聞いて、この信託法改正の展望が相当開けてきたな、とりわけ福祉型の信託あるいは目的信託、前途に非常にもう明るいものを感じますし、弊害の防止措置というのが一つの課題なんですけれども、それについてもそれぞれ適切な御指摘をいただきまして、私、割と信託法の改正について懐疑的なところがあったわけでございますけれども、それが解消されていく、そういう思い、かなりひとしおでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いろいろお聞きしたいことは結構あったんですけれども、一番最後でありますので、もう前に各委員の皆さんが聞かれておりますので、重複は避けたいというふうに思っています。

そこで、今ごろこんなことを聞いてというふうに怒られるかもしれませんけれども、そもそもの一番スタートのことについて池田参考人にちょっとお聞きをしたいというふうに思うんです。

信託業界六百五十兆円という膨大な数字を示されましたけれども、私にとりましては具体的なイメージがさっぱりわかないんですよね。信託というものはとにかく国民にはなじみが非常に薄いと。信託業界というのはどんなことをしているのかなと、分かっている人はほとんどいないんではないかと。そういう中で、今ほど六百何十兆という、そういう話が出てきて非常に戸惑っておるんですけれども、信託業務というのはどんなものなのか、国民とどういう接点を持っているのか、是非分かりやすく改めて説明をいただきたいということと、今度の言わば改正で、その業務のうちのどの辺の部分がこれから大きく伸びていくのか、今までとどこが業界でどういうふうに変わって拡大をしていくのか、その辺を鳥瞰図的に分かりやすく御説明いただけますでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
先生御指摘のように、信託業務、どうも国民の皆様には余りなじみがないということかもしれませんが、ごく簡単に申し上げますと、お客様の財産を預かり、その管理処分を行い、そして管理に伴う計算などの事務を行う業務と言うことができます。

具体的な商品で申し上げますと、例えば企業にお勤めの方の年金をお預かりする年金信託の財産の管理運用や、投資家の方の投資信託の財産である有価証券の管理などは信託銀行が受託者として信託業務を遂行しております。その受託残高は、平成十八年三月末で年金信託が約七十六兆円、そして先ほどの投資信託の管理の部分ですが、これが七十五兆円に達しておりまして、先ほど冒頭申し上げましたように、信託財産の全体では三月末で約六百五十兆円に達しております。

 

 

 

 

 

このように、信託は高度な財産管理運用の機能としまして我が国経済、国民生活の重要なインフラになりつつあるものと私どもは認識しております。
そして、二点目の、ではどのような活用方法が広がるかと、こういう御質問でございますが、今回の信託法改正では、例えば、一つにはシンジケートローンなどにおきまして債権者以外の者に一括して担保を管理させるために信託を活用する、いわゆるセキュリティートラストというものの取組が可能となること。そして、受益証券発行信託の規律の導入によりまして、信託受益権の流通可能性が高まること。また、後継ぎ遺贈型の受益者連続のルールが整備されることなど、個人の財産管理、財産承継の分野におきまして活用方法が広がることなど、様々な活用方法の拡大が見込まれます。
このように、お客様と受託者の双方にとって使い勝手が良くなり利便性が向上することによって、今後いろいろな場面でより一層信託を利用していただけるようになると私どもは考えております。

 

 

 

 

 

 

 

○近藤正道君 今ほど来の参考人の皆さんと委員とのやり取りの中で、私としてはこれから言う懸念は相当程度うせたわけなんですが、あえてせっかく質問として用意をしてきましたので、ちょっと聞きにくい質問で大変恐縮でございますが、もう一度池田参考人にお尋ねをしたいと思いますが。

今回の信託法案の改正、大幅に中身が変わるわけでございますが、信託業界の利益拡大というものがやっぱり相当その背景にあるんではないかと、こういうふうな指摘も一部にあるようでございますが、今ほど申し上げましたけれども、その懸念、かなり私としては解消させてもらっておりますが、あえて質問をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
まず、今般の信託法案のポイントの一つであります受託者の義務の合理化、これは現代社会に適合するように受託者の義務の規律の明確化を図るという趣旨でありまして、受託者の義務を従来以上に緩和するという趣旨ではないものと理解しております。

また、私ども信託銀行は、信託法だけではなく、信託業法及び兼営法の規律と相まって受託者の義務を果たしていくことになります。
また、信託法案では、信託事務を外部の専門家などに委託しやすくなるといった自己執行義務の合理化が図られております。この手当てによりまして、様々な専門家の方々との共同によるより良い信託サービスの提供が図られることになります。

 

 

 

 

 

 

また、新しい類型の信託につきましては民事分野でのニーズがより強いものと理解しておりまして、新たな担い手の参入や、それに伴い競争が激化することになりますが、私ども信託銀行といたしましては、適切な競争によりまして切磋琢磨することで信託の健全な発展につなげていきたいと、このように考えております。

○近藤正道君 中田参考人と深山参考人にお尋ねをしたいと思いますが、事業信託がこの法改正の一つのポイントになっているというふうに思います。その中で、事業信託と労働者の権利義務というものが一つポイントになるんだろうというふうに思うんですけれども、なかなかこの議論は、営業譲渡だとか、あるいは会社の分割のときのような論議にならない。私もいろんな関係者に聞いてみるんですけれども、確かに理論的に、債務の移転というものがあるわけですから何らかの形で問題になるんだろうと思うけれども、しかし具体的なイメージがどうしても出てこないと、皆さんそういうふうにおっしゃるんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この間も衆議院でその観点での質問が多少あったと思うんですけれども、おしなべてこれは営業譲渡あるいは分割の場合と違って問題はないということなんですが、皆さんとしてはどういうふうにこの労働者の権利義務、とりわけ労使で争っている最中にこういうものが行われて、ある意味でだれと交渉していいのか、気が付いたら財産がどこかへ、別のところに行っていたとか、いろんな問題、観念的にあり得ると思うんですけれども、この辺についてはこの実務で深く改正にかかわったお二人はどういうふうに考えておられるのか、お考えをお尋ねしたいというふうに思います。
○参考人(中田裕康君) 会社法自体が柔軟化された結果、会社法を使った場合の規律を免れるために事業信託を用いて、それで労働者の立場を悪くするということは、まあ実際にはそれほどないのではないかなという予想をしております。
仮に、しかし、濫用的かどうかは別にいたしまして、事業信託を用いることによって労働者の権利が害されるかというと、これは今御指摘のございましたように一般的なルールが当然適用されるということになりまして、例えばその条件を変更する際に労働者の同意が必要であるというようなことで担保されるのではないか。さらに、もしも濫用的な使用があった場合には、これは一般法理によって対応できるのではないかというように考えております。

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) 労働者の権利義務についての心配ということで御質問があったかと存じますが、そもそも事業の信託というものは特別な類型、特別な信託として認められたということではなくて、財産、積極的な財産以外に消極的な財産、債務も信託財産に取り込めるという意味で、結果としてその事業が信託されるという状況をつくり出せると、こういうものであります。

そうしますと、その中身というのは基本的には信託財産を委託者から受託者に権利が移転をするということでありまして、実際には事業をそこでしようと思えば、そこで働く人がいなければ財産だけ移してもできませんので労働者の地位の移転というものが必要になってくるとは思いますが、しかしそこでは当然労働者の意思を無視してそういうことができるということではなくて、労働条件の変更にしろ、あるいは転籍にしろ、当然労働者の同意を得てやるということが前提になろうかと思いますので、実際には余り心配がないだろうというふうに考えております。
○近藤正道君 あと二分ぐらいありますので最後の質問でありますが。先ほど中田参考人に質問がありましたけれども、あとのお二人、深山参考人と池田参考人にはなかった問題なんです。つまり、今回の法改正で積み残された問題のうち公益信託についてのこれからの展望のことなんですね。これは先ほど中田参考人に仁比委員が質問をしましたけれども、同じ問題を深山参考人と池田参考人、どういうふうに考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

 

 

 

 

 

○参考人(深山雅也君) 公益信託につきましては、公益法人制度の抜本的な改正を踏まえて、それに平仄を合わせて整備をするということで、一歩立ち後れた形にはなっております。
公益法人の方も、法律はでき上がりましたが、更に具体的なことはこれから、とりわけ公益認定の基準なりといったものについては正にこれからだと思います。そうなりますと、公益法人の方の公益認定の考え方や仕組みが公益信託の方にも同じような形に取り込まれてくるということですので、まずそこの議論が先決であるということと、信託の場合は、目的信託という形で、必ずしも公益信託と認定できないものについて、言わばその目的信託として救う道というものもあろうかと思いますので、そういう意味でも、まずは公益信託のルールが確立したところで、その周辺に位置する目的信託の方も解釈等が定まってくるというふうに理解しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○参考人(池田輝彦君) お答え申し上げます。
公益信託は、篤志家の方の善意に支えられ、これまで公益分野への助成の枠組みとして広く用いられてきておりまして、平成十八年九月末の受託残高は、信託協会加盟の社員会社全体で五百七十九件、六百五十五億円となっております。公益信託につきましては、今後、公益法人制度改革の内容と整合性の取れた制度の見直しが見込まれております。
公益法人制度改革につきましては、法律の施行は平成二十年度中であり、さらに、移行期間は法施行から五年間とされておりますが、政省令等にゆだねられている部分も多く、制度の詳細は現段階では明らかになっておりません。
引き続き、公益信託制度は、公益増進のために貢献できるよう、公益法人制度改革とともに検討を行っていただきたいと考えておりますので、何とぞ御理解を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
○近藤正道君 終わります。
○委員長(山下栄一君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後零時二分散会

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すみれ・ポリー・番人
「お疲れ様でした。今日は職人さん来るかな。」