〒903-0114沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地 TEL098-945-9268 受付時間平日9:00~17:00

司法書士宮城事務所 > お便り > お便り > ネパール 民法典草案13

ネパール 民法典草案13
2016年04月11日

2016年加工編

法務省調査研究報告 ネパールにおける現行民事法の現状と今後の立法動向より抜粋

 

 

 

 

第16項 一般取引に関する規定

 

一般取引(消費貸借取引)が財産法に編入されていることも,民法典草案の特色である。これも現行法に由来する。これは,当事者の一方が他方から,一定量の金銭,その他の物を受領したときは,受領者が同じ(種類・品質・数量)の物を返還するものとされた場合に成立する(草案 502 条)。これは消費貸借取引に相当するが,かならず証書を作成・登記して行わなければならない(草案 504 条)。

 

 

 

 

すみれ
「ここでも登記か。」

 

 

 

 

証書には,取引当事者(婚姻している場合には,その配偶者),その父母,祖父母の氏名・年齢・ 住所,取引が行われた理由,取引の量,物の価格・性質,借入額(取引がそれに当たる場合),利率(利息の約定がある場合),借主の債務不履行の場合に債権者が返還を 受けるべき代わりの財産があるときはその内容,証書の登記場所と日時,その他取引 の性質上必要な事項が記載されなければならない(草案 505 条)。

 

 

 

このように一般取引は,消費貸借などに用いられるが,不動産取引と同様に,証書の作成・登記によっ て行われる点で,財産編の中に編入されていると考えられる。 証書に利息の約定が記載されていないときは,債権者は債務者に利息の支払いを請求することができない(草案 507条) 。

 

 

 

 

第3節 小括

ネパールにおける財産法の特色として,以下の点が挙げられる。

 

 

 

第1項 財産(権)の概念について
①財産と財産権の区別(一般的に権利とその客体との区別)は必ずしも明確ではないように思われる。
②動産の概念が広く,知的財産(権)や有価証券を含むものと観念されている。
③土地と建物は別不動産と捉えられている(草案 298条参照)。
④法律に別段の定めがない限り,「配偶者によって取得された財産」やそれに由来する財産は夫婦による家族共同財産とみなされており,夫婦をはじめとする家族員のコミュニティの観念が根強い。
⑤公共財産と区別されたコミュニティ財産が存在する。それは土地税事務所により, 当該コミュニティの名前で登録され,管理される。
⑥政府財産は各省庁の機関が独自に所有するものと構成されている。

 

 

 

 

 

第2項 財産(権)の取引について
①全体として,動的安全よりも,静的安全を重視している。財産の意義,所有形態, 利用についての規定が,財産の取引や担保化についての規定に先立つ。

 

 

②寄付・贈与に関して,他人物寄付・贈与および二重寄付・贈与を禁止している。 他人物寄付・贈与はしてはならないものとされ(草案 425。行為規範的),二重寄付・ 贈与行為が行われたときは,第一寄付・贈与のみが有効で,第二寄付・贈与は法的に無効であるとされる(草案 426 条)。

 

③売却等による譲渡の場合にも,他人物譲渡はできないものとされており,その旨の証書を作成しても無効である。したがって,そのような証書に基づいて引渡しがされたとしても,相手方はそれを所有者に返還しなければならない(草案 448条 1 項~3 項) 。

また,二重譲渡もできないものとされている。その結果,不動産の場合には初に証書が作成・登記された譲渡が,動産の場合には初に行われた取得が有効であり, 不動産に関する第二の譲渡の証書または動産に関する第二の譲渡行為は無効である(草案 449条) 。

 

 

 

④即時取得制度は認められていない。もっとも,盗品・遺失物が譲渡されたときは, 盗難または遺失から 3年間は,所有者は所有権を証明することにより,取得者に対して返還請求することができる。この場合,取得者はまず当該財産の維持・管理にかかった費用の償還を請求できる。さらに,取得者が当該盗品・遺失物を公の市場で購入したときは,取得者が当該財産の取得に際して支払った費用,または当該財産の現 実の価値の償還を受けるまでは,当該財産を返還する義務はない(草案 448条 4 項~6 項)。その限りで,取得者は保護されることになる。

なお,ここでの取得者は,善意であることが前提とされているものと解される。

 

 

 

⑤不動産の譲渡に対しては,近隣の親族等の先買権という大きな制限が付着している。もっとも,先買権の行使期間をある程度制限することにより,取引安全との調整を図っている。

 

⑥財産所有権の移転は,動産の場合は引渡主義,不動産の場合は登記主義をとっている。これは現行法を承継するものであり,コモン・ローをの考え方をベースにするものと解される。

 

 

 

第3項 担保について

 

担保権については,占有担保(不動産質)のタイプと非占有担保(譲渡担保)のタ イプがある。いずれも執行の便宜を相当考慮している。すなわち,前者の場合は,基 本的に果実を担保権者に帰属させることによる。後者の場合は,基本的に非占有担保 (譲渡担保)権者が目的物の所有権を取得し,または処分することによる。これは, 執行システムの未整備をカバーするための工夫と解することもできる。

 

第4項 その他

①信託(トラスト)を民法典に導入している。これは,コモン・ローとシビル・ロ ーとの折衷構造の一例といえる。

②何ぴとも他人の財産(権)を侵害してはならないといった,細かな行為規範を定 めている(草案 295条 3 項・4 項,草案 296条)。これらはある意味では当然のこと ともいえるが,それらをあえて規定している点に,行為規範を重視するネパール民法 の特色がよく表れているといえよう。

 

ポスト920151211