〒903-0114沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地 TEL098-945-9268 受付時間平日9:00~17:00

司法書士宮城事務所 > お便り > お便り > ネパール 民法典草案9 不動産

ネパール 民法典草案9 不動産
2016年04月11日

2016年加工編

法務省調査研究報告 ネパールにおける現行民事法の現状と今後の立法動向より抜粋

 

 

 

 

第8項 役権
役権(servitude)の概念は,現行法には存在せず,民法典によって初めて導入されるものである。民法典草案が導入しようとする役権は,不動産の所有者が,その不動産の便益を増すために,他人の不動産の全部または一部を,その目的に応じて利用す る権利である。役権は,契約によって設定され,または当該不動産が存在する地方の慣習もしくは法律の規定によって認められる(草案 387条)。役権は,承役不動産の譲渡や分割によっても影響を受けずに存続する(草案 389 条 1項・2 項) 。

 

 

 

 

なお,第Ⅳ部・第 8章が規定する役権には,いわゆる法定役権も含まれている。緊急事態の場合において,犠牲者を救うために,他人の土地や建物を利用する権利である(草案 391 条)。ある土地所有者にとって,公道へのアクセスが自然災害によって遮断された場合は,公道に至るまで他人の土地を合理的な場所と範囲において通行す 権利が認められる(草案 392 条)。
土地の分割や譲渡によって公道に通じない土地を生じるときは,予め通路を確保しなければならない(草案 393条 1 項)。また,ある者の土地に下水道,上水道,電線,ガス管または電話線といった生活上の基本的サ ービスの提供を受ける必要があるときは,その者は他の者がもつ土地を利用し,これらの設備を敷設する権利をもつ。

 

 

 

その場合には,要役財産の所有者は,承役財産の所有者に対し,合理的な損賠賠償の支払義務を負う(草案 394 条)。このほか,通行権 に関するその他の規定(草案 396条,399条。人間による通行のほか,家畜による通 行を認める),水の利用に関する規定(草案 395 条,396条)などがある。

第9項 財産(権)の移転および取得

 

 

売買や交換(草案 459 条参照)による財産(権)の移転は,譲渡人における所有権 の消滅と譲受人における所有権の発生として観念されている(草案 443 条 1項) 。
共有財産は共有者全員の同意がなければ譲渡できず,同意しない共有者があるときは,他の共有者はその持分を譲渡できるにすぎない(草案 445条)。これは,ごく一 般的に認められる共有法理である。他方,家族共有財産は,家族員の書面による同意がなければ譲渡できない(草案 446 条)。

 

 

しかしながら,世帯主は,家計を維持するために必要なときは,動産についてはその財産の全部を,不動産についてはその半分を,家族員の同意なしに譲渡することができる(草案 447条)。この点に,一般の共有財産との違いがある。

 

 
すみれ
「世帯主は強いんだね。」

 

 

 
また,寄付・贈与の場合と同様に,売却等による譲渡の場合にも,他人物譲渡はで きないものとされており,その旨の証書を作成しても無効である。したがって,その ような証書に基づいて引渡しがされたとしても,相手方はそれを所有者に返還しなければならない(草案 448 条 1項~3項) 。

 

 

 

 

 

なお,即時取得制度は認められていない。もっとも,盗品・遺失物が譲渡されたときは,盗難または遺失から 3 年間は,所有者は所有権を証明することにより,取得者に対して返還請求することができる。この場合,取得者はまず当該財産の維持・管理にかかった費用の償還を請求できる。

 

 

 

さらに,取得者が当該盗品・遺失物を公の市場で購入したときは,取得者が当該財産の取得に際して支払った費用,または当該財 産の現実の価値の償還を受けるまでは,当該財産を返還する義務はない(草案 448 条 4 項~6項)。その限りで,取得者は保護されることになる。なお,ここでの取得者は, 善意であることが前提とされているものと解される。

さらに,やはり寄付・贈与の場合と同様に,二重譲渡はできないものとされている。その結果,不動産の場合には初に証書が作成・登記された譲渡が,動産の場合には初に行われた取得が有効であり,不動産に関する第二の譲渡の証書または動産に関する第二の譲渡行為は無効である(草案 449条) 。

 

 

 

 

 

後に,外国人に対する不動産の譲渡および担保設定は,政府による事前の同意がなければ無効である。政府の事前同意なしに不動産の譲渡行為がされたときは,当該不動産は政府に移転する。譲受人たる外国人は,支払った代価を無担保の債権者として,譲渡人に返還請求するほかない(草案 460 条) 。

 

 

 
すみれ
「政府の同意を得るのは厳しいのかな。」

 

 
第10項 不動産の先買権
前述したように,ネパールはコミュニティ財産,家族財産等の制度を維持しているが,それと密接に関連する形で,不動産の所有者が当該不動産を譲渡した場合に,当該不動産に対して一定の密接な関係をもつ者による先買権の制度が存在する。

 

 

 

 

これもネパール民法の特色として看過することができない。 先買(Hak safa)の制度は,すでに現行法に存在し,実際にも利用されている。それに関する規定は,ムルキ・アインの諸章(一般取引,土地の耕作,寄付および贈与,登記に関する章)に分散している。民法典草案は,これを 1章に取りまとめ,包括的に規定しようとするものである。 不動産の所有者が,その不動産を他人に譲渡しようとする場合,当該不動産と一定の緊密な関係をもつ者は,所定の手続に従い,当該不動産を優先的に取得することができる(草案 482条) 。
そのような先買権をもつ者としては,当該不動産に隣接する不動産を所有する相続 人がある。この相続人は,買主が支払った代価および証書作成費用等を当該買主に提供することにより,当該不動産を優先的に取得することができる(草案 483条 1項)。

 

 

 

 

そのような相続人が複数いる場合は,近親の相続人が優先する。そのような相続人が複数いるときは,その全員が平等の割合で先買いすることができる(草案 483 条 2 項)。

近親の相続人が先買権を行使しないときは,次順位の相続人に先買権が移転する(草案 483 条 3項)。さらに,近隣の相続人がいない場合,またはそのような相続人がいても先買権を行使しないときは,当該不動産の賃借人がいれば,その者が先買権をもつ(草案 484条)
なお,建物の一部が売却されたときは,当該建物のたの部分を所有する者が優先的に先買権をもつ(草案 485 条)。ただし,区分所有建物(コンドミニアム)が譲渡されたときは,先買権の規定は適用されない(草案 487 条)。

 

 

 
番人
「コンドミニアムは別扱いか。」

 

 

 
先買権をもつ者がそれを行使するときは,管轄する土地税事務所で手続を行う。先 買権行使の申立てがあったときは,管轄土地税事務所は初に当該不動産を購入した買主を,交通に要する期間を除き,7日以内に出頭するよう召喚する(草案 488 条)。
先買権者は,該当不動産の譲渡があったことを知った時から 35日以内,かつ譲渡の登記がされた時から6か月以内に先買権を行使しなければならない(草案490条)。 この期間制限により,不動産売買における取引安全と先買権者の利益保護との調整が図られているものと考えられる。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA