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ネパール 家族・相続法8
2016年04月11日

2016年加工編

法務省調査研究報告 ネパールにおける現行民事法の現状と今後の立法動向より抜粋
第7項 後見(135~152 条)

 

(1)後見制度の概要

行為能力を十分持たないために保護が必要な者に対して後見制度がおかれている。 未成年の子の場合には保佐制度として独立した規定があるので、後見制度では、多くの場合、成人の保護が考えられていると思われる。未成年の子に関する記述もあるが、未成年の子の保護という視点から見ると、保佐制度と明確な差異があるとは思えない。

 

 

 

後見人の順位(第 6章 136 条 1項)

1. 同居する夫または妻
2. 父または母
3. 息子、死亡した息子の寡婦、未婚の娘
4. 別居している夫または妻
5. 別居している息子、死亡した息子の寡婦、未婚の娘
6. 父方の祖父または祖母
7. 孫息子もしくは未婚の孫息子
8. 母方の祖父または祖母、叔父または叔母
9. 兄弟、未墾の姉妹
10. 既婚の孫娘
11. 既婚の姉妹

*なお、同順位者がいる場合には、当事者の合意もしくは裁判所が決定する。
*14歳になっている者で判断能力のある者は、当人の判断による。 ただし、書面を作成しなくてはならない。
(2)後見人選任手続き

第一に、被後見人が行為能力を欠くときには、上記の者が後見人となるが、それ以外の者が後見人となるときには、裁判所の承認を必要とする(第 5章 137条) 。また、子どもが施設などに収容されている場合は、機関が後見人となる(第 6章 138条) 。

また、父母が死亡した場合、父が死亡した後に母が再婚した場合、もしくは、父母の双方に精神的異常がある場合には、同居する後見人が親権を行使して子の監護にあたるものとされる(第 5章 131条)。このように、保護の必要性が発生した場合には、当然に後見人としての職に就くという仕組みとなっている。
第二に、関係する当局もしくは関係人は、上記の者以外の後見人の選任を裁判所に 申請することができる。裁判所は諸般の事情を検討して後見人を選任するが、その者の同意を得るものとする(第 6章 139 条 1項・3項) 。
第三に、後見人には、①行為能力に問題のある者、②被後見人の権利や利益に反する行為をした者、③3年以上の懲役に処せられた者、④裁判所が後見人として不適格とした者、などは就くことができない(第 6章 141条)。

 

第四に、裁判所は後見人を選任する場合、必要と判断すると後見監督人を選任することができる。後見監督人は、後見事務を監督し、後見の終了とともに後見監督も終了する(第 6 章 140条) 。

(3)後見の業務
後見業務の内容は、被後見人の監護や療養などであり、その費用は被後見人の財産もしくは後見人自身の財産を持って充てるとされている(第 6章 142 条 1項)。被後見人の動産を通常充てるが、それがない場合には、裁判所の許可を得て被後見人の不 動産を処分して後見費用に充てることができる(第 6章 142 条 2項)。後見人は、被後見人の財産管理を行うが、当該財産を使って投資などで利益をあげることができる (第 6章 143 条)。

 

 

 

後見人は、被後見人のために訴訟を起こすことができる(第 6章 145 条)ほか、後見業務のために必要な行為をすることができる(第 6章 146 条)。ただし、後見業務に条件が付けられている場合には、その範囲で後見業務を行わなくてはならない(第 6 章 147条) 。

後見人は、後見業務に関して財産管理の帳簿を作成管理しなければならない。被後見人が成人に達した場合もしくは行為能力を回復した場合には、その時より 1年以内 に、死亡した場合には 6 か月以内に、後見人は帳簿などを提出しなければならない(第 6 章 144条) 。

 

 

なお、夫、妻、親、息子、娘、祖父母、孫息子、孫娘が後見人の場合には、不動産 の処分や帳簿などの提出をしなくてよいとされている(第 6章 142条、144 条)。後 見人になる場合も同じことが言えるが、こうした免除条項は、親族がきちんと世話や 財産管理をするという前提に立っていると言えよう。

 

 

 

(4)後見の終了

第一に、後見は、
①後見人が辞任の申立てをして裁判所が認めた場合、
②後見人もしくは被後見人が死亡した場合、
③被後見人が行為能力を回復した場合、
④被後見人の申し出により裁判所が後見人を交代させた場合、には終了する(第 6章 148条 1 項)。
ただし、後見人は、次の後見人が選任されるまで被後見人の面倒をみなくてはならない(第 6章 148条 2項)。後見人が死亡した場合、後見人の地位は相続されない(第 6章 149 条) 。 第二に、後見業務が終了した場合、後見人は後見業務のために自己の負担による出 費を被後見人の財産で清算することができる。ただし、夫、妻、親、息子、娘、祖父 母、孫息子、孫娘が後見人の場合、清算は許されない(第 6章 150条)。ここにも「身内」は相互に支援をしあうという考え方がうかがえる。

 

 

 

番人
「後見人の地位は相続されないんだ。それが普通のような気もする。」

 

 
第三に、後見人が悪意もしくは害意で被後見人の財産に損害を与えた場合には、後見人が利益を得たか否かにかかわらず、その賠償の賠償の責任がある(第6章151条) 。

 

 

 

(5)後見制度の特色

後見業務は他の国の立法と大きく変わるところはないが、被後見人の財産などに関する監視体制が十分とは言えないこと、当然に後見人になる仕組みであること、親族に信頼を置いて後見業務を行うとする点などは、性悪説に立つとも言える近代国家の法としては、被後見人保護に薄い。ただ、ネパール社会の親族構造と親族に期待され る役割がこうした条文に反映していると思われる。

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