〒903-0114沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地 TEL098-945-9268 受付時間平日9:00~17:00

司法書士宮城事務所 > お便り > お便り > ネパール 家族・相続法10

ネパール 家族・相続法10
2016年04月11日

2016年加工編

法務省調査研究報告 ネパールにおける現行民事法の現状と今後の立法動向より抜粋
第11項 家族共同財産分割(208~239 条)

 

(1)家族共同財産制度の特色

家族共同財産は、ヒンズーの伝統的な制度であり、息子は出生により持分を分割してもらい、娘は婚姻時に持分を与えられるというものであったと言われる。しかし、 現代社会では、祖先から承継した財産を息子も娘も取得するという考え方に変わってきており、家族共同財産持分権者は、夫、妻、父、母、息子、娘となっており、家族集団で生活する者に平等な持分が認められている(第 10章 208条・209 条 1項)。
(2)家族共同財産持分権者と持分
当該財産の持分を請求できるものは、上記に記載された者のほか、共同財産が分割される時に、胎児であった者にも持分権が認められる。だたし、死産の場合には、胎児の持分は他の者に平等に分割される(第 10 章 209条 2 項・3 項) 。

また、子は親が婚姻しているか否か、婚姻が無効とされたか否か、婚姻を解消して いるか否かにかかわらず、親の財産に対して家族共同財産分割持分を有する(第 10 章 210条)。 父親が不明な場合、子は母に対する請求権のみ認められるが、婚姻が公にされてい ない場合、妻は夫へ子は父へ家族共同財産分割持分を請求することはできない(第 10 章 211条) 。
同居する兄弟の妻もしくは子は、その夫もしくは父が有する持分のみを請求することができる。夫もしくは父が死亡した場合も同じである(第 10章 212 条 1項 2項) 。

また、妻が複数いる場合には、夫の持分の限りで妻たちには権利が認められる(第 10 章 212条 3項)。

 

 

 
番人
「妻が複数、か。」

 

 
夫が妻および子の財産と自己の家族共同財産分割持分をまとめて管理している場 合、夫が他に妻をもち、その妻との間に子が出生すると、新たな妻と子は、夫・父の 持分のみに対して家族共同財産分割持分を有する(第 10章 213条 1項)。次に、夫が 家族共同財産分割持分を取得しない前に、他の女性と婚姻した場合、新たな妻は夫が 得られる持分に対してのみ、自己の持分が認められる(第 10章 213 条 2項) 。

 

 

 

 

(3)家族共同財産と家族構成員の扶養

家族共同財産分割持分を有する者(同居する夫、妻、父、母、息子、娘)は、自己 の社会的地位や収入に応じて相互に扶養し世話をしなくてはならない(第 10章 214 条 1項)。親は子に対して適切に子を監護養育しなくてはならないとされている(第 10 章 214条 2項)。 前述の義務を負う家族構成員が、扶養の責任を果たさない場合には、家族共同財産 分割持分を有する者は、財産の分割を求めることができる(第 10章 214条 3項)。

これらの規定から判断すると、家族共同財産は、個人に帰属するというよりも家族生活を支える財産として集団に帰属すると解されており、その点で、財産共有と扶養ならびに同居が関連するとして重視されていると思われる。
(4)家族共同財産の分割

第一に、家族構成員が合意した場合は、何時でも家族共同財産の分割をすることができる。夫、父、家長は、適切と判断した場合には、当該家族構成員との同居よりも 財産を分割して別居することを選択できる(第 10章 215 条) 。

 

第二に、特段の事由がある場合の財産分割請求に関しては、①夫婦の一方が他方を家から追い出した場合、②夫婦の一方が他方に対して身体的精神的な傷害を与えた場合、には、夫婦の一方は家族共同財産を分割して別居を求めることができる(第 10 章 216条 1項)。夫が新たな婚姻をしたとき、妻は家族共同財産を分割して別居することができる(第 10章 216条 2項)。家族共同財産分割持分を得て別居した妻が、他の男性と再婚した場合には、その持分は前夫との間にできた子、それがいない時には、前夫もしくは直近の相続人に返還されるものとされる(第 10章 216 条 3項) 。

 

 

 

第三に、寡婦は何時でも家族共同財産分割持分を請求して別居することができる (第 10章 217 条 1項)。ただし、再婚した場合には、前夫との間にできた子、それがいない時には前夫に返還し、それらもいない時には自己のものとすることができる (第 10章 217 条 2項) 。

 

第四に、同居する者が家族共同財産の分割を行う場合、①同居する家族の債務を考慮に入れる、②財産の価額に争いがある場合には、まず合意で、合意がまとまらない 時には「くじ」で、分割を行うものとする(第 10章 219 条 2項・3 項)。分割をめぐ って争いがある場合には、争いが終結するまで分割は行われない(第 10章 219 条 4 項) 。

 

 

第五に、財産の分割は書面をもって行われるが(第 10章 219条 5項)、分割を行う 書面には次の事項が特定されなくてはならない。①氏名、年齢、住所、持分権者の父 及び祖父の氏名、②対象となる財産、③債務ならびに財産、④持分権者が同居してい る者の関連事項、⑤持分権者が財産についてすべて開示している旨の宣言、⑥分割が 父、母、夫、妻の死亡による場合には、その詳細、⑦該当する財産が他人に委託され た場合には、その詳細、⑧その他必要な事項、とされている(第 10 章 220条) 。

 

 

 

第六に、分割手続きでは、証人の立会いのもとに書面が作成され、証人が署名押印 などを行って登録がなされる(第 10 章 221条)。

 

 

第七に、家長は自己の持分が分割されていない場合、同居する家族の財産を持分権者に提供することはできない。ただし、他の家族共同財産持分権者の合意がある場合、または、合意がないときでも自己の持分の範囲である場合はこの限りでない(第 10 章 222条) 。
第八に、家族共同財産持分権者は、自分が他の持分権者と別居して自活し始めた年 月日および不動産や債務などの目録を開示することによって、自己の持分を請求する ことができる(第 10章 223条 1項)。この申立てに対して他の家族共同財産持分権者 は、申立て者がすでに持分を分割済であるか否か、財産目録を提供するか否かなどに 関して陳述書を提出しなくてはならない(第 10 章 223条 3 項)。分割の申立てがなされた場合には、裁判所は、提供された財産目録などをもとに、家族共同財産持分権者 などから事情を確認して、持分の分割を行うことになる(第 10章 225 条)。分割が行 われた後に、新たに家族共同財産が見つかった場合には、裁判所は当該財産を分割し なくてはならない(第 10 章 226条 3項) 。

 

 

 

 

第九に、財産目録が提出されない場合もしくは提出が遅れる場合、裁判所は、財産 目録が提出されるまで、家族共同財産の分割を停止することができる(第 10章 228 条 1項)。財産目録が提出された場合には、裁判所は分割手続きを行わなければなら ない(第 10 章 228条 2 項) 。

 

 

 

第十に、対象となる財産については以下の対応がなされる。 公平な分割が行われるためには、分割の対象となる財産の隠匿行為を行った者は、 持分を喪失するとされる(第 10章 229条 2項)。また、家族共同財産の確定のために 必要な場合、裁判所は、当事者ならびに地方機関の係官を含む2名の立会いのもとに、 施錠された家屋に立ち入ることができる(第 10 章 227条)。さらに、分割された財産 に瑕疵があって利用ができない者に対しては、すべての家族共同財産持分権者が等し い割合で補償しなくてはならない(第 10章 230 条) 。
家族共同財産持分権者が分割を求めた場合、財産目録において財産もしくは収入に ついて支払い(分割)を保留する旨が記載されているときには、分割対象となる財産 の範囲をめぐる紛争を防ぐために、裁判所は当該財産や収入を分割が終了するまで保留することができる(第 10章 233 条) 。
また、家族共同財産持分権者が分割対象となる財産に抵当権などを設定しているこ とが明らかになった場合には、裁判所は、家族共同財産持分権者全員の合意を得て、 ①当該財産を放棄する、もしくは②同居家族の財産(property of undivided family) からの負担により抵当権の解除をするという条件をつける、という形で家族共同財産 分割を行うことができる(第 10章 232条 1項)。家族共同財産持分権者全員の同意が 得られない場合でも、家長として行動している者もしくは成人の者が上記の抵当権な どを設定していることが明らかになった場合には、裁判所は上記同様の対応をするこ とができる(第 10章 232 条 2項)。上記の場合のほか、家族共同財産持分権者が分割 対象となる財産に抵当権などを設定していることが明らかになった場合、裁判所は共 同財産(common property)40に対する当該人の持分からの負担で上記同様の対応を することができる(第 10 章 22条 3 項) 。

分割の対象となった財産が囲繞地の場合には、家族共同財産持分権者は、囲繞地利 用のための通路を提供するものとされる(第 10 章 234条)。
第十一に、ひとたび分割が終了すると、家族共同財産持分権者の合意がない限り、 その財産が気に入らないなどの理由で分割された財産を交換することはできない(第 10 章 231条)。

 

 

 

第十二に、同居する家族が有する債務は、債権者の同意がない限り家族共同財産持 分者の一人に移転することはできない(第 10 章 235条 1 項)。上記の条件に反して、 一人に移転した場合には、家族共同財産持分者全員が等しい割合で債務の弁済の責任 を負うとされている(第 10章 235 条 2項) 。

ポスト920151211