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2016年加工  第165回国会 法務委員会 第4号
2016年04月20日

2016年加工  第165回国会 法務委員会 第4号

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成十八年十一月三十日(木曜日)
午前十時開会
─────────────
委員の異動
十一月二十八日
辞任         補欠選任
小川 敏夫君     江田 五月君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長         山下 栄一君
理 事
岡田  広君
松村 龍二君
簗瀬  進君
木庭健太郎君
委 員
青木 幹雄君
山東 昭子君
陣内 孝雄君
関谷 勝嗣君
谷川 秀善君
江田 五月君
千葉 景子君
前川 清成君
松岡  徹君
浜四津敏子君
仁比 聡平君
近藤 正道君
国務大臣
法務大臣     長勢 甚遠君
副大臣
法務副大臣    水野 賢一君
大臣政務官
法務大臣政務官  奥野 信亮君
事務局側
常任委員会専門
員        田中 英明君
政府参考人
警察庁生活安全
局長       竹花  豊君
金融庁総務企画
局審議官     畑中龍太郎君
金融庁総務企画
局参事官     山崎 穰一君
金融庁総務企画
局参事官     私市 光生君
法務省民事局長  寺田 逸郎君
法務省刑事局長  小津 博司君
法務省矯正局長  小貫 芳信君
法務省入国管理
局長       稲見 敏夫君
財務大臣官房審
議官       古谷 一之君
経済産業大臣官
房審議官     立岡 恒良君
─────────────
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○信託法案(第百六十四回国会内閣提出、第百六
十五回国会衆議院送付)
○信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する
法律案(第百六十四回国会内閣提出、第百六十
五回国会衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○連合審査会に関する件
─────────────

○委員長(山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る二十八日、小川敏夫君が委員を辞任され、その補欠として江田五月君が選任されました。
─────────────
○委員長(山下栄一君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。

信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁生活安全局長竹花豊君、金融庁総務企画局審議官畑中龍太郎君、金融庁総務企画局参事官山崎穰一君、金融庁総務企画局参事官私市光生君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長小貫芳信君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、財務大臣官房審議官古谷一之君及び経済産業大臣官房審議官立岡恒良君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────
○委員長(山下栄一君) 信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。

○岡田広君 自由民主党の岡田広です。
信託法案につきまして、大臣始め政府参考人の皆様方にお尋ねをさせていただきたいと思います。
まず初めに、この信託法案を提出するに至った経緯等につきましてお尋ねをしたいと思いますが、信託協会の統計などによれば、信託銀行や信託会社が受託者となっている信託の受託財産の残高は約六百兆円を超えるとのことであります。日本の予算がおよそ八十兆円であることを考えてみましても、これはかなりの金額であり、信託は実際にはかなり利用されていると言うことができると思います。
しかし、その一方で、信託という言葉も聞いても、一般の国民には貸付信託や証券投資信託という言葉が思い浮かぶくらいで、信託の具体的な仕組みについて詳しく知っている人は少ないんではないかと思うわけであります。今回の信託法の改正は八十年来の改正ということでありますが、この信託制度を一般の国民に知ってもらう重要な機会であると考えているものであります。そこで、本日の質問に対する答弁については、一般の国民にも分かりやすい内容の説明をしてもらいたいということをまず申し上げたいと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

信託とはどのようなものを言うのか、また我が国ではこれまで信託はどのように利用されてきたのかをまず大臣にお尋ねをしたいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) お尋ねのとおり、信託、余りなじみのない点があると思いますが、この信託法案におきましては、法律上定められた方法により、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいうというふうに規定をされております。非常にこの規定自体も分かりにくいわけでございますが、典型的には、委託者が自分の持っておる特定の財産を第三者である受託者に移転をして、その財産を一定の目的に基づいて管理処分をさせて、この管理処分によって得られた利益を受益者に給付をすると、こういう仕組みをいうというふうに考えております。

 

 

 
この信託という制度は、英米において発展してきました制度でありまして、典型例としては、子や孫の扶養や教育のために、自己の財産の一部を信頼できる知人等に譲渡し、財産の管理処分をさせるという場合を挙げるということが欧米では言えると思います。しかし、日本においてはなかなかなじみがないわけでありまして、日本における信託は、信託銀行を受託者とする営業信託を中心に発展してまいりました。
実際に信託が利用されている代表的な例としては、信託銀行が受託している貸付信託、年金信託、証券投資信託、資産流動化のための信託等という形で発展してきたと言うことができると思います。

○岡田広君 分かりました。
是非この機会に、まずこの信託というものについて国民に広く理解を求めていただきたいと思っているところであります。
土地信託や資産の流動化のための信託などが活用されてきたということでありますけれども、この土地信託とかあるいは資産の流動化のための信託というのは具体的にどのくらい利用されているのか、これもお尋ねをしたいと思います。

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) まず土地信託でございますが、これは典型的には、土地の所有者がその土地を信託銀行等に信託をいたしまして、その信託銀行等が受託者としてその上に建物を建てたりいたします。それで、その運用益というものを受益者に還元するわけでありますけれども、受益者が元の土地所有者であるという場合が多いわけでございます。その場合に、受託者としては、建物を建てた上でその建物の管理をする、テナントから収益を得る、それを受益者に受益権の形で分け与えるというわけでありますから、土地信託自体は信託としては比較的典型的なものだというように言えます。これは、現在は信託銀行が受託者になっているわけでございまして、その信託銀行の土地信託の受託件数は、現在、二〇〇六年の三月時点で八百十一件とされております。

 

 

 

 
すみれ
「811件の土地信託って多いのかな。2014年は約300件みたいだけど。」

 

 

 

 
他方、資産流動化のための信託というのは比較的新しいタイプの信託ではございます。特に日本においてはそうでございますが、典型的には、委託者から引き受けた不動産、金銭債権等の資産について信託を設定して、その受益権を投資家に販売するというものでありまして、委託者の信用状態が悪いということも考えられるわけでございますが、そういう場合にも、そのリスクというものがその委託者限りになるわけでありまして、当該の資産についてはそれとは切り離された形で確保されますので、この資産の価値を引き当てて資金の調達ができると、こういうことでございます。
この現在の利用件数でございますけれども、同じく今年の三月末の時点でいいますと九千九百三件で、これは残高が五十三兆円を超えているところでございます。

 

 

 

 

 

○岡田広君 分かりました。
それでは、信託は、古くは貸付信託、証券投資信託とか、そして最近では今御答弁ありました土地信託や資産の流動化のための信託というように、その利用が年々進んできたように思います。しかし、こういう状況の中で、先ほど申し上げましたように、約六百兆円を超えるという信託の受託財産の残高ということを考えてみましても、なぜこの信託法の改正が八十年もの長期間行われてこなかったかというのは大変素朴な疑問であります。

日本には二千近くの法律があると聞いておりますが、このくらい長く改正がされなかった法律というのはないんではないか、私はそう思うわけでありますが、この理由について説明をしていただきたいと。そしてまた、この信託法の改正を要望する声というのは今までなかったのかどうか、こういう点についても大臣にお尋ねをしたいと思っております。

 

 

 

 

 
○国務大臣(長勢甚遠君) 御指摘のとおり、信託法の改正は、実質的な改正はもう八十五年ぶりということになります。
現行信託法の制定以来、ずっと今まで、先ほど御説明いたしましたように、信託の専門家である信託銀行のみが利用する制度となってまいりました。そのために、社会一般の信託に対する理解も御質問にありましたように十分ではなかったということから、信託法改正の必要性が具体的に認識されるというか議論になるということが少なかったという事情があると思います。
ただ、ここに来まして信託についての理解も深まりまして、今御質問ありましたような、いわゆる土地信託や証券投資信託というものも開発をされて、こういう信託を利用した資産流動化も盛んになるようになりました。
そうしたことがあったことで、最近、政府に対しても信託法の改正要望というものが各方面から寄せられるようになりました。現実に、信託の専門家による改正提言というものも公表されるということになった。こういうことを踏まえて今回の改正法になったわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 
○岡田広君 信託を利用する人たちからの声、あるいは信託法の専門家からの提言ということもあって今回の改正になったということでありますが、今回の改正は自己信託や目的信託などの新たな類型の信託も加えるなどの抜本的なものであると認識をしていますが、この大改正がなされるに至った理由についても大臣にお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 近年、いろんな形で信託の利用というのが進んできておるわけでありまして、資産運用や企業の資金調達に信託をしてほしいとか、また、高齢者や障害者等のための福祉型の信託の活用ということについても期待が高まっておる、こういう事情があると思います。

 

 

 
このような状況の変化に対応して、信託法制に対する改正ニーズの把握に努めてまいったわけでございますが、このニーズにこたえるために今回の大改正を行うということになったわけでございます。

 

 

 

 

 
○岡田広君 この信託法の改正に当たっては、利用者である委託者、受益者、そして受託者の立場に立って信託制度を合理的で利用しやすい制度にするということが大事であると考えております。この点について、提案理由説明によれば、信託法案は、最近の社会経済の発展に的確に対応した信託制度を整備する観点から、国民に理解しやすい法制とするものであるとのことであります。このような視点は大変重要なものであると考えております。

そこで、今回の信託法がどのような内容のものになっているのか、信託法案の概要についても大臣にお尋ねしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

○国務大臣(長勢甚遠君) 今回の法案は、大きく分けて三つの方向があるのかなと思っております。
一つは、今もお話がありましたように、利用しやすくするという観点でございますが、現行の信託法は、制定の経過もありまして、受託者等に対して極めて厳格な義務を課しているなどありまして、当事者の私的自治というものを過度に制約をしているのではないかという問題があったところでございます。

そこで、信託法案では、現行法において過度に規制的であった忠実義務や自己執行義務などの受託者の義務の内容を合理化をするという方向が一つでございます。

 

 

 

 
しかし、第二に、信託において私的自治にゆだねられる範囲を拡大するということになりますと、他方で信託制度の信頼性を確保するために、受益者が信託法上の権利を実効的かつ機動的に行使をし、その利益の保護を図るということを確保していくということが必要になります。

そこで、今回の信託法案では、受益者が多数決で意思決定をすることを許容することとしたほか、受託者による信託違反行為に対する受益者の差止め請求権や、受益者に代わって受託者を監督する信託監督人の制度を新設するなどしておりまして、受益者が実効的かつ機動的に権利の行使をすることができるように制度を整備をいたしました。これが第二点であります。

 

 

 

 

 

 

第三に、信託法案では、今先ほど御説明しましたような多様な利用ニーズが高まっておりますので、これに的確に対応するという観点から、受益証券発行信託と自己信託、受益者の定めのない信託といった新たな類型の信託を創設しようというものでございます。

○岡田広君 ありがとうございました。
それでは、改正のポイントについて幾つかお尋ねをしたいと思っております。
まず、受託者の義務の合理化についてであります。
提案理由説明によれば、受託者の義務に関して、形式的には受託者と受益者の利益とが相反する行為であっても、信託行為において許容する旨の定めがあるときなど実質的に受益者の利益を害しないときはこれを許容するとあります。

これは、受託者の忠実義務を合理化したというものであると考えておりますが、これだけを聞いても、実際にはどのような合理化が図られたのかというのは、私はよく分かりません。
そこで、受託者の忠実義務につきまして、現行法でどのような問題があって、信託法案ではどのような改正が行われたのか、これを政府参考人にお尋ねをしたいと思います。

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) この受託者の忠実義務、すなわち受託者が受益者のために信託財産の管理運用を行わなきゃならないという義務でございますが、これは信託の正に本質的な義務でございまして、現行信託法もこの忠実義務があることを前提とはいたしておりますが、現行法はその二十二条で、受託者が信託財産に属する財産を固有財産、自分の財産とすることを禁じている、あるいは信託財産に属する財産に対して自分が権利を取得するということを禁止することと、こう書いてあるだけで、忠実義務自体を定めているわけではありません。

ただ、この規定の背景に先ほど申し上げた忠実義務があるんではないかということで、解釈上この忠実義務が認められていると、こういう状況にあるわけであります。
しかしながら、これに対しては古くから学説も法文上明らかでないのは余り適当でないという指摘がありますし、他方、一つこういう忠実義務の例が挙げられてはいますものの、その例が必ずしも全体を包括しているかどうかということがよく分かりませんし、それから逆に、これに当たるということは絶対にしてはいけないのかというと、現行法では裁判所が関与してその義務を外すということはできるわけでありますけれども、そういう非常に例外的な難しい手続を取らないとこれが外せないというのは非常に硬直的過ぎるという批判が、これは実質的な批判として実務者の間でも学者の間でもあったわけでございます。

 

 

 

 

具体的に弊害としてはどこが硬直的かということが一番よく指摘されるところでございますが、この具体的な例としては、例えば信託財産に属する財産を処分しようとすると。そうすると、だれか買手がいないかと探すわけでありますけれども、どうもほかに買手がいない。しかし、自分が、信託銀行が現在の受託者の典型でございますが、それが買い取ろうとすると、それはマーケットの値段より非常に高い値段で買い取ろうとする。それなら別に受益者に何の不利益もないではないかということはあるわけでございますけれども、これを全く禁止していては実際の信託の管理運用に支障を来すということがございます。

また、貸し借りの問題にいたしましても、例えばビルが信託財産であって、そのビルを受託者の方で借りたいというときに、およそ受託者がテナントになるということはできないということにもなりますので、現在の規定をそのまま形式的に適用いたしますと。そういたしますと、非常に運用上も難しい。ほかにわざわざ探すことになるわけでございますし、他方、そのビルの賃料というのは、それだけまたほかの賃借人を探さなきゃならないということにもなるわけでございます。そういうことで、やはり少し硬直的過ぎるというのがどうも共通の認識のようでございます。
そこで、この信託法案では、以上のようなことを総合いたしまして、まず第一に、忠実義務というのを一般的に規定をいたしております。三十条でございます。
次に、その利益相反行為として禁止の対象となる行為が、自分でその信託財産と固有財産の間の財産のやり取りをするということを禁じているわけでございますけれども、それ以外の場合もあるので、どこまでが禁止の対象になるかということを拡大しております。

三つ目に、今最後に申し上げました利益相反行為の禁止の例外というのをもう少し実質的に決めようと、この三つの点で改正をしているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 受託者の忠実義務を合理的な内容にするということは、信託の利用促進の観点からも大変大事なことだろうと考えております。
しかし、他方で、受託者の義務の合理化は義務の緩和とも置き換えられることもあると思います。受託者がその権限を濫用することによって受益者が不利益を被らない手当てを講じることが必要であると思っています。

衆議院の法務委員会では、この点についても、忠実義務の任意規定とすることに反対の考え方も出されたようでありますが、信託法案では、忠実義務を任意規定化することについて、受益者保護の観点からの弊害防止措置を講じているのかお尋ねをしたいと思います。寺田局長にお伺いします。

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) 任意規定化しているということはそのとおりでございますけれども、この任意規定化、すなわちその信託行為に別の定めがあればそれに従うということでございますが、まず第一に、その信託行為の定めがあるというのも単純に定めたらいいというわけではございませんで、受託者の方で重要な事実の開示を行って、これを受益者が認めるということが必要になるわけでございます。そういう手続的なセーフティーネットとも言うべきものが一つあるわけでございます。

次に、実際に、じゃ、利益相反行為がなされてしまうというようなことがあり得るわけでございますが、そのことは形式的にその利益相反行為に当たるという場合には、受託者の方でその行為について、じゃ、こういうことをしますよという通知をしなきゃいけないという規定が三十一条の三項等に置かれております。

 

 

 

 

 

次に、では、それがどうも危なそうだと、私の利益が害されるということになりますと、それが非常に重大な場合には、やはりいったん起きてしまいますと、後で損害賠償等ではなかなか現実には損害を回復できない場合もあり得ますので、そういう場合に備えまして、新たに受益者の方で受託者に対するその行為の差止めを認めるという規定を置いております。これは四十四条でございます。

さらに、受託者の計算書類の作成、保存についての規定の整備等を行って、実際にその受託者の方で違法行為をやった場合に分かってしまうというような仕組みもまた作っております。
最後に、この救済を実効的なものにするために、利益相反行為の禁止に違反した場合の効果というのは今までは明らかになっておりませんでしたが、これを原則として無効だということにしておりまして、ただ、善意の第三者等が出てくる場合もありますので、その場合には一定の範囲で無効というのを改めて取り消すという仕組みにする。つまり、第三者が忠実義務違反について悪意、重過失がある場合には取り消すことができるということにいたしているわけでございます。

 

 
最後に、損害が生じた場合に、損害の立証が非常に難しいわけでございますし、それから余りにこれによって利益を得させてしまうということでは問題でございます。したがって、その損害についての推定規定を置いておりまして、現実にその受託者等が利益を得てしまった、忠実義務違反によって利益を得てしまった場合には、その利益の額と同額の損失が信託財産について生じたという推定規定を置いて立証を容易にしているわけでございます。

 

 

 
○岡田広君 提案理由説明によりますと、信託事務の処理を第三者に委託することができる範囲を拡大するとあります。これは一般に受託者の自己執行義務を合理化したものであると考えておりますが、受託者の自己執行義務につきまして現行法でどのような問題があって、そして今回の信託法案ではどのような改正をしたのか、これについても、具体的な事例等もありましたら示しながら教えていただきたいと思います。

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) この点も、実は現行法が少し硬直的に過ぎる、あるいは使いにくいと言われるところでございまして、現行法の二十六条の一項によりますと、受託者は原則として自ら信託事務を処理しなければならないということになっているわけでございます。
しかしながら、この法律の下において、一体どこまで信託事務自体なのかということが必ずしも明らかでないわけでございます。例えば、ビルの管理というものを、先ほど申し上げましたような土地信託が行われる場合には、受託者が行う本質的なところとしてあるわけでございますけれども、ビルの管理といいましても、現実に例えばビルの掃除をするとか、あるいはビルのテナントに賃料の請求をするとか、様々な事務があって、一体どこまでを自分がやらなきゃならないのかということがはっきりしないわけでございます。

 

 

 

 
それで、しかも非常に、徐々に非本質的な義務になっていくだろうと思いますけれども、その例えば賃料を請求するために請求書を機械的に何人ものその賃借人に対して送付するというような行為は、どうも必ずしもその受託者自ら行わなくてもいいんではないかというようなことが、これは共通認識としてむしろあるわけでございます。

そこで、むしろこの関係をもう少しはっきりさせようということが審議会でも議論されたわけでございまして、とりわけ、現行法が制定された当時に比べますと、いろんなことが専門化されているわけであります。今申し上げましたのは非常に卑近な分かりやすい例でございますが、例えば特許についての信託が行われた場合に、一体どういうところをどういう人がやるのが一番ベストの管理であるかということは、なかなか現在では複雑にむしろなっておりまして、専門のことは専門の人に任せた方がいいというような思想的な転換もあるのではないかという議論があったわけでございまして、それを基本的にはやはり現代にマッチした形で取り入れようということで、必要な場合には信託事務の処理を第三者に委託する方がむしろ合理的であるというような考えに信託法案においては立っているわけでございます。

 

 

 

 

 

そこで、現行法では信託行為に別段の定めがある場合等が例外として規定されておりますけれども、信託行為に別段定めがない場合であっても、第三者に信託事務の処理を委託することが信託の目的に照らして相当であるという場合には、この処理を委託することができるということに二十八条の二号でしておりまして、そういう意味では、現行法と比べて信託事務の処理を第三者に委託することができる範囲を一部拡大したということになるわけでございます。

具体的には、先ほども例で申し上げていることの裏返しになるわけでございますけれども、受託者が自ら行うよりも他人に委託した方が費用や時間の点で合理的になる場合、例えば報告書を受益者に送付する場合において、その送付事務を第三者に委託する、あるいは投資信託のテナントビルの広告というものを広告代理店に委託するような場合、こういうような場合は典型的にこの条項に当たるわけでございまして、信託行為に特に定めがなくても、ある場合が実務上は通例ではございますけれども、ない場合においてもこういうようなことが認められるということで、事業者が行う信託でない場合にもこういう必要があることでございますので、こういう手当てをいたしているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 
○岡田広君 信託目的に照らして相当な場合には、信託行為に定めがない場合であっても委託できるとする規定を削除する考え方の修正案が衆議院の法務委員会では出されたようでありますが、受託者が第三者に対して事務を委託することができる範囲を広げることによって受益者の利益が害されるおそれがないか。信託法案では、自己執行義務を緩和することについて受益者保護の観点からの弊害防止措置をどう講じているのか。局長にお尋ねしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) 衆議院での御議論でも、今委員が御指摘のような御議論がございました。
それで、非常に古典的な信託で、受託者が非常にしっかりしていて大きなところでそういう事務を行うということを想定いたしますと、それなりの手当てをしなくても、あるいは先ほど申し上げましたように信託行為自体でうまく処理ができるということも考えられるわけでございます。しかし、これからの信託のいろんな利用を促進していくと、ごく普通のこういう個人同士の間でも信託が行われるということを想定いたしますと、規定を整備した方がやはりいいだろうということになっているわけでございます。

それで、そういたしましても、しかし先ほど申しましたように、信託の目的に照らして相当である場合に限ってこれが認められるというわけでございますし、受託者の方は委託者に丸投げするわけではございませんで、選任監督責任というのは当然負うわけでございます。三十五条の一項、二項に規定されているところでございます。また、相当でないにもかかわらず委託をしてしまった、あるいは監督を怠ったということになりますと、信託財産に損失が生じたときは、その損失のてん補責任等を負うという規定を四十条に設けておりまして、受益者のためにはその範囲で手当てをしているところでございます。

 

 

 
○岡田広君 ありがとうございました。
次に、受益者の権利に関する規定の整備についてお尋ねしたいと思います。
提案理由説明によれば、受託者に対する損失てん補等の請求に加えて違法行為の差止め請求の制度を創設するとあります。信託法案において、受益者の差止め請求に関する規定を新設したのはなぜか。そしてまた、受益者の差止め請求権はどのような場合に使われることになるのか。寺田局長にお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほど申しましたように、この規定を新設したところでございますが、現行法では、受託者が信託について違反をした場合、法令あるいは信託行為の定めに違反すると、こういうような行為が行われた場合にどういう救済手段があるかと申しますと二つ規定がございまして、一つは、損失をてん補するという義務が課せられるわけでございます。もう一つは、財産の処分行為を取り消すという権利が救済手段としては与えられるわけでございます。

 

 
しかしながら、これらはもちろん理論的には、これで原状が回復される、損害がてん補されるということであればそれでいいわけでございますし、また処分行為がすべて取り消されればそれでもいいわけでございますが、受託者に十分な資力がなければ損害が回復されませんわけでございますし、処分行為の相手方が違法だということを知らなかった場合には取消しの規定が働かないというようなところもございますので、万全ではございません。

原則としてはこれでいいということではございますけれども、やはりもう少し手当てが必要だという議論になりまして、信託法案では、受託者が信託の違反行為をしようとしている場合で、その行為によって信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるということになりますと、今申し上げたような事後的な救済措置では不十分だということでございますので、これについては事前に差止めを認めようという議論に集約されまして、それについても請求権を受益者に与えるということで、規定が四十四条に置かれているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

具体的には、例えば信託財産を違法に受託者の方で売却しようとしているという場合、これをどうも取り戻すのは非常に難しそうだと、いったん売却されてしまえば、というような場合。あるいは、受託者が受益者二人に対して毎年一回収益を均等に分配するというような定めがあって、これに従って分配をしてもらわなきゃいけないのに、どうも七対三で分けようとしていると、いったん分けられてしまうとこれを取り返すのはなかなか難しいというようなケースで、そのときに、まあ常にというわけではございませんけれども、著しい損害が生ずるということが予見される場合には、こういうような場合に事前に差止めが認められるだろうというように考えているわけでございます。

 

 

 

 

 
○岡田広君 信託法案において受益者が多数決で意思決定することを認めたこの趣旨についても、寺田局長にお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(寺田逸郎君) この点は、大臣が二番目に今度の信託法案の意義を御説明した際に出てきたところでございますが、受益者が、現行法では形式的には一つのその信託の当事者として登場しているわけでございますけれども、どうも実質的に余り保護されていないところがあるということが私どもの問題意識でございまして、とりわけ現在においては非常にスピーディーに対応しなきゃいけない場面があるにもかかわらず、この受益者の意思決定については、ただこういうことができると書いてあるだけで、一体どういうプロセスでそういう意思を形成するかということについて必ずしも理解が行き届いていないところがあるように見受けられる、これは審議会でも共通の問題意識でございました。

したがいまして、特に複数の受益者が登場することが非常に多くなっている現在の信託において、その規定の不明確性というのはかなり致命的だということでございますので、この点について措置をとろうということになりまして、この法案では多数決で意思決定をするということを認めているわけでございます。
具体的には、信託の変更が行われるということがあり得るわけでございますし、あるいは受託者を解任しようということがあり得るわけでございます。これは非常に重要なポイントになるわけでございますが、その際に受益者としては、じゃ、信託財産の運用方法を全く変えてしまう。例えば土地信託において、それはもうビルで運用されているんだけれども、全く違う方法で運用しようじゃないかというようなことになった場合に、それを決めるのを、例えば区分所有の建て替えもそうでございますが、次第に多数決で行わないとなかなか機動的な対応ができないということでございますので、ここでもそのような場合を想定いたしまして、多数決による受益者の意思形成というものを認めようということになっているわけでございます。

 

 

 

 

 

すみれ
「マンションの運営も参考にしているんだ。」

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 一つ例を挙げてお尋ねしたいと思いますが、例えば三人の子供が受益者となっている信託があります。受益者である子供のうちの一人が行方不明になってしまったと仮定しますと、こういうケースにおいては、信託行為で多数決が許容されていない場合には、信託に必要な意思決定は行方不明となった受益者が見付からないと全くできないことになってしまうのか。信託行為で多数決が許容されているとして、三人の受益者のうち二人の受益者が行方不明となってしまった場合はどうなるのか。このことについてもお尋ねしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほども私はこの受益者多数の場合の御説明といたしまして受託者を解任する場合等を挙げたわけでございますけれども、受益者としては当然単独で権利行使をする場合もあるわけでございます。それは、受託者を監視するあるいは監督するというような規定、例えば計算書類の開示の請求でございますとか、そういった規定においては、これは単独でございますので、今言ったケースでも、特に残された一人の方あるいは二人の方は問題が生じないということになります。

 

 

 

 

 
ただ、百五条をごらんいただくとお分かりになりますとおり、そういうものを除いては受益者の一致した意思形成というものが原則になっておりますので、そういたしますと、先ほど申しましたような信託の変更でありますとかあるいは受託者の解任というような行為においては、これは非常に重要な行為でございますけれども、その意思決定は、信託行為に別段の定めが置いてあれば別でございますけれども、そうでない限り、全員がいないとできないと、こういうことになるわけでございますから、今委員が御指摘のような一部の行方不明の方がおられる場合にはできなくなってしまうわけでございます。

そういたしますと、困る場合も出てくるわけでございますので、そういうことに備えまして、信託法案の五十八条の四項では、受託者が任務に違反して著しい損害を信託財産に与えたということがあることを例示しまして、その他非常に重要な場合には裁判所が受託者を解任することができるというような裁判所に対する申立て権というものを認めまして、こういうケースでは行方不明の方がおられても対応できるようにいたしております。ちなみに、この裁判所への申立て権というのは単独でできるようになっております。

 

 

 

 
それからまた五十七条の二項では、受託者がやむを得ない事由があるときは辞任することができるということになっておりますが、これもやはり裁判所の許可を得てということになっておりまして、今申し上げたような受益者側の同意が一切得られないために辞任ができないというようなケースに対する対応の一つの方策が規定されているわけでございます。

また、百四十九条には、受益者の利益に適合することが明らかであるときは、全員の合意がなくても、受託者の書面等の意思表示のみで信託の変更ができると、これは信託の変更の場面でございますけれども規定がございまして、このような実際上起こり得る場合には、解任、辞任、信託の変更でございますが、一応の対応策はできるようにはなっております。

 

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 今の意思決定に反対する少数派、これの受益者の利益を保護する措置はどういうふうになっているでしょうか。局長にお尋ねします。
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほど申し上げました区分所有の建て替えの例でもそうでございますし、あるいは会社の合併の株主総会の多数決の例でもそうでございますけれども、それに反対するという人がいる場合に、多数決で押し切ったときにその少数派をどうやって保護するかということは法律上いろんな場面で問題になるわけでございます。

このように、信託法案で新たに多数決で意思形成をすることを認めたものでございますので、少数派の受益者の利益というものは不当に害されてはいけないということで、重要な信託の変更等については変更に反対する少数派の受益者が受託者に対してその有する受益権を公正な価格で取得するように請求することができると。受益権の取得請求権と一応呼んでおりますけれども、そういうような買い取ってくれという請求権を与えることによって経済的な不利益を解消するということにいたしております。
このような合理的な対価が得られれば、少数派の受益者といえども多数決に従うというそういう仕組みから、損害が回復されないというそういう不利益は解消されるというわけでございますので、こういうような措置を取って多数決をむしろ認めたということでございます。

 

 

 

 

 

 
○岡田広君 信託監督人についてお尋ねしたいと思います。
信託監督人は受益者が未成年者や高齢者の場合などに選任されることが想定されているということでありますが、受益者となれる者についての年齢制限というのはないのか、例えば幼児でもこれなれるのか。そして、この信託監督人というのはどういう人が選任されるのか、弁護士等の専門家に限られているのかどうか、これについても局長にお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) まず受益者でございますが、信託法においては、特に受益者となれる者について制限を設けておりません。権利能力がある者であればだれでもいいわけであります。したがいまして、おっしゃるとおり、幼児であっても受益者となる。むしろ、信託の歴史から考えますと、幼児でありますとか高齢者でありますとか、そういう自分でうまく管理運用を財産についてできない者というのがむしろ受益者になるということが想定されているわけでございます。

もっとも、一般的に受益者となれるということと、すべての受益者として権利の行使、享受ができるかということとは別でありまして、法令によって財産権の享受ができないということが決められている場合には、これは受益者だから財産権が享受できるというようになるとおかしなことになりますので、そういうことは禁止いたしております。信託法案でいえば十条でございます。

これは、例えば特許法の二十五条等で我が国で特許権を享有することができない外国人というようなものがあるわけでございまして、こういう方はこの種の信託が行われた場合にその受益者とはなれないということになるわけでございます。

次に、信託監督人でございますが、これは法律上は別に制限はございません。しかしながら、裁判所としては、運用上は弁護士や公認会計士を恐らく主としてこういう信託監督人として適当であるとお考えなのではなかろうかというように考えておりますが、しかし、ごく簡単な信託であれば、例えば信頼できる友人というような者を信託監督人として指名することも想定はできないわけではないということになります。

 

 

 

 

 

 
○岡田広君 それでは、新たな類型の信託の創設についてお尋ねします。
自己信託でありますが、自己信託をするメリットの一つとしては委託者の破産から財産を隔離することができるということがあるとのことでありますが、委託者の破産からの隔離であれば、第三者を受託者として信託しても同様の効果を得られると思われます。第三者に対して信託をするのではなく自己信託を設定することの利点について、これも寺田局長にお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、一般的に、信託をしてしまえば破産からの財産の隔離で、何といいますか、財産が一定の目的で必ず利用されるようになるという状態は確保できるわけでございます。
ただ、問題は、そのような第三者が容易に見付かるかどうかということと、その第三者にやはり信託を設定して管理にゆだねるということになりますと費用が掛かるということがあるわけでございます。
そこで、例えば民事信託を想定してみますと、自分に障害があるお子さんがあると、そういう親御さんを想定いたしますと、非常に手軽にそういう自分の財産を管理してくれて、それを子供に確実に与えてくれるような方がおられればいいわけでありますけれども、なかなか大きな信託専門会社だということになりますとお金が掛かるわけでございますし、そうでない方もなかなか手軽に見付けられないということになりますと、自分でそういう状態を確保しようということになれば、一応この自己信託というのが非常に有力なものとして考えられるわけであります。

 

 

 

 

 

 
それからまた、商事的な場面で考えますと、債権を一定の者に信託をいたしまして、その債権を財産としてこれを引き当てにして受益権を発行し、その受益権を流通させて資金を調達するというようなケースが考えられるわけでございますが、第三者にその債権を譲渡するということになりますと債権者が変わるわけであります。そういたしますと、債務者にとっては非常に不安感が出てくるということで、一般的には余り好まれることではないと言われております。むしろ、同様のことであれば、自分がその受託者になって受益権を発行することができれば、債権の取立てをする者としては変わりないわけでありますから、むしろ債務者は安心していられるということでございますので、そういうようなケースを念頭に置いても、自己信託というのは非常に有用性があるというように言われてきているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

○岡田広君 例えば、自己信託で親が自らの子供を受益者として自己信託を設定して、信託財産の一部を子供に給付するものの、残りは自由に使ってしまうというようなことがあり得ると思います。このように、自己信託を利用して債務者が債権の取立てを逃れるのではないかとの懸念を指摘することがたくさんあります。

信託法案では、この自己信託が悪用されることを想定した弊害防止措置がどう置かれているのか、これについて寺田局長にお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) この点も非常に議論の多かったところでございます。
自己信託というのは、自分の財産を自分が受託者として運用するということになるわけでございますので、どうしても外から見えにくい。したがって、資産を隠すというような意図で行われるんではないかというような議論がございました。しかしながら、資産を隠すということがあれば、むしろ第三者にその資産を渡して、その資産の行方が分からなくなってしまうということがむしろ資産隠しでございますので、そういう意味での資産隠しという批判は少し的を射ないんではないかと。むしろ、債権者からの強制執行を免れるために、債権者がやってきたら、いやこれは実は自己信託されていて別の財産だというようなことが言われるということは、それは現実の危険としてはあり得るわけであります。
そのために、この自己信託においては、一定の様式に従った公正証書等の書面によってすることを要求して、日付を必ず明示するということで、それをさかのぼって自己信託がされたというようなことができないようにいたしております。

第二に、詐害行為としてこれが行われるということになり得るわけであります。必ずしも十分な財産を持っていない者が残りの財産を自己信託してしまったというようなことがありますと、債権者としては非常につらい立場に置かれるわけであります。そこで、これはもう当然詐害行為の問題になるわけでございますけれども、この自己信託に限っては、その詐害行為取消しというような手続を踏むことなく、直接に信託財産に対して債権者が強制執行ができるという規定を置いて、債権者の保護を図っているわけでございます。

こういうような執行逃れ等の目的を含めて、不法な目的によって信託が利用される場合というのはあり得るわけでございますが、今言った執行逃れ以外の場合にも、公益に反するような形でこの信託が設定されるということになりましたら、裁判所が、法務大臣あるいは委託者の債権者等の利害関係人の申立てによって信託を終了させられるという規定も置いておりますので、トータルといたしまして、言われるような弊害というものは防止できるものと、こういうように考えております。

 

 

 

 

 

 
○岡田広君 そのほかたくさん聞きたいことがあったんですが、もうそろそろ時間になりました。是非、この信託法案が成立した後は、この制度の趣旨に従って幅広く利用されることを期待したいと思っています。特に、福祉目的の信託の利用を促進するということが大事であろうと、私はそう思っています。十六年の信託業法の改正のときの附帯決議で、来たるべき高齢化社会に向けて、福祉型の信託についても利用が促進されるよう今後検討されたいという決議がされております。

そこで、この福祉目的の信託を活用するについての、金融庁今日来ておりますので金融庁の政府参考人からも、この点についてどのように検討を進め、また広げていくのか、お尋ねをしたいと思っております。

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(畑中龍太郎君) お答え申し上げます。
ただいま御指摘ございましたように、高齢者等の将来の生計を維持するために一定の財産を信託するといった、いわゆる福祉型信託につきましては、今後、高齢化社会が進む中でニーズの増加が予想されるところでございまして、これらの担い手を拡大すべきとの御指摘があることは承知をいたしております。
また、他方、この福祉型信託につきましては、受益者が高齢者等でございますので、この受益者としての権利を十分行使し得ない場合もあるのではないかと、そういった指摘や懸念ございます。

また、信託財産が毀損された場合には、受益者である高齢者の生活に大きな支障を及ぼしかねないのではないかと、そういった御指摘もございまして、受託者の適格性や義務などにつきまして、しっかりとした検討を行う必要があると考えております。

 

 

 

 
いずれにいたしましても、こうした福祉型信託を業として行う場合の信託業法上の取扱いにつきましては、ただいま御指摘ございました前回の信託業法の改正、十六年十一月でございましたが、このときに衆参の財金委で附帯決議をいただいておりまして、次期信託業法改正時の検討事項の一つということに御指摘をいただいております。

前回の改正法で、附則でございますが、施行後三年以内に検討するという規定もございますので、この検討の中で御指摘の点についても検討を行ってまいりたいと考えております。
○岡田広君 今答弁ありましたが、是非前向きに検討していただきたいと思いますし、信託法案は、ビジネスツールとしての信託の利用のみならず、こういった福祉目的での一般の方々の生活に密着したところでの信託の利用というのも大変重要であろうと、そう思っています。この信託法案が成立し、今回の信託法案の改正によって信託の利用がどの程度進んでいくのか、そしてこの信託について国民に広くこれからもアピールをしていくという、そういう観点から、最後に長勢大臣のお考えを伺いまして、質問を終わりたいと思います。

 

 

 
○国務大臣(長勢甚遠君) るる御質問いただきましたが、今回の改正は各方面からの改正要望等を十分に踏まえたものとなっておると思っておりますので、この改正によりまして、これまで必ずしも合理的でなかった受託者の義務や受益者の権利に関する規定の内容が見直しをすることができましたし、また信託がより利用しやすいものにするように新たな類型の信託も創設することになっております。これによりまして、今お話しになりましたような高齢者等の財産管理やあるいは企業の資金調達の手段として広く利用することができるようになっておるものと思っております。
具体的に今はどれを取ってどうという数量的なことは申し上げかねますけれども、今回の改正によりまして様々な利用者の便益が増進するというふうに思われますので、信託がいろんな形でより広く利用されるようになるというふうに私どもとしては期待をしておるところでございます。

 

 

 

 

 
○岡田広君 ありがとうございました。

○前川清成君 おはようございます。民主党の前川清成でございます。
今日は、簗瀬理事始め先輩、同僚議員の皆様方の御好意によりまして二時間の質疑時間をちょうだいすることができました。この点も本当に感謝申し上げます。

 

 

 
すみれ
「2時間の質疑時間てすごいね。」

 

 
まず、今日は初めて大臣の御指導を賜るわけでございますが、冒頭、ちょっと気になることがございましたので、お尋ねをしたいと思います。
新聞報道によりますと、今月二十一日の閣議後の会見で、イラン人一家の在留特別許可の問題に関して、人道、人権だといえば何でも法律を破っていいということにはならないと、こういうふうに御発言されたと報道されています。昨日の質問通告の際もはっきり申し上げました。この事案の概要等はお答えいただかなくて結構でございます。ただ一点、この人権と法律、どちらが優先するのかと、この点について大臣の御所見お伺いしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

○国務大臣(長勢甚遠君) 当然、人権が尊重されなきゃならないことは憲法に規定されているとおりでありますし、人道という観点も非常に大事にしなきゃならぬということはそのとおりであります。
ただ、その言葉が、どういいますか、何でもその言葉さえ使えばいいということにはならないだろうと。やはり、本当に人権なり人道なりという趣旨に沿ったものであればもちろん尊重しなきゃなりませんが、ただそういう言葉さえ使えば何をしてもいいんだという風潮では困るという趣旨で申し上げたものでございます。
○前川清成君 報道が正確になされていないのであれば、それで結構なんですが、およそ憲法を持つ国において人権が法律に優先することは当然であります。
これは、私の独自の見解じゃなくて、世界じゅうだれもがそう考えていることでございますので、また、先日の江田議員の質問に対して、法の支配よりも人治主義だというような御発言がありましたので、ちょっと確認をさせていただいたところでございます。
それで、今日は二時間の時間をいただきましたので、少しだけ子供の安全の問題について触れさせていただきたいと思います。
といいますのも、二〇〇四年の十一月十七日に、奈良市の富雄北小学校で小学校一年生の女の子が性犯罪の前科を持つ男によって誘拐され、殺害されてしまう、あの事件から二年が経過をしました。先日、判決がありました。二年がたって、法務省でも刑務所の処遇プログラムの改善等、いろいろ御努力をいただいたとお聞きしております。しかし、あの後も広島市であるいは栃木県で幼い女の子が犠牲になると、そういう事件が相次いでいます。

 

 
私もそうですが、子供を持つ親にとっては、確かに今いじめの問題もあります、いじめられるのも困るし、いじめるのも困りますけれども、やっぱり子供が犯罪に巻き込まれないかと、これを心配しながら暮らしています。私も自分の子供には防犯ベルもココセコムも持たせて通学をさせています。
そこで、まず大臣に決意ということでお聞きしたいんですが、子供たちを守る政治の責任、あるいはもっと大きく、安心して暮らすことができる安全な社会をつくっていくことの政治の責任、この辺をお伺いいたしたいと思います。

 

 

 

 

 

○国務大臣(長勢甚遠君) もう言うまでもなく、安心して暮らせる安全な社会をつくっていくということは極めて目下重要な課題でありますし、国の大きな責任だと思っております。
そのために、特に子供さんについて、この政府としては昨年十二月に関係省庁連絡会議において犯罪から子供を守るための対策を策定をいたしたところでございますし、法務省としてもこれを踏まえて積極的な取組を進めておるところでございます。具体的な政策の中身は省略してよろしいでしょうか。
るる今やっておるところでございますが、今後とも国民が安心して暮らせる安全な社会をつくっていくということが我々の課題でありますし、責任である。それに向けて最大限の努力を払っていきたいと思っております。
○前川清成君 それじゃ、刑事局長からで結構ですから、もう少し政府全体の取組、あるいは法務省としての取組をお聞かせいただけるでしょうか。
○政府参考人(小津博司君) ただいま大臣が御答弁申し上げましたように、政府といたしましては、昨年十二月に関係省庁連絡会議において対策を策定したところでございます。
法務省といたしましても、これを踏まえて積極的に取り組んでいるところでございますが、まず、検察当局におきましては、当然のことながら警察当局と連携しつつ、この種の犯罪につきまして厳正な捜査、処分に心掛けているということでございます。
そのほかのところは若干私の所管を離れますけれども、御指名でございますので御説明申し上げますと、性犯罪につきましては、平成十七年の六月から刑務所及び保護観察所におきまして、十三歳未満の子供を対象とする暴力的性犯罪により受刑した者の出所情報等を警察に提供して、警察において出所者による再犯防止に向けた措置をとることができるようにしたところでございます。
また、矯正局、保護局におきまして、受刑者、仮釈放者及び保護観察付刑執行猶予中の者を対象とする性犯罪者処遇プログラムを策定して平成十八年度から実施するなど、再犯防止のための施策等に取り組んでいるところでございます。
○前川清成君 今の御説明のあった、少し処遇プログラムに関してお尋ねをしたいと、こう思っています。
今までの刑務所の中の取組というのが、受刑者の大半は懲役刑ですから、労役を課せられることになります。労役というのが、刑務所の中の工場と呼ばれる施設で働くことが更生にとって何らかの意味を持つことはよく分かるんですけれども、しかしある種の犯罪にとっては、実は刑務所の中で働いても、犯人の立ち直りであるとか更生に役立たないのではないかなというような感じがあります。
今までの刑務所、今までというのは二〇〇四年十一月以前の刑務所というのは労役に少し偏り過ぎていたのではないのかなと。もちろん、刑罰ですから応報という側面は否定することはできないんですが、教育といいますか、その辺のところをやっていかなければならないのではないか。また、処遇プログラムについては詳しくお聞きしたいと思っているんですが、これまでの刑務所が少し反省すべき点はないのか、この辺をお伺いいたしたいと思います。

 

 

 

 

 
○国務大臣(長勢甚遠君) 労役作業といいますか、が役に立つかどうかというお尋ねだと思いますが、刑務作業というのは、まずきちんとした生活をやっていただくと。そしてまた、その後、社会へ出た後の職業にも役に立つというような観点からなされてきたものだと思っております。そちらに偏っておったというよりも、むしろ、どう言いますか、改善指導についての部分が比較的手薄であったということは言えるかもしれません。
そういうこともありますので、先般の刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の下では、刑務作業に加えて改善指導及び教科指導を実施をして、受刑者の改善更生あるいは円滑な社会復帰を図れるようにしたところでございます。

 

 

 

 

 

 
○前川清成君 私も、大臣が今御答弁されたとおり、例えば働く癖のない、それで泥棒、窃盗を繰り返してしまう、そういう受刑者にとっては、刑務所の中で勤労の習慣を付ける、あるいは働く意欲を身に付けさせる、これが更生にとって重要な意味を持つのかなと、こういうふうには考えてきました。
ところが、実は大臣、今年の平成十八年度の犯罪白書なんですけれども、同一前科を持つ検挙者が何パーセントいるのかという特集をしています。
それで、平成十七年度に窃盗で検挙された人員が十二万二千九百七十二名いますけれども、この中で実は同一の前科、すなわち泥棒の前科を持つ人が一九・一%。これは後で性犯罪が実は繰り返すんだという御紹介をさせていただきたいと思うんですが、強姦は一〇・八%、強制わいせつが一一・三%。窃盗よりもこの性犯罪の方が再犯率というか、それが低い数字になって表れています。ちなみに恐喝、これが同一罪種の前科を有する者が一九・五%、傷害に至っては一九・九%になっている。
確かに、工場の中で働いて勤労の意欲を身に付けさせるということは、形式的にというか、頭の中で考えている限りでは更生に役立つんだろうと思うし、そういう側面があることは否定できないとは思うんですが、実はこの犯罪白書の数字が示すように、窃盗というのもやはり繰り返す犯罪の一つになっている、傷害や恐喝、こういうのも繰り返す犯罪の一つになっている。
ですから、性犯罪に限らず、刑務所の中の処遇の在り方を広く考え直す必要があるのではないかなと私は考えておりますが、大臣いかがでしょう。

 

 

 

 

 

○国務大臣(長勢甚遠君) 再犯についての御指摘はそのとおりだろうと思っております。再犯を何とかして防止をしていくことがこれからの治安を守る上でも、また矯正施設が今過剰状態になっていますので、そういう意味でも大変大事な課題でございます。
ただ、一般的に言いまして、どうしても再犯になる一つの理由は、出所した後就職がしにくいという状況になれば、何といいますか、やむを得ずというのもおかしなことですが、そういうことに走りがちになるというようなことも指摘されているわけでありまして、そういう問題について刑務所内でどういう形の対応ができるかということは今いろいろ考えておるわけでありますが、今最初におっしゃいました刑務作業をどうするかということにどういう形で関連するとらえ方ができるのか、ちょっと今私自身は今持ち合わせがありませんが、そういう御指摘も踏まえて検討していきたいと思います。

 

 

 

 
○前川清成君 それで、その奈良市の事件に戻らせていただいて、性犯罪の処遇プログラムを順次お尋ねしていきたいんですが、これも平成十六年度の犯罪白書ですけれども、十三歳未満の子供を対象とする暴力的性犯罪、全検挙人数が四百六十六人、このうち性犯罪の前科前歴を有する者が百二十人、率にして二五・八%、そのうち暴力的性犯罪の前科前歴者が九十二人で一九・七%、かつ子供を対象とする暴力的性犯罪の前科前歴者が七十四人で一五・九%というふうな数字が紹介されています。奈良市の女児誘拐殺人事件の場合も、やはりその被告も二度の性犯罪の前科を持つ男でした。
そこでお尋ねしたいんですが、統計的にはこのように性犯罪は繰り返すというふうに出ているんですが、そのことは合理的に、大げさな言葉を使いますと科学的に証明することは可能なんでしょうか。

 

 

 
○国務大臣(長勢甚遠君) 事実としておっしゃったような統計はあるんだと思いますが、どういいますか、科学的にこうなるものであるということを証明するという手法があるということは承知をいたしておりません。

○前川清成君 そういうことを前提にして、今度法務省で認知行動療法というのを基礎とする更生プログラムを採用されたわけですけれども、これがどのようなプログラムなのか、そしてそれが性犯罪者の更生にどう役立って、どのようにして子供たちを守っていけるのかと、この辺お伺いいたしたいと思います。

○政府参考人(小貫芳信君) ちょっと技術的なところにつきまして答弁させていただきます。
本年度から性犯罪者の処遇プログラムを実施することになりました。その中身は委員も御案内のとおりでございますけれども、いわゆる心理学で研究開発されました認知行動療法なるものを使いましてその治療に当たると、こういうことであります。

 

 

 
認知行動療法と申し上げますのは、問題行動の原因となる自らの認知、認識、その誤りやゆがみ、これにまず気付かせる。そして、それを変容、変化させると。その次に、それに従って行動する行動内容を改善させようとする心理療法の一つ、これを採用したいと考えているところでございます。
これを採用した経過でございますが、一つは昨年来専門家の研究会を開催していただきまして、日本でもこれを採用するのがよろしいであろうと、こういう結論が得られたのが一つと、諸外国、特にイギリスとカナダを参考にさせていただきましたけれども、そこにおける実施の実績あるいは再犯防止の効果等々をいろいろ検討いたしまして、この方法を採用しようと、こういうことで決めたものでございます。

なおかつ、従来から性犯罪にいろいろ関心を持っている現場の実務家もおりましたけれども、彼らの意見もこれに賛同するということで、取りあえずこれから始めてみようと、こういうことで今年度から開始したというものでございます。

 

 

 

 

 

 

○前川清成君 小貫局長で結構ですので、もう少し分かりやすく御説明を願えたらと思うんですが。
要するに、その認知のゆがみに気付かせるんだということなんですけれども、その前提として、じゃ性犯罪、特に子供を対象とする性犯罪については、認知のゆがみがそもそも犯罪の原因だというふうに考えていますというところから御説明いただかないとちょっと腹に落ちにくいというのが一点と、それと、簡単に分かりやすくで結構ですから、その認知のゆがみを矯正するためにどうしているのかということも御説明いただかないと、ああなるほどと、なかなか納得するわけにはまいりません。

あの二〇〇四年の事件があって、私も奈良の少年刑務所の見学に行かせていただきました。奈良の少年刑務所というのは、この十八年四月以降の矯正プログラムの実施に当たって、川越の少年刑務所でしたっけと並んで二つ、二か所拠点になった刑務所です。しかし、その刑務所でさえ、その二〇〇四年の十一月当時ですけれども、性犯罪者を集めてビデオを見せていますと、あるいは反省文を書かせていますというような御説明だったんです。一緒に行った同僚議員らとそのときに感想を述べ合ったのは、ビデオを見せただけで、反省文を書かせただけで、それはその犯罪、特に特殊な犯罪といいますか、子供たちを被害者にするような特殊な犯罪が矯正されるというふうにはなかなか思いませんでした。
その点、この二点について御説明をお願いできますでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(小貫芳信君) 専門家じゃありませんのであるいは分かりにくい説明になるかもしれませんが、私が理解した限りで御説明させていただきます。
例えば、小児に対するわいせつ事犯を例にして考えますと、こういう場合に往々にして相手は子供だからどうせ忘れるだろうと、こういう思い、これを認知のゆがみと申し上げておりますが、こういう考えを持っている者がおります。このような場合に、まずそれが事実と全く違うんだよということを理解させる努力をいたしまして、その上で、本人のこのような考え方が性犯罪を行う抵抗感を低めさしていると、このことを十分に説明させて、自らの意思でその行動認知の変容を図るように働き掛けると、こういうことでございます。
具体的にどういうふうにするんだと、今はビデオを見せるというかつての例を挙げて御説明いただきましたけれども、この手法では、働き掛けの手法としてはグループワークが中心になっております。その際、極めて重要なことは、このグループワークを主宰する者の主宰者、正にインストラクターと言われるか、あるいは指導者と呼んだらいいのか、この者の研修あるいは養成でございまして、当局といたしましては、そういった専門家、実務専門家を養成することに今力を注いでやっておると、こういう実情にございます。
以上でございます。
○前川清成君 ちょっと私もなかなか分かりにくい御説明だったんですが、早く信託に入らないといけませんので、このぐらい、また別の機会にさせていただいて。
ただ、ちょっと今日は警察庁にも来ていただいていますんで、もう一つだけ、子供たちを守るという観点で法務省そして警察のお取組をお聞きしたいんですが、出所者情報の提供も、これが始まりました。これは、法務省から出てきて、法務省から警察庁に対して受刑者の出所情報を提供するということで、これがある意味、実際に犯罪が起こってしまったときに、犯人の目星を付けるというか逮捕するのに便利になるというのはよく分かるんですが、被害の防止に役立つのかどうか、この辺がよく分かりません。この点、警察庁からお伺いしてよろしいでしょうか。

○政府参考人(竹花豊君) 御指摘の出所者情報にかかわる制度でございますけれども、法務省から提供を受けました情報を関係の都道府県警察に連絡をいたしまして、都道府県の警察の再犯防止担当官が出所者の所在を確認をすることになるわけでございます。
しかし、こうした確認の作業、あるいは再犯を防ぐ上で取るべき活動というのは、この出所者の社会復帰でありますとか更生ですとかを妨げるようなものであってはなりませんし、またプライバシーを侵害するものであってはならないという、そういう意味で当然の制約が伴うわけでございまして、例えば隣近所を聞き回ったり、そうしたことはしてはならないこととして都道府県警察を指導しているわけでございます。

 

 

 

 

 
その意味では、この所在の確認も完璧を期せるか、あるいは二十四時間監視しているわけではありませんので、その再犯を完全に防げるかということになりますと、そこはおのずから限度があるわけではありますけれども、しかしながら、この間の制度の運用を通じまして、私ども、それとなく彼らの所在を確認し動きを見ているということが直接的なその原因になっているかどうか分かりませんけれども、幸いこうした、得ました出所者情報にかかわる出所者が非常に重大な子供に対する性犯罪を起こしたというような状況にはございませんで、その点では、こうした制度もそれなりの効果があるのではないかというふうに私どもも考えているところでございます。

 

 

 

 

 
○前川清成君 最後に、この問題については最後になりますが、私は、実は富雄も管轄する奈良西警察署管内に暮らしています。富雄北小学校の事件があってから、妻が、携帯の電話のメールで登録をしておきますと、警察からどこどこで変な男の人が小学生に声を掛けましたとかそういうメールが届くようになって、ああ、気を付けなきゃいけないなと、これ一応の安心が得られるようになりました。

また、非常にくだらぬことなんですが、私は十五年前に結婚をしまして、そのときに妻が友人からお祝いにということで自転車をもらいました。十五年前のその自転車、実は今もあったんですが、つい先日泥棒に取られてしまいました。ちょうど犬を飼い始めて二日目か三日目だったんですけれども、犬が鳴きもせずに、ガレージを開けたまま妻が車で出掛けましたところ、昼間だったんですけれども、その十五年前のぼろい自転車が盗まれてしまいました。一応、昼間の泥棒なんで、妻が交番に泥棒に遭いましたということを届け出ましたところ、もちろん犯人は見付かってもいないんですけれども、毎日のようにパトロールに来ていただくようになりました。パトロールに来ていただいたかどうかってなぜ分かるかというと、ピンク色の紙がポストに入っていまして、西大寺交番かな、西大寺交番ですと、何の異常もありませんでした、どうか安心してお休みくださいというようなメモが入っているんです。それが、実は先日、奈良西署でお伺いしましたら、富雄北小学校の事件以来、そういう防犯活動に警察としても一生懸命取り組んでいるんですというようなお話がありました。

 

 

 

 

 
そこで、ちょっと警察の方にお聞きしたいんですが、現場の警察官の方々はこういうふうに防犯、子供たちの安全を守るということで一生懸命頑張っていただいていると思うんですが、それを妨げるような何か問題がないのかどうか、その点是非この機会にお伺いしておきたいと思います。

○政府参考人(竹花豊君) 現下の子供をめぐる状況、犯罪に巻き込まれる子供たち、被害者にもなり被疑者にもなる、あるいは児童虐待の問題、いじめの問題等々、子供をめぐる状況が非常に緊迫したものだと私ども思っておりまして、この問題、非常に大事な問題だと機会あるごとに一線にも言っているわけでありますけれども、今、一線でこうした問題に対処する上で非常に大変だといいますのは、やはり警察に対する期待が非常に大きい中で、それに十分こたえ得るだけの体制が必ずしも十分ではない、そのことをどうクリアしていくのかという問題が一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、やはりこの問題は社会全体で取り組んでいただかないと警察だけではどうしようもないではないかということで、やはり多くの地域住民の方々、子供の問題について言うならば、学校等もそうでございますけれども、そうした関係機関や地域等の連携を広げていくということを警察としても相当努力をしていかなければならない。幸い、この点については受けていただける状況が今ございますので、かなり広がってはいきますけれども、今後継続してこういう取組が地域社会全体として続けていけるだろうかと、そういうところについては今後警察としてももっと努力が必要だなと。そういう意味で、やるべきことは非常にたくさんある中で、しかし子供の問題であるから何とかしていきたいということが一つでございます。
もう一つ、これは警察全体として、この奈良の事件でもそうでございますけれども、子供に対する犯罪を引き起こす社会環境といったものについてもやはり注目をしていただきたいという思いを持っております。

 

 

 

 

 

この奈良の事件の判決では、この犯人は高校二年生のときに見ましたアダルトビデオ、これは子供を性暴力の対象とするビデオでございますけれども、このことを見たことがきっかけになって子供に対する性犯罪に傾斜をしていくことになったことが指摘をされているところでございます。現状、この種の情報ははんらんしていると言っても過言ではない状況がある中で、やはり間違いを犯す犯人が今後もなお生み出されていくことを懸念している状況もございます。そうした問題も含めて、警察としても努力をしていきたいけれども、社会全体として努力が必要ではないかというふうに考えているところでございます。
○前川清成君 ありがとうございました。
警察庁に対する質問は以上ですので、どうぞお引き取りいただいて結構でございます。
それでは、信託の問題に入っていきたいんですが、寺田局長にお尋ねします。
福祉型信託という言葉がありますが、法律上の用語でないということは承知しておりますが、福祉型信託、これについて御説明をお願いしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、福祉型信託というのは、法律の概念では厳密に言うとないわけでございますけれども、一般的に、保護に値する個人、これを信託を利用いたしましてできるだけ財産的にも保護したいという、そういうニーズがあり、それに対応できる形での信託の利用をこのように呼んでいるわけでありまして、具体的には高齢者や障害者のために財産管理をする、あるいは親がない後のその子供である障害者、これがケアを要する場合に、その扶養のために信託を設定する、こういうようなものが福祉型の信託と呼ばれているわけであります。

前者の高齢者等の場合について申し上げれば、将来自分が必ずしも判断能力が十分でなくなる、あるいは少なくとも財産管理を行うようなことは非常に難しくなる状況が想定される、その場合に信託を設定して、自分の財産とは切り離した形で持ってもらっていて、それで自分の将来が危なくなったときに、その財産は確実に自分のために使われるということを確保していくと、こういうようなものが一つ考えられるわけでございます。

 

 

 

 

 
そもそも信託は、委託者がいったん目的を設定して受託者に財産管理をゆだねると、その後は、仮に委託者が破産をしたりいたしましても信託財産が対象にならないという制度でありまして、倒産隔離と言われているわけでございますけれども、こういう機能を福祉目的に利用する、これが福祉信託であろうというふうに考えられるわけでございます。

○前川清成君 先ほど岡田委員も触れておられましたけれども、平成十六年の信託業法の改正に当たりまして、衆議院でもそして私たち参議院でもこの福祉型信託に関する附帯決議がありました。この附帯決議がどのような趣旨であって、それを政府としてどのように受け止めておられるのか。さらには、今回の改正に盛り込まれているならば、盛り込まれているのか。この三点、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(畑中龍太郎君) お答えを申し上げます。
先ほども御答弁をいたしましたが、十六年の業法改正のときに、衆参の財金委、参議院では財政金融委員会でございますが、御指摘の附帯決議をいただきました。また、先般、本年の十一月十六日、衆議院の法務委員会における附帯決議でも福祉型信託について御指摘をいただきました。その担い手を含めて幅広い観点から検討を行う旨の御指摘でございまして、私どもといたしましては、その附帯決議を踏まえまして、今後真剣に検討をしていきたいと考えております。
その次の御質問、今回の信託業法の改正は、信託法の改正に伴って、その範囲内で措置をする改正でございますので、今回の業法にはこれに関連した規定は盛り込んでいないところでございます。

 

 

 

 

 

 
○前川清成君 平成十六年の衆参の附帯決議ですが、次期法改正に際してはと、こう書いてありまして、今回、正に信託業法も改正されるんですが、今回も次期改正に当たるのではないかと、こういうふうにお尋ねするのは意地悪なんでしょうかね。
この点は、もしお答えいただくならお答えいただくにして、畑中さん、お尋ねしたいのは、この福祉型信託に対して、信託銀行がどうこうとか、そういう業界じゃなくて、国民の皆さん方がどういう期待を寄せておられるのか、金融庁がどのように理解をして進めておられるのか、その点をお伺いしたいんです。ニーズというか、期待というか。

この二点よろしいでしょうか。もし答えられなかったら、後ろの点だけでも結構です。

 

 

 

 
○政府参考人(畑中龍太郎君) お答え申し上げます。
第一点は先ほどもお答え申し上げたつもりでございましたが、今回の信託業法の改正は、信託法の改正に伴って必要となった部分、これに限定して改正を行っておりますので、今委員が御指摘ございました信託業法の改正というのは、十六年の改正のときに附則で定められました三年以内ということで、十九年ということになりますので、そういうことを念頭に置きながら検討をしていくということでございます。

それから、第二点目のどういった受け止め方で検討するのかということでございますが、これにつきましては、いわゆる福祉型信託につきましては、高齢化社会が進む中でニーズの増加が予想されるところであり、この高齢者の将来の生計を維持するために一定の財産を信託するということを業として営むことについて検討してはどうかという御指摘があることは十分承知しているところでございます。

 

 

 

 

 
○前川清成君 いやいや、そういうことじゃなくて、もっと何というか、生々しく当事者の立場になって考えていただいたら分かるけれども、例えば、障害を持つお子さんを持っているお父さん、お母さんにとっては、自分が死んだ後この子供がどうなるのやろと、それが御心配なわけです。財産は残せるけれども、自分が死んだ後、障害を持つ子供たちではこの財産ちゃんと運用していけない、世の中に悪いやつ多いと、だまされて取り上げられてしまって路頭に迷うんじゃないか、そんな心配をしておられる。そんな心配のために、いいスキームとして信託があるからそれを何とか活用できないかと。

あるいは、高齢社会の問題でも、今若いとき頑張ってお金をためましたと。でも、年を取っていってだんだん痴呆になってうまくできなかったら困ると。高齢者をねらい撃ちにしたようなリフォーム詐欺とかもある。そんなのにだまされたら困るから、だれかしっかりした人に自分の財産の運用を任せたいと。そういう切実な願いが国民の間にあるというようなことは、法務大臣はお分かりいただけますよね、政治家ですから。そういうことをやっぱり考え、お答えいただかないといけないし、そういうことに踏まえて御議論や御準備をしていただかなければならないと私は思います。

 

 

 

 

 

すみれ
「リフォーム業者から勧めてもいいかも。安心感を持ってもらうために。」

 

 

 

 
それで、先ほど、まさしく畑中さんから、担い手の問題、福祉型信託については担い手の問題を岡田委員の質問に対してお答えになりました。それで、今これから少し信託の担い手の問題を議論させていただきたいと思うんですが、今、信託の受託者、これはきっちりとした統計はないのかもしれませんが、どの程度の割合で信託銀行が占めているというふうに考えればよろしいでしょうか。
○政府参考人(山崎穰一君) お答え申し上げます。
平成十八年三月末の信託の受託状況でございますが、信託財産総額六百五十二・八兆円のうち、信託銀行は六百四十九・四兆円となっておりまして、信託銀行の占める割合は九九・四%となっております。

 

 
○前川清成君 よく分かりました。
それで、その九九・四%ですかね、九九・四%を占める信託銀行ですけれども、この福祉型信託においてはどのような役割を果たしているんでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 私どもが承知している範囲では、現在の信託業法の下で信託銀行が行っておられる信託のうち、福祉型と考えられるのは、一つは、主として高齢者や障害者等が受益者となることを想定した特約付きの金銭信託と呼ばれる信託でございまして、これは特約等で様々なことが決められるわけでございまして、資産の管理運用を専門家たる第三者にゆだねて資産の有効活用を図るとともに、いろいろな財産の管理上不都合なことが起こらないようにすると。あるいは、自己の生前、死後の財産の使用目的、処分方法を決めて、これに従って第三者が信託財産の管理処分を行うことによって資産を活用することができるという、こういうニーズに一定の範囲で対応をしているというように理解できるわけであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからもう一つは、特別障害者扶養信託と呼ばれる信託があると聞いております。これは、重度の心身障害をお持ちの方の生活の安定を図ることを目的として親族、篤志家等の個人が委託者となって金銭等の信託を信託銀行に行うものでございまして、これは六千万円を限度として贈与税が非課税となるために特別障害者の方の生活安定の援助を行うニーズにこたえていると、このように承知しているわけでございます。
○前川清成君 今の寺田局長の御説明によると、自己信託の必要性とかというのはなくなってしまうんじゃないですか。
○政府参考人(寺田逸郎君) これはなかなか難しいところでございますけれども、おっしゃるとおり、一定の範囲でこういうものが利用できる方はおいでになるわけであります。
しかし、具体的なニーズ等、具体的な生活環境の中で果たして信託銀行にすべてこれをゆだねて、このことで財産管理やることですべて納得されるかというと、必ずしもそういう方ばかりではありませんで、やっぱり自分が生きている間は自分が管理してあげて、しかし倒産のリスクからは隔離した財産は確保したいという方がおいでになるわけでございますので、やっぱりそういう方にとっては、コストも非常に安いということも考慮いたしますと、この信託銀行の制度があるから自己信託というものの福祉的な利用というのがおよそ非現実的だということはないというように私どもは聞かされております。
○前川清成君 今日はなぜか寺田局長は業界の肩を持つのであれですけれども。

 

 
これは法務省からいただいた信託法見直しのポイントという資料です。この何枚目かに自己信託のことについて説明していただいてます。例が挙げてあります。身体障害や知的障害を抱える者の生活をサポートする場合を例に挙げて、なぜ自己信託がいいのかと。利点として、障害者の具体的状況に応じてそれにふさわしい対応ができると。きめ細かいサポートが可能になると。信託会社に委託する場合に比べて小口の財産でも信託の利用が可能になると。これは法務省自らが作成された資料に書いてあることなんです。

ということは、信託銀行は今、少なくとも、小口の財産であれば、小さな金額であれば信託を受け付けてくれないという現実があること、これは否定できないはずです。また、きめ細かいサポートもしてくれない、あるいは親身になって対応してくれてない、だから自己信託を導入するんですと法務省自ら言っているんですよ。それにもかかわらず、今の寺田局長の答えは、自らの説明と矛盾しているんじゃないですか。

 

 

 

 

 

 
大臣、今の私と寺田局長とのお話を聞いていただきましたでしょうか。私は、信託銀行がすべて悪いと、こういうことを言っているんじゃありません。しかし、九九・四%、正に信託の市場を信託銀行が占めている。占めているんだから、九九・四%を占めているんだから、その社会的な責任として、もうからぬこともやります、小さな仕事もやります、きめ細かに親身になって一生懸命やりますというのならいいけれども、そうでないのであれば、この信託の担い手を広げていかなければならないのではないかと、こんなふうに思っています。
大きな話、商事信託の隅々まで信託銀行を締め出せとか、そんなラジカルな話をするつもりはさらさらない。さらさらないんだけれども、少なくとも福祉型信託については信託銀行は十分機能していない、一生懸命頑張っていない、せめて法務大臣、この点はお認めいただいたらいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 
○国務大臣(長勢甚遠君) 頑張っているかどうかということよりも、業としての体制上利用者のニーズに合っていないというか、またそれに対応し切れないという部分があるということは寺田局長も言ったとおりでありますし、ただ今後、そういうことに御努力いただく部分も出てくるんではないかなとは思います。
いずれにしても、今後、福祉型の信託というもののニーズも高まってまいりますし、必要性も高いわけでありますので、それが円滑に、かつニーズに合った形で実現されるようにいろんな工夫をしていきたいものだと思います。

○前川清成君 それで、福祉型信託の担い手の話をさせていただきたいんです。
実は、私自身が弁護士ですので、こういう話をするのは何か言いづらいんですが、その福祉型信託の担い手として例えば弁護士などの法律専門職、あるいはNPO法人等が期待されているというような議論があります。たしか、衆議院の参考人の質疑でもそういう御意見が出てきたかと思います。
しかしながら、弁護士は、今業務として福祉型信託を受託することはできません。およそ信託はすべて受託することはできません。なぜかといいますと、業務として、すなわち適正額であっても報酬を得て信託の担い手になるということは、信託法二条の信託の引受けを行う営業に当たってしまい、そして信託業法のいうところの、信託業法は三条で免許制を取っておりまして、五条二項で株式会社でなければ信託の免許は付与されないことになっています。今私が申し上げたような法解釈で正しいのかどうか、金融庁、お答えいただけますでしょうか。

 

 

 
番人
「自分が弁護士だからか。それはちょっと。」

 

 

 

 
○政府参考人(畑中龍太郎君) お答えいたします。
今委員御指摘のような点で結構かと思います。
ただ、一点。弁護士の方が株式会社を設立して受託会社としてやっていただく分には、現行法でも可能でございますし、そういう会社も一社、一社ございます。
○前川清成君 それじゃ畑中さん、畑中さん、弁護士が株式会社を設立するに当たって許可を取らなければいけませんよね。どこの許可を取らなければならないのか、その許可は取れるのかどうか。御存じだったら答えてください。分からないんだったら余計なこと言わんといてください。答えてください。

○政府参考人(畑中龍太郎君) 弁護士法上の詳細については承知をいたしておりません。

 

 

 

 
○前川清成君 そうしたら、弁護士が株式会社をつくって社長になるって、どないやったらできますの。今あなたが言ったことよ、あなたが言ったことだから、説明してください。
○政府参考人(畑中龍太郎君) 今申し上げましたのは、現行信託業法においては弁護士などが株式会社を設立されて、委員御指摘のございましたように、信託業における業法上の免許を取得していただければ信託の引受けを行うことは可能であるということを申し上げた次第でございます。
○前川清成君 そこから先。僕もこんな意地悪なこと言いたくないけど、あなたが陰険なこと言ってくるから確認せざるを得ないじゃない。分からないんだったら分からないと言って、余計なこと言わんかったらええでしょう。時間。
委員長、答えないんだったらちょっと一回速記止めていただけませんか。(発言する者あり)
委員長、ちょっとこれ、時間あれですから速記止めてください。
○委員長(山下栄一君) 速記止めて。
〔速記中止〕
○委員長(山下栄一君) 速記を起こして。

 

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(畑中龍太郎君) 失礼いたしました。
弁護士法の三十条によりますと、弁護士はあらかじめ次に掲げる各号の事項を所属弁護士会に届け出なければならないというふうになっております。失礼いたしました。(発言する者あり)
お答えいたします。
三十条の第一項の一号で、自ら営利を目的とする業務を営もうとするとき、それについては届け出なければならないということでございます。(発言する者あり)

○前川清成君 どうなるっていうの。どうするの。
じゃ、僕はこれから、今から大阪弁護士会いったら会社の社長になれるんですか。畑中さん、答えてください。答えられないなら答えられないでいいよ。
○政府参考人(畑中龍太郎君) 先ほど申し上げましたのは、信託業法上は、御指摘のとおり、株式会社、担い手は株式会社に限定をされております。
言わずもがなのことを申し上げたと思いますが、弁護士の方がこの株式会社を設立をされるという場合には同じような適用になるということを申し上げたまででございます。
○前川清成君 こんなことで時間を使いたくありませんので、いったん速記を止めていただいて、その上で、畑中さんが先ほどの発言を取り消すということで再開していただいてはどうかと思うんですが、委員長、いかがですか。

 

 

 

 
○委員長(山下栄一君) ちょっと速記止めてくださいね。
〔速記中止〕
○委員長(山下栄一君) 速記を起こして。
○政府参考人(畑中龍太郎君) 御質問のことと直接関係ないことを申し上げました。(発言する者あり)
○委員長(山下栄一君) 速記止めます。
〔速記中止〕
○委員長(山下栄一君) 速記起こしてください。
答弁が不十分なままになっておりますので、この件につきましては、午後もう一度よく考えていただいて答弁をしていただくことにしまして、これで休憩いたしまして、午後一時に再開することにいたします。
午前十一時五十七分休憩
─────・─────
午後一時開会
○委員長(山下栄一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
この際、休憩前の前川清成君の質疑に関し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融庁審議官畑中龍太郎君。
○政府参考人(畑中龍太郎君) 先ほどの答弁につきまして訂正とおわびを申し上げます。
先ほど、現行信託業法においては弁護士などが株式会社を設立して信託業法上の免許等を受ければ信託の引受けを行うことは可能である旨の答弁を申し上げましたが、信託業法上の手続に先立ち、弁護士法上の手続が必要となる旨の御説明が欠落しておりました。

具体的には、信託業法に基づく免許申請手続の前に、弁護士が自ら営利を目的とする業務を営むとき、若しくは営利を目的とする業務を営む会社の取締役等になる際に必要とされる弁護士法第三十条に基づく所属弁護士会への届出を行う必要がございます。
以上につきまして訂正し、おわび申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 
○前川清成君 別に金融庁の畑中さんにその弁護士法上の細かな手続についてどうこう申し上げるつもりはもとより当初からございません。
ただ、私は、先ほど福祉型信託の必要性についてお尋ねをいたしましたときに、畑中さんがやはり作文をお読みになりました。それに対して私は、実際に障害を持つお子さん、障害を持つお子さんを持っておられるお父さん、お母さんの立場に立ったらどうなのか、あるいは御高齢を迎えようとする方々の立場にとって信託はどういう役割なのか、現実にその場に身を置いて考えなければならないのではないかなと、こういうふうに申し上げました。
官僚の畑中さんに嫌みを申し上げますと、自分たちは絶対に手が汚れない、そういうところで空理空論をひねくり回すんじゃなくて、福祉でも、あるいは弁護士の仕事でも自分の目の前にいる人をどう助けるか、どう救済するかというのが仕事であります。

 

 

 

 

 

 

そんなときに、じゃ、今困って何とか信託をしたいという依頼を受けたときに、じゃ、ちょっと待ってくださいと、これから会社をつくりますからと、そんな悠長な話では福祉型信託に対して世の中が求めていることを到底賄うことができないのではないかなと、私はそんなふうに思っています。私……(発言する者あり)ありがとうございます。
私は畑中さんのように優秀でありませんので、世の中のことをすべて分かろうとも思っていませんし、すべて処理しようとも思っていませんが、せめて自分の身の回りだけ、一隅を照らしたいなと、そういうつもりでこれからも頑張ってまいりたいと、そう思っています。

 

 

 

 
それで、今、法務大臣にも御認識いただけたと思いますが、信託銀行が信託の受託の九九・四%を賄っていると。ところが、例えば五百万円程度の信託財産であれば、信託銀行は受託をしないと。そこで、福祉型信託を広めていくためには受託者の範囲を広げていかなければならないけれども、NPO法人にしても弁護士にしても、担い手として期待されている業種が信託業法の規制によって参入することができない現実があります。この点も踏まえて今後の法改正を是非御検討いただいたらいいのではないかなと、こんなふうに思っています。
それで、ちょっと確認を一点だけ、この問題について最後に確認だけをさせていただきます。
これは通告ももちろんしていますが、信託業法の改正案の二条の中に今回、括弧書きが入りました。この括弧書きの意味、そしてここにおいては政令で定めるものを除くと、こういうふうに書いているんですが、どのようなものを政令で指定することが予定されているのか、この二点、お尋ねをいたしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(畑中龍太郎君) お答えを申し上げます。
今御指摘の改正信託業法第二条の括弧書きにおきましては、他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって、その内容等を勘案し、委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを信託業の定義から除外し、信託を一般のルールに服することを明確化しているところでございます。
これは他の取引、例えば売買などに付随して金銭のやり取りを行う際に一時的に他人の金銭を預かる状態となることがございますが、このように他の取引契約に基づき受託者義務の適切な遂行が確保し得るなどの理由によりまして、信託業法による保護の必要がない場合についても信託と同様に扱うことを認める判例が過去ございましたため、今回の改正において業法上これは当たらないということを念のため明確化するものでございます。

具体的には、信託業法の規制の対象外となる行為として、政令におきまして、弁護士が事務の処理のために充てる費用として、依頼者から金銭等を預かる行為あるいは公共工事等の前払金を預かる行為、これらを規定することを予定しておるところでございます。

 

 

 

 

 
○前川清成君 確認ですが、ですからこの信託業法の改正案の二条の括弧書きによって、例えばNPO法人や弁護士が福祉型信託の受託が可能になるというわけではありませんね。
○政府参考人(畑中龍太郎君) 御指摘のとおりでございます。
○前川清成君 それで、実は今回の信託法の改正に当たって、私は感想のようなものが一つあります。
一点は、本会議でも申し上げましたけれども、受託者の義務の合理化という名前で、どんどんその受託者の義務を軽減することが可能になっています。先ほどもお答えがありましたように、受託の九九・四%が信託銀行という現実にかんがみれば、実は信託銀行に楽をさせてやるというような意味になってしまいます。また、今申し上げたとおり、その福祉型信託でも、信託銀行が期待される機能を十分には満たしていないにもかかわらず、この信託業法によって信託銀行のギルドが守られています。ですから、今回の信託法の改正、八十何年ぶりかの改正ですけれども、これも信託銀行のための改正と言わざるを得ないのではないかなと、そんなふうに思っています。もちろん、そのこと自身は法務大臣も御否定になると思いますけれども。

 

 

 
すみれ
「ギルド?権益みたいな意味かな。」

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと昨日の夜、念のためと思いまして法制審のメンバー表を見せていただきました。法制審議会の信託法部会、この中には寺田局長も入っておられますけれども、大体、学者のほかは銀行や信託銀行の社長さんあるいは部長さん、ごめんなさい、社長はいませんでした、信託銀行の方々や銀行の方々ばかりです。

対比で法制審の保険法部会のメンバーを見ました。これには大学の教授はもちろん入っていますし、あるいは保険会社の部長等も入っていますけれども、例えば消費生活相談員であるとか、あるいは連合の、労働組合連合の政策局長といったような事業者側ではなく保険の利用者側も随分含まれています。

この点、ちょっと昨晩、ごめんなさい、昨日の夕方には通告してないので大臣にお尋ねするのは誠に恐縮なんですけれども、法制審あるいは審議会のメンバーを今後選んでいただくに当たっては、そのバランスといいますか、事業者と消費者といったようなバランスも是非是非御勘案いただかなければならないのではないかと、私はそんなふうに思っています。

 

 

 

 

 
金融庁の例に関して申し上げれば、今度、貸金業法案が是非この国会で成立してほしいと私も願っておりますけれども、その貸金業法案の前提となった金融庁の貸金業に関する懇談会、これもアコムやレイクやサラ金の社長、カード会社の社長は金融庁が設置した貸金業に関する懇談会のメンバーには含まれていたにもかかわらず、実際にお金を借りる人たち、カードを利用する人たち、消費者側の委員はだれ一人も入っていなかった。私は、それはちょっとおかしいのではないか、バランスを欠いているのではないかというようなことを以前国会で申し上げたことがあります。

大臣、この点、今後、審議会や法制審のメンバー等に当たっては、是非バランスも御考慮いただきたいと思っておるんですが、大臣、いかがでしょうか。

 

 

 

 

すみれ
「法律によって違うんだね。」

 

 

 

 

 

 
○国務大臣(長勢甚遠君) 審議会では、当然その事案事案によって趣旨も異なる場合があるかとは思いますが、専門的なきちんとした議論が行われると同時に、国民の皆さんに納得できる結論を生み出す構成であるということが大事だと思います。
そういう意味で、今御指摘の点は、どういう経過かは私は存じ上げませんけれども、一般論として、一般的に皆さんが納得できるような構成であって、しかも専門的なきちんとした議論ができるような構成になるように私どもも努力していきたいと思います。
○前川清成君 それでは、ちょっと別の論点に移らせていただきたいと思うんですが、今回、信託法案の三十七条で、受託者に対する帳簿作成義務が課されています。
この三十七条の趣旨についてお答えをいただけますでしょうか。これは局長でも結構です。

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) 今回、冒頭に大臣が申し上げましたように、信託法のいろんな見直しをしているわけでありまして、先ほど前川委員からもお話がありましたとおり、一方では今の受託者の権利義務、権限あるいは義務の在り方についての見直しをしているわけでありますけれども、当然のことながら、受益者というものの保護というのが一つの大きな論点でございまして、これについて、信託の現実の財産、信託財産についての現状をできるだけ明らかにするということがやはりこれからの信託の在り方として非常に望ましいという、こういう議論が出てきているわけであります。
そこで、その信託をいろんな形で動かす場合に、やはり最後の決め手になるのはこの情報開示の在り方だということで、現行でも三十九条で一定の規定はございますが、それを更に詳細に、受託者は信託債務に対する計算等を明らかにするために信託財産に係る帳簿を作成しなきゃならないと、こういうことを決めて、その信託の内容を明らかにするということをよりはっきりさせようと、こういう趣旨でございます。

 

 

 

 

 
○前川清成君 今の点に付言して申し上げれば、三十八条で受益者の帳簿の閲覧、謄写請求権というのを認めておられて、受託者に帳簿を作成させるのと同時に、受益者に帳簿を閲覧、謄写させて、要するに受託者の業務の執行の在り方、信託事務の執行の在り方を監督すると、こういう手段の一つということでよろしいですよね。
○政府参考人(寺田逸郎君) そういう実効性を高めようということでございます。

 

 

 

 

○前川清成君 そこでお伺いしたいんですが、何度も繰り返しますように、受託者のほとんどが信託銀行であります。そこで、そのプロである信託銀行が、例えばですけれども、あってはならないことですが、帳簿にうそを書いてしまう、すると信託の利用者である委託者や受益者の方は素人ですから、そのうそを見抜くことというのはほとんど不可能ではないかなと、私はそんなふうに思います。
それで、この三十七条で作成が義務付けられた帳簿にうその記載があった場合には、虚偽の記載があった場合には、信託法案の二百七十条の一項六号によって過料が科されることになっています。過料というのは刑罰の科料じゃなくて過ち料の過料が科されることになっています。

それで、過料というのはですが、例えば出生届は生まれてから十四日以内に出さなければなりませんと、こういうふうに定められています。それを一日うっかりして十五日目に出してしまうと、やっぱりこの過ち料の過料が科せられます。

 

 

 

 
ほとんどうそを見破れない、素人にとってはほとんどうそは見破ることができない信託銀行が帳簿にうそを書いちゃった、それによって多大な損害が発生するかもしれない、それについて過料。出生届が一日遅れた、これも過料。私は違法性のレベルが随分違うんじゃないかな、そのうその帳簿を、帳簿にうそをついた場合にはもっと重いサンクションがあって当然ではないかなと、こんなふうに思うんですが、いかがでしょうか。

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、この帳簿を適正に記載されるということは非常に大事なので、それを担保する一環といたしましてこの過料の規定を新設したわけであります。
これをできるだけ重くするということになれば、それでサンクションとしては強くなるわけでありますけれども、過料にとどめておりますのは、会社法でありますとかあるいは一般社団法人法ではこの種の帳簿への虚偽事実の記載に対しては過料の制裁がありますので、そういうバランス上、ここでも過料にしているわけでございます。
○前川清成君 いや、ほかの法律とのバランスというのももちろん分かるんですが、違法性の大きさが違うんじゃないか、実際にうそを書かれてしまったときの被害の大きさが違うんじゃないでしょうかというようなことを申し上げているんです。
この過ち料だけで本当に帳簿に関する真実の記載というのが担保されるというふうに法務省はお考えなのかどうか、お聞きしたいと思います。

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) もちろん、こういう真実の記載の担保というものの在り方というのはいろいろあろうかと思います。それをここでは、刑罰あるいは過料という限度ではどういうものが適当かということで過料にいたしておりますので、それはもとより、例えば今委員がおっしゃったような信託銀行がこのような記載を適正に行うかについてのすべてのサンクションがここで示されているわけではありません。つまり、業法上のサンクションというのも別途あり得るわけであります。

ただ、一般の例えば、先ほど来度々申し上げて恐縮でございますけれども、ちょっと伯父さんにこの間の財産の管理をしていただきたいというような民事のごく小規模の信託というものも含めてトータルに考えた場合に、やはりここはそれほど重大な刑罰というのは無理ではないかなというように考えているわけでございます。

 

 

 

 

 
○前川清成君 寺田局長の御意見もよく分かります。信託業法と相まって真実性を担保したいと、こういう御趣旨かと思います。
それでしたら、この点、そういうお答えを昨日聞いていませんでしたので通告していませんが、寺田局長でもあるいは金融庁でもどちらでも結構ですが、今、寺田局長がおっしゃったような信託業法上の手当てはあるのかないのか、お尋ねします。

○政府参考人(山崎穰一君) お答え申し上げます。
金融庁といたしましては、信託銀行については適正な業務遂行が、今おっしゃったような点も含めまして今後とも適正な業務執行が行われるように引き続き厳正に検査、監督を行っているところでございまして、その結果問題が発見されれば適正な対応を取りたいと考えてございます。

 

 

 

 
○前川清成君 違うんです。私の質問聞いていただきました、その質問について。

○政府参考人(山崎穰一君) お答え申し上げます。
信託業法二十七条に、その信託財産について信託財産状況報告書を作成しろという規定がございます。これに違反しました場合には罰則がございます。(発言する者あり)済みません。突然の御質問でございますので、申し訳ございません。
読み上げます。今のに該当しましたものは、六月以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金ということでございます。
失礼いたしました。

 

 
○委員長(山下栄一君) 正確に答えてくださいよね、これから。
○政府参考人(山崎穰一君) はい。
○前川清成君 それでは、ちょっと自己信託に関して議論をしていきたいと思うんですが。
もう一度、この自己信託の必要性、今回自己信託が新たに認められましたけれども、この自己信託の必要性についてもう一度確認をさせていただきたい。
○国務大臣(長勢甚遠君) 自己信託を今度新たに設けるわけでございますが、一つは資金調達の便に供する必要がありますのと、もう一つは、特に民事的な利用の観点から、先ほど来話題になっております、身体障害や知的障害を抱える子供の生活を経済的にサポートしようとするために、親が自らの有する財産の一部を自己信託をするということが挙げられると思います。
度々議論になっていますが、障害を持たれる親の方々が子供に財産を贈与するということもできますけれども、それでは障害者自身が管理をするということが困難であるということもありますので、そのような場合には自己信託を利用するということによって、親自身が財産の管理を行いながら子供の生活に必要な給付を行うことができるというメリットがあると考えておるわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

○前川清成君 そういう自己信託の必要性というのは私も分からないわけではないんですが、ただ、その信託法案の第四条が、信託の効力発生要件として、自己信託に関しては公正証書あるいは確定日付を要求しています。この点、午前中の岡田委員の質問に対しても、強制執行の免脱を防止する意味からバックデートさせないんだというような趣旨のお話がありましたけれども、本当にそうなのか。
例えば、信託財産として不動産を信託するのであれば、対抗要件としての登記で処理できるはずであります。あるいは、お金を信託するのであれば、預金通帳の日付、これ自身は改ざんすることはできないはずであって、この信託法案の四条がやっているように、公正証書や確定日付という構成ではなくて、対抗要件あるいは立証方法の問題として処理することが可能ではないかなと、私はそう思っているんですが、この点、いかがでしょうか。

 

 

 
すみれ
「対抗要件と成立要件は、一緒の方が他の分かりやすいってことかな。」

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) その自己信託の要件として、要件を課せば課すほど利用は難しくなるわけでありますから、公正証書というのはちょっとハードルが高過ぎるというような御意見も確かにないわけではございません。しかし、他方、この自己信託については非常に新しい型の信託でございまして、その利用についての濫用の懸念というのはかなり一方では示されたわけであります。

そこで、私どもといたしましては、とりわけ執行を免れるという先ほど申し上げました懸念というものに対する対応としては、やはり公的な措置が必要だろうということで、証明としては、委員のおっしゃるとおり例えば銀行預金の日付というようなものも証明書などとして考えられるわけではありますけれども、定型的に公的な手段を設定して、その点での安全を図ろうと、こういう趣旨で法制審議会でも御議論はあったわけでございますけれども、こういう措置にしているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

○前川清成君 公証人をかませることが定型的に安全な措置、安全を図る措置なのかという点についてはちょっとこの後しつこくお尋ねしてみたいと、こういうふうに思っているんですが、実は昨日、公正証書を作成する費用が一体どれぐらい掛かるのかというふうに思いましてインターネットをあちこち調べておりますと、例えばですが、公正証書作成代行センターとかあるいは公正証書作成相談室というような機関があって、実際に活動し代金も取って営業していることが分かります。
公証人あるいは公証人役場というのは法務省が管轄しておられて、公証人役場で何か不祥事があれば長勢大臣が被告になって国賠訴訟が起こされてしまうわけですけれども、この公正証書作成代行センターとか公正証書作成相談室、もちろんこれには法務省かかわっておられないだろうとは思うんですけれども、こういう名前の機関がほかにもあるのかもしれません、私はたまたまインターネットで見たらこの二つが目に付いただけですが、ほかにもあるのかもしれません。こういう機関というのは致し方ないということで放置せざるを得ないのかどうか、ちょっとその辺お伺いしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) これは、私どもも、もちろん法務省も関与してございませんが、インターネットを検索いたしますと確かに存在する団体のようでございまして、その限度で承知しているわけであります。
実態はよくしたがって分からないところでございますが、基本的には、依頼者の方が御自分で公証役場に行っていろいろ作業をなさるということを、あらかじめもう少しやりやすくするためのいろんな準備行為というのをこの団体がなさっているようでありまして、現実になさっておられるのは行政書士ですとか司法書士の皆さんのようでございますが、したがってこれについての規制は何もない状況ではございます。
今私が申し上げましたような専門士業の方々がそれぞれ相当なことをされれば、その専門士業の方々としてのもちろん何らかの措置というのはあり得るわけでございますけれども、こういう準備行為自体を一般的にやることについて、特に私どもとして何らかの措置が必要だという現在のそういう苦情というものを把握しておりませんし、今のところはそういう状況にとどめているところでございます。

 

 

 

 

 
○前川清成君 例えば、行政書士の方とか司法書士の方とか、今名前が出ましたので申し上げましたけれども、そういう士業の方々が公正証書作成の準備行為に携われるということはこれは当然のことですし、むしろ市民の方々の公正証書利用の利便に資するものですから、それは私は結構ではないかと思います。
ただ、一点申し上げたいのは、公証人役場に行って公正証書を作るには、公証人は手数料は取るけれども実は中身については何もやってくれない。だからこういうような機関ができてしまう。あるいは、弁護士であってもあるいは司法書士であっても行政書士であっても、こういう機関をつくらなくてもそういう仕事をしているというのは、むしろ公証人役場あるいは公証人の仕事がもっと親切だったらいいのになというふうな疑問につながっていきます。
結局、公証人がやってくれるのは判こを押すだけ。依頼者が、嘱託人が持っていった文書をワープロに直して判こを押すだけ。それで高い手数料を取るのはいかがかなという問題点があるのはまず一つ御指摘申し上げたいことと、私が今お尋ねしたかったのは、こういう仕事がけしからぬどうこうと言っているのではなくて、あたかも公的な機関と思われるような、あるいは誤認されるような名称を使って商売をすると、これが無制限でいいのかどうか。そうしたら、例えば私の法律事務所の名前を東京地方裁判所法律事務所というふうにしたら、きっと、まあ仲間内で笑われますけれども、裁判所も文句を言ってくるだろうと、こういうふうに思います。その点どうなのかというコンテクストでの御質問なんです。いかがですか。

 

 

 
ポリー
「手数料はもう少し下げてもらえると助かりますね。それかもう少し役場の数を増やしてもらえれば今の料金でもいいです。」

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) これはおっしゃるとおり、公的な機関の名称を私的な機関がどこまで付せるかという問題でもあろうかとも思うわけでございます。ただ、これが仮に公証人何とかとかいうことであれば問題ではございますが、公正証書の作成相談室というようなことがたまたまございますので、これ自体が公的な機関を直ちに想起させるかどうかということについては私どももなおちゅうちょを感ずるので、これを直ちに規制するというような動きに出ることはちょっと難しいんじゃないかなと、こう感じる次第でございます。

○前川清成君 寺田さんのちゅうちょは大変よく分かりました。
それで、実は本会議の際に、今回自己信託について公正証書の作成あるいは確定日付の取得というのを効力発生要件にしているのは、公証人の仕事を増やす、失礼な言い方ですが、法務省にとって唯一の天下り先である公証人の仕事を増やすと、そういう意図はないのでしょうかというふうにお尋ねをいたしました。それについて、実は議事録を読みましたら、大臣の方からはっきりとした否定のお答えはなかったんですが、それは私の質問の仕方が悪かったのかもしれません。

ただ、この場所では一つだけ御紹介をさせていただきたいと思っています。本会議でも申し上げましたけれども、公証人の取扱事件数がここ十年で、平成八年の四百七十四万四千百二十件から平成十七年には二百九十七万三千五百三十五件と減少しています。公証人一人当たりの事件数では、昭和四十三年の二万二千二百八十七件から平成十七年には五千七百四十件、四分の一まで減少しているんです。

 

 

 

 
同じようなことが昭和八年ごろにも起こったそうです。昭和六十三年の五月に日本公証人連合会が「公証制度百年史」という非売品の本をお出しになりました。その中の一節ですが、ちょっと紹介をさせていただきますと、昭和八年以降事件数が激減した、昭和十年からやや持ち直したけれども、昭和十四年に再び減少が始まって、昭和十七年からはひどい数字になっていると。公証人の生活もこの数字の示すとおり下降線をたどったことであろうと。事件の減少を多少でも食い止めるのに役立ったのは、昭和十五年の定款認証制度の開始があると。すなわち、昭和十五年に会社法が改正されて、正確には商法が改正されて定款認証が始まった、これによって公証人の仕事が幾分持ち直したというようなことを実は公証人が自ら、公証人協会自らが認めています。

 

 

 

 

 

番人
「生活は大事ですからね。」

すみれ
「そういえば、定款の認証って何であるんだろ。」

 

 

 

 

 

 
ですから今回、今、寺田局長と議論をさせていただいたとおり、理屈の上では何が何でも自己信託の効力発生要件として公正証書あるいは確定日付ということは必要でないということは局長もお認めいただいたとおりかと思いますが、余りそういう必要もないのに公的な手段で安全を図るんだというような抽象的な理由だけで公証人の関与を認めるというのはいかがかなと、いろんな目があるのではないかなということをまず御指摘だけさせていただきたいと思うんですが、これについては特に答弁を求めるつもりはありませんが、もしお答えになるんだったらどうぞお答えください。

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) 一般論として、そのような疑いを抱かせるようなことがあってはならないことは私どもも十分留意しなきゃならないところであります。

ただ、今回の場合も含めまして、最近の公証制度に対する期待というのは、一方で規制緩和等のことが言われて、事後的チェックとは言われておりますけれども、しかしやはり法的な安定性というものを望みたいと、これは特に最近の遺言の興隆に示されているわけでありますけれども、そういう国民のニーズ、期待も一方でしょっていることもまた否定できないところであろうと思いますので、私どももその全体をよく見まして今後も検討してまいりたいと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

○前川清成君 今、寺田局長がおっしゃるような国民の期待、ニーズがあるということはそのとおりだと思います。
ちょうどいい具合に御答弁いただいたと思うんですが、じゃ、その国民の期待、ニーズに公証人が十分こたえているのかということをこれから少し確認をさせていただきたいと思います。

この前回の本会議の際に、長勢大臣に御答弁をいただきました。私が判例タイムズという雑誌から、平成元年以降、裁判所において公正証書遺言が無効か否か争われたケースが二十四件あると、うち十一件で無効の判決がありましたというふうなことを申し上げましたところ、大臣は、年間六万件作成される遺言公正証書を含め、公証人の行う公証制度については全体としては必要な機能を果たしていますと。ちょっと中略しまして、たとえ十一件とはいえあってはならない事態ですと、こういうふうにお答えいただいています。

 

 

 

 
これをこのまま読みますと、六万分の十一の割合で無効の判決が出ているというふうに読み取れてしまうわけですが、そうではなくて、判例集等に出る判決というのは日本で言い渡されたすべての判決ではありません。たまたま判例集に出た二十四件の中で十一件が無効だったと、およそ五割の割合で無効だった、これは大変高い割合ではないかな、こういうふうに私は考えているところです。もし大臣が六万分の十一というふうな認識をしておられるのであれば、その点は是非お考え直しいただきたい、こういうふうに思います。
それで、公証人の仕事に間違いが多い、その正確性が問題があるということで、動かぬ証拠というのは、本会議の際にも申し上げました、法務大臣自らがなさっておられます公証人役場検閲結果報告というのがあります。これは、公証人役場の記録を実際に抽出された上で、ミスがあるかどうか、間違いがあるかどうか、これを法務大臣が確認されておりますが、その平成十五年度分では、全国に今公証人が五百五十二名いらっしゃいますけれども、三百二十九名の公証人、率にして約六割の公証人が何らかのミスを指摘されている。本会議の際も紹介しましたけれども、中には、委任状に記載のない事項、すなわち作ってはならない公正証書を作っているというようなミスも見受けられました。
寺田局長がおっしゃっているような公的な手段で安全を図るという趣旨からいうと、公証人制度、実は随分問題があるのではないかな、私はそう考えていますし、大臣が本会議でおっしゃったように、公証人の資質について問題はない、こういうふうに大臣はおっしゃっていましたけれども、私はそうではないのではないかと、こういうふうに思っています。
公証人の仕事の正確性あるいは資質について、いま一度お尋ねをいたしたいと思います。

○国務大臣(長勢甚遠君) 公証人が国民の信頼に足るものであるべきことは当然のことでありますし、若干少ないといってでも、そういうことのないように今後とも一生懸命監督その他努めていかなければならないと思っております。
数がどの程度かという点は私もつまびらかにはいたしておりませんので、必要があれば局長から答弁させますが、いずれにいたしましても信頼に足りるような公証人でありますように、一層の努力を払っていきたいと思います。
○前川清成君 是非、平成十六年も平成十七年も、この公証人役場検閲結果報告というのがなされているはずですので、それがあれば是非、報告だけでもせめてお受けいただきたいと思うんですが、大臣、言葉じりをとらえるつもりはありませんが、決して少ない数字じゃないんです。公証人の十人のうち六人は何らかの間違いをやっているんです。これは少なくないと私は思うんです。
それで、私はその本会議の際も、公証人が国民からの期待にこたえられるように、公証人の任用も含めて制度全体を見直すべき時期に来ているのではないかと、そんなふうに考えています。その点は大臣、いかがなんですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) その検閲報告ですか、少し見させていただきますが、どういう内容のミスがあるのかも少し調べてみたいと思いますが、資質について、あるいは制度そのものを見直すべきではないかと。当日も答弁をしたかと思いますが、いろんな方々が広く就任できるように、公募等の制度も今運用しておるところでございますが、後でいろんな意見がおありであれば承って、検討すべきことはしたいと思います。
○前川清成君 それで、ちょっと確認させていただきたいんですが、広島地裁の、昭和六十三年は第一三七号事件というのがあります。これは法務大臣が、法務大臣というか、国の代表者としての法務大臣が被告になって公証人の違法行為について国賠訴訟が提起された事件だと思いますが、この事件で、国は公証人への指導監督を徹底するというふうに約束をしています、和解が成立しています。こんな事件が、実は一件二件じゃなくて、何件もあるらしいんです。
お分かりの範囲で結構ですが、何件ぐらいこの種類の和解をしておられるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) 今、昭和六十三年の事件を挙げられましたが、その後、そのような和解というのも同様にございまして、合計九件で同様の公証人への指導監督について努めるという旨の内容を含んだ和解をいたしております。

○前川清成君 国自身が公証人への指導監督を強めるというふうな和解をしておられるわけですから、国自身、やはり公証人の資質について問題があるということを前提で和解をされたのではないかなと、私はそう思います。公証人制度をそもそもなくせとか、そんな乱暴なことを言っているわけでは決してありません。もし、それを誤解されているのであれば、そういうことではありません。国民の期待にこたえられるように、正確に間違いのない公正証書を作るということが大切なのではないかなと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

それで、先ほど大臣から間違いの内容等も見てみたいというお話がありましたので、私がうろ覚えの範囲で申し上げますと、例えば委任状にない事項は御紹介しました。あるいは、住宅ローンで支払の期間を間違っていたと、二十年後に返していいはずなのに、十年後に返さなければならないというような公正証書ができていたとか。あるいは、金利がゼロにもかかわらず、金利の定めがないというふうな公正証書を作ったと。金利の定めがなかったら金利を払わなくていいのかというとそうじゃなくて、民事法定利率で五%払わなければならないと。これは法律家であれば当然に分かるような間違いを、実は公正証書の中でそういうのが幾つも見付けられたというようなことであります。

それで、ちょっと時間の都合もありますので、金融庁にお越しいただいています。

 

 

 

 
平成十七年に、公正証書の作成に関して旧商工ファンド、現在のSFCGに業務停止命令が出ています。これに関する新聞の報道では、SFCGは金銭借用書の間に白紙の委任状を挟んで、署名した本人が知らないうちにカーボン式の委任状を取っていたと。それによって違法な公正証書を七十五通作成したと、こういうふうな新聞報道があります。

金融庁にお尋ねしたいのは、こういう報道のとおりのような事実で旧商工ファンド、現在のSFCGに対する業務停止命令がなされたのかどうか、その点、お伺いいたします。

○政府参考人(私市光生君) お答え申し上げます。
おっしゃるとおり、平成十七年十一月に業務停止処分を行いました。このSFCGにおきましては、保証極度額の記載のない強制執行供託文言付きの公正証書作成委任状を取得し、さらにこれを用いて、約定の保証限度額を超える金額で公正証書を作成するといった、貸金業規制法第二十条違反事例及び同法第十七条違反事例が認められたものでございます。

○前川清成君 今、難しく説明されましたけれども、要は、署名される本人が知らないところで委任状を取りましたと、しかもそれは白紙の委任状でしたと、しかもそれは契約で定められた限度額以上の公正証書を作りましたと、この三つに間違いがありましたと、こういうことですね。そうでいいんですよね。

 

 

 

 
○政府参考人(私市光生君) そのとおりでございます。

○前川清成君 それで、今のケース、限度額を超えるとか、あるいは白紙の委任状、もちろんそこもけしからぬのですが、委任状、カーボンで委任状取った点について、実は法務省にお尋ねしたいと思います。
今のケース、お聞きいただいたら分かると思いますが、確かに業者、これはけしからぬわけです。けしからぬのですが、カーボン紙で取ったサインと、実際にボールペンで書いた、あるいは万年筆で書いた署名とは、一見して明らかに分かります。それにもかかわらず、公証人はなぜ怪しいと気付かなかったのか。委任状を見たら、それは法律の専門家でなくても、中学生であっても、これはおかしいねと、カーボン式だと分かるはずなんです。公証人が気付かなかったのかどうか。

今、確認をしましたけれども、七十五通もの公正証書が作成されている、少なくとも七十五通について確認されたということであれば、一人の公証人が作ったのであれば、七十五回、カーボン式の委任状を見ているわけですから、当然気付くべきです。あるいは、別々の公証人が作っているのであれば、七十五人の公証人が見落としたということになります。
この点、このSFCGの事件について、法務省は、当該公証人に調査をされたのかどうか。あるいは公証人の言い訳はどうなっているのか、お尋ねをいたします

 

 

 

 

 

 


○政府参考人(寺田逸郎君) これは、御指摘もありましたので、私どももこの点については問題意識を持っているわけであります。
基本的には、そのそれぞれの事案について、カーボン紙であれ、そうであれ、あるいはまたそれに類似するものであれ、契約書の書式全体で作成嘱託の委任状に本当に署名があると、それが債務者本人において分かってやっているのかということが問題になるわけなんで、私どもも公証人からもいろいろお話を伺いまして、公証人としては全体としてそういうお考えで、正しい受件だとお思いになっておられるところもあるわけでございますが、ただ、委任をするかどうかについて、理解がもし御本人に欠けているということになりましたら、これはもう言うまでもなく委任状自体が無効になるわけでございます。私どももそのことを御指摘申し上げたわけでありまして、その後、実際には御指摘のような方法によって、委任状による代理嘱託がされることは避けられたと、今の扱いはですね、そういうような扱いに変わっているというように承知いたしているところでございます。

 

 

 

 

 

 
○前川清成君 寺田さん、僕今お尋ねしたのは、お尋ねした質問は、例えばカーボンとかで取られているわけでしょう、それを公証人は気付かなかったんですかと。その当該公証人に対して聞き取り調査等はなさらなかったんですか、どんな言い訳をしているんですか、どんな弁解をしているんですかという質問ですよ。

○政府参考人(寺田逸郎君) 私どもは今、恐縮ですが、この場ではどういう聞き取りをしているかについての資料を持ち合わせておりません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、これについては適切でないということを公証人の連合会でも申し上げて、公証人の方では、それを理解された上でこのような形による委任状というのを以後お認めになっておられないものだというように承知しているわけでございます。
○前川清成君 いや、この場ではっておっしゃるけれども、これは昨日通知してますよ。通告してますよ。僕はわざわざ、口頭で言ったんじゃなくて文書で出してますよ。その通告書の中に、公正証書を作成した公証人は気付かなかったのですかって書いてますよ。
通告しているんですから答えてください。
○政府参考人(寺田逸郎君) 担当者の話では、これを受けた公証人については話は聞いているということでございまして、公証人としてはカーボンコピーであることは当然承知の上でなさっているというように聞いております。

○前川清成君 大臣、今のやり取りを聞いていただいてましたでしょうか。大臣に対しては、公証人制度を改革していますと。この後、公募の話もさせていただきますが、いろんな説明が入っていると思いますけれども。業務停止が出た事件で公証人本人がカーボンだと認めている。認めてたって何もしてないんですよ、役所は。普通だったら、当該公証人は首になるでしょう。それもなってない。
公証人の改革をこれは政治家がリーダーシップを持ってやらなければならないと大臣お考えになりませんか。ちょっと、その後ろの役人の回したペーパーではなくて、大臣のお考えを是非聞きたい。これ、僕は役所のことを言っているのに、君、後ろから紙回すなよ。失礼でしょう、大臣に対して。

○国務大臣(長勢甚遠君) 事案は私は正確に分かっていませんが、カーボンであったというのを分かった上でやったということですから、カーボンであっても委任の意思があるというふうに公証人の方が考えられたということなのかなと今聞きながら思っていました。
しかし、これは先ほど来話にありますように、国民の信頼を得る上で非常に問題があるということでありますから、きちんとした対応を今後やっていくということにしておるという答えだったような気がしますが、今後こういうことはきちんと監督をしていきたいと思います。

○前川清成君 そのカーボンで正確に委任意思があるなんてことはおよそあり得ないと思うんです。なぜならば、嘱託者はSFCG、私わざわざ固有名詞まで出している。商工ファンドですよ。あの商工ローン国会の日栄とともに中心になった悪徳業者。そこが七十五通も公正証書を作らせている。普通の常識を持っている人間だったら怪しいって考えるはずなんです。それにもかかわらず、ただ判こをぽんぽん押していた。これはやっぱり資質が問題にあるんです。それで、公証人というのが高利貸しの言われるままに執行調書、強制執行を受けてしまう、そんな危険な文書をまき散らす、そういうコピー機であってはならない。
寺田局長や大臣がおっしゃるように、国民が安心して暮らせるように安全な法律上の文書を作る。余人をもって代え難い、そういう能力を持っているのであればそれはそれで構わないと思います。しかし、今のところ大変いろんな問題点が指摘されているにもかかわらず、大臣、これは通告もしていませんので大臣の思いでお答えいただいたらいいんですが、最高裁の裁判官と国会議員と公証人と、この三人の中で一番年収が多いのはだれか分かりますでしょうか。

○国務大臣(長勢甚遠君) 私も副大臣しておりましたので、何か公証人の方は比較的高いという話を聞いた記憶がありますが、最近何かえらく安くなっているという話も聞きますので、よく分かりませんが、まあ国会議員が一番低いんだろうなと思っております。

 

 

 

 

 
○前川清成君 最後のお答えはそのとおりでございます。
それで、今年の十八年四月に裁判官給与法というのが改正をされました。そのときに法務省からいただいた資料ですが、最高裁判事の年収は二千八百六十三万七千四百二十四円であります。公証人の年収ですが、これについては平成十七年の三月二十八日の参議院決算委員会で寺田局長がお答えになっています。平成十七年三月の決算委員会ですから、最近の決算委員会。それで、寺田局長のお答えは、年額に直すと平均が三千三百万円と、平均。遠山清彦議員が、多い人もいるんじゃないんですかというような質問に対して、寺田さんは、売上ベースで申し上げますと一億円を超える者もいますと、こういうふうにおっしゃった。
委員長、売上なんですけれども、これ、公証人役場というのは、事務の方一人とコピー機とワープロぐらいですから、そんなに経費が要るような、仕入れがあるわけでもありませんし、そんなに経費が要るような商売ではありません。だから、これだけの高給を得ながら、高給を得ながらミスが多い、だから公証人制度を改革しなければならないのではないかと、こういうふうに私は申し上げています。
大臣、先ほど公証人の公募の話に言及されました。きっと事務方から、いや、もう改革していますよと、前川あんなこと聞いていますけれども、やってまんねん、公募制も始めましたと、こういうふうな説明を受けられたと思います。
そこで、お尋ねをしますけれども、全国に今、公証人は五百十人、この人数で間違いがないのか。公証人の定数は、定員ですね、それは六百八十八人、これで間違いのないのか。うち、公募公募というところの公募によって任命された公証人はたった一人ということで間違いがないのか。この点、お尋ねします。これ、寺田局長で結構です。

 

 

 

 
すみれ
「公証人ってすごいね。」

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) ちょっと長くなる説明で恐縮でございますけれども、おっしゃるとおり、定員は六百六十名でございまして、それから、現在員が五百人を、そのときによって違いますけれども、五百人をやや超えるところにあるわけでございます。
その中で、公募というのは実はいろんな形でやっておりまして、判検事の公証人の任命も、これ公証人法の十三条でございますけれども、一応、適格性がある人物だということを審査する前提で、公に弁護士も含めて公募者を求めるという形を取っておりますので、形の上では、おしかりを受けるかもしれませんが、これは公募という形を取っております。
ただ、委員のおっしゃる本当の意味は、平成十五年から始めましたこれ以外の特任公証人について、法務局の職員であるとかあるいはその裁判所の職員であるとか以外の一般民間人が現に入った、それで公証人として仕事をしている人数は何人かということであろうと仮に推察いたしますと、それは確かにおっしゃるとおり一名でございます。

 

 

 

 

 

 

 
○前川清成君 だから、大臣、今お答えいただいたとおりで、公募していますと、改革しています、改善していますと言うけれども、京都の司法書士さんが、京都の田辺かどっかですかね、南の方の司法書士さんが公募に応じて舞鶴の公証人におなりになっていると、この一名だけなんだと。

蛇足ついでに申し上げておきますと、例えば東京とか大阪とか、大都市の公証人は収入が多い。最高裁判事を上回るような収入を得られる。ところが、地方の公証人というのは余り収入が多くないというふうに言われています。舞鶴がどうなのかは私は分かりません。
もう少し時間がありますので、自己信託の問題を更にさせていただきたいんですが。
自己信託に限って施行が法律の施行から更に一年先送りにされることになっています。その先送りされる理由については、制度の趣旨や債権者保護のための措置を周知するという理由が一つ。それともう一つは、会計、税務の取扱い、運用を検討し周知すると、この二つを挙げておられます。

 

 

 

 

 

 
制度の趣旨、あるいは債権者保護のための措置を周知するのに法律成立後二年六か月も掛かるということはないだろうと思います。恐らく法務省の本音としては、会計と税務を検討したい。そのための期間がこの二年六月ではないかなというふうに思いますが、税制に関して一体何が問題なのか。また、本会議の御答弁の中でも、大臣は、平成十九年度の税制改正において措置されるというふうにお答えいただきました。平成十九年度といったらもうすぐです。すると、実は二年六月も先送りする必要性というのは全くないんじゃないかと。

聞くところによりますと、自由民主党の部会においてこの自己信託については随分もめたと。そこで、何とか自民党の先生方を抑えるために苦し紛れに二年六月というのを持ち出してきたのではないかなと、私は勝手にそんなふうに思っています。そうではなくて、実際この二年六月が必要な期間だというのであれば、この二年六月の間に税制については何を検討しなければならないのか、そしてどういうような制度を作っていかなければならないのか、会計については何が問題になっているのでどういうような制度を作っていかなければならないのか、この点をお伺いいたします。

 

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) これは衆議院の審議の中でも申し上げましたけれども、御指摘のとおり、この点の施行時期を実質的に一年先延ばしいたしましたのは与党の御議論を踏まえた上でのことであります。
それで、私どもといたしましては、これについての新たな信託であるという性格上くるいろいろな御不安に対して、完全にこれを払拭するというのはこれから先通常のやり方ではなかなか難しいなという認識も持ったわけでございます。
先ほど来いろいろ御説明を申し上げました弊害防止措置に加えまして、さらにいろいろ、特に税、会計について問題点があるという御指摘もありましたので、結果、このようになっているわけでございます。
そこで、具体的に申し上げますと、会計については何が問題になるかという議論が出たかと申しますと、例えば委託者兼受託者の貸借対照表からこの信託された財産というのは自己信託が行われるといつ消えていくのかと、オフバランスになるのかということの時期について、これは衆議院もその後この法案の採決がありました後、一般質疑で会計の御専門の委員会の方がおいでになりまして一般質疑やりましたけれども、その際もそこが一番中心の問題だろうということを御指摘になられたわけであります。

 

 

 

 
もう一つは、税制でございますけれども、これも確かに非常に見えにくい制度であり、自己信託というのは見えにくい制度であるがゆえに税の潜脱が行われる可能性がある。それをどうやって防ぐかということを考えなきゃいけないということでございます。
この点について、十九年度の税制改正の中で手当てを目指してはおりますけれども、しかしそれは信託の税制の全体でございまして、この自己信託についてそこで完全に行われるかどうかについては、まだこの先行きというのは何とも分かっておりません。ただ、一定の措置がそこでとられるだろうということが目指されているということは、関係者の間で共通の理解のようでございます。
そういうような次第で、私どもといたしましては、更に延ばされた一年間というのを非常に重く受け止めて、これについても対応を全体として責任を持っていかなきゃならない部分が当然あるだろうというように思っているわけでございます。

 

 

 

 
○前川清成君 与党の御議論を受けて、本当に必要だということで二年六か月先延ばしすると。それを私たちがとやかく言うつもりは全然ありませんが、これもまた余計なおせっかいかもしれません。与党の皆さんからいろいろ言われたと、それをごまかすために一年先送りしたというんだったら、与党の皆さんもお怒りになるんじゃないかなと、私はそう思うんです。
それで、先ほどの話で、寺田さんのお話で、会計については、貸借対照表からいつオフバランスになるかと、その一点を考えるのに二年六月掛かるんですか。先ほどの衆議院の一般質疑の中では、近々に、企業会計基準委員会の方が来ていただいて、近々に手当てするというふうにお答えになったと聞いています。
また、税制に関しても、先日の大臣の御答弁の中で、自己信託の施行までには税制上云々があって、平成十九年の改正に向けて信託税制全般の見直しの一環として行われるというふうにおっしゃっているので、実は施行までの一年六月の間にすべてできるんじゃないか、それが今までの政府の御説明じゃないかと思うんです。
それは、どの法律でも施行期間があるから構いません。それをとやかく言うつもりは全然ないんですが、更に自己信託だけ一年六月に加えてまた一年先延ばししている、その理由について全然合理的な説明がなされていないのではないかという質問です。

 

 

 

 

 
ちょっと時間がなくなってしまいましたが、最後に一点申し上げておきますと、この企業会計基準委員会というのは財団法人財務会計基準機構というところがやります。全然政府の機関でも何でもありません。そんなところに期限を付すというようなやり方が本当に正しいのか、この二点について手短にお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

○政府参考人(寺田逸郎君) もちろん、税も会計も関係者の方は非常に熱意を持って取り組む姿勢を見せていただいておりますので、それはそれで私どもも非常に有り難いことだと思ってはおります。ただ、この自己信託が何せ新しい制度でございまして、そのオフバランスの問題にいたしましても、それが連結とどういう関係に立つのかというようなことをやはり会計の専門家としては非常に問題にされる余地があるというようにもまた聞いているわけであります。

 

 

 

 

 

 

 
それから、税の問題も、完全に十九年度に一般の信託の問題として扱えるのかどうかということも、私ども今の段階ではそれを目指しておられるということは大変心強くは思っておりますけれども、分からないので、特にこの法案を提出した時点では非常に分かりにくいところであったわけであります。

今後も、なおそういう点について不透明なところがありますので、また、私はこの一年を更に猶予していただいたのは非常に有り難い措置だというようには思っておりますし、またさらにそれが決まりましても、その点について十分その関係者、利用される方にこの点を納得していただく期間というのもまた必要であろうと思いますので、ひとつそういうことで御理解をいただきたいと思います。

 

 

 

 

 
○前川清成君 時間ですので終わります。
ありがとうございました。
○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
信託法の改正についてお伺いさせていただきます。
今回の信託法の改正は八十年ぶりの抜本的な改正でございます。現行信託法が七十五条から成っているのに対しまして、改正法案は二百七十一条と、大変大幅に増えております。今回の改正では、多様なニーズにこたえて様々な新たな信託の類型を創設することなどから、信託は今後多くの国民の方々に利用されることになると思います。それに伴いまして信託法への関心も高まり、また信託を利用する方々及び関係実務者の方々の間で信託法の条文の正確な意味するところ、また条文の趣旨といったものが問題になるケースも増えてくるのではないかと思いますので、私は、主として条文に沿いまして立法趣旨が明らかになるような質問をさせていただきますが、その前にまず法務大臣にお伺いいたします。
総論的にお答えいただいてから各論に入らせていただきます。

 

 

 

 

 
まず、信託につきましては、これまで貸付信託とかあるいは投資信託とか、そういうことは時々耳にしてまいりましたけれども、信託というのは必ずしも生活者、庶民、多くの国民の方々にとって非常に密接なといいますか、非常に関心が高かったというわけではないかと思います。
そこで、信託そのものについて一般の国民の方々は現時点ではよく分からないという方が多いのではないかと思いますので、まずは信託というのはどういうものなのか、また信託を利用することにはどういうメリットがあるのか、国民の方々によくお分かりいただけるように明快に法務大臣にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 午前中にもどなたかに御答弁申し上げましたが、信託は確かになじみのない制度であります、今の段階では。信託法案、今度の法案では、信託についてはこのように定義をしております。法律上定められた方法により、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいうというふうに規定をしておるわけでございますが、もう少し私でも分かるように聞いたところでは、財産を持っている人がその財産をどなたかに譲渡をして、移転をして、その財産をその方に、いわゆる受託者でございますが、一定の目的に基づいて管理、処分をしてもらうと。そして、それによって得た果実、利益を受益者、委託者本人であったり、また別の人であったりの方々に給付をすると、こういう仕組みであるというふうに承知をいたしております。

 

 

 

 

 

 

この制度は専ら英米で発達してきた制度でありまして、典型例としては、子や孫の扶養や教育のために自己の財産の一部を信頼できる知人等に譲渡をして、財産の管理、処分をさせるというようなことであったというふうに聞いております。
しかし、日本では、専らこの信託は信託銀行を受託者とする営業信託ということが中心でありまして、実際にも今お話がありましたような貸付信託、年金信託、証券投資信託などということで専ら活用されてきたと言うことができると思います。

この信託はどういうメリットがあるかということだと思いますが、形式上の管理、処分権限と実質的な利益の帰属者とを別にするところが信託のメリットと言うことができます。具体的には、その利用形態に応じて、いろんなことがあり得ると思いますが、例えば次のようなものを挙げることができると考えております。
まず、子の扶養のための信託において、受託者が定期的に信託財産を受益者である子に渡すということとした場合には、子が財産を浪費することを防止することが可能になるといったようなメリットがございます。また、資産の運用を第三者にゆだねる貸付信託、年金信託、証券投資信託等におきましては、専門家である受託者等の能力を利用することによって、委託者が自ら運用するよりも有利な運用が可能になるというメリットがあるということが言われておるわけでございます。

 

 

 

 
その他もあると思いますが、取りあえず御答弁をさせていただきます。
○浜四津敏子君 今回、八十年ぶりに全面的な見直しをするということになりました信託法制でございますけれども、なぜ今この時期に全面的な見直しをすることになったのか、その理由についてお伺いしたいと思います。また、今回の改正によって国民の皆様にとってはどういう利益があるのかについても簡潔にお答えいただきたいと思います。
また、受益証券発行信託、こういう新たな信託の創設によりまして一般投資家の方の関与が増えることが予測されます。この一般投資家の方を保護する仕組みはきちんと整備されているのかどうか、お伺いいたします。大臣にお伺いいたします。

 

 
○国務大臣(長勢甚遠君) 先ほども申し上げましたが、我が国では信託制度はさほど活発には利用されない時代が長かったわけでございますが、しかし近年、多様な信託の利用が進みつつあります。政府に対しましても、資産運用や企業の資金調達に信託を活用しやすくするための改正要望が寄せられておる。また、高齢者や障害者等のための福祉型の信託の活用というものも期待されるということが言われてまいりました。そういうことで、いろんな改正要望もあったわけでございまして、政府としては、これらの情勢を踏まえて信託法制の全面的な見直しを行うこととしたものであります。
今回の改正では、必ずしも合理的でなかった受託者の義務というものを見直すほか、受益者の権利を拡充する、そういうことなどの制度の合理化を図るということと、多様な信託の利用ニーズにこたえるという観点から、新たな類型の信託を創設するということを行っております。したがって、今回の改正により、国民はより合理的な信託制度を利用することができるようになるとともに、より幅広い局面で信託の活用が可能になるというメリットが出てくるものと期待をしておるわけであります。

 

 

 

 

 

当然、御指摘のように、受益証券発行信託を始めとする新たな類型の信託を創設することによりまして、今後はこれまで以上に一般投資家が信託制度の利用者となることが予測されております。そこで、信託法案においては、この種の信託においては、信託行為による受託者の善管注意義務の軽減を禁止するなどの措置を講じ、さらに、信託業法、金融商品取引法等におきましても必要な規制を行うことによりまして御指摘のような一般投資家を保護をする、そのための仕組みというものを十分に整備をされておると、このように考えております。

○浜四津敏子君 様々なメリットがあり、また、今述べられたように、一般投資家の方々の保護もきちんと図っておられると、こういうことですから、国民の方々に正しくそれらのことを理解していただき、適切な利用を促していただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に、趣旨説明によれば、信託法案は受託者の義務に関する規定を整備したとあります。信託はその性質上、委託者、受益者と受託者の信頼関係というものが極めて重要になってまいります。
信託法案第三章第二節に受託者の義務等と規定されておりますが、この受託者が受益者に対して負う義務にはどのようなものがあるのか、簡潔に御説明していただきたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、この第三章第二節に規定されております受託者の受益者に対する義務というのは、信託の制度にとって非常に根幹の部分であります。
具体的には、第一に善管注意義務と忠実義務、この二つの義務がございます。善管注意義務は二十九条に規定されておりますが、自己の財産に対する場合と同一の注意ではなく、より高度の注意をもってしなければならないということが規定されるわけであります。忠実義務の方は、自分の利益でなくて受益者の利益のためにこの受託者が動かなければならないということを決めているわけであります。
そのほかに、三十二条に公平義務、三十四条に分別管理義務がございます。これは信託に特有のものでございますが、公平義務の方は、一つの信託に受益者が複数ある場合に受益者を公平に扱わなければならないと、こういう趣旨でありますし、分別管理義務は、受託した信託の信託財産と自己又は他の信託の信託財産とを分けて管理しなきゃならないという、これもまた信託にとっては基本的な義務であります。このほかにも、信託事務を、処理を第三者に委託した場合には委託先である第三者を選任、監督しなきゃならないという義務でありますとか、帳簿等の作成、報告義務、その他の義務がございます。

 

 

 

 

 

 

 
○浜四津敏子君 今御説明にありましたように、二十九条以下にこれらの受託者が受益者に対して負う義務が規定されているわけでございます。その一つずつ、少し分からないところがありますのでお伺いさせていただきます。
まず、法案二十九条の善管注意義務についてお伺いいたします。
現行の信託法の二十条には、受託者は信託の本旨に従い善良なる管理者の注意をもって信託事務を処理することを要すと、こうなっております。これを法案の二十九条は、一項で、受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。二項で、受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって云々と、こういうふうに二項に分けて規定しておりますが、現行法が簡潔に一つの文で決めていたものを、なぜ今回改正法は二項に分けて規定しているのかをお伺いしたいと思います。
また、法案二十九条の二項ただし書には、ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとするとありますけれども、これは具体的にはどのようなケースを念頭に置いて言われているのかお伺いいたします。

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) 御指摘のとおり、現行の信託法二十条は、一文でこの善管注意義務についての規定を置いているわけであります。ただ、この規定が、受託者は信託の本旨に従い善良なる管理者の注意をもって信託事務を処理すると、こう書いてあるわけでございますが、この信託の本旨に従いというのが善良なる管理者の注意の程度というのを修飾しているのか、それは単に信託事務を処理するということに係っているのかについて実は争いがございます。
そういう指摘があったところでございますので、これをより分かりやすくするために、信託法案では、第一項においては、受託者が処理すべき信託事務の内容が信託の本旨に従って定められていることだけを規定して、第二項において、注意の程度は善良な管理者の注意であって、これを信託行為の定めにより加重軽減できると、こういう構成にいたしたわけで、明確化したということでございます。

次に、二項ただし書がどういう想定が成り立つかということでございますけれども、これは、信託行為の定めによって注意義務を下げる場合と注意義務を上げる場合がございます。
注意義務を下げる場合は具体的にどういう場合かと申しますと、受託者が委託者の指図に基づいて信託事務を処理すると、つまり事務全部任すというのではなくて、委託者の方からいろいろな指図が飛んでくると、そういう信託事務においては受託者の信託事務についての善管注意義務というのは軽減されて、当然のことながら反射的に報酬も下がるだろうということになります。また、委託者が無償で自分の親族に対して自分の子供の面倒を見てほしいという、こういう信託もあり得るわけでありますけれども、無償でございますので、あるいは受ける者が親戚でありますので、こういう信託の受託者における注意義務の程度というのは軽減されてもしかるべきだろうと、そのようなことでございます。

 

 

 

 
逆に加重する例といたしましては、非常に専門的な能力を持った者に対して信託をする場合に、その程度が高いということを前提にして、当然この場合は値段もまた高くなるわけでございますけれども、注意義務を上げると、こういうことが考えられるわけでございます。
すみれ
「注意義務を法律より上げることもできるんだ。考えてみればそうだね。」
○浜四津敏子君 この法案二十九条の受託者の善管注意義務、これを受託者が怠った場合について、現行法の二十七条では、善管注意義務を怠った場合の受託者は損失てん補責任と原状回復責任を負うと、こういうふうに定めております。これに対しまして、改正法の四十条では、一項ただし書で例外的に受益者が原状回復請求できない場合を定めていて、これが現行法とは異なる定めになっております。現行法の方が厳しい定めであったのを、それを緩めた形になっているわけですけれども、なぜ今回こういう見直しをすることになったのか、その理由及び背景を説明していただきたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) この受託者の損失てん補の責任等について定めが置かれておりますけれども、現行法の信託法二十七条でございますが、これは、信託について管理の失当によって財産に損失を生じたときと、信託の本旨に反して信託財産を処分したときというこの二つの要件と、損失てん補、それから信託財産の復旧の請求の対応関係が不明確であると、こういう指摘があったわけであります。
そこで、信託法案ではこれを明確化する意味で対応関係を明らかにし、具体的には、管理の失当によって信託財産に損失を生じたとき、又は本旨に反して信託財産を処分したときに限定せずに、受託者が信託財産に関してその任務に違背する行為をしたときは、損失が生ずれば損失のてん補を、それから変更が生じたときには原状回復と、こういう規定のしぶりにしたわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

このように対応関係を明確にいたしますと、例えば信託財産の管理の不手際で物が壊れてしまったというような場合において、実際は財産的価値は余りないけれども、物すごく回復にお金が掛かるというようなところがあるときにおいて、これを必ず原状回復にするということになると、非常に酷な結果になるわけでございます。そこで、四十条の一項のただし書で、これが著しく困難であるときは、受益者は原状回復の責任を追及することができないという、こういう一定の制限を掛けてございますけれども、これは非常に合理的な範囲に限られているわけでございます。

○浜四津敏子君 おっしゃる意味は分かりますが、あくまでも受益者にとって理不尽な不利益を被ることがないような解釈、また運用にしていただきたいと思います。
次に、改正法案の三十条から三十二条について、三点お伺いいたします。

 

 
現行法の二十二条一項では、受託者の忠実義務、これが強行規定となっているわけですけれども、今回、三十条から三十二条に見直して規定することとなりました。これによって忠実義務が任意規定化されたと、こういうふうに解釈されますけれども、そもそも現行法で強行規定としていた理由はどこにあったのか、それを改正することになった趣旨はどこにあるのか、また、任意規定化することによって受益者の利益が害されることがないのかについてお伺いします。
○政府参考人(寺田逸郎君) 現行法の規定は、おっしゃるとおり、まず、その一つは、この忠実義務の範囲に関して、信託財産に属する財産を受託者が固有財産とすることと、それに対して権利を取得すること、これを禁止しておりまして、例外は裁判所の許可がある場合ということになっているわけでございます。
これに対しては、そもそも、まずこういう規定が置かれた理由でございますけれども、信託ということについて、これが創設されました八十五年前といいますのは、信託というものの利用を促進するというよりは、むしろ信託と名の付いたものについて、非常に弊害が生じないように、むしろ禁止というものを原則的に考えて、あえて民事の私人間同士の規定ではあれ、これを解除するには裁判所を関与させるという非常に厳しい姿勢を取ったわけであります。

 

 

 

 
しかし、仮にこの信託をもう少し一般的に利用してもらいたいというように考える場合には、例えば先ほども申し上げましたとおり、もう少しこの忠実義務について幅広く禁止行為を設定するとともに、しかしながらそれを打ち破れる場合というのを合理的に定めると、こういう姿勢が必要ではないかということが審議会で議論されたわけであります。

そこで、信託法案では、利益相反行為というものも現行法よりは少し幅を広くいたしておりますけれども、逆に、その行為を許容する旨の信託行為の定めがあるとき、すなわち任意規定ということになるわけでございますけれども、あるいは、重要な事実を開示して受益者の承認を得たときにはこういう忠実義務ということを破れるということにいたしております。

 

 

 

 

 

 

ただし、この任意規定を一方的に定めるだけではかえって弊害が生ずる場合も予想されないわけではないので、まず第一に、信託行為で許容されているか否かにかかわらず、この利益相反行為があればその点についての重要な事実を通知しなきゃならない受益者に対する通知義務というのが三十一条の三項等で課されております。第二に、違法な利益相反行為をしようとしている場合には、先ほども申し上げましたけれども、新たに差止めを受益者の側が請求できるという規定も置いております。第三に、これも度々御指摘がございましたとおり、計算書類の作成、保存について受託者の責任を明確化しているということにいたしております。最後に、救済が必要な受益者が出る場合を予想して、違法な利益相反行為によって損害を生じた場合には、効果を明確に定めまして、損害についての推定規定まで置いているわけでございます。
これらの手当てによって、弊害措置としては現状よりははるかに充実したものになったというように考えております。

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 改正法案三十一条、利益相反行為の制限についてお伺いいたします。
現行法の二十二条一項では、受託者が、信託財産に属する財産を固有財産とすること、信託財産に属する財産について権利を取得すること、この二つを利益相反行為として禁止しております。それを今回、三十一条の一項一号から四号で利益相反行為の禁止対象を拡大しているわけであります。
そこで、どうしてこうした拡大をする必要があったのか、具体的にどういう行為を新たに禁止対象としているのかについて御説明ください。

○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほども御説明いたしましたとおり、現行法では、信託財産に属する財産を固有財産とすることと、信託財産に属する財産に対して受託者が権利を取得すること、これが禁止されているわけでございますが、その最後には、大きな忠実義務、つまり常に受託者というのは受益者のためを考えてやらなきゃならないという義務がございまして、そのこと自体も明らかにされたわけでございますので、もう少し一般的にそれに類似した行為を想定して禁止を広げなきゃいけないと、このように考えたわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 
例えば、受託者が、自らの固有財産の負っている第三者に対する債務について信託財産に属する財産を担保として提供するというような行為も同様の法律関係になるわけでありますし、受託者が第三者の代理人となって信託財産に属する財産に関して取引を行う場合も利害の対立があるはずでございます。これらもいずれも利益相反行為として禁止しなければならないということで、三十一条の一項では、一号に今の現行の二十二条と同様の規定を置いておりますが、そのほかに、信託財産同士の財産のやり取りと、先ほど申し上げましたように信託財産のためにする行為であって第三者の代理人となって行うもの、それから、担保を新たに設定するというような幾つかの類型について新たにこれを禁止の対象にいたしているところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 この改正法案三十一条の二項で、利益相反行為としての禁止の例外を規定しております。このうち、一号から三号までは読めばそのまま理解ができるところでございますけれども、四号でこう定めてあります。受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるときと。このときに利益相反行為禁止の例外として認めているわけですけれども、この例外として認められるのは具体的にどのような場合を想定しているんでしょうか。

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) ここは、一つの大きな規定の重みがある規定だと思いますが、この三十一条の二項の四号については、結局のところ、通常、信託銀行のような大手の受託者というものを想定した場合には、恐らく一号から三号まででかなり事が足りることが多いであろうと思われるわけでございますけれども、今後普通の方が受託者になる場合を想定いたしますと、その受託者にもある程度合理的な法律関係を当初から予定しておかなきゃならないと、そういう考慮でできたものでございます。

具体的には、例えば信託財産に属する財産で有価証券を購入したいと、こういうことで申込みを出しましたところ、その有価証券をたまたま受託者が固有財産で売却しようとしていた、マーケットでたまたまかち合ったというときは、形式的には三十一条の一項のどれかに当たるわけでありますけれども、しかしこれは実質的には問題ないだろうと。あるいは信託財産に属する金銭を第三者に送金する場合で、普通に低額の料率の費用を徴収するのであれば、これはあえてその方がおやりになっても構わないだろうと、こういうような場合が考えられるわけでございます。

 

 

 

 

 

 

すみれ
「普通の人が受託者でやるんだ。」

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 この利益相反行為ですけれども、受託者が利益相反行為をした場合の効果についての規定が三十一条三項以下に定めてあります。これは大変込み入ったといいますか、複雑な規定ですので、ここで定めていることを分かりやすく簡潔に説明していただきたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、非常に簡単に概念的に申し上げますと、二つの場合がございます。いわゆる自己取引、つまり自分と信託財産との取引について申し上げますと、これは原則として無効であります。ただし、第三者に売却がされるということになりますと、その第三者がこの利益相反について、善意である場合にはやはりその第三者を保護しなきゃなりませんので、そうでない場合、つまり第三者が悪意あるいは重過失があると、こういうような場合に、この取引を受益者の方で取り消すことができると、こういう仕組みにいたしております。これが三十一条の四項と六項でございます。
これに対しまして、間接取引、つまり担保権の設定行為等でございますけれども、これは利益相反行為自体は有効であるということにしながら、この相手方たる第三者が利益相反について悪意、重過失であるときは、その利益相反行為を取り消すことができるという取消しの規定だけに絞っているわけでございます。

 

 

 

 

 
受託者が利益相反の禁止に違反したことによって損失てん補責任が生ずるわけでございますけれども、利益相反について受託者又はその利害関係人が利益を得た場合、それについて四十条の三項に今度新たに規定を別に置いているわけでございまして、効果というのは大きく分けるとその二つ、つまり無効取消しと損害の回復というてん補責任についての規定と、こう分かれるわけでございます。
○浜四津敏子君 次に、改正法案三十二条に移りますが、一項で競合行為を原則禁止しております。二項で例外を定めているわけでありますけれども、しかしこの例外というのは、三十一条二項の利益相反行為禁止の場合の例外とは異なりまして、正当な理由がある場合というのが例外として規定されておりません。なぜ競合行為と利益相反行為とで違いがあるのか、例外規定にこうした違いがあるのか、その理由を説明していただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) これは、利益相反行為も競合行為も利益状況としては同じでございますので、本質的には同じような構成の規定を置くことも検討に値するわけであります。現に、私どもといたしましても、むしろ三十二条を三十一条のスタイルで書けないかどうかということを検討したわけでございますが、競合行為は利益相反行為と違いまして、典型的にどういうものが挙げられるかということについてなかなか類型化が難しいという問題がございました。
そこで、やや形としてはきれいではないわけでございますけれども、競合行為については、元々要件の中にこれをしないことが受益者の利益に反するものというような規定を置いておりまして、ここで実質判断をするということになっております。

 

 

 

 
そもそも、三十一条の方は形式的なものを一項に挙げて、その実質判断を二の四号でやっているのを、一遍に全部一項でやってしまうというスタイルを取ったわけでございます。したがいまして、正当な理由がある場合というような三十一条の場合の四号に出てくるような条項がここでは出てこないということになるわけでございます。
ただ、結果的には、これは実質的な考慮としては同じということになります。

○浜四津敏子君 次の三十三条の公平義務ですけれども、受益者が二人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならないと。したがいまして、受託者は複数の受益者を平等に扱わなければならないと、こういう公平義務でございます。この三十三条というのは、三十一条、三十二条と異なりまして例外規定が置いてございません。しかし、信託を設定する委託者の中には受益者の権利の内容を複数者の間で異なるものにしたいと、こういう希望を持つ方もおられるだろうと思いますが、この受託者の公平義務について、ここでは例外規定はありませんけれども、信託行為で異なる定めをすればそれは公平に扱わなくてもいいと、複数の者の間で公平に扱わなくてもいいんだという定めをすることが許されるのかどうか、お伺いしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) これは、結論的には言わば許されるということでございます。これはちょうど株式会社における種類株を考えていただければ分かるわけでございまして、公平義務、つまり同じ内容の給付の権利を決めた場合には、それは同じように扱わなきゃならないということでございますけれども、そもそもどういう請求権を持つかについて信託行為で別の定めをするということ、これは可能でございます。

したがいまして、例えば三人の子供のうち一人だけ給付額が倍であって、ほかの者はその半分ずつであるというようなことも信託行為自体で決めた場合にはそれはいいわけでございまして、同じと決めないと二人の受益者の間で違う扱いをすれば、それは公平義務に反すると、こういうことになるわけでございます。

 

 

 

 

 

 
○浜四津敏子君 そうしますと、例えば身近な例で言えば、子供が複数いて、親が親亡き後の子供の生活の安定をと考えて信託を設定した場合に、障害のある子がその中で一人いた場合に、その障害のある子には特別に配慮した内容にすると、こういうこともこの公平義務には反しないというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○政府参考人(寺田逸郎君) そのこと自体は問題ないというふうに思われます。
○浜四津敏子君 次に、三十四条の分別管理義務についてお伺いいたします。
現行法の二十八条は簡潔に、信託財産は固有財産及び他の信託財産と分別してこれを管理することを要すと。ただし信託財産たる金銭については各別にその計算を明らかにすることをもって足ると、こういうふうに明確に規定しておりますが、それを今回、三十四条で非常にきめ細かな規定に改正をしているわけでございます。

 

 

 

 
受託者の分別管理義務について、なぜ現行法の規定を改正してこのように詳細な内容に見直す必要があったのか、またどのような見直しをしているのかについて簡潔に御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(寺田逸郎君) これは、現行法はおっしゃるとおり非常に簡潔でございますけれども、逆に、簡潔であるがゆえに分かりにくい、あるいはちょっと硬直的であるという御批判があったわけであります。

 

 

 

 
つまり、それぞれの財産を具体的に考えていく場合にどういう分別の仕方がいいのかということについては全く規定がないわけでございます、金銭の場合を除いてはですね。また、このような義務がすべての財産について強行的に決められているということになりますと非常に実務的に難しいことにもなるという御批判もあったわけでございます。
そこで、この新しい法案においては、信託行為にまず定めがあればその定めに従うということを明らかにした上で、財産の区分に応じた分別管理の方法について、委員のおっしゃるようにきめの細かなということになるかもしれませんが、明確化を図っているわけでございます。まず第一に、登記、登録をすることができる財産については、その信託の登記又は登録ということで分別管理を明らかにする。信託の登記、登録をすることができない財産のうち、動産についてはこれを外形上区別ができる状態で保管すると、それから金銭その他の動産以外の財産については計算でもって明らかにする。こういう規定をして具体的な規定ぶりに変えているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 ところで、この三十四条の一項三号にこういう定めがあります。法務省令で定める財産。当該財産を適切に分別して管理する方法として法務省令で定めるものと、こうありますけれども、これはどのようなものを想定しているのか、現時点までの検討状況について説明していただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) これはおっしゃるとおり、今後詳しく検討することになるわけでございますけれども、例えば、信託法案の十四条の登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産には該当しないけれども、信託財産に属することの対抗要件が法定されている財産、具体的には会社法における株式等でございますけれども、そういう財産について、これを、信託財産に属することの対抗要件を具備しただけでは、固有財産と信託財産の分別はできますけれども、信託財産相互の分別ができないと、こういうことになりますので、信託財産に属することの対抗要件の具備に加えまして、信託財産相互間についてその計算を明らかにすることというようなルールを設けるというようなことをすることによってこの株式の関係を明らかにするというようなことが例えば考えられているわけでございます。

 

 

 

 

 
○浜四津敏子君 次に、法案三十五条の信託事務の処理の委託における第三者の選任及び監督に関する義務について二点お伺いいたします。
現行法の二十六条の一項では、第三者に信託事務の処理を委託できるのはやむことを得ざる事由ある場合に限りとなっておりますが、これを法案の二十八条二号では、第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるときとその範囲を拡大しております。なぜこのように見直したのか、その理由を伺いたいというのが第一点目でございます。
二点目は、現行法の二十六条三項には、受託者に代わりて信託事務を処理する者は受託者と同一の責任を負うと、こう定められているのを、改正法案ではこの規定を削除しております。なぜ削除したのか、その理由についてお伺いいたします。

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) まず、受託者が第三者に信託事務を委託することができる範囲の拡大についてでございますけれども、これは、現行法は受託者自らが行うということをかなり徹底して決めているわけでございますけれども、しかし、次第にこういう義務を現実に守ることが難しくなってきております。

それは、一つは、これを行うということの信託管理上の具体的な行為に照らして考えた場合に、例えばビルを管理する土地信託の場合に、どこまでが具体的に信託を管理している行為そのものに当たり、どこからがそれに当たらないのかということの線引きが非常に難しいにもかかわらず、そこが最終的な決め手になってしまうという問題が生じるわけであります。これはむしろ不合理なので、現実に第三者に信託事務を拡大するについて、どういう範囲であれば合理的かという形で問題を設定した方が分かりやすい規定になると、こういうふうに審議会でも考えられたからであります。

 

 

 

 
もう一つは、やはりそういう第三者にゆだねるべき部分というのは次第に拡大していると。特に、専門化、分業化というのが社会において非常に広がってきております。そこで、この規定をそのまま維持しておくのは現実的ではないということで、むしろ第三者に委託する範囲を広げたような形で、しかしさっき申したような形での規定の仕方が最も合理的ではないかということで、そこで最終的に、この二十八条の二項では、委託に関して信託行為の定めがない場合でも、目的に照らして委託することが相当である場合には委託を認めるということにしているわけでございます。具体的には、ビルの管理において専門の、例えば通知を行う業者に依頼をして家賃の回収をするというようなことが考えられるわけであります。

次に、二十六条の三項の廃止でございます。

 

 
この二十三条の三項は、一見受益者にとって非常に厚い手当てがされているように思えるわけであります。しかしながら、受託者と同一の責任を負うというのは一体どういう意味なのかということが必ずしも明らかでありませんで、むしろ受託者から委託を受けた第三者が信託財産自体に対して同様の責任を負うというのは第三者にとっては非常に意外なことではないかなというふうに思われるという非常な批判もあるわけであります。
このような責任があるがゆえに、むしろ第三者が事務処理を引き受けないということすら考えられるわけでありまして、そこで、こういう規定を設けずにいたしまして、むしろ、受益者の保護というのは、先ほど申したように、信託法案でいいますと三十五条でありますけれども、選任、監督の責任ということで明らかにし、仮に委託を受けた者が故意、過失によって信託財産に損害を与えたと、こういうようなことになりますと損害賠償請求権が信託財産に属する財産になりますので、受託者の方で第三者に損害賠償を請求して、それで損害を回復すると、こういう構成の方が合理的ではないかというように考えられたわけでございます。

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 次に、受託者の義務のうちの、第三十七条、帳簿等作成義務についてお伺いいたします。
三十七条でこの作成義務を、作成、報告、保存の義務というのを定めておりまして、三十八条では、受益者はこうした書類の閲覧又は謄写の請求ができると、こういうことが定められているわけでございますが、これらの帳簿等が仮に虚偽だった場合には、幾ら閲覧あるいは謄写できても意味がないといいますか、利益が害されてしまうわけでありますけれども、こうした場合に備えて何らかの手当ては講じているんでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 二つ申し上げたいと思います。
一つは、信託法案の四十六条で、どうもこの受託者のやっている帳簿の扱いというのは信託行為の定めに違反する、あるいは法令に違反するというそういう疑いがあると、こういうような場合には、受益者の方で裁判所に対して、信託事務あるいは信託財産の状況を、具体的にどうあるのかということの調査をさせるために検査役の選任が請求できると、こういうことになっております。今の帳簿等の作成についてもそのことが当てはまるというわけでございます。
それから、もう少し具体的な罰則が、先ほども前川委員の御質問にもございましたが、受託者が帳簿等に虚偽の記載をした場合に百万円以下の過料の制裁がございます。これもまたこれの反面で、帳簿等の公正さを担保させる一つの柱になっているわけでございます。

 

 

 

 

 

 

 

○浜四津敏子君 今の御説明では、そうした場合には受益者は調査のため裁判所に対して検査役の選任の申立てをすることができると、こういうことになっているという御説明でしたけれども、この四十六条の検査役というのはどういう人がなることを想定しているんでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 特に法律上は何も規定を設けておりません。裁判所のすべて御判断になるわけでございますけれども、実際上は事の性質上、弁護士、公認会計士、税理士、こういう専門の方々になろうかと予想をいたしております。

○浜四津敏子君 次に、四十四条の行為の差止めについてお伺いいたします。これは現行法にない新しい規定でございます。受益者の保護にとって前進の規定だと思いますが、これについて三点お伺いいたします。

 

 

 

 

 
この差止め請求は裁判によるものだけなのか、それとも裁判外による差止め請求も認められるのか、これが一点です。
二点目は、改正法案の四十四条の二項に、受託者が三十三条の公平義務に違反する行為をし、又はこれをするおそれがある場合に、一部の受益者に著しい損害が生ずるおそれがあるときは差止め請求できるとあります。なぜ一項に加えてこの二項を一項と分けて規定したのか、その理由を伺いたいというのが二点目でございます。
三点目は、しかしながら、受託者がこの差止め請求を無視して信託契約に違反する行為をしたような場合に、受益者は受託者に対してどういう請求ができるのか、これを御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(寺田逸郎君) 三つお尋ねがあったわけでございますが、まず第一に、この差止め請求権を裁判外でも行使できるかにつきましては、これは裁判外でも行使できるということでございます。
次に、四十四条が一項と二項に分かれている件についてでございますが、これは一項を読んでいただきますと、一項がこの問題の基本であるということはお分かりいただけると思います。
具体的に申し上げますと、一項は、信託財産に著しい損害が生ずるおそれということを差止めの要件としておりまして、これが非常に分かりやすい要件であるということではございます。ただ、信託財産に損害が生ずるおそれがない行為については、これは法令、信託行為の定めに違反する行為であってもこの一項の要件に当たらないと、こういうことになります。

 

 

 

 

 
しかし、例えば、公平義務違反というようなことが先ほど問題になったわけでございますけれども、公平義務違反においては信託財産自体には損害が生じないということがあり得るわけです。一部の受益者は有利、一部の受益者は不利と、こういうような行為をやろうとしたときに信託財産自体には損害が生じないということがあり得るわけでございますので、そこで、こういった場合の手当ても更に付け加える必要があるということから二項を設けまして、一部の受益者に著しい損害を生ずるおそれがあるときにも差止め請求が認められると、こういうことになっております。
それから三点目の、これに違反した、受益者の請求でございますけれども、受託者がこれを無視して信託違反行為をすることがあり得るわけでございますが、その場合には信託違反行為の取消しをすることができる、あるいは事後的なものとしては、むしろメーンであるかもしれませんが、損失てん補請求あるいは原状回復請求ということもできるわけでございますし、最終的にはそういうような危ないことをする受託者を解任するということも予定はされないわけではないわけでございます。

 

 

 

 

 
○浜四津敏子君 今御説明ありましたような方法によりまして受益者は自らの利益を守る手段が与えられているということになりますけれども、受益者の中には自らこうした利益を守る手段を行使することが困難であるという人も考えられると思います。
法案の百三十一条、信託監督人というのはこうした場合を想定して設けられた規定だと思いますけれども、これに関して二点お伺いいたします。
百三十一条の四項は、受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合とありますけれども、特別の事情というのは具体的にどういう場合を指すのか、それが一点でございます。
二点目は、同じく百三十一条四項に利害関係人の申立てによりとありますが、利害関係人とは具体的にどういう人を想定しているのかをお伺いいたします。

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) この規定自体はおっしゃるとおりの趣旨で設けられているものでございまして、この要件でございますが、百三十一条の第四項に規定されておりますけれども、具体的には、受益者が高齢者あるいは未成年者であって受託者の管理を自ら行うことが困難である場合や、あるいは障害を持つ者である場合、そういうようなことが想定されるわけでございます。
通常、なかなか受益者が受託者の監督を適切に行うことができるかどうかについてはいろいろ問題もあろうかと思いますが、これらは類型的に特にそういうことが期待できない場合でございますので、そういうことに備えまして、信託の新たな監督人という制度を設けているわけでございます。
利害関係人は、具体的には委託者あるいはその相続人ということが一方で考えられますし、あるいはまた逆に、受益者の関係者、親族等が考えられるわけでございます。
高齢者の安心が全体として担保されているかどうかでございますが、私どもといたしましては、この信託監督人の創設でございますが、それを中心といたしまして、必要な手当ては今回の信託法ではいたしているつもりでございます。

 

 

 

 

 
○浜四津敏子君 この改正法案では、受益者に代わって受益者の権利を行使する者として百三十一条の信託監督人のほかに百二十三条の信託管理人、百三十八条の受益者代理人、こういう制度を置いております。
このうち、信託管理人は、受益者が現に存しない場合に選任されるということですので信託監督人との違いが明確でございますけれども、受益者代理人というのは受益者が存在する場合にも選任されるわけで、これと信託監督人というのがどう違うのか、明確ではないように思います。
そこで、二点お伺いいたします。

 

 

 

 

 

一点目は、信託監督人と受益者代理人とはどう違うのか。二点目に、その違いを踏まえまして、具体的にこの両者はどのような場合に選任され、またそれぞれどのような役割を果たすことを想定されているのか、御説明ください。
○政府参考人(寺田逸郎君) 規定の上では、信託監督人は受託者を監視、監督する権限、これを有しております。これに対しまして、受益者の代理人は受益者のために受益者の権利に関する一切の裁判上、裁判外の行為をすると、こういうことになっております。
それから、選任でございますが、これは信託監督人の方は、裁判所の決定又は信託行為の定めでございますが、受益者代理人は信託行為の定めだけが選任方法でございます。
この違いからお分かりになりますように、信託監督人というのは基本的には受託者の監視人ということでございますのに対しまして、受益者代理人というのは受益者代表ということでございます。
したがいまして、実際には信託監督人というのは、未成年者や高齢者が受益者となっている場合のように、適切な監督が受益者により期待できないということ、こういう場合に受益者に代わって監視、監督する役割を果たすというのに対しまして、受益者の代理人は、一番多くは恐らく受益証券が発行される場合でございましょうけれども、非常に多数の受益者がいて、代理人がいないとなかなか現実に権限の行使が難しいような、そういう場合に選任されることが想定されているわけでございます。

○浜四津敏子君 次に、百六十六条、信託の終了を命ずる裁判についてお伺いいたします。
この一項一号に裁判所が信託の終了を命ずることができる場合として、不法な目的に基づいて信託がされたときと、こうありますけれども、一体、不法な目的とは具体的にどのような場合を指すのでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、信託というのは、一つは非常に濫用されるという危険があり、それに対する防止措置というものも常に念頭に置いておかなきゃいけない、そういう法律でございます。
今回は、一方では非常に利用しやすくすることを考えてきているわけでございますけれども、他方では最後の安全弁としてはやはり、非常に危ない場合に、その信託自体に対して法的な立場から何らかの措置が取れる余地を残しておかなきゃならないということでございます。

今委員が御指摘になりました信託法の百六十六条の一項一号というのはそれを念頭に置いた規定でございまして、ここの不法な目的というのは、例えば金融関係の法律によっていろんな規制がされます、大量保有報告書などがありますが、そういう規制を逃れるためだけを目的にして株式の信託を行うような場合、あるいは債権者からの執行を免れることだけを念頭に置いて信託が行われる場合、あるいはもっと極端に言いますと、テロリストでございますとかそういう反社会的な団体によって資金の供与のために信託が利用されていると、そういうようなことが想定されるわけでございます。
○浜四津敏子君 それでは、もうそろそろ時間が参りましたので、最後に法務大臣、一点お伺いいたします。

 

 

 

 
今回の改正によりまして新たな信託の類型が創設され、大幅な見直しがなされました。国民の方々にとってより身近なものになると、こういう改正だろうと思います。そこで、国民の方々がどういう場合に信託を利用できて、またそのメリット、デメリットはどういうところにあるのか、注意すべき点など、国民の方々の利便あるいは保護のため、注意喚起のため広く周知徹底する必要があると思われますけれども、大臣、どのように取り組まれますでしょうか。この質問で終わらせていただきます。

○国務大臣(長勢甚遠君) 最前来御議論いただいておりますが、新しい信託法に基づいてニーズに応じた利用が十分に行われることを期待しておるわけでございますので、そのためには、新しい信託法の内容について国民への周知徹底を図ることは極めて重要でございます。そのために、周知に当たっては、信託法そのものの内容はもちろんでありますが、それに基づく政令、法務省令、また信託に関する税や会計等の諸制度、こういうものについても十分な理解が得られるようにしていく必要があると考えております。

 

 

 

 

 

 
法務省といたしましては、ポスター等を利用して新しい信託法が制定されたことを広く皆様に認識していただくことがまず手始めでありますし、また今申し上げましたような内容、事項について分かりやすくまとめたパンフレットを作成、頒布する、あるいはホームページに掲載をする、さらには雑誌等に解説を掲載する、説明会を開催する等々、その努力を払っていきたいと思っております。
特に、新たに民事信託の受託者となり得る方々の代表である弁護士などの専門家の方々にも十分な御説明をしていきたいと考えておりますし、これらによりまして施行までの間に必要な周知に十分な努力を払いたいと考えております。

 

 

 

 

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は法案審議の第一回でございますので、私はいわゆる事業信託、この新設の政策的なねらいがどのようなものなのか、それへの税制上の問題点はどこにあるのか、この辺りを聞いていきたいと思います。
経済産業省、お見えですかね。
この改正案の規制緩和による事業信託に産業界からの期待の声が大変大きいわけでございます。経産省としても、昨日伺いましたら、五つほどの活用例、事業信託の活用例を類型化をしておられまして、一つは、従来なら営業譲渡の形態を取る必要のあった高い収益が見込める特定部門の信託による切り分け、そしてそれを担保とする資金調達が可能になるということ。二つ目には、ハイリスクの新規事業に着手するに当たって、倒産隔離目的などで自己信託が活用され得るということ。三つ目には、クレジット・リース会社がクレジット債権を自己信託することで資金調達ができるということ。四つ目に、債権回収業者、いわゆるサービサーが回収金を自己信託をして倒産リスクを回避するということ。五つ目に、知的財産信託、例えば特許権等、製造・販売事業の一体的な信託をすることによって流動化資金調達などを進めるという、そういった活用例だということなんですね。

経産省として、産業界からの期待を受け止められた上でこのような類型化もされているんだと思うんですけれども、期待をどのように受け止めて、かつ、この信託法の改定に何を期待をしていらっしゃるのか、お伺いをします。

 

 

 

 

 
○政府参考人(立岡恒良君) お答えを申し上げます。
信託法改正で導入されます自己信託にかかわるいろんな経済界のニーズ、期待の御質問でございましたけれども、実際、事業活動にどう使われていくかにつきましては、これは企業のいろんな経営戦略の中で決まってくるんで様々な可能性があろうかと思いますけど、私どもといたしましてもいろんな形でヒアリングをさせていただきました。それで、正に今委員が御指摘になられましたようないろんな活用方法があろうかと思っております。
一つは、手持ちの債権を流動化いたしまして資金調達を図るでありますとか、あるいは、御指摘になられましたように、企業内の特定事業部門を切り出して、そこからの収益を引き当てにして資金調達するとかといったことがあろうかと思っております。例えば債権流動化に関しましては、現在も信託銀行などを受託者といたしまして流動化されておりますが、この場合には債権者の変更を伴うわけで、それに伴います様々な手間とかコストが掛かるということでございますけれども、今後、本案で提案されております自己信託制度が可能になりますれば、債権者変更が不要になるということでより円滑に流動化が図れるということが期待されてございます。

 

 

 

 

 

また、特定事業からの収益を引き当てにして資金調達するような場合につきましては、従来であれば会社分割とかあるいは営業譲渡とかといったような形態になりますと、例えばその従業員の身分からしますと出向とか転籍になりますが、自己信託の活用が可能になりますとこういった懸念もなくできるということだと思っております。
したがいまして、こういった事例、類型に限らず、信託法改正によりまして企業活動の選択肢が多様化していくということで、ひいては経済活動の活性化につながっていくということで私どもとしても期待をしているところでございます。

 

 

 

 

 

 

○仁比聡平君 ありがとうございます。
ほかに信託銀行業界からも遺言信託だとか目的信託などの活用案も新聞報道などでも私も拝見をしているわけですけれども、ただ、今の御答弁の中で、ちょっとこれ聞くつもりなかったんですが、人材の問題ですね。出向、転籍、こういった懸念なくというお話があったわけですけれども、これ、人材を移さずにと言われるんだけれども、法律の形態として、法的形式として信託を取るからというだけで労働者の地位に変化がないということはないんじゃないでしょうかね。

 

 

 

 
大臣も衆議院の質疑で、信託の設定によって変わると。在籍出向かあるいは転籍出向かなどなどというような御議論をされておりまして、通告していないんですけれども、民事局長にちょっと確認をしたいと思いますけれども、法務省も、転籍が回避できるというふうに自己信託のメリットとしておっしゃっているんですが、これ私なりの理解で言いますと、事業を対象とする信託、つまり事業信託、これ自体は労働者の契約上の地位を含むものではない、信託の対象として労働者の地位をどうするのかということがつまり信託の目的になっているわけではないという意味なのではないんですか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 今委員も御指摘になりましたように、この事業信託ができるということが産業界での期待だというような報道等があるわけでございますが、法律の上からいいますと、事業をまとめて譲渡する、それを信託するということをこの法律が新たに可能にしたということは実はございません。

 

 

 

 

 
この法律においても前の法律においても、依然として信託そのものは積極財産の移転によって設定されるわけでありまして、ただ、従前から、債務を引き受けるということが可能かどうかと。それは、とりわけ従前、積極財産に関連していた債務を、従前からの債務でございますが、これを引き受けられるかどうかということが問題になっていたわけでございますけれども、それは新たに債務引受けすれば可能であるということを明らかにしたという点に違いがあるわけでございまして、そういう意味では、今委員のおっしゃったように、労働関係がその一つの事業体として切り離されずにそのまま信託されるということではなくて、あくまでそれは一つの財産、一つの債権債務関係が一個ずつ移るというわけでありますから、法律上は、特に労働者の地位を全く影響を与えずに信託をし、債務引受けをするということは可能です。

 

 

 

 

 
そういう意味では、そういうものをすれば、それは全く労働関係には影響を与えないから、それをメリットとお感じになればそれはそういうことでございますけれども、ただ、もちろん労働関係を移すことも可能なわけでありまして、それはそのそれぞれの、何といいますか、信託をする際の判断ということになろうかと私どもは理解をいたしております。

○仁比聡平君 局長の答弁聞きながら大臣もうなずいていらっしゃいました。衆議院で答弁をされているのもそういう御趣旨かと思うわけですね。
つまり、ある事業の信託をするときには、既存の事業を切り分けて信託をするのであれば、その事業に現実に従事をしている従業員がいるわけですけれども、この従業員をどうするのか。在籍出向するのか、転籍にするのか、派遣なのか、請負なのか。それも含めて、委託をしようとする、信託をしようとする会社と受託をしようとする、まあ普通会社でしょうけれども、ここが中核の信託部分も含めた包括的なそういった企業提携の契約といいますか、こういったものを結んでやるのがまあ普通通常だろうと。仮に新事業、新しい事業を信託形式で始めようというときも、その新しい事業に必要な人材、従業員をどういうふうに確保するかというのはそこで議論をされると、それぞれ自由に契約がされると。そういう御趣旨なんだと思うんですね。ですから、人材を移さずにというのは、私は事業の側にメリットがある限りということであって、そういった意味ではこれまでのリストラ手法と大きい違いがあるわけではないということだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この問題についてはまた別途議論をさしてもらいたいと思っているんですけれども、大臣にお伺いをしたいんですが、今年七月七日に発表されています経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六、いわゆる基本方針二〇〇六ですが、これは、成長力、競争力を強化する取組という第二章の中で、経済成長戦略大綱の推進による成長力の強化という項目の中で生産性向上型の五つの制度インフラということを政策目標として掲げておられて、その中に信託制度という今この議論があっている制度が上がっているわけです。
経営力の革新として、三角合併、信託制度、公正なMアンドAルールなど組織再編などの制度基盤をつくるということだと思いますけれども、この経営力の革新という項目で、信託制度などの制度基盤をつくるというここの意味、あるいは政策的な重み、この基本方針に載っているんですからそういう性格のものだと思うんですけれども、この辺りを大臣にちょっとお伺いしたいんですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

○国務大臣(長勢甚遠君) 骨太方針に御指摘のとおりの記載があるわけであります。この記載は、信託制度を整備することによって企業の組織再編の制度基盤が提供されるという点に着目して記載されているものでございます。
例えば、新しい信託法において自己信託制度が創設されれば、ある会社が新製品開発部門を自己信託をし、信託受益権を競合する同業他社に譲渡することにより、事業提携が可能になるといった形で新たな組織再編の手段が提供されることになるものと認識しております。
骨太の方針においても、このような認識を前提として、信託法の見直しにより、組織再編等に関する制度基盤が整備され、経営力の革新や成長力、競争力の強化へとつながることへの期待を示しているものでございます。

○仁比聡平君 つまり、内閣の掲げる成長戦略の重要な手法として位置付けられているということだと思うわけです。そのことをもっといろんな角度で国会でも議論をするべきなのではないかなというふうに思っているわけです。
法務省に、そういう位置付け、政策的なねらいの中で、労働問題は別として、指摘をされているこの改正案によるいわゆる事業信託の濫用のおそれについて、どのようなおそれがあると考えているのかをお尋ねをしようと通告をしておりました。ただ、今日、もう午前から岡田理事やあるいは前川委員の質問の中で随分この辺は議論をされておりまして、私の理解でいうと三つなのかなと思うんですね。一つは税逃れ、もう一つは財産隠匿の問題、もう一つは企業会計の在り方の問題、この三項目の問題意識だということでいいのかだけ、局長、お願いします。

○政府参考人(寺田逸郎君) 私も基本的にそういうつもりで申し上げております。
○仁比聡平君 そこで、財産隠匿や企業会計の在り方問題については今日も議論がありまして、私も別の機会に議論させていただくとして、財務省おいでいただいていると思いますが、切り分けられる信託事業に対する税制をどうするのかという点についてお伺いをしたいと思うんです。ここが経済関係の新聞、メディアあるいは関係者の方々の中でも大問題になっております。新しい信託形態に対応する一定のシミュレーション、ミクロ、マクロ併せて、私、これ明らかにして検討する必要があるのではないかと思うんですね。
財務省に資料の作成ができないのかということでお願いをしました。というのは、現行法と現行税制のままの場合、事業に対する課税が現状どうなっているのか、改正によって事業信託が認められてやられるようになった、だけれども現行税制のままだったらどうなるのか、これ、具体的にはどれだけの減税効果あるいは税収不足ですね、これが生まれるのかという問題ですね。
加えて、仮に信託収益に法人税を同様に掛けることとするというふうにした場合にはどうなるのか。これは幾つもの仮定が当然必要になりますけれども、税制の議論あるいはその税制と直結するこの法改正の議論をする上でせめてモデルぐらいは示せませんかというふうに要求をしましたけれども、拒否されました。できないと言うんですね。それで国会審議ができるのかと私は思うわけですよ。審議を求められているのは政府であり、恐縮ですけれども与党の皆さんなわけですから、このシミュレーションは出すべきなんじゃないかと思いますが、財務省、いかがですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(古谷一之君) お答えをいたします。
新しい信託法制がこれから法律になりまして施行されましたところで、いろんな経済主体がこの信託法制の下でどういう信託を組まれるか、これは私どももまだ予測が付きません。そういう意味で、現在、この信託法制の整備に伴いまして新しい課税の考え方をどうするかというのを、正に与党でも始まっております十九年度税制改正の作業の中で今議論をさせていただいておりますけれども、御指摘いただきましたような、そのモデルですとか定量的な予測を私どもの方で現時点で御提示できないのは大変恐縮ですけれども、御理解をいただければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

○仁比聡平君 私はそれが理解できないというふうに思うんですよ。先生方、そう思われませんですか。
もし現行のままなら、減税効果、現行と対比すれば減税効果がある事業信託という穴が法人税制の中に空くことになるわけです。これによって空洞化が生まれて、これ極論で言えば、法人税全部がそういう対象になるかもしれないということも理論的にはあり得るわけですよね。なのに、ここがどういうふうな予測になるのか、あるいは、もちろん仮定の話ですから、これから先どんなふうに変化するかは産業界のことになるわけですけれども、それを予測し得ないで税制の議論がそもそもできないんじゃないのかと思うんですけれども、いかがですか。

 

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(古谷一之君) お答えをいたします。
正に先生から御指摘がございましたように、事業信託、いわゆる事業信託といわれるものが可能になる環境が今度の信託法の整備によってより一層出てくるわけであります。
御指摘のように、現行の税制の下では、信託というのは受益者段階で課税をいたすということになっておりますので、会社と同じようなことをいわゆる形態だけ信託で行われるということになりますと、その会社、信託段階での課税ではなくて受益者段階の課税ということになりますので、極論をいたしますと、いわゆる事業体段階の課税がなくなって受益者のところの課税だけになるではないかというのは、御指摘の点もあると思います。そこを私どもは、経済主体にとってのいわゆる選択肢が広がるというこの信託法の新しい意味付けの中で、一方で、会社と同じようなことを形態だけ信託でなさるというような場合に法人税の潜脱が起きては困ると思っておりまして、そういう面での課税の在り方について現在検討をしていただいている、検討を政府内でしているということでございます。

 

 

 

 

 

 

 
○仁比聡平君 大臣、今の財務省の御説明聞いておられて心配じゃありませんか。
今度の法改正案で、政府案によって、今のも、指摘のあっている問題は当然論理的に起こる問題なんですね。この法案で仕組みが変わることに伴って論理的必然的に生ずる問題、税制上の問題は正にそうだと思います。私は、労働関係や、あるいは会計上の問題もそうなんだと思うんですけれども、ここに対応する責任、これはどなたが負っていらっしゃるんでしょうか。

法案は提出をされて、もう既に参議院に送られてきていると。だけれども、どうなるのかは今検討中ですと財務省はおっしゃっている。そんなことで、もしかしたら法人税大きく空洞化することになるかもしれないという、そういう懸念のある法案の審議が続けられますか。せめて、政府の考え方、政府としての税制の基本的な考え方、あるいはシミュレーションやモデル、これ大臣の責任で示していただくべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

○国務大臣(長勢甚遠君) 新しい信託制度の下でのいろんな問題、関係省庁連携を取って対応していかなきゃなりませんが、当然、この税制については財務省において、今税の潜脱の観点を強くおっしゃられましたけれども、そういうことを含めて責任を持って御検討いただいて、施行までに整理をしていただくということで御審議をいただいておると思っております。
○仁比聡平君 いや、施行までに明らかになればいいという話では私はないと思います。先ほど来一年のという議論が出ていますから、そういう方向で整理をというふうに考えておられる先生方もおいでなのかもしれないけれども、だけれども、法案に伴って論理的に生ずる問題ですよ。これを、今聞いたら、結局政府税調でも、政府内あるいは与党でも整理が付かないまま出してきたという話になってませんか。ちょっと変な話ですよ、これは。きちんと検討して、この参議院の委員会の審議が、まだ時間があるわけですから、せめて取っ掛かりになるようなものだけでも私は出すということを強く求めたいと思います。理事会でも是非御検討をいただきたいと思いますが、時間ありませんから次の問題に行きますけれども。

 

 

 

 

 
その中の税制を考える上で問題の所在がどこにあるのかということを確かめたいと思いますので、税の考え方について引き続いて財務省に伺います。
先ほど御答弁の中にもありましたように、今日、資料もお配りをしていますけれども、いわゆる一般的な信託について、現行税制では信託段階では課税をせずに受益者に課税するという仕組みになっているわけですね。この理由、どうしてそうなのかという点を御説明ください。

 

 

 

 

 
○政府参考人(古谷一之君) お答えをいたします。
御承知のように、信託財産は法律的には受託者に帰属をしておるわけですけれども、その収益は受益者が享受をされるという仕組みでございまして、お示しをいただいております資料にもございますように、不動産、動産の管理等、一般的な信託の場合には言わばその所有財産が受益者に帰属をするものとみなして、信託段階ではなくて受益者段階で課税をするという、ある意味で実質的な判断をそこでして課税の段階を税法は定めておるということでございます。

 

 

 

 

 

 

○仁比聡平君 今日も他の委員の質疑にもありました、典型的な民事信託であればそのような理解というのは私も納得がいくんですね。
素朴な疑問なんですけれども、事業信託というのは、先ほど経済産業省もお話しになったように、高収益を求めて資金調達をする、そこで受益権は証券化されて市場を流通するということになるわけですね。これまでの一般的な信託における特定をされた、それもかなり長期間続くだろう受益者とその受益者のための信託財産という関係とは性質が随分違うんじゃないかと思うわけです。そういう意味では、この文書の言葉で言うと、受益者が信託財産を保有しているというふうには見れないんじゃないですか。その点、いかがでしょう。

○政府参考人(古谷一之君) お答えを申し上げます。
現行の法人税法の仕組みの下でも、資料にお示しいただいております一番下でございますが、信託段階法人課税というものを取っておる部分がございまして、これ現時点では資産流動化法上の特定目的信託といったような限定された対象ではございますけれども、同じような経済活動を言わば会社形態、法人として行っているその事業体との言わば課税上のバランスを図るという考え方で信託段階で法人税を課税するという仕組みがございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御指摘ございましたように、自己信託等を通じまして事業信託がこれまで以上に可能になってまいりますと、お話がございましたように、受益権が、言わば有限責任の受益権ができるとか、当該受益権が一般に譲渡できるといったような会社のいわゆる株主と同じような形で受益者が登場してくるといったような事業信託が出てくる可能性がございまして、私どもとしましても、会社と同様の事業を単に信託形態で行っているといったような場合にはやはり信託段階での課税を検討する必要があるのではないかということで、今政府の中で議論をさせていただいているところでございます。

 

 

 

 

 

 

○仁比聡平君 ところが、報道などを拝見をする限りでは、そうではないという意見がどうやら強く上がっているというから僕はびっくりして聞いているんですけれども。現行税制は受益者にしか課税をしてない仕組みなんだから事業には課税すべきではないという議論が強いですよね、強くあります。つまり、信託段階に課税をして受益権者にも課税するということになったら二重課税だという声まであるわけですね。
私ちょっと本当に不思議なんですけれども、従来、これまでの事業を切り分けるという場合であれば、従来はそこに法人税は掛かり、当然株主に配当をするというときにはそこの配当にも税金掛かるという仕組みなわけですね。これ、そこの事業を切り分けただけで法人税の部分がなくなって受益権者に対する課税だけになってしまうというのは、これはおかしいんじゃないですか。中立でも公平でもないと思いますけれども、財務省、いかがです。

 

 

 

 

 
○政府参考人(古谷一之君) お答えをいたします。
この資料でお示しいただいております信託段階法人課税、ここは信託段階で一度課税をいたしますけれども、配当が行われますと、例えば九割以上分配をするといった要件の下に分配をされますと、その分配部分が損金に算入をされまして、法人税の課税上、それが控除をされます。ただ、受け取った受益者の段階で、配当課税ということで所得税が掛かるという仕組みになっております。
一方で、通常の法人、会社の場合には、会社段階で法人税が掛かりまして、配当を受け取った個人の段階で所得税が掛かる。その間について若干の二重課税の調整措置はございますけれども、今後、この事業信託と言われるものについて信託段階課税をいたします場合に、いわゆる会社と同じ課税の仕方にするのか、この資料の三番目に書いてございます、こういった特定の信託と同じような扱いにするのか、その辺の検討が必要かと思いますけれども、いずれにしましても、信託段階の課税と受益者段階の課税、言わば法人課税と配当課税というのは法人税、所得税それぞれ生じます。そこをいわゆる二重課税ということでどう調整するかというのは、信託の課税に限らず、法人段階の課税をした場合には出てくる問題でございまして、そこは現在の法人課税の考え方とバランスを取りながら検討する必要があろうかと考えております。

 

 

 

 

 

 

○仁比聡平君 いろんなことおっしゃるんですけれども、今日、今の御答弁で重要だなと思ったのは、特定目的信託、こういう類型も一つの選択肢としてあり得るというお話だと思うんですね。だったら、そういったモデルや、それを取った場合のシミュレーションを本当に出すべきですよ。そうじゃなかったら、法人税なのか、それともこの特定目的会社などのこういう、今やっているそういう課税の仕方なのか。どこが二重課税、あるいはどこがそうじゃない、全然分からないですよね。そこは大問題なんだと思うんですね。

 

 

 

 

 

 

新聞などを見ますと、例えば九月の七日の日経新聞ですけれども、財務省が、信託段階で課税する、法人税を課税するという案が浮上しているということに対して、そういう報道に対してこんな指摘を書いているんですよ。信託会社にとっては、せっかく受託した事業で利益が出ても税負担が生じる上、複雑な税務処理も担う必要がある、信託会社が事業信託に消極的になるのではないかという、そういう懸念。もっとあからさまなのは、税逃れができないのなら事業信託にはメリットはないという、そういう評価も新聞紙上出ています。

まあひどい話だと思いますけれども、財務省、こういう考え方に対してはいかがですか。

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(古谷一之君) お答えいたします。
先ほど引用されました経済成長戦略大綱の中でも、今回の信託法の改正につきましては、適正な規律の下で有効に活用される制度となるように取り組むというふうに書いてございまして、私ども、今回の信託の改正によりましていろんな選択肢が経済主体にとって広がるということ自体を税制が過度に阻害するというわけにはいかないと思っております。
一方で、先ほどから御議論いただいておりますように、会社と同じようなことを単に信託形態を取ることによって行い、それによって租税回避が起きるといったようなことに対しては必要な対応をしなければいけない。その手段が信託段階課税ではないかと思っておりまして、そういう方向で今検討させていただいておるということでございます。

 

 

 

 

 

 

 
○委員長(山下栄一君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
○仁比聡平君 はい。仮に法人税を掛ける場合に税率を変えることはあり得るのかという、今の法人税と信託段階の課税についてということについて伺いたいと思っているんです。あるかないかだけ、私の質問を今日は終わりたいと思うんですが。

○委員長(山下栄一君) 古谷審議官、簡潔にお願いします。
○政府参考人(古谷一之君) 仮にいわゆる事業信託に法人と同じような課税をするときには、税率も基本的には同じ方向で考えるんではないかと思っております。
○仁比聡平君 終わります。
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
今日、二時過ぎまで欠席をしておりまして申し訳ございませんでした。ですから、少し前の方と重複するような質問になりはしないかと大変気にしているところでありますが、今日は最初の日でありますので、改正法案の立案の基礎的な考え方についてお聞きをしたいというふうに思っています。
これ、大臣でも民事局長でも結構なんですけれども、雑誌「世界」の今年の十一月号に、稲葉威雄さんという、元法務省におられて広島高等裁判所の長官をやられた方が論文を寄せておられまして、「会社法のどこが問題なのか」と、こういう論文でございます。これ、読まれておられますか。

 

 

 

 

 

 

 

 
○政府参考人(寺田逸郎君) 拝読いたしております。
○近藤正道君 じゃ、民事局長の方にお尋ねをしたいというふうに思いますが、この稲葉さんの「会社法のどこが問題なのか」。この間、新会社法が制定をされましたけれども、詰まるところ、企業活動の活性化だとかあるいは経済主体にとっての選択肢、まあ規制緩和、こういうところの必要、ニーズがやっぱり過度に強調されているんではないか。経済界の意向、使い勝手が過度に強調されてしまってバランスを欠いているんではないか。もっと立法というものはいろんな立場の人のことも考えて総合的に作らなければならない、その点からいくと少し問題があるんではないか。広い道路を造った結果、専ら暴走族のサーキットになったということでは困るんだと最後に厳しいまとめをしている。そういう形で新会社法についてかなり厳しいコメントを寄せているわけでございます。
これ読まれて、これ新会社法でございますけれども、どういうふうな感想を持たれたか、お聞かせいただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) 感想ということでございますが、稲葉さんは実は私も参事官でお仕えして、局付でともに法律を立案した経験がございます。大変立派な法律実務家でいらして、今は大学で教えておられるわけであります。
稲葉さんのおっしゃることは、基本的に、利害関係が衝突するところが法律が必要なところでありますので、一般的に、そのどちらの利害がどうだということを総合的に考えるのではなくて、声が高いものの要求に従った、そういう姿勢で法律を作ってはならないと、こういうことに要約できると思いますが、やっぱりそのことの一般論は私どもも深く考えなきゃいけないところでございますし、私どももむしろ常に心掛けているつもりでいるわけであります。したがいまして、私どもといたしましては、会社法を、私はこれ直接の立案担当者でございませんでしたけれども、見る際も、やはりいろんな角度から検討されたというように承知をいたしております。

 

 

 

 

 
ただ、余り個々具体的なことを申し上げては恐縮でございますが、会社法を取り巻く環境というのは、やはり国際的にも、ある時期を境に相当変わってきたということもこれまた否定できないところであろうと思います。日本の会社というのは、日本の会社であるけれども、しかし国際的に闘っている会社が多数あるわけであります。そういう会社もまた、日本国内だけでやっておられる会社と同様に、会社法のカテゴリーの中で規律してきちっと生かしていかなきゃならない道を付けなきゃならない、これが非常に会社法の立案にとっては難しいところだったというように思うわけであります。結果的に、その評価をここでいろいろ申し上げるという、場として適当ではないので申し上げませんが、多様性を求めるということを結局基本に据えざるを得ないものですから、総合的に見ますとかなりの規制緩和になった部分もあったということはそのとおりだろうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

これからもいろんな試行錯誤が続いていくわけでございますけれども、私どもといたしましては、いろんな観点からどういう弊害が起こったかということに決して目を背けずにやってまいりたいと思います。
ただ、最後の例えでございますけれども、私どもといたしましては、会社はむしろ、先ほど申し上げましたように一つのビークルとして、どちらかというと走っている自動車のようなものでございますので、これはやはり国際的に通用するものでなきゃならないというようには思うわけでございます、一方でですね。そういうものが少なくともできる余地はつくらなきゃいけないと思うわけであります。ただ、そういうものが日本のあらゆる道路を勝手気ままに走り回ってはいけないということにむしろ比喩すべきであって、どちらかといいますと、会社はいろんな形態で、いろんな自動二輪から高級車まで、あるいはハイスピードカーまで造れるけれども、しかしそれは交通規制あるいは道路管理者としてのいろんな運用の仕方、これは市場の運用の仕方ということに例えられると思いますけれども、そういったことに規制の力点がこれから移っていくんではないかなというように個人としては考えているところでございます。

そこは稲葉さんと若干見解を異にするところでございますが、基本姿勢においては誠に傾聴すべきところというように私どもも心掛けているところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○近藤正道君 ありがとうございました。
稲葉さんがこの新会社法に示した批判が、今回論議の対象になっております信託法案等についても当たりはしないかと、当たるところがあるんではないか、そういう懸念を言わば持って今の質問をさせてもらったわけでございます。もちろん、会社法と信託法というのは別個の違う法律でありますので、また別の仕組みでありますので、そっくり稲葉さんの指摘を信託法に横滑りさせるということはしかしできないわけでございますけれども、しかし法案立案の基本的な理念として稲葉さんが新会社法に対して指摘した問題点、これは今回の信託法案についても私は十分当てはまるというふうに思っております。
例えば、今回の法案の中身につきましても、まあ午前中来いろいろ議論があったんだろうというふうに思いますけれども、例えば信託を資産流動化に利用しやすくしたい経済産業省や不動産業界の声が強く反映された結果、それはやっぱり否定できないだろう。信託の本質がゆがめられたとの声がやっぱり結構あります。それで、具体的には、信託を要物契約から諾成契約としたこととか、受託者が立て替えた費用や信託報酬の受益者への償還請求権の制限がなされたこと、あるいは受益証券発行信託の創設など、資産流動化推進派の方々が特に主張して実現したものであるということは、これは明らかな事実だというふうに思っております。

 

 

 

 

 

 
今回の法案には、信託の本質や体系との整合性などの点で、あるいは弊害の防止という点で問題があると、これはやはり否定できない、こういうふうに思われてならないわけでございますが、どういうふうにお考えでしょうか。
また、こういった問題点の背景には、まず経済界の意向を最優先する、そういう態度があるんではないかと、こういう思いがしてならないわけでございますが、法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 今回の信託法案を策定するに当たりましては、法務省は、法制審議会に諮問して、審議会が行いました答申、信託法改正要綱に基づいて法案を作成してまいりました。法制審議会においては、専門の学者や実務家等による調査、審議を行ったほか、パブリックコメントの手続も行い、広く一般の御意見も聴取してきたものと承知をしております。したがって、今御指摘のような信託の本質や体系との整合性、弊害の防止といった点で十分審議を尽くして問題のないようにしたものと思っております。

 

 

 

 

 

 
委員には、経済界の言いなりになっているのではないかという御指摘のように思いますが、もちろん経済界も一つの方向ですから、その意向を全く無視しておるというわけではもちろんありません。一つの有力な意見としてそれも議論をしてきたわけでありますけれども、今申し上げましたような立案過程ですから、専ら経済界の言うとおりにしたというのは当たらないのではないかと思っております。

具体的ないろいろな幾つかの点、御指摘いただきましたが、そこについては民事局長から答弁させたいと思います。

○政府参考人(寺田逸郎君) 余り長くなっても恐縮でございますので、端的にお答え申し上げたいと思いますが。
委員の御指摘のうち、まず、信託を要物契約から諾成契約としたことというところが大きくございます。

 

 

 

 

 
これは、今回、信託財産の移転が効力発生の要件でないことにいたしたのはそのとおりでございます。ただ、これはむしろ、信託財産の移転というのは信託の本質として予定はされているけれども、効力の発生時期は前にさかのぼらせて、その時点で既に受託者の義務を発生させるという点に主たるねらいがあるわけでございまして、むしろ受益者としてはこれによって保護されるというわけでございます。

およそ、全くその信託財産の移転が予定されてないなら信託の本質としては極めて問題があろうかと思いますが、それは制度としては予定した上で効力発生時期だけをずらしたわけでございますから、これをもって信託の本質に反するということはないんではなかろうかと。
それから、費用、報酬の請求権の制限でございますが、これはむしろ受益者の立場からいたしますと、費用等の債務負担を負うというのが当然であるとはむしろ言い難いわけでありまして、どちらかというと、むしろこれは受益者保護として適切なルールに変わったんだなというように思っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の、受益証券の発行信託でございますが、これは決して、資産流動化ということが一つのパターンとしては考えられるわけでございますけれども、それを必ずしも全面的に念頭に置いてあるわけではございません。いろいろな形態があるわけでございまして、現にこれまでも認められた部分がございましたし、また受益者にとっては全取得等が可能になる部分がございますので、決してこれもまた保護に欠ける方向だけが実現されているというわけではございません。
したがいまして、全体といたしまして、信託の本質に反するということが行われたということはないというふうに理解をいたしております。
○近藤正道君 一番最後でありますんで、もう皆さんがいろいろ質問をされておられますけれども、準備をしてきましたんでやらさせてもらいたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 
今ほどのお話もありましたけれども、この信託法案の最大の問題点は、やはり自己信託の問題ではないかと、こういうふうに思います。衆議院におけるこの法案の審議の中で、ある参考人の方が、信託の歴史は濫用との戦いの歴史でもあったと、こういうふうに言っておられます。これは度々出てくる言葉でございますが、この濫用の歴史ということを踏まえながら、今回の自己信託について見たとき、これもきっと今日何度も議論されたことなんだろうというふうに思いますけれども、財産隠匿に悪用される可能性があると、あるいは受益者、第三者の利益を害するおそれといった弊害がいろんな角度から指摘されるわけでございますが、この先ほどの信託の歴史は濫用の歴史であるというこの方の発言を踏まえて、これらの自己信託が持つこうした弊害、問題点に対して法案ではどのような手当てを講じておられるのか、概括的にお尋ねをしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○政府参考人(寺田逸郎君) 税務の問題あるいは会計の問題を除きますと、法律関係の特有の問題といたしまして、自己信託の特色というのは何といいましても委託者と受託者が同一であるということにはなるわけであります。
これが本質的に信託としておかしいものかということについては、これもいろいろ議論があったところでございますが、従来から我が国の有力説もそれを決して特殊視しておりませんでしたし、英米でもこれは認められる、広く、どこまで広く利用されているかということについてはいろいろな見方があろうかと思いますが、これも利用されているということでございまして、私どもとしては、もちろん濫用ということについての懸念はあろうかと思いますけれども、濫用との戦いでございますから、やはり濫用防止措置を講じた上でこれを導入するということにまとまったわけであります。

濫用防止措置について申し上げますと、まず第一に、やはり財産隠匿の一つの形態として債権者を害するというところがございますので、これを要式行為化いたしまして、自己信託では一定の様式に従った公正証書等の書面によってするということを要求をいたしております。これによって、時期をさかのぼらせて、差し押さえてみたら、いや、それは自己信託なんだというようなことは防止できるわけでございます。

 

 

 

 

 
それから、第二に、不動産等の公示が可能な財産については、これは公示を条件にいたしております。
それから、何と申しましても詐害信託の取消しが一番問題になるわけでございますが、これにつきましては、通常のような詐害行為の取消し訴訟を提起して、詐害行為を取り消した上で財産を取り戻してくるというようなことを不要にいたしまして、直接に委託者の債権者が強制執行を自己信託をされている財産にすることができるというようなことで、逆に受託者側で異議の訴えを提起しない限りこれを排除することはできないという仕組みにいたしております。
最後に、最終的な安全面といたしまして、公益目的に反する信託については終了命令を受けられるような仕組みにいたしておりますので、私といたしましては、今回自己信託を導入するということについて、これまでもいろいろ御説明をいたしまして、御理解は進んできて、衆議院で御理解をいただいているというふうに思っております。

 

 

 

 

 

 

 
○近藤正道君 これもまた出た話かもしれませんけれども、防止策のうち、公正証書その他の書面等に関し、法務省令で定める事項の具体的内容としてどういうものを予定しているのかということでございます。
この点に関連して、そもそも信託の公示方法の厳格化について、法案が公正証書と確定日付のある書面を認めた点につきましては、法政策的には公正証書なら公正証書一本にする方がベターだったのではないかと。公正証書としながら確定日付でもよいというふうにしたことは、きちんとした設定という点からは妥当ではないのではないかという指摘もなされておりますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) まず、後半の部分からお答えさせていただきたいと思いますが、この公正証書等を要求いたしましたのは先ほど申したような理由で、すなわち日付をさかのぼらせるということのないような、客観的な証拠をあくまで残した、そういうものに限って自己信託を認めると、こういうポリシーでございますので、それをどうするかということで、もちろん委員のおっしゃったように公正証書というのは非常に確実なことでございますけれども、しかし一方では公正証書を求める理由は本当にあるのかというような御意見もございますので。

 

 

 

 

 

 

 
そういったことになりますと、この最小限の効果を引き出すような措置ということになりますと、内容証明郵便、日付が入っている郵便で受益者に通知をするというようなことでも十分ではないかというような御議論になりまして、それでこの確定日付のある証書、これは民法の施行法の五条によって一定の範囲が認められているわけでございますけれども、これを認めたわけでございます。必ずしも公正証書に限定しなくても、先ほど申した弊害防止措置という意味では十分ではないかなと、こう思うわけであります。
その次に、最初にお尋ねがありました、省令でじゃどういう事項を定めておくかということでございますが、私どもといたしましては、例えば委託者、受託者、受益者の氏名、名称、住所それから信託そのものの目的、一定の財産特定に必要な事項、この書面を作成した年月日、これは当然のことでございますが、それから受益債権の内容、こういうようなことが少なくとも通知、あるいは文書の内容としては必要であろうと考えて、そういう方向で検討をいたしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○近藤正道君 税のこと等についていろいろお聞きしたいというふうに思っておりましたけれども、これにつきましては、ほぼ今までのところで議論が大体出ておりますし、財務省の方の当面の見解についてもいろいろ御答弁がありまして、これ以上やっても今日の段階では何も出てこないだろうな、こういうふうに思いますので、この点の質問は全部取りやめさせていただきたいと、こういうふうに思います。
そうしますと、ほぼ今日私が用意したものはなくなりましたので、時間を少し残しますが、私の質問はこれで終わりにさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○委員長(山下栄一君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
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○委員長(山下栄一君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認めます。
なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────
○委員長(山下栄一君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。
信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、財政金融委員会からの連合審査会開会の申入れを受諾することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
─────────────
○委員長(山下栄一君) 次に、連合審査会における政府参考人の出席要求に関する件及び参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
両案審査のための連合審査会に政府参考人及び参考人の出席要求があった場合には、その取扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時四分散会
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すみれ・ポリー・番人
「お疲れ様でした。5代目春風亭 柳朝師匠、宿屋の仇討ち、いただきました。」