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ネパール 民法典草案14
2016年04月11日

2016年加工編

法務省調査研究報告 ネパールにおける現行民事法の現状と今後の立法動向より抜粋


第4節 小括
これまでの検討を踏まえて、ネパール契約法および不当利得法・不法行為法の現状 と今後の立法動向について所見を述べる。

現在のネパールにおいて契約法を規律する主たる法律は、1854 年に制定された「ム ルキ・アイン」 (1963年に一部改正)と 2000 年に制定された「契約法」であり、前者は「賃金」 、「一般取引」(金銭消費貸借・使用貸借契約)、および、「寄附・贈与」 に関する規定を、また、後者は、契約法の一般規定(成立要件、有効要件、履行・義務、違反・救済)と幾つかの個別契約に関する規定(保証・補償契約、寄託契約、担保・預託契約、物品売買契約、代理契約、貨物運送契約)を置く。

 

 

 

 

 

後者の制定法は、 イギリスの判例法を成文化して制定されたインドの「1872 年契約法」を模範としているが、あくまでもネパール側が主体的、選択的に同法の一部を取り入れたという経緯があり、その内容は必ずしも同一ではない。しかし、 「2000 年契約法」の構成や内容が英米法の影響を強く受けているのは事実である。それに対して、前者のムルキ・ アインにおいて規律される契約は、ネパールの慣習法や法実務に基づいた内容となっている。

 

 

 

2010年に完成した「民法典草案」においては、上述した二つの現行法の契約法に関わる諸規定が、一定の修正や新設条項を盛り込みつつ、同草案の第 4部(財産法)の一部と第 5 部(契約法および義務に関する法)に踏襲されている。

 

 

 

 

従って、将来、 同草案をベースとした民法法案が公布・施行されたとしても、現行法上の規律と大きな乖離はなく、ネパールにおける契約法実務が混乱するような事態にはならないと予 想される。

もっとも、今回の民法典草案の起草過程では、契約法の統一を目指す国際的な趨勢をも視野に入れて、現行ネパール契約法の「現代化」が図られた部分も多く見られる。

 

例えば、
①契約の解釈に関する一般規定の導入、
②共通錯誤や一部無効の規定の導入、
③契約が取り消された場合の第三者保護規定の導入、
④事情変更の原則の効果として の契約改訂権・再交渉権の導入、
⑤履行遅滞に関する規定の導入、
⑥物品売買契約における売主の保証責任規定の充実化、
⑦保証契約における継続的保証の導入、
⑧代理契約における表見代理規定の充実化、
⑨被用者 10名以下の雇用契約を規律するルー ルの充実化などが挙げられよう。

 

また、今回の民法典草案では、
⑩賃貸借契約(建物 賃貸借を除く)と
⑪分割払い契約に関する章が新設され、これらの契約を規律するル ールが置かれることとなった。

 

 

残された課題としては、
①一方的錯誤を規律するルールの不備、
②契約違反に対する救済としての損害賠償につき、その範囲を確定するルールが精緻化されていない点、
③過失相殺に関する規定の不備、また、
④多数当事者間の債権債務関係を規律するル ールが単純であることなど、これらは幾つかの例にすぎないが、個々の契約ルールに 関して今後改善を期待したい点がある。

 

 

 

また、贈与契約や金銭消費・使用貸借契約に関する規定が第 4部の財産法に置かれており、賃貸借契約に至っては、建物賃貸借が第 4 部に、その他の賃貸借が第 5部に規律されているなど、契約法の体系性という観点からは分かりにくい構成となっている。

 

 

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