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2016年加工編  法制審議会信託法部会  第22回会議 議事録
2016年02月19日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第22回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成17年10月7日(金)  自 午後1時00分

至 午後5時00分

 

第2 場 所  法曹会館 高砂の間

 

第3 議 題

受託者による受益権の全部の継続保有の禁止について

信託財産と固有財産等との識別不能について

信託財産に対する強制執行等について

善管注意義務について

法人役員の連帯責任について

受託者の権限違反行為について

報酬請求権について

受託者の職務の引受けについて

信託管理人等について

受益債権と信託債権との優先劣後関係について

営業信託の商行為性について

受益権の有価証券化について

 

第4 議 事 (次のとおり)

 

 

 

議        事

 

  •  ただいまから第22回信託法部会を開催したいと思います。

いつものように,幾つものテーマがございますので,これを適宜区切りながら議論していきたいと思いますけれども,その区切り方につきましては○○幹事から説明をお願いします。

 

 

  •  テーマは全部で17ございますが,一番最初は,受託者による受益権の全部の継続保有の禁止と信託財産と固有財産等との識別不能の問題,善管注意義務,法人役員の連帯責任,それから報酬請求権と受託者の職務引受けを御審議いただきまして,次に,信託財産に対する強制執行と受託者の権限違反行為の問題を御審議いただきたいと思います。

 

 

そして,あと残りを後半で分けさせていただいて,全部で4つに分けたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

  •  それでは,お願いします。

 

 

  •  では,資料の一番最初,受託者による受益権の全部の継続保有の禁止というところでございますが,パブリック・コメントにおきましては,試案の考え方,すなわち受託者は受益権の全部を保有する場合でも,受託者と受益者を同一人が兼任する状態が解消されることがあり得ることに鑑みますと,兼任状態が生じたことをもって直ちに信託を無効とする必要はないという考え方に対し賛成意見が多く寄せられました。

 

 

 

 

ところで,この規律によっても,このような兼任状態は相当期間を超えて継続することは許されないものでございます。

 

 

この点につきまして,試案では,信託の終了事由として「兼任状態を解消するのに必要な期間を超えて,受益権の全部を保有していたとき」としておりましたところ,この期間の明確化を図るべきであるとの意見が寄せられました。

 

 

 

この規律の趣旨といいますのは,受託者と受益者の兼任状態が生じている場合においては,実質的には受益者の受託者に対する監督関係が存在せず,信託のあるべき構造が損なわれているのでありまして,このような状態が長期間継続するのは望ましくないと考えるものでございます。

 

 

ところで,これと類似の状況としましては,受託者の全部が欠けている場合がございます。

 

 

本規律の場合には,信託事務処理を行う者が欠けているわけではございませんで,監督関係が期待できないにとどまるわけですが,いずれの場合も信託の一部に機能不全の状態が生じていることには変わりないと思われます。

 

 

そこで,このような不健全な状態を解消するためのいわば入院期間といたしまして,受託者の全部が欠けた場合には,「新受託者が就任しないまま1年を経過したとき」をもって信託が終了すると提案していること,これと同様に,受託者と受益者との兼任状態が生じている場合についても,1年間をもって兼任状態を解消するために必要な期間と考えるものでございます。

 

すみれ

「1年は入院期間か。」

 

 

 

以上によりまして,資料ですと42ページ,第57の1のcにございますが,兼任状態を解消しないまま1年を経過したときには信託が終了するものとして,期間を明示することを提案するものでございます。

続きまして,第10の識別不能についてでございます。

 

試案の考え方,すなわち信託財産と固有財産等とで識別不能状態にある各財産について,共有を擬制しまして,その持分の割合は均等であると推定しまして,さらに共有された財産の分割に関する規律を設ける。この考え方に対しましては,賛成意見が多数寄せられました。

 

 

なお,この提案1の二重下線部は,(※2)に書いてありますとおり表現ぶりを見直したにとどまりまして,実質を変えているものではございません。

 

 

その上で,資料3ページの2の(1)から(4)で個別の意見について検討しているところでございます。

 

 

まず,(1)といいますのは,共有持分の割合を識別不能当時の価格の割合に応じるものとの提案に対しまして,時点についての処理が硬直的であり,その時々の割合に応じて共有割合を算定する,あるいはできることとすべきではないかとの意見について検討したものでございます。

 

 

しかし,識別不能となった財産が同種・同等のものであれば,その後に財産の一部滅失ですとか価格変動が生じてもその効果は持分に比例して吸収され,持分割合は変化しないことになります。

 

 

また,仮に識別不能となった財産の品質等に若干の差があるために,本来であれば価格変動の効果は財産ごとに異なり,持分割合に影響するはずのものであったといたしましても,ここでの規律は識別不能の場合を対象にしているものでございます。

 

 

そうしますと,価格変動のあった財産が固有財産に属するものであったのか,あるいは信託財産に属するものであったのかが特定できないことが前提でございますので,価格変動の効果は信託財産と固有財産とで従前の持分割合に比例して吸収されるものとして処理せざるを得ず,結局,持分割合は変化しないことになると思われます。

 

 

 

以上の次第で,この意見は採用しないこととしたいと考えております。

次に,資料4ページの(2)ですが,「価格」の意義に関する御意見がございました。

 

 

ただ,ここでの「価格」と申しますのは,民法第244条における一定時点における価格,すなわち時価を指すものでございますが,民法でも,この価格の意義をより詳細にした規定は置かれていないことなどに鑑みまして,この意見も採用しないこととしたいと考えております。

 

 

次に,(3)でございますが,試案におきまして,識別不能当時の価格の割合の立証が困難な場合に備え,共有持分の割合を均等と推定することに対する意見についてでございます。

 

 

まず,アでございますが,受託者の分別管理義務違反により識別不能となった場合につきましては,固有財産よりも信託財産を優先して保護すべきであるという旨の指摘についてでございます。

 

しかし,この場合,受託者は損失てん補責任を負うわけでございますし,損失てん補責任の実効性の如何と信託の倒産隔離機能とは別個の問題でございますので,識別不能当時の時価の割合が証明できない場合に備えて持分割合を均等と定めることといたしましても,公平にかないこそすれ,信託の倒産隔離機能ですとか信託への信頼が害されることにはならないと思われます。

 

次に,イでございますが,持分を均等と推定した場合には,計算上,信託に帰属すべき財産の総額を超える財産が信託財産と推定されるということが起こり得るから,均等との推定規定を設けることは妥当でない旨の指摘でございます。

 

 

しかし,この場合,少なくとも信託財産に帰属すべき持分が一定の割合を超え得ないことが認められるわけでございますので,その割合を限度として持分の割合が認定されることになりまして,そもそも推定規定が働くことにはならないという整理をすればよいのではないかと思われます。

 

 

 

最後に,資料5ページの(4)でございますが,これは受益者が複数の場合の共有物分割訴訟につきまして,受益者全員が訴訟当事者になる必要があるとしても,訴訟を提起するとの意思決定については信託行為の定めや受益者集会等により定めることができるとすべきであるとの指摘についてでございます。

 

 

 

この点につきましては,このような意思決定については,信託行為の定めをもって第三者に意思決定権を付与したり,多数決制度によることなども可能であると考えております。

 

 

なお,(※3)にございますとおり,共有物分割の手続の概要につきましては,試案に示したところに対して特段の異論は示されておりません。

 

 

続きまして,強制執行のところは飛ばしまして,第18の善管注意義務に移らせていただきます。資料は10ページになります。

 

 

これも試案の考え方,すなわち現行法第20条を維持して受託者は善管注意義務を負うこととした上で,これが任意規定であることを明らかにすること,そして,現行法第21条は削除することについては,いずれも賛成意見が大勢を占めております。

 

 

なお,受託者の善管注意義務が任意規定であることを明らかにしていることに関しまして,善管注意義務の免除までは許されないことを明らかにすべきであるとの意見がございました。

 

 

この点につきましては,受託者の善管注意義務を完全に免除する定めがある場合には,委託者は,信認関係を本質とする信託の設定意思をそもそも有していなかったと考えるのが合理的でありまして,それ以外に善管注意義務の免除は許されないとの特段の規定を要するものではないと考えております。

 

 

また,善管注意義務に関する個別的,具体的な規定を設けることの当否に関しましては,両様の意見が示されております。

 

 

この点につきましては,資料10ページから11ページの①から④に示した理由によりまして,この提案以上に個別的,具体的な規定は要しないものとすることでよいのではないかと考えております。

 

 

 

続きまして,第27,法人役員の連帯責任について御説明いたします。

試案に対しましては,賛成意見が大勢を占めております。

 

 

この提案,すなわち試案と同じでございますが,現行法第34条の規定の明確化と合理化を図ったものでございます。3点ございまして,まず1つは,受益者と直接の契約関係にはない理事等が責任を負うのは,受託法人が損失てん補責任等を負う場合であることを明確にしたこと,次に,受託法人の任務違反行為に理事等が関与しただけでは足りず,任務違反行為につき悪意・重過失があることを要求したこと,さらに理事等が負う連帯責任の内容も,損失てん補責任等であることを明確にしたこと,この3点の明確化,合理化を図ったものでございます。

 

 

このように,試案の内容といいますのは,受益者との間で直接の法的関係にはない理事等の責任の内容を明確かつ合理的な範囲に限定し,理事等の利益と受益者の利益とを適切に調整する内容であると思われます。

 

 

そこで,試案のとおり維持することとしております。

なお,仮に利益吐き出し責任を設ける場合については,この責任に関する理事等の責任負担のあり方について,別途検討することとしたいと考えております。

 

 

続きまして,また1つ飛ばしまして,16ページの受託者の報酬請求権についてでございます。

 

 

本日は,この第33のうち,提案2の(2)の甲案と乙案について御審議願いたいと考えております。

 

 

パブリック・コメントの結果ですが,乙案,すなわち受託者が受益者から補償を受けるためには,受益者との個別の合意を必要とするという考え方の方が多数意見を占めております。

 

 

なお,甲案または乙案を支持する理由として挙げられております意見の要旨は,それぞれ資料の17ページに記載したとおりでございます。

 

 

いずれの考え方を採用すべきか御審議願いたいわけでございますが,あえて1点だけ付言いたしますと,原則無報酬であり,一定の事情があって初めて発生する信託報酬請求権と異なりまして,当然に発生する費用償還請求権につきましても,前回部会におきましては,受益者と受託者との個別の合意がない限り責任を負わないとする乙案の考え方で基本的なコンセンサスをいただいているところでございます。

 

 

このことに鑑みますと,論理必然ではないとは言えますが,やはり受益者から信託報酬を受ける権利についても乙案を採用するのが一貫しているように思われるところでございます。

 

 

 

最後に,第35の受託者の職務の引受けについて御説明申し上げます。

試案の考え方,すなわち被指定者に対する利害関係人の催告権を認めまして,回答がない場合には就任拒絶と見なすという考え方につきましては,寄せられた意見は,すべて賛成するものでございました。

 

 

もっとも回答の相手方につきまして,催告者に対しても常に回答すべきであるとの意見がございました。

 

 

この後者の意見に触発されまして,回答の相手方について再検討いたしました結果,試案におきましては,回答の相手方を受益者としておりましたのを改めまして,原則として委託者,委託者が死亡している場合には委託者の相続人としてはどうかと,改めて提案するものでございます。

 

 

 

被指定者が催告を受けて回答すべき相手方を考えるに当たりましては,まずは催告に基づくのではなくて,いわば自主的に信託の引受けの意思表示をすべき相手方を考えまして,その上で,催告に対する回答の相手方についてもこれと同様とするのが相当と思われます。

 

 

遺言指定者の就職に関する民法第1007条,第1008条の規定とも,この考え方が平仄が合うところでございます。

 

 

なお,このように考えますと,少なくとも催告者のみを回答の相手方とする選択肢はとり得ないことになるわけでございます。

 

 

そこで,被指定者が催告に基づかずに意思表示をすべき相手方について検討した結果が,資料19ページの(2)の①から④のとおりでございまして,かいつまんで申しますと,まず①が,受益者または信託管理人に対する回答がそもそも不可能な信託があり得るということ,②といたしまして,受益者の有無に対応して回答の相手方を変えるのは煩雑でございますし,被指定者が判断を誤るおそれもあるということ,③として,受益者に対して受益権取得の事実を通知したくないという委託者のニーズを尊重するということ,④といたしまして,委託者と被指定者は実質的には信託の設定という法律行為の対立当事者に準じる関係にあるものと考えられまして,そうすると,被指定者の意思表示は,いわば委託者からの契約の申し込みに対する承諾の意思表示に類するものと見ることができると思われますので,委託者に対して意思表示すべきものとするのが自然であることなどが考えられます。

 

 

 

以上を総合いたしますと,資料19ページの(3)にありますとおり,被指定者が催告に基づかずに意思表示をすべき相手方,そして,これと同様に解すべき催告を受けた場合の回答の相手方につきましては,委託者とするのが適当と考えられるわけでございます。

 

 

また,資料20ページの(※2)に書きましたとおり,委託者と被指定者が実質的には法律行為の当事者に準じる関係にあるという点を考慮いたしますと,委託者の死亡の場合には,法律行為の当事者としての地位を相続する相続人において,被指定者からの回答の相手方としての地位についても承継すると考えるのが適当であると思われます。

 

 

そこで,委託者が死亡している場合には,被指定者は委託者の相続人に対して回答すべきものとしております。

 

 

なお,パブリック・コメントにおきましては,催告者に対しても常に回答すべきとの意見がありましたが,この点につきましては,資料20ページの(4)のとおり消極に考えております。

 

 

すなわち,催告に対する回答の場合のみ,委託者だけでは足りず催告者に対しても回答すべきとするほどの必要性があるかは疑問でございますし,催告者といたしましては,被指定者本人または委託者から回答の結果を知ることにさほどの困難があるとは思われないこと,さらに,遺言執行者の就職に関する民法の規定におきましても,催告があった場合でも,相続人のみに対する回答で足りるとされていることなどに鑑みまして,催告者に対する回答を法律上,義務づけるまでの必要性はないと考えられるからでございます。

 

 

 

以上で,とりあえずの説明は終わらせていただきます。

 

  •  それでは,今の範囲で御議論をお願いします。

 

 

  •  第5について,細かいことで恐縮ですが,(注)の第三者名義の場合というところで,中間試案では「同様とする」ということで本文と同様のような形で書かれていますけれども,以前の法制審での議論でも,また補足説明においても,その場合には直ちに無効であるといいますか,有効でないと書かれているんですけれども,以前も議論--余り議論にならなかったかもしれませんけれども,受託者が固有財産の保有をすること自体が違法とは見なされない以上,例えば受託者の子会社がそれを保有したとしても,何か違法,脱法とかいう目的が他に存在すればまた別ですけれども,単純な保有であれば同様とするということでしばらくの間,継続し,また,今の御提案のように,1年という期間を設けて,それで解消するというようなことでもよろしいのかなと思うんですけれども。

 

 

そういう視点で,この「同様とする」という趣旨が,従前どおり本文と同様なのか,また,補足説明にあるように,今の状況においても直ちに無効であるというような考えなのか。

 

 

無効だとすると,何か本文との間の平仄が立たないような気がするんですけれども,その辺はいかがでしょうか。

 

 

  •  ここで書いておりますのは2つの場合がございまして,1つは,明らかに脱法的な場合,すなわち事実上,自分が利益を得ているのに傀儡の者を受益者として立てている場合。こういうものについては,直ちに無効でいいのではないかと思っております。

 

 

他方,正当な理由があって,受託者の固有財産が同一の信託の受益権を取得するわけではないが実質的には利益を得ることになるというような場合があり得ると思うんですけれども,そういう正当な理由で受託者の固有財産が信託の利益を享受しているという形式になる場合につきましては,この第5の規律の対象外でありまして,永続的に続いていいのではないかと考えているわけでございます。

 

 

 

  •  同じく第5についての確認ですが,1年間の解消がなかった場合ということで,期間の明確化が新たに提案されていると認識しているんですけれども,これはデフォルト・ローとしてということですか。

 

 

すなわち,この第57の1のe,つまり受託者が欠けた場合を参考に1年と言われているわけですけれども,その第57の1のeというのはデフォルト・ロー,信託に定めがあれば別だということで規定されていると思うんですが,そうすると,本件での御提案もこの点はデフォルト・ローであるということでございますか。

 

 

考えてみるに,やはり信託にはいろいろあるわけですから,明確化と言ったとしても,単純に1年ということで規するべきではなくて,物によっては変えることがあるのかなと思っていますので,その場合でもデフォルトの方がよろしいのではないかと思っていますけれども,いかがでしょうか。

 

 

  •  例えば6か月で終了するとか,そういう場合でございますね。

 

それは恐らくfの事由で問題になりまして,信託行為に定める終了事由が生じたときで,終了するという方向に持っていけばいいのではないかと思っております。長くする方はだめです。

 

 

短くする方はできますが,それはdがデフォルト・ルールというよりは,終了事由をfで定めたと考えればいいのではないかと整理しているところでございます。

 

 

  •  ですから,この第5の規定は,1年間入れる場合に,これはデフォルト・ローではなくて強行法規ということですか。

 

 

  •  これは,言ってみれば信託の構造に関する一種のポリシーというか,考え方を明らかにしたものでございまして,具体的な効果というのは第57の方でございますので,第5はデフォルト・ローではなくて,これは強行規定でございます。

 

 

第57の方は,多少の信託行為での変更は可能という位置づけでございます。

 

 

 

 

 

  •  まあ,そういうものでしょうね。
  •  御説明の中では何度も出てきた言葉なので,指摘をするのは恐縮なんですが,1年というクリアな期間が書かれますと,1年なら常にいいんだという感じが漂ってくるような気がするんですね。

 

 

○○委員も○○幹事も,脱法のような場合にはもちろんだめだけれどもとおっしゃいましたので,もし最終的な要綱でその補足説明をつけるということですと,合理性があるような場合で必要性が認められるんだ,しかし,もちろん脱法的な場合はだめなんだということについてもお書きいただければと思います。

 

 

 

  •  趣旨は確かに,脱法的なものはだめだというのは共通の理解ではありますので,書き方が難しいかとは思いますけれども,どこかに書ければ,それは。理解は同じですよね。

 

 

これもポリシーは比較的明確だと思いますけれども,条文として書くときには,意外と難しい条文の1つであると思っています。

 

 

今のようにいろいろな例外というのかな,直ちにだめになる場合とか,この適用を受けない場合とかいろいろありますので,そこら辺の規定の仕方は難しいと思いますけれども,中身についての共通の理解としてここで確定しておきたいと思いますが,なお中身について,いかがでしょうか。

 

 

ただ,○○幹事の言われたことは重要だと思いますけれども,今までは「相当の期間」ということで,「相当な期間」というのはケース・バイ・ケースで定まる可能性があったのが,今回は,直ちにだめになるものは別として,それ以外は1年間は大丈夫だということになるわけですよね。

 

 

それは明確性を図るがゆえに,多少割り切りをすることになるんだと思います。

 

それがいいかどうかということですね。いかがでしょうか。これも一つの選択肢ということで,よろしゅうございますでしょうか。

 

 

 

それでは,第5については,書きぶりについてはなお検討するにしても,中身については以上のように確定させていただくとして,それ以外の点,識別不能あるいはそれ以外のことについて,いかがでしょうか。

 

 

  •  先ほど御説明の中で,ある一定割合以上には信託財産が存在しないことがはっきりしている場合にどうするかという問題なんですが,例えば,信託財産があるとしてもせいぜい3割であるといったことが明らかになっていたときに,英米法では,たしか証明できないときにはなるべく信託の財産が多いと推定するという判例上の準則がありますので,3割が限度であるということになりますと,3割ということになると思うんですね。

 

 

 

 

しかしながら,この案は,一般的に信託財産の方を優先するというのがないものですから,せいぜいあっても3割である,しかし実際には何割かよくわからないというときに,3割にはならないような気がするんですね。

 

 

だからこそ,それならば3割しかない,せいぜいあっても3割だというのに半分になるのかという話が出てくるのであって,必ずしもそれを限度として認められることになるのだから構わないというふうにはならないのではないかという気がするんですが。

 

 

 

  •  ○○幹事のおっしゃったことをうまく理解できたかどうかわかりませんが,今の推定割合について御指摘されていることは,むしろ信託側が多くとり過ぎるのが問題ではないかということなんですが,○○幹事がおっしゃっているのは,どちらかというとその逆で,信託が多くとれるというルールにはなっていないのではないかということですか。

 

 

 

  •  私は,どちらにすべきかといえば信託財産の方を多くすべきだと思うのですが,それとは無関係に,せいぜいあっても3割であるということだけが証明されたときに,この案のままで3割だというふうにできるんだろうか,不明であるということにおいては変わらないことにならないのだろうかということで,どちらを優先すべきだという価値判断を含まないで質問させていただいているつもりなんですが。

 

 

 

  •  識別できないということの意味だけですね。

今のは,せいぜい3割だけれども1割かもしれないし,2割--あ,逆か。せいぜい……。そうですか。1割かもしれないし,それより少ないわけですね,信託財産の方が。

 

 

だけれども,その証明ができない。そういうときにこれを適用するとどうなるか,簡単に言えばそういう質問ですね。

 

 

  •  ええ。その割合を限度として持分割合が認定され,したがって推定規定が働くことにはならないという御説明になっているんですが,3割なのか2割なのか1割なのかわからないときに,証明できれば,もちろんそれはそうなるわけですけれども,当然には3割という認定にはならないわけですよね。

 

 

  •  ある意味で,今の信託財産を有利に扱っているところがあるわけですよね,3割までは認めてしまう。

 

 

3割の推定が実際にあるわけではなくて,単にせいぜい3割だというときに3割まで認めてしまえば有利になるわけで,そういう結論がここから出てくるかと。

 

 

  •  ええ。認めるのならば,その趣旨の条文みたいなものが必要であろうという気がするのですが。

 

 

  •  今の例は,ほうっておくと半分まで信託財産にとられてしまう受託者としてどうするかということなのかなと拝察したんですが,そうであれば,受託者としては「3割まであります」というところで自白すればいいだけのことでは--自白すればというか,もうそれで「確かにそうです」と言ってしまえば,実際の裁判上はそれで認定せざるを得ないのではないでしょうか。そういうお答えはちょっとおかしいのかもしれませんが,実際の営みの話としては……。

 

 

 

  •  そうすると,3割までしかないことは明らかになっているけれども,しかし,その場合にも,形式的には3項みたいな均等であるという推定規定が働くので,推定規定を働かせないために,受託者は自白をして話をおさめないといけないという話になりますか。裁判の流れとしてはよくわかるんですが,教科書等には書きにくいなという感じはしますよね。

 

 

 

  •  手続ではなくて実態だと冷たい感じがしますけどね。結論は,恐らく3割でいいんだろうと……。何かございますか。

 

 

  •  今の場合で,逆に固有財産の方から見て3割は超えない場合は,どのようになるんでしょうか。今のは信託財産が3割は超えないという想定ですよね。今度は固有財産の方が3割は超えないという場合は。

 

 

 

  •  逆の側からも同じ問題があるわけですよね。
  •  今の話は,信託財産を優遇するというルールを打ち立てたことになっているのか,なっていないのかということなんですけれども。

 

 

  •  同じようなルールになってしまうとは思いますが。

 

  •  ちょっと間違っているかもしれないけれども,固有財産が3割を超えないときは,7割までは信託財産であることが確定し,残りの部分がわからないので,残りの3割について半分にするというわけには……

 

 

  •  ただ,先ほどのように受託者が自白するというようなことになると,さっきの場合は,1割か2割かわからないところを3割までは認めるということですから,信託財産のためになるわけですけれども,そこで3割と言うと,ひょっとしたら固有財産は1割かもしれないのに3割というような話をするんでしょうか。

 

非常に基本的な誤解をしているのかもしれませんが。

 

  •  どちらから言っても構造は全く同じですよね。何かうまい解決がありますか。

 

  •  ここは,恐らく裁判の過程でどこか裁判所が認定しますので,今おっしゃった例で言えば,普通は3割を超える固有財産はない,7割は信託財産であるという認定をするだろうと思いますし,そのように当事者間で,この場合はどちらが自白するんでしょうか,受益者の方が,あるいは受託者の方が3割しかない,3割を超えることはないと言って,受益者の方がそれを争わないとすれば,7割は信託財産という認定ができますので,この推定規定が働かないことには変わりないと思いますし,いずれにしても,3割の範囲でどこかで認定はされるのではないかという気がするんですね。

 

ですから,推定規定が働かないことには変わりないのではないかと思われますけれども。

 

 

 

 

  •  なかなか難しいですよね。具体的にどうなるのか,まだ私もすっきりわからないけれども,○○幹事の方の例で言えば,固有財産はせいぜい3割だということで,7割まではとにかく信託財産が確定し,残りの30%についてはいろいろわからないけれども,そこで行う推定というのは,もうこの条文による推定ではなくて……

 

 

  •  この条文自体は全体ですからね。残りの部分だけ均等と推定するというわけではないと思いますので。

 

 

  •  そこはゼロから30までの間で,今の○○幹事の話だと,裁判所の方で……。

 

  •  一番もっともらしいところで認定していくのではないかという気がいたしますけれども。

 

 

  •  今,出された問題を,手続に絡めないで実体法の考え方として何かうまく書けるのであれば,御提案いただきたいと思いますけれども。

 

 

  •  この問題自体は,恐らく民法の方の添付のところですかね,あそこでも全く同じ構造になっているのではないか。つまり,共有持分の割合が推定という規定自体,これは民法そのものにある条文を引っ張ってきているだけなものですから,もしかしたら,そちらの方の議論を見れば何か参考になることがあるのかなと……

 

 

  •  いや,それは怪しい。
  •  ……とすると,今ここでどうのという問題ではないのかもしれません。

 

 

  •  決め手はないかもしれません。

よろしいですか,今ここで具体的にどうなるかという答えは十分出せないかもしれませんけれども,今の場合,わかっている範囲,さっきの固有財産の方がせいぜい3割であれば,とにかく7割までは信託財産だという考え方,あとをどうするかというのは,先ほどの民法の規定ともにらみ合わせながら,解釈で決まることになると思いますけれども。

 

 

  •  恐らく3割である,3割は超えないことは明らかだということが,実際の裁判の中で一体どういう過程で「そこは認定できる」という話になってきたのかが,抽象的な話としてはよくわかるんですけれども,それがいま一つ,ではどういう事情なんでしょうかということが。

 

 

  •  そうですね,そういうものにも影響されて認定されるということですね。わかりました。

 

 

問題意識としては,こちらでもそういうことをにらみながら考えていきたいと思いますけれども,とりあえず,よろしいでしょうか。

 

 

  •  今のと違って,逆に足りない場合で,今回の検討課題の説明の中では,受託者は無過失責任を負うから,損失てん補責任があるからそちらで解決できるではないかといった御説明なんですけれども,受託者が自ら預かるケースというのは,商事信託においては余り考えられない。民事信託でもそうかもしれませんけれども。

 

 

 

それで,例えば有価証券であれば,第三者たるカストディアンが預かっているということになると思うんですけれども,そうすると,前回の議論で,選任,監督に過失がなければ受託者の方は責任は負いませんし,カストディアンに対する請求権は持つかもしれませんけれども,そういう場合はカストディアンも破綻しているような事例だと思うんですけれども,その場合ですと,今のこの原則に従って,信託財産が特に有利に扱われるわけではなくて,共有持分ということになる。

 

 

 

 

 

 

それも一つの判断かもしれませんけれども,今回の説明ですと,信託に対する信頼とか信託財産がより--よりといいますかね,信頼という観点から余り問題ないのではないかという話なんですけれども,そういう場合,やはり信託財産が有利に扱われてもいいのかな,また,そういう選択肢を受託者が持ったとしても,損失の補てんにならないという方が,逆に受託者にとっても,「どうしようもありません」という説明をせざるを得ないわけではなくて--と思ったりするんですけれども,不足している場合に,第25項の規律でのほぼ不可抗力による責任です,無過失責任ですというのが当てはまらないケースというのが,今,申し上げましたように,第三者が受任している場合という現実で,そのカストディアンが破綻したときには,現実的にもあり得る話ではないのかと思うんですけれども,その辺については今の規律のまま,しようがないという考えなんでしょうか。

 

 

 

  •  資料に書かせていただいた,信託に対する信頼が害されないのではないかというのは,制度としての信託に対する信頼は害されないのではないかと。

 

 

つまり,今,言われているところで問題になっているのは,結局のところ,適切な受託者を得なかったことによる,適切な信託事務の遂行をしなかったことによる損害なわけですけれども,そこについては信託制度の問題というよりは,やはり適切な人を選ばないと限界はあるんだろうと思っておりまして,その点については,ここの問題ではない。

 

 

むしろここで考えるべき問題というのは,識別できないような状況になったときの,いわば物権的な帰属をどういうルールにするのがいいんだろうかというところなわけでして,それに対してもう一方,適切な受託者が選ばれなかった,あるいは適切な信託事務の処理ができなかったときのルールとしては,一般的には,やはり損失てん補なり原状回復なりの方で図るんだという整理をしている。

 

 

 

 

それに加えて,今おっしゃいました,信託事務処理の委託の問題だろうかと思いますけれども,そちらについても,また個別にどういう責任を第三者に負わせ,どういう責任を受託者に負わせるのがいいのか,一般論の中でむしろそこは考えていかざるを得ない話でして,整理としては,私どもとしてはそう考えているわけです。

 

 

 

  •  現に英米法ですか,あちらの方では受託者の,特に分別管理義務違反のときですけれども,そういうことを加味して物権的な救済についても信託有利にという考え方はあり得ることはあり得るんでしょうけれども,ここの原案自体は,そういう責任の問題と物権的な救済の問題は区別するという形でできていて,それをどう考えるかということですね。

今の点についても,何かほかに御意見ございませんか。

 

 

 

  •  第10の2の(1)の共有持分の割合についてですが,その当時における割合が一体どうなのか,変動した場合どうなのかということについてパブリック・コメントで御意見があって,それに対する検討があったという認識でおります。

 

 

これはちょっと確認したいわけで,ある意味パズル的な話なのかもしれませんが,このペーパーで検討されていますのは,その変動が減った場合ないしはその中身が変わった場合ということがあると思うんですけれども,では,増えた場合どうなのかということです。

 

 

例えば,ちょっと例としてお話ししたいと思いますけれども,ヒツジでも何でもいいと思うんですが,固有財産と信託財産が7対3でありました。その時点で識別不能になりました。

 

 

その後,ヒツジがまた2,これは固有財産だとわかっています。ただし,そのときには価格は2倍になっていました。そして,今はもう全部が識別不能になっていますと。ですから2回識別不能になっているという状況です。

 

 

そうした場合に,固有財産と信託財産をどういう割合で分けたらいいのかという例を考えていただければと思うんですけれども,一つの考え方としては,あくまでも2段階で7と3があったわけで,それに固有財産として2が加わったのだから,これは7+2対3,つまり9対3である。信託財産が25%という話になると思います。

 

 

 

もう一つの考え方として,その当時における価格ということを考えますと,新たに加わった固有財産の2というのは価格が2倍ですから,4である。

 

 

そうすると,算数なんですけれども,7+4=11対3,したがって,信託財産は21%。そうすると,考え方によって信託財産が25%か21%かということで違ってくると思うんです。

 

 

頭の体操的な話で恐縮ですが,確認のために,これはどちらで考えたらよろしいんでしょうか。

 

 

  •  後でちょっと補足してもらうかもしれませんが,私の感じでは,その場合,識別不能になったときの価格を考えて,最初の7対3は,そのごっちゃになったときの7対3で分けますよね。

 

 

後で固有財産に加わったということで,数としては,あるいは割合としてはその分が増えているわけですけれども,価格が違うので……,何というんですかね,7対3だから,10対2でまた分けるのかな。新たに2加わるわけですよね。

 

 

これは別に固有財産でなくても,全く違う,例えばもう一つ別な受益者のでもいいのかもしれないし,そういうものが加わって全体でわからなくなるのも同じで,要するに,高い価格のときに識別不能になったら,それはそのときの価格でまた全体をといいますか,今度は全部が12になっていますけれども,12を10と2に分けて,それで計算できませんか。

 

 

  •  それは一つの考え方だと思いますが。

 

 

 

  •  ええ,一つの考え方として。
  •  仮の考え方としては,ちょっと御質問のことがよくわからないんですけれども,2段階で識別不能というものが生じるだろうと。例を確認しながらお話しさせていただきたいんですが,最初が10頭で……

 

 

  •  10頭で,7と3。
  •  そこに後で2頭が加わりますという状況。それは固有財産。
  •  それは固有財産として加わった。ただ,今はもう全部識別不能になっている。だから2段階で識別不能があった。つまり,加わる場合は多分,2段階識別不能が出てくるという話で,減る場合はそういうことはないとは思うんですけれども。加わる場合は,2段階識別不能が生じ得る。

 

 

  •  2段階目が起こるときにはヒツジの価格が倍になっているというのは,その12頭全部について倍になっているということですか。

 

 

  •  いえ,そのヒツジだけがですね。

 

 

  •  いろいろあると思うんですけれども,高級ヒツジみたいなものがいて……

 

 

すみれ

「めー。」

 

 

  •  例えば高級ヒツジが入ってくる。全体のヒツジの価格が2倍になるのであれば余り問題にならないと思いますけれども。まさに識別不能というのは,そういうところも一応,どういうふうに共有するかということを見なしで,ある意味で推定ですけれども,やるわけですから。

 

 

  •  そうすると,その2頭は高級だけれども,識別はできない状況になってしまう。そうすると,ほかの人に売るときには幾らで売れるんでしょうか。みんな倍で売れる……。

 

 

何かちょっと……,やはり識別できてしまうのではないですか。

 

 

  •  それが識別不能になっているという状況だということで。
  •  2段階目でなくたって,第1段階目だって同じことが起こる。価格が違うとすれば。見かけは同じヒツジなんだけれども……

 

 

  •  おっしゃるとおりです。

 

  •  実際分ければ……

 

  •  つまり,みんな同じように見えますという前提であるにもかかわらず値段が高いもの2頭と言われても,ちょっと。

 

  •  2倍で調達してしまう。

 

 

  •  そのヒツジだけを2倍で調達してしまった。つまり,時価が関係するときには12頭全部,当初の1の値段でしか売れないんです。

 

 

  •  ただ,その当時の価格というのは識別不能の時点であって,売却の時点ではないですから。つまり,2加えたときには,その2というのは価格が2倍であった。

 

 

だけれども,売るときにはそれが全部また価格が下がって1になった場合。

 

  •  価格の問題をどう考えるかはちょっと複雑ですけれども。

余りこればっかり議論してもしようがないかもしれないけれども,後から加わる2頭以外の最初のヒツジも,これは調達価格は安いかもしれないけれども,後で2頭が加わるときに,そのときの客観的な価格があるわけですよね。

 

 

そうだとすると,そして,単に調達価格が違っただけで同じヒツジだとすると,後から加わる2頭についても調達価格をその基準にするのか,そのときの客観的な価格を基準にするのか。

 

 

識別ができない同じものであって,そのときの客観的な価格がある時点で違うということが,そもそも想定しにくいですよね。

 

 

  •  そういう想定事由がないのであれば,それでよろしいんですが,加わった場合,どういうふうに考えるのかも検討する必要があるのではないかという趣旨でございます。

 

 

 

 

  •  細かいところはもうちょっと詰めなければいけないかもしれませんけれども,2段階的に考えるということは,基本的な考え方だと思います。

 

 

  •  私も同じことを考えていたんですが,2段階的に考えると,さらに条文を別に置かなくてはいけないかどうかがかかわってくるだろうと思うんです。

 

 

識別不能状態にある,その財産と新たな2頭とが混じるのか,それとも識別不能状態にあっても共有持分という形で識別可能であって,その共有持分との間で一緒になることを考えるのかによって規定の仕方が変わってくるのかなと思います。

 

 

  •  1点,確認だけさせていただきたいんですが,御質問は,共有持分状態になっている10頭がいて,それにまた別の1頭が--1頭,1頭ですけれども,それが一緒になる。

 

 

ということになると,ここで共有持分が生じ,多分この共有持分割合に応じて,これだったら4分の1ですから,4分の1ずつA信託,B信託,C信託……というふうにぶら下がっていく,こういう状況ではないかと思います。

 

 

それは1,2,3というふうに書いておけば,当然解釈ができるのではないかと思います。

 

 

  •  今の○○委員の御質問も,規定ぶりはともかく,最後の結論は,結局同じことになるという理解でよろしいですか。

 

なかなか,まだ頭の体操のようなものが幾つもあるのかもしれませんけれども,今のような問題も意識しながら,条文にするときはさらに注意することになると思いますが,基本的な考え方として,大体よろしいでしょうか。

 

 

では,今の細かい問題は宿題として残りましたけれども,基本的なことは御了解いただいたということで,第10についてはそのように扱わせていただきます。

 

 

あと善管注意義務とか,あるいは法人の責任とか,幾つかまだ残っていますが,こちらについてはいかがでしょうか。

 

 

  •  善管注意義務について,1点確認させていただければと思います。

 

2,寄せられた意見についての個別的な検討の(1),善管注意義務の免除のところでございますけれども,ここには,受託者の善管注意義務を完全に免除するとの定めが信託行為に置かれている場合においては,委託者は信託設定の意思を有していなかったと解するのが合理的だと書かれているところでございますけれども,これは,こういったいわば丸投げ的な,全部免除的な特約がある場合は,そもそも信託の契約そのものがなかったと考えるのか,あるいはその特約だけが公序良俗違反ということで除かれるのかといったことについて,考え方の整理を教えていただければと思います。

 

 

 

 

私がこれを質問いたしました背景ですけれども,私ども,業法であるところの信託業法を所管する立場でございまして,いわば商事信託の世界では,一般投資家と受託者たる信託会社との間に,経済学の言葉で言うところの「情報の非対称性」みたいなものがございまして,そういったことからすると,取引主体間の情報量と交渉力にかなり差がある場合がございます。

 

 

 

そういたしますと,私ども,一般投資家であるところの委託者とか,あるいは受益者を保護するという観点から申しますと,信託業法については善管注意義務の任意規定に関しては非常に慎重な検討をしなければいけないと考えておりまして,すると,一般投資家にとって,例えば善管注意義務を免除したときに,信託行為がなかったということは一体どういう意味を持つんだろうか,こんな問題意識でございます。

 

 

 

 

 

  •  御質問自体も非常に重要な問題だと思いますし,さらにそのバックグラウンドになる今の御説明の点についても重要な問題だと思いますので,御意見を伺いたいと思いますけれども,先に,こちらから何かあれば。

 

 

  •  この点につきましては,事務局の中でも検討いたしました。そもそも善管注意義務の免除というものがどういう内容を含むのかという点がよくわからないというような議論をいたしまして,この点につきましては,以前の審議会でも同じような検討がされたかと思います。

 

 

そもそも免除するというのがどういう内容かと申しますと,1つ考えられますのは,そもそも故意で何をやってもいいんだと。

 

 

例えば信託財産を壊してもいいといったことなのかなというようなことを考えまして,そういうようなことを信託行為で考えているのであれば,そもそもそういうものは信託を設定するという委託者の意思はないのだろう,そうだとすると,すべて信託というのは成立しなかった,信託行為自体が無効になるといった理解でいいのではないかと考えておりまして,そもそもここで「信託行為の定めにより免除することはできない善管注意義務は……」ということを書く意味がよくわからないということがありまして,ここで議論していただきたいことの1つとしましては,そもそも善管注意義務を免除するというのはどういうことを指しているのかということではないかと思っております。

 

 

 

それが明らかになって合理性があるのであれば,例えば,信託行為の定めにより,善管注意義務は価値を軽減することができるというようにする余地もあるかとは思っておりますが,そもそも免除というのが,先ほど申し上げたとおり何をやってもいいんだというのであれば,そういうものは信託ではないだろうということになるのではないか。それは解釈で明らかなのではないかというのが今の結論でございます。

 

 

 

  •  信託財産の引渡しがあり,契約当事者間の契約があっても,この場合は無効と解する,こういうことでございますか。

 

 

  •  無効という言い方がいいのかどうか,よくわからないところがありまして,所有権移転等を引用しているのかもしれませんし,いや,その場合は委任でもないのかもしれないしというふうな話ではあるのではないかと思います。

 

 

無効という言い方がいいのかどうかわかりませんけれども,信託という認定はされないのではないか,そういう趣旨でございます。

 

 

 

 

  •  免除という言葉はちょっと強いかもしれませんけれども,現実的にあり得るのは,やはり損害賠償責任を心配して,そこについては故意・重過失以外は負わないとか,故意だけ負わない。そんなのないかもしれませんけれども。

他方において,善管注意義務は義務として負っても構わない。なおかつ,信託財産を破損するようなことをわざとすれば,それは善管注意義務が免除されていたとしても,実質他人財産に近いものですから不法行為を構成すると思うので,ですから,免除,また免除に近い規定が契約上,入ったとしても,そもそもそこまで悪質といいますか,そこまで管理しないつもりはなくて,私は,それは主責任の方の心配からそういう規定になっていくのではないかと思うんですよね。

 

 

 

そういう意味におきましては,やはり免除とか免除に近い規定が入っている場合には,本来その免除規定,また免除に近い規定自体が無効であって,そしてデフォルトルールとして善管注意義務が普通に課せられると解釈した方が,かえって信託も継続しますし,受益者保護にもなるのではないかと思うんですけれども。

 

 

  •  普通の,いわゆる免除といいますか,今,○○委員が言われたような免責規定ですかね,その場合には,確かにこういう重過失を免責する部分はだめで,通常の善管注意義務を負わされる規定として考えれば,多くの場合はそれで解決するんでしょうね。

 

 

どんな場合がそもそも信託にならないのか,私もまだ十分イメージがありませんけれども,免除そのものよりは,何をしていいかという行為義務の範囲の決め方とも関連して,そして何をやっても構わない,また,それによって損害が生じても責任を負わない,仮にそんなような規定があると,果たしてそういうものは信託と言えるかどうかが問題となる。そんなことではないかと私としては理解しました。事務局の説明は。

 

 

 

ただ,多くの場合はそういう規定ではなくて,仮に損害が生じても責任を負わない,文言上は故意・重過失についても免責するような規定があったときに,これは故意・重過失の部分だけ否定すれば済む問題であろう,そういう感じがしますね。○○委員も,結局そういうことだったと理解してよろしいですか。

 

 

 

  •  そうですね,義務と責任を分けて規定することはあり得ますので,義務は負うけれども責任は負わないという……

 

 

 

  •  それもあり得ます。義務の方もすべて免除というか,何をやってもいいということになると,これはまた,果たして信託かどうかが問題となるということだと思います。

 

 

 

 

 

  •  今のような極端な事例は,いろいろな考え方の中で一つの考え方を示されたと思うのですけれども,そこまでに至らない場合は,第18の「ただし,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めに従うものとする。」というのはもちろん原則としてそうであって,このただし書きの限界というのは,公序良俗のような第90条の規定によって,つまり一般的な内容規制に関する規定によってのみ制約を受けるという理解でよろしいんでしょうか。

 

 

  •  私はそう思っているけれども,どうですか。
  •  そういう理解です。

 

 

  •  そうですね。としますと,例えば今のような極端な責任を,信託と銘打ちながらおよそ責任を負わない,善管注意義務を負わない,ないしは実質的にはそれと等しいような免責規定をたくさん入れているということは,信託という契約の……,やはり公序良俗とは別の考慮から,信託である以上そのような制約がかかってくるのだという理解で先ほど御説明があったと考えればよろしいのでしょうか。

 

 

  •  そうですね,公序良俗そのものとは,ちょっとまた違った説明があり得るということだと思います。具体的にどういう場合がそうかというのは,なかなかいい例が……。

 

 

  •  すみません,先ほど御回答にあったと思うんですけれども,契約そのものが無効になるかならないかは,その時の状況次第ということなんでしょうか。

 

 

例えば救済という観点からすると,信託という形で成立していた方が,ある意味,ほかの部分の義務が課せられていますから,できるだけそれは存続させるような形にした方が得策--得策というのは,受益者の側からして,救済額として得策ではないかと思うんですけれども。

 

 

  •  確かにそういう問題もありますね。

これはここだけの問題ではなくて,分別管理義務などについても全く同じような問題が生じると思いますけれども,分別管理義務を一切排除して,ごちゃごちゃにしていいなんていうのが果たして信託かというと,信託とは言いにくいわけですけれども,あれも信託であるというふうにしておいて,分別管理義務の免除の部分はだめだということで分別管理義務を負わせるという解決の仕方をするというのと同じ問題ですよね。

 

 

そこは,この条文といいますか,この試案自体では,どちらになるかということまで必ずしも明確に書いてあるわけではなくて,解釈によって決まると思いますけれども,場合によっては「こんなものは信託ではない」というものがあり得るかもしれないというぐらいのニュアンスとして私は理解しています。

 

 

しかし,多くの場合は信託であることを認めた上で,排除している義務は,その部分は無効だということで本来のデフォルト的な義務が負わされるというのが,解決としては望ましいかもしれません。

 

 

 

 

 

 

  •  先ほどの質問の趣旨をもうちょっとはっきり言った方がいいかなと思いますので,つけ加えさせてください。

 

通常の民法の売買とか賃貸借といった契約ですと,その契約の本質的な要素にかかわる部分について,例えば賃貸借と銘打ちながら,かなりその本質と違うようなことを当事者間で合意するというような場合に,それは賃貸借であるとか,あるいは売買であるとは言えないかもしれないけれども,しかし,契約は自由なんだから,そういう一種の無名契約のようなものとして効力を認めればいいではないかというのが民法の基本的な考え方だと思うんですね。

 

 

ところが,信託の場合は,ちょっとそれとは違うという理解でよろしいんでしょうか。それが実はさっきの確認の一番根本にあったところなんですけれども。

 

 

  •  私としては,違うとは言いたくない,そこは。基本的な構造は同じだと思いますけれども。

 

 

 

  •  我々も,ほかの契約と違うということを申し上げているつもりはなくて,再度申し上げることになるかもしれませんけれども,これはパブリック・コメントに寄せられた意見の理解なんですけれども,第18に書いてある「信託事務を処理するに当たっては,善良な管理者の注意をもってしなければならない」これを完全に免除することはできるのかという,言われ方の問題のようなところが1つあるのかなと思っていまして,つまり,善良な管理者の注意でなくてもいい,自己財産と同一の注意でなくてもいい,何も注意しなくてもよくて,信託事務を処理するに当たって,信託目的に従って行動しなくもいいぐらいのことを言われる,それが完全な免除なんだろうか,そこまで言われているのであれば,それはもう信託ではない。

 

 

 

つまり,自己のために財産を使う,それはもう信託ではないという整理を我々としてはしておりますので,そこまで言われるのであれば,それは信託ではないということになってしまうのではないだろうか。

 

 

それに対して--すみません,今,先生方がいろいろおっしゃっているのは,いや,そうではなくて,もう少し個別的な義務の軽減,あるいは免除の話なんだよということで,ちょっとパブリック・コメントに寄せられた意見の受けとめ,あるいは第18のただし書きの理解というか,そこのあたりがもしかしたら少し違っていたのかなという感じがするのですが。

 

 

 

 

 

 

 

  •  さらにつけ加えていますと,○○委員が非常に悩んでおられる,余り極端なことを言いたくないというお気持ちは非常によくわかるわけでして,要するに,善管注意義務を外したような財産管理契約という無名契約を考えるならば,それは信託ではないかもしれないけれども,そういう契約はあり得る,一般論からするとそういうふうになりそうだけれども,何とかそこから先をうまく説明できないものだろうかということだろうと思うんですね。

 

 

もう一つの考え方は,信託と言うかどうかは別として,他人の財産を扱いながら,およそ全く善管注意義務のようなものを負わない,受託者に相当する者がかなり適当なことをやれるといった契約自体が,公序良俗と言うかどうかは別として,やはり一般法理として,そのような財産を預ける者にとって非常に危険な,一方的な契約は許されないからではないんでしょうか。

 

 

そういう意味では,一般法理の一つのあらわれとして,この種の善管注意義務を外すような財産管理契約というのは,やはり無効なのだということが出てくるのではないでしょうか。

 

 

その上で,その契約全体が無効なのか,それとも財産管理を約束した以上は善管注意義務に相当するものは必ず負うという強行法規のようなものがあるわけであって,それがそのまま適用されるだけであって,外せないというふうに考えるのか,どちらで考えるのが,より他の説明と整合的だろうかという話で済むのではないかなと,私は最初,直感で思ったのですけれども,どうもそうではない展開をしていたので,確認させていただいたということです。

 

 

 

 

 

 

 

  •  ○○幹事がおっしゃった,そういうのは公序良俗から無効だというお話ですが,ある財産を寄附したり,贈与だってできるわけですから,そういうものは,いわゆる財産管理契約でなかったのだというだけの話で,無名契約とさせない,したがって認めないということまでする必要があるかどうか,ちょっと今……。

 

 

 

完全に贈与して所有権を移転してしまうことだって当然できるわけですね,世の中的には。

 

 

それと信託の中間にあるようなものだと。そういうものを財産管理契約と言うかというと,そうではないのだろうという,それだけの話なのではないかという気が,ちょっと。

 

 

  •  自分の財産を管理するという,そういう枠組みでの話ですよね。

 

これはむしろ○○幹事に確認ですけれども,他人の財産を管理するもので,しかし善管注意義務を,ここでも完全に排除するということは微妙ですが,完全に排除するのはだめかもしれないけれども,それを軽減するようなものはあり得る,そういう御理解でよろしいですか。それはそれでいい。

 

 

  •  ええ。ですから,どこまでに限界があるのかというもので,それが,何かこれは信託だから,信託と言えないからというのでは,ちょっと説明が,ほかの契約と違い過ぎていて,そういう説明も,信託は特別だという説明はあり得るとは思うんですけれども,そうでない説明の仕方もあり得るのかなと思った次第です。

 

 

結論は,そんな大きい違いがあるとは思いません。全部無効か一部無効かというのは残りますけれども。

 

 

  •  そうですよね,普通の財産管理,信託も含めてだけれども,普通の財産管理の場合の契約に共通する,いわば解決の仕方を提示したということですよね。

 

 

恐らくそれで十分済むといいますか,信託でないというような場合を,これもたまたまパブリック・コメントがこういう形で出てきたので,それに対する一つの答え方として,そういう答え方がちょっと目立った形になりましたけれども,恐らく一般論から出発して,第18の善管注意義務の問題を考えるのであれば,信託行為で別段の定めがあれば,ある程度軽減できるけれども,それには一定の限界があって,およそ故意・重過失の場合でも構わないというものはもちろんだめで,そういう限界がある。

 

 

これはしかし信託の場合だけでなく,委任であれ,ほかの場合であれ同じような問題がある,あるいはそういう理解が一番一般的な理解としてわかりやすいかもしれません。

 

 

特にこちらもそれで異論があるわけではありませんからね。

 

 

 

  •  今の議論,何も異論はございませんけれども,このパブリック・コメントといいますか,提案されている文章の中に,今,議論になっているのは,むしろ認定規定化の限界といいますか,その辺が議論になっているのかなという気がしておるんですけれども,その限界があるということが表現として出てきていないかなという気がしておりまして,そこが1つ,もしそういったことも盛り込めるのであれば,何らかの形ではっきり書いた方がいいのではないかという気がするのと,それから,先ほど業法のお話が出ましたけれども,この辺については弁護士会や何かでも多少議論があったところですけれども,信託の一般法のレベルの問題と,それから業法のレベルの問題は,やはりちょっと違うのではないかという気がしておりまして,信託の一般法としては,こういった形で別段の定めを置くことが適当だと思いますけれども,両方のレベルで同じように任意法規化するかどうかについては,やはりいろいろ議論があり得るところだと思いますので,そこは,そういった観点も踏まえた方がよろしかろうと思っています。

 

 

 

  •  2番目の論点も非常に重要な問題だと思いますので,また御意見を伺いたいと思います。

 

 

最初の方に関して言えば,ここで「別段の定め」の限界がうまく書けるかどうかという問題なんですが,これは私の個人的な意見ですけれども,一般的に公序良俗の問題としても,故意・重過失の免責までは含んではいけないというのが大体決まった考え方ですので,少なくともそういう限界については,ここでわざわざ書かなくても一般的にはかぶってくるだろうというふうには思います。

 

 

2番目の論点は,もうちょっと実質的に重要な問題だと思いますけれども,これは私よりもお詳しい方がほかにおられますので,信託一般法と,それから業法との関係みたいなものですね,この場は「業法はこういうふうにあるべきだ」ということを議論する場ではございませんけれども,何か御意見があれば。

 

 

 

  •  これはファクトの御説明ということでお話しさせていただけるとありがたいんですけれども,実は,ここの善管注意義務のところは,前回の信託業法の改正のときに,いえば強行規定に近い形で新しく導入させていただいたところで,その考え方としては,当時の立法担当者の意思としては,信託業への信頼性確保の観点から,一般的な義務規定を業法上も規定することが適当で,監督に当たっての受益者保護のための行動する根拠,あるいは職業としての受託については,一般の受託者よりも相当程度,やはりそういう義務の重いところを考えなければいけないということから,確かに○○幹事おっしゃるように,そこは一般法であるところの信託法と,それから,いわばプロの法律たる業法として規範の定めとは違う,そういう整理をしております。それがファクトです。

 

 

 

 

  •  この場で余り議論することは適当でないのかもしれませんが,仮にこの信託法が一般法でもって任意規定--任意規定といっても一定の限界があるわけですが,先ほどから問題となっているような故意・重過失みたいな場合には,もちろんだめだと。

 

 

ですから,ある種の軽減ができるだけである。そういうものが信託法に一般法でもって入ってきたときも,やはり業法は別に考えた方がいいのではないか,そういう御意見ということですか。

 

 

先ほどまでは,今まではこれ自体が強行法規であったという前提だったわけですけれども。

 

 

  •  ○○委員おっしゃるとおり,もちろん,この信託法の改正を受けて私どもの業法をどうするかという議論があり得るわけで,そこはいろいろな考え方があると思いますが,先ほど申し上げましたように,私どもといたしましては,やはり受託者,それから委託者の間に情報の非対称性がある場合が結構多うございますので,そういった観点を踏まえて慎重に検討せざるを得ないのではないか,こんな感じでございます。

 

 

  •  業法の観点からは,もちろんそうでしょうし,一般法の定め方としては,信託法としてはこれでよいかと思うんですけれども,先ほど何度も出ていますように,契約の内容規制に関する一般法理によって,やはり制約を受けてくることになる。

 

 

公序良俗がその代表例でしょうけれども,それによって制約を受けてくるというときに,やはりどういう契約であり,どういう主体がだれに対してどういう契約をしているのかというのは,やはり内容規制に当たって大きい意味を持ってくるんだろうと思います。

 

 

やはりプロの業者が通常の一般の人間に対して契約するときには,やはり善管注意義務を負いませんよとか,相当軽減していますよというようなものが信託として行われている場合には,考え方によっては,厳しい内容規制が入ってくる可能性があるだろうというのは,やはり確認しておく必要があるのではないでしょうか。

 

 

ここでただし書きが入ったので「よほどひどいものでない限り大丈夫」一般的にそう簡単に受けとめてよいかどうかはちょっと別問題として,次の問題としてあるというのは押さえておく必要があるかと思います。

 

 

  •  業法と一般法は違うということもよくわかりますし,○○関係官がおっしゃったような形で,例えば情報に格差がある者同士,受託者と受益者について,それなりの規制をしなければいけないというのも理解できますけれども,もう御承知のように,信託というのはいろいろな種類がありまして,営業信託におきましても多種多様な信託があって,その状況が,今,おっしゃったような状況そのものにおさまるものでもありませんので,これもよく御承知のことだと思いますけれども,業法というのはその辺のところを割と,さじ加減という言い方はおかしいですけれども,いろいろな対応に応じた形で臨機応変に規制ができると思いますので,その辺のところを御配慮いただけたらなと考えております。

 

 

 

 

 

  •  ちょっと的外れになってしまうかもしれませんけれども,善管注意義務を免除するという意味なんですけれども,これは受託者の自己のものに対する注意義務まで軽減することになるのか,それとも一切何の注意義務も負わないということになるのかがよくわからないんですが,もし,善管注意義務を免除することが自己のものに対する注意義務にレベルを落とすということであれば,例えば貸付債権の信託を想定した場合で,受託者が信託銀行ですと,銀行業務も営んでいますと。

 

 

そして銀行業務として貸し出しをやっているので,それなりに貸付債権を,自己のものであってもきちんと管理しています,杜撰なことはやっていませんということがある程度わかる場合に,それを期待して,それでもいいというようなこともあり得るのではないかという気がしておるんですけれども。

 

 

 

  •  そこのところは,やはり免除をどういうふうに考えるのかという点に戻るかと思うんですけれども,委任でも同じような話がありまして,善管注意義務につきましては,自己の財産におけると同一の注意までは軽減することができる。

 

 

 

ただし,免除まではすることができないという議論がありますので,ここにおける善管注意義務につきましても,自己における財産と同一の注意までは軽減することができるというのを当然の前提にしておりまして,それ以上に免除はできないのではないか。

 

 

その免除というのが,何をやってもいいですよというのであれば,それは許されない。それは先ほど議論ありましたとおり,公序良俗とか契約の本質とかで制約されるのではないかという考え方でございまして,もう一度申し上げますと,自己の財産におけると同一の注意までには軽減できるというのを前提にしております。

 

 

  •  その点,よろしいですか。
  •  わかりました。

 

 

  •  ほかに,よろしいでしょうか。結構重要な,象徴的な問題であると思いますので,御意見があれば伺いたいと思います。

 

 

  •  議論の整理だけですが,昔からある問題で,善管注意義務というのが債務の範囲を決めたことなのか,それとも過失の程度を決めたものなのかという問題が根底にあって,さらに債務の内容と過失とが峻別できるものなのか,それとも裏表なのかというのがあると思います。

 

 

それをどこから見るかによって,契約として認められるかどうかということと,それから公序によって規制されるのかというのは視点が変わってくるんだろうと思います。

 

 

  •  おっしゃるとおりでございます。

よろしいでしょうか。それでは,ただいまのような御意見を踏まえながら,この規定について基本的には御了承いただいたと思いますけれども,説明等につきましてはさらに検討するといいますか,これでいいかどうか確かめながらまとめていきたいと考えます。

 

 

それでは,法人の役員の連帯責任と報酬請求権,受託者の職務の引受け,残りの部分についていかがでしょうか。

 

 

法人の役員の連帯責任につきましても,現行の規定からすると大分軽くなるようでありますけれども,これは,そもそもその法人である受託者が一応責任を負って,それが財産が足りないようなときに,またさらにその法人の理事に負わせるという信託にとっては二重の仕組みになっているわけで,ここは他には余りない制度なので,軽減してもいいのかなということであります。

 

 

 

報酬請求権は甲乙がございますので,これは少し御意見を伺っておいた方がよろしいと思います。

 

 

  •  例のごとく甲案支持でございますけれども,費用の補償請求権といいますのは,なかなか予見ができないところもありますけれども,報酬につきましてはある程度,どういうものかはお互い理解しているところでもありますので,信託契約に書けば受益者にいけるという形であっても別にいいのではないかと考えておりまして,やはり基本的には甲案支持ということでございます。

 

 

 

  •  同じく銀行会ということになるかもしれませんけれども,少数派であることも認識しつつ,一応甲案という立場であることを明確にしておきたいということと,それから,1点御質問がございます。

 

 

 

 

前回の○○委員の話にも関連するかもしれませんけれども,例えば複数の受益者がいた場合に,交渉の結果,片一方が有償,片一方が無償になったといったときに,事実上,有償であった方が口を出すことになると思うんですが,そうした場合に,受託者としての公平義務との関係が出てくるのではないかと思っております。

 

 

ただ,法律的に考えると,その委任は無償が前提であって,かつ基本的には有償か無償かというのは善管注意義務等に余り影響を及ぼさないという理解でいるわけで,ですから結果として,法律的にはお金をもらおうがもらうまいが公平義務には影響しないという整理なのかもしれませんが,ただ,やはり事実上「もらったからには私にいいことしてよ」という話になると,公平義務としてはなかなかしんどい。

 

 

もしそれが事実上の話であって,それは受託者としてちゃんと公平義務を実現するために頑張って公平にしなさいということであれば,結果的に受託者としては,そういう,ある意味トラブルといいましょうか,そういう説明がしにくくなると,やはり個別にこの人はとったり,この人はとらなかったりというような扱いはできなくなってしまう,そういう整理になるのかなと思ってはいるんですけれども,そういう意味で,ちょっと確認なんですけれども,有償,無償に関して受託者の義務というのは変わり得るのかどうかを,いま一度確認しておきたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  そこは有償であろうが無償であろうが公平義務には変わりなく,平等に扱うべきだと考えているところでございます。

 

 

  •  よろしゅうございますか。甲案御支持の方もおられましたけれども,ほかの方。

 

  •  バランス上ということで,乙案支持の意見も十分あることを申し上げたいということで,理由につきましては前回,費用等の償還について申し上げましたし,事務局の方で用意してくださった文書が十分に伝えていると思いますので,この点についても乙案がよろしいのではないか。

 

 

受益権の譲渡ですとか放棄ですとか法律関係も,そちらの方が非常に明確になるのではないかと考えております。

 

 

それから,今,○○委員から御指摘のあった公平義務につきましても,これはもう既にお答えになったとおり,それによって変わるものではない。

 

 

有償,無償というお話ですけれども,分配の局面においても管理の局面においても,それが一体どういうふうに変わってくるのか,受益権の内容に反映するものではないわけですから,それによって変わることがないのは当然であると考えております。

 

 

 

  •  今のバランスをとるための発言なんですが,私も乙案でよろしいかと思います。

 

 

理由はここに書いてあることと,さらに考えてみると,委任と事務管理との比較というのを考えてみました。

 

 

委任の場合は,契約があって特約があれば報酬が支払われる。事務管理の場合には,そもそも報酬はなくて,費用補償の問題だけが出てくる。

 

 

受益者との間には契約関係がないわけですから,むしろバランスから言っても,報酬というのは別段の合意がない限りは発生しないという乙案の方が筋が通るのではないかと思っています。

 

 

  •  バランスはもうとれたので,それはいいんですが,乙案の読み方なんですけれども,これは信託行為に定めがあって,その上で合意をするということなんでしょうか。

 

 

そして,その信託行為の定めとして要求される内容なんですが,抽象的に報酬が取れるという話なのか,それとも受益者との個別の合意をすれば受益者からも取れるという信託行為の定めが必要なのかということなんですが,私の個人的な考え方としては,報酬が取れるというのは,やはり信託財産から取れるという意味であろうと思いますし,委託者が信託の設定のときに,例えば無償で受益者に何かの利益を得させようと考えてやったにもかかわらず,受託者が受益者に「あなたからもお金をもらえば嬉しいな」と言って個別に合意するというのも妙な話でございますので,基本的には信託行為の中に,受益者との合意によって受益者から取ることもできるまでの定めが必要なのではないかと思うのですが,そのあたりの理解についてお教えいただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  事務局としては,信託行為に定めは不要であって,信託外で受託者と受益者が合意するということでいいのではないかと考えていたところでございます。

 

 

  •  そうすると,何の対価なんですか。信託行為の信託の設定によって,受益者に対する給付義務なら給付義務,ないしは財産の管理義務なら管理義務が発生しているわけですよね。

 

 

その上で受益者と個別に合意をして受益者から取るのは,何の対価なんですか。

 

 

  •  対価と言うと,信託財産から取れるわけでございますので,受益者から取るのは,対価性といいますと,やはり受益者の利益をおもんぱかって信託財産の管理・処分をしたことの対価ではないかという気がいたします。

 

 

 

  •  いろいろな考え方があり得るかもしれないけれども,基本が信託財産から取れて,そこには対価性があって,受益者からも取れるというのは,一種受益者が担保するというような関係になるのかもしれませんね。だからこそ,また当然に生じるものではなくて,特別な合意が必要である。

 

 

  •  ○○委員の御説明はわかるんですが,それというのは,例えば信託報酬が信託財産から取れないといった状況があるときに,それが信託の終了に結びついてしまうというふうなとき,ないしは信託財産のうちで核となる信託財産を売却しないと信託報酬が取れないので売却をしてしまって,目的が達成できなくなって終了しそうになる。

 

 

それは困るということで受益者が払うということだと思うんですが,それというのは,ある意味では代位弁済のようなものでありまして,受益者が報酬支払義務を負っているという関係とは少し違うのではないかという気がするのですが。

 

 

  •  ええ,その2つは違うと思うけれども。ちょっと○○幹事の御意見を十分理解していなかったかもしれませんけれども,仮に今,信託の報酬だけに限定して考えると,これはその信託財産を管理して,そのサービスを提供することの対価として,それは当然発生する報酬請求権ですけれども,これは信託財産から取れる。

 

 

これが普通の形であると考えるわけですよね。その信託財産以外になお受益者からも取れるというふうにするためには,これは何か特別な合意が必要なのではないか。

 

 

 

 

 

 

  •  その信託報酬の額は,信託行為の定めに例えば「月々100万円」と書いてあって,受益者と個別に合意して30万円取れることになったら,信託財産かは70万円しか取れないんでしょうか。

 

 

そうなると,それは私が言っている代位弁済のような,第三者弁済のようなものではないかという話なんですが。

 

 

  •  ○○幹事がおっしゃっているところで,もう御趣旨は明確なのかもしれませんが,念のため確認だけさせていただきたいと思います。

 

 

信託行為に定めていなくてはいけないのですかというお話は,受益者から信託報酬を取るということの意味なのかもしれませんけれども,まず信託財産から信託報酬を取れるということが書いていなければ,それはだめですと。

 

 

ただ,信託財産からではなくて「受益者から信託報酬を受けることができます」ということが信託行為に書いてある必要は当然ないわけで,言われているところは,信託報酬を信託財産から幾ら幾ら受けることができますとあって,それと同じ内容のものを受益者からとりたいのであれば,受益者との間で個別の合意を結んだらどうですか,そういうことを表現しているのが乙案の趣旨かと,それが第三者の弁済と同じようなものではないか,こういう御趣旨ですか。

 

 

すみません,うまく言えていないような気がするのですが。

 

 

  •  そうすると,減るわけですね。受益者から取れた分だけ信託財産から取れなくなるわけですよね。

 

 

  •  それは,そうでしょうね。
  •  ええ,そういう関係です。

 

 

  •  示せば減るけれども,合意をしなければ減らないのではないでしょうか。

 

 

ですから,何を例にするのが一番いいか,よくわかりませんけれども,保証人なのか連帯債務者なのか,そういう複数の責任財産に共同で帰属する,そういう債務というか,受託者から見ると請求権になるのではないでしょうか。

 

 

  •  私が考えているのも,そういうことですけれども。

 

 

  •  ですから最初のところに戻って,何の対価かということに対する私の答えは,他の信託事務処理の対価なんだろうと思います。

 

 

そして,では何で対価を受益者が払うのか。合意で払うわけですけれども,その経済的な実質が基礎にあるのかというと,信託財産から利益を受けるのは受益者なので,そこをバイパスしてといいましょうか,直接取っても何ら経済的にバランスを失することにはならないだろうと思います。

 

 

 

ただ,だからといって甲案がいいわけではなくて,乙案を私も支持するところでありますが,乙案は,そういうふうに説明できるんだろうと思います。

 

 

  •  ○○幹事の御意見と同じことですが,ある種の保証人みたいなものだということですよね。

 

 

  •  申しわけありませんでしたが,大体頭の整理がつきました。そうしましたら,ゴシックで「信託報酬を受ける権利の行使方法」と書いてあるところが重要な意味を持ってきて,これは,信託報酬を受ける権利というものは信託行為によって定められている一つの権利であって,その行使方法として,受益者からの信託報酬の取得という行使方法が合意によって成立し得るということであると読むことができるような気がします。

 

 

かつ,そうしますと,これは言葉遣いだけの問題ですが,2の(2)の「受益者から信託報酬を受ける権利」というのは,もうちょっと丁寧な言葉遣いをした方が,その趣旨がとりやすいのかなという気がするわけで,それは誤解をするのはおまえだけだと言われればそれまでなんですが,そういう気がいたします。

 

 

  •  御趣旨はよくわかりました。その部分は少し表現を,今,議論して大体了解を得たような中身があらわせるように検討したいと思います。

それでは,報酬のところもよろしいでしょうか。

ポリー

「信託財産から、となるんでしょうか。」

 

 

 

さっきバランスと言われましたけれども,バランスだけだとどっちにしていいかわからないので,大体の方向としてどちらが多いのかを確認させていただければと思いますが,ほかの皆様の中で御意見は。

 

 

  •  数を数えるなら,乙案の方に賛成いたします。
  •  よろしいですか,乙案。では,乙案が多数であるということだけ確認させていただきました。

 

 

それでは,あと残り特に御意見がなければ,職務の引受け等,これは御了解いただいたということでよろしいでしょうか。

 

 

  •  委託者に相続人がなくして死亡したときにはどうなるかについて,お教えください。

 

 

  •  相続人不存在の場合ですね。相続財産法人の管理人に対して回答するということに……

 

 

  •  それならそれで,わかりました。

 

  •  ちょっと細かいことなんですけれども,相続の場合なんですけれども,遺言執行者等が選任されているときはどうなるんですか。

 

 

  •  難しい問題ですね。いかがですか。

 

 

 

 

  •  そこは遺贈の場合の規律で,文言上は「遺贈義務者に対して」となっているわけでございますが,この場合,遺言執行者も含めていいのではないかと見解が分かれているところで,どちらとも言えないところでございます。

 

 

どちらがいいかちょっと迷っているところでございますが,実質的には,遺言執行者がいればその人に回答するのがよりベターだと思うんですね。

 

 

ですから,遺言執行者がいる場合には遺言執行者ということでいいのかなという気がしておりますが。

 

 

  •  現実的には,やはり遺言執行者だろうという感じはするんですけれども。遺言信託で仮に問題となるとすると,そもそも受託者が引き受けるかどうか問い合わせてくるのは遺言執行者ですよね,その段階では。

 

 

後で催告するのは,また別の人間があり得るかもしれないですけれども,やはり遺言執行者が正面に出ていますから,それがよさそうですけれども,相続の理論だとかいろいろなものとの兼ね合いで,そういう解釈でいけるのか,いけないのか。

 

 

実質は余り問題ないと思うんですけれども,そんなところが問題なんだろうと思います。

 

 

そういう意味で,これは遺言執行者を排除するつもりではなくて,原案としては,むしろ遺言執行者で構わないんだけれどもという……。

 

 

  •  遺言執行者がいれば,この相続人に含めて解釈することは妨げないのかなと。そうすると,どっちに解釈してもいいということにはなると思いますが。

 

 

  •  そうしますと,この催告の相手方とかというのは,やはり遺言執行者等の問題というのは特殊なもので,基本的に委託者の地位自体の,どう言うんですか,基本的にはばらばらにしてはいけないわけですよね。

 

 

  •  余り望ましくないでしょうね。

 

 

  •  あと,例えば委託者の地位自体,流動化等であれば当然移転させることもありますけれども,こういったものについてもそれに連れて移転するということですか。

 

 

  •  法律行為の当事者としての地位が移転すれば,新たに委託者となった者が相手方になるのではないかと考えているところでございます。

 

 

  •  民法の第1015条に「遺言執行者は,相続人の代理人と見なす。」という規定がありまして,また,第1012条を見ますと,遺言執行者は遺言の執行に必要な一切の行為をすることができるとなっておりますので,これは具体的に注釈等は見ていないんですけれども,相続人の代理人と見なされる以上は,確答する相手方として遺言執行者というのも当然いいのではないかという気が個人的にはいたしますけれども。

 

 

  •  今のだと,専属的ではないということですかね。大体そんな解釈でよろしいのではないかと思いますが,よろしいでしょうか。

 

 

それでは,これも今の解釈についてはもうちょっと詰めたいと思いますけれども,今のように,遺言執行者がいる場合には遺言執行者に対する確答でよろしいという--あ,どうぞ。

 

 

 

 

 

  •  遺言執行者ですから,もちろん遺言信託の場合を前提としてということだと思いますので,契約信託で指定されているような場合は,また違ってくるという理解でよろしいでしょうか。

 

 

  •  そうですね,遺言信託の場合のことを考えております。

 

 

  •  もう一つ。先ほど若干議論があった点なんですけれども,だれに回答すべきかというのは,あくまで受託者側で調査すべき事項ということになりますでしょうか。

 

 

それとも,その確答を求める側が「だれだれに確答されたい」というようなことを明らかにすることになるのでしょうか。そこだけ確認させてください。

 

 

  •  遺言執行者の就職の催告権というのが第1007条にございますが,あれも相続人に対して回答する。ああいうところも催告者が相続人を一々通知してやらなければいけないことになっているのかどうかという点は,いかがでしょうか。

 

 

私の考えでは,受託者に指定された人の方で,相続人を探して回答する,あるいは遺言執行者がいれば遺言執行者でも相続人でもどちらでもいいんですが,催告する人がそれを一々通知してあげる必要はないと考えております。

 

 

  •  それでは第1区分,第8まではここまでとして,次に移りたいと思います。

 

 

  •  次は,第12と第31について,関連いたしますので一緒に御説明いたします。

 

資料ですと7ページでございますが,提案第12につきましては,ほぼすべての意見が改正試案の方向性について賛成でございました。

 

以下では,第1点として,資料13ページにおける第31の受託者の権限違反行為の取消しとの関係で,この提案の1の(4)における「当該権限違反行為が信託財産のためにされたものであることを相手側が知らない場合」の要件に対する考え方が1点。

 

 

第2点といたしまして,(注)に記載した不法行為に関する問題について,この2点について御説明いたしたいと思います。

 

 

まず,資料8ページの2(1),これが第1の問題を検討したところでございまして,試案におきましては,信託財産に属する財産について権利の設定または移転をする権限違反行為については,当該行為が信託財産のためにされたものであることを相手方が知らない限り,当該財産に掛かっていける,このような考え方を示しました上で,第31の補足説明の中におきまして,2つの考え方を示しておりました。

 

 

すなわち,取引相手方が信託財産のための行為だとは知らなかったと主張することにつきまして,1つは,取引対象となった財産について,現に信託の登記・登録がされていれば知らなかったとの主張はできないという考え方。

 

 

もう一つは,信託のためだとは知らなかったことについて,相手方に重過失があれば知らなかったとの主張はできないという考え方,この2つの考え方があり得ることを指摘いたしました。

 

 

この点につきまして,この提案におきましては,前者の考え方,すなわち信託の登記・登録がある場合には,信託のためだとは知らなかったとの主張ができないとする考え方をとってはどうかと提案するものでございます。

 

 

後者の重過失の場合には主張できないとする考え方によりますと,取引の相手方に対しまして,信託の受託者と取引をしているのかどうかの注意義務を課すことになると思われますが,これは取引の相手方に困難を強いるものであるように思われるわけでございます。

 

 

これに対しまして信託の登記・登録のある財産の場合におきましては,受託者の債権者がこのような財産に強制執行をした場合は,信託であることを対抗されて強制執行が排除されてしまうということに対比いたしますと,取引の相手方についても当該財産が信託財産であることを対抗されてもやむを得ないと思われる点が1点。

 

 

それから,取引の相手方といたしましても,登記・登録のできる財産について取引しようとするのであれば,信託の登記・登録の有無ぐらいは調査すべきこととされてもさほどの困難を強いるものとは思われないという点が第2点。

 

 

もう一つは,受託者の債権者の場合には執行が常に排除されてしまうわけですが,これと異なりまして,取引の相手方の場合には,信託のためだとは知らなかったという主張が許されないことになるにとどまりまして,なお受託者の権限違反行為について,善意・無重過失であれば救済される余地がありまして,取引の安全に対しても配慮した内容となっていることなどの点を指摘することができると思われます。

 

 

 

これらの事情にかんがみますと,信託の登記・登録がある場合には,信託のためだとは知らなかったとの主張を許さないとする考え方を採用することが適切であると思われたわけでございます。

 

 

そこで,今回の提案と試案との違いといいますのは,この1点についてのみでございまして,すなわち,現に信託の登記・登録のある財産については,取引の相手方において信託のためだとは知らなかったと主張することは許されず,信託のためであることを知っているものといわば同視されることになりまして,その結果,第12の1(4)から外れまして,一たん第31の権限違反行為についての取消権行使の可否のテストに服させることとした点でございます。

 

 

 

 

 

 

 

これに対応いたしまして,資料13ページの第31の方におきましては,現に信託の登記・登録のある財産,典型的には不動産につきましては,「当該行為が信託財産のためにされたものであることを知り」という要件が常に満たされるものと考えまして,(2)から(1)の方に特出ししております。あとは権限違反行為についての悪意・重過失のみを問うことといたしました。

 

 

このような検討を加えました結果,本提案の内容を具体的に示しますと,資料14ページに書いてある①ないし④のとおりになるわけでございまして,①では,現に信託の登記・登録がされている不動産の権限取引の場合には,信託のためであることを知っているものと同視されることになりますので,第31の1(1)により取消権の行使の可否が決せられることになりまして,ここで取引ができないとすれば,取引の相手方は第12の1(3)によりまして,この信託不動産に掛かっていけることになります。

 

 

 

これに対しまして,資料14ページの②のとおり,現に信託登記がされていない信託不動産の権限外取引の場合には,第31の1のいずれにも当たらないわけでございますが,これは要するに,信託財産であることの対抗ができないという理由によりまして,権限違反についての認識を問うまでもなく,取消権の行使ができないことを意味するわけでございます。

 

 

しかし,取消権の唯一の根拠であります第31により,取消しができないことには変わりがございませんので,取引相手方は,やはり第12の1(3)により,この信託不動産に掛かっていけることになると考えております。

 

 

 

次に,信託の動産の権限外取引について考えてみますと,取引相手方が信託のためと知っているか否かによって分かれまして,信託のためと知っている場合には,14ページの③のとおり,第31の1(2)のイによりまして取消権の行使の可否が決せられることになりまして,ここで取消しができなくなりますと,第12の1(3)によりまして,やはり信託財産に掛かっていけるとなります。

 

 

これに対しまして,信託のためと知らない場合には,第31の規律,すなわち当事者双方が信託のためとの認識自体は共有している場合に当たらないことになりまして,単に第12の1(4)の方によりまして,この信託不動産に掛かっていけることになります。

 

 

最後に,信託のための権限外借入行為についてはどうかといいますと,貸付債権者が信託のためと知っているか否かによって分かれまして,信託のためと知っている場合には,資料14ページの④のとおり,第31の1(2)のロによりまして取消権の行使の可否が決せられまして,取消しができないとすれば,第12の1(3)によりまして,信託財産に掛かっていけることになります。

 

 

これに対しまして信託のためと知らない場合には,第31の対象とならず,第12にも当てはまる場合がありませんので,結局,貸付債権者は信託財産には掛かっていけないということになります。

 

 

以上がこの提案の考え方の,第12の1と第31の1との関係でございます。

 

 

次に,不法行為の被害者が信託財産に掛かっていけるかという問題につきましては,パブリック・コメントの結果では,掛かっていけるとの意見の方が多数を占めております。

 

 

ただ,純然たる事実行為による不法行為の場合については,信託財産の独立性への配慮から,消極に解する見解もございました。

 

 

この問題は,結局,受託者の無資力のリスクを被害者と受益者のいずれが負担するかという問題と言えますが,第1に,事実的不法行為といえども信託事務処理により生じたものに限定されているということ,それから,事実的不法行為と取引的不法行為との区別は必ずしも明確ではございませんが,取引的不法行為の場合に信託財産に掛かっていけることには,ほぼ異論がなかったことなどにかんがみますと,不法行為の被害者は,取引的不法行為であるか事実的不法行為であるかを問わず信託財産に掛かっていけるとすることが適当ではないかと思われます。

 

 

 

 

 

なお,最後に資料7ページの末尾から8ページの冒頭に記載いたしました信託の設定時に債務の引受けがあった場合における当該債務に係る債権など個別のものにつきましては,信託財産に対して強制執行等ができる権利に当たる旨を明確化する方向で検討したいと考えております。

 

 

続きまして,第31の方でございますが,資料で申しますと13ページからになります。

 

 

本文については特段の異論は見られませんで,むしろ試案で(注)で示していた,この□の3点それぞれについて,意見が分かれております。

 

 

なお,提案1の一部を変更したことは,さきに第12の関連で御説明したとおりでございます。

 

 

まず,第1の□の取引相手方の悪意・重過失の証明責任についてでございますが,パブリック・コメントの結果では,取引の安全の観点から受益者に証明責任を負わせるべきであるという考え方と,受益者は十分な情報を有していないのが通常であるから,取引相手方に証明責任を負わせるべきであるとの考え方との両論がございました。

 

 

この点につきましては,受益者が信任を寄せた受託者が権限違反を犯した場合であるということですとか,受託者の権限外行為も一応有効である上に,受益者が取引の当事者でないにもかかわらず第三者間の取引を一方的に取り消すものであることなどを考慮いたしまして,現行法どおり,受益者の方が証明責任を負うこととしてはどうかと考えるものでございます。

 

 

 

 

次に,取消権の消滅期間につきましても,パブリック・コメントの結果は,取引の安全の観点から,現行法どおりの短期の消滅期間を定めるとともに,催告権は不要という意見と,受益者に対する催告権を導入することを前提に,消滅期間を延ばすべきであるという考え方とがございました。この点については,御意見を伺えればと考えております。

 

 

 

最後に,有限責任取引の場合におきまして,善意・無重過失の相手方から受託者に対して民法第117条における無権代理人の責任と同様の責任の追及,すなわち受託者の固有財産からの履行または損害賠償の請求を認めるかという点につきましても,パブリック・コメントの結果は賛否両論が見られました。

 

 

 

ところで,試案の補足説明で記載しておりましたが,無権代理人の取引の相手方が表見代理により本人に対して履行の請求をするためには,基本代理権ですとか正当事由の存在の立証責任を負担しなければならず,これは必ずしも容易ではないと思われます。

 

 

これに対しまして受託者の権限違反行為の場合には,受託者との取引の相手方が信託財産に掛かっていくためということになりますと,受託者の権限違反についての善意・無重過失のみが要求され軽過失は救われるわけですし,その証明責任も,先ほどの考え方によれば受益者側が負担することになるなど,利益状況はそもそも相手方にとってかなり有利なものとなっていると言えます。

 

 

そうすると,有限責任取引を締結した相手方に対しましては,約定どおり信託財産に対する請求の余地を認めておけば足り,それ以上に固有財産に対する請求という選択肢までもあえて付与する必要はないと思われるものでございます。

 

 

説明は,以上でございます。

 

  •  それでは,ここで休憩いたしたいと思います。

 

(休     憩)

 

  •  再開したいと思います。

先ほどの第12と第31,いかがでしょうか。

 

 

  •  内容の確認でお聞かせいただければと思います。

第12の1(3)と(4)に二重線が引いてあります。そして,(3)と(4)の関係を伺わせていただければと思うんですが,(3)というのは,第31云々で取消しがされていないものにより生じた権利で,(4)が,同じく権限違反行為なんですけれども,権限違反行為が信託財産のためにされたものであることを相手方が知らない場合に限る--によって生じたものだということなんですが,(4)の行為も,意味合いとしては,そもそも第31で取り消せない行為ということなんでしょうね。

 

 

 

そして(3)というのは,想像ですけれども,取り消せるけれども取り消していないという御趣旨なんでしょうかね。

 

 

多分そういう仕分けなのかなと思ったんですが,ただ,そうしますと,(3)と(4)をわざわざ並べる必要があるのかという気もちょっとしまして,要するに,取り消されない場合に一元化できるのかなという気がしただけで,意味内容の確認をさせていただければと思います。

 

 

 

 

  •  今の御指摘は,実質的な内容は,先ほど○○幹事の方から御説明申し上げたとおりなのですが,ちょっと私どもの書き方がよくなかったかなと思います。

 

 

補足説明,改正試案の場合におきましては,(3)は権限違反の行為で,相手方が信託財産のためにされたものであることを知っている場合として,(4)は,例えば,動産などのようなものについて権利の設定をする場合で,相手方が信託財産のためであるということを知らない場合という整理をしていたところ,(3)の知っている場合というときにつきまして,補足説明で書かせていただきましたけれども,信託の登記とか登録がある場合においては,それは相手方が知らなかったなんていうことは言わせる必要はないのではないかという御意見があったことを踏まえまして,したがいまして,その点については,信託の登記または登録があれば,相手方に「信託のためにしたことは知らなかったんだ」とは言わせないということで,したがって,第31の方は,第31の1の(1)の相手方が知っている場合を除いたわけでございます。

 

 

 

それで,それ以外の(2)のものにつきましては,やはり相手方が知っている場合という要件は引き続きかかってくるとしないといけないかと思います。

 

 

したがいまして,ここで第31の1(1)または(2)に掲げるというふうにザクッと書いてしまったのでございますが,(2)に掲げる受託者の行為というのを文理に忠実に読みますと,確かに第31の1の(2)のイに掲げる行為ですから,借入行為と登記・登録ができない動産についての権利移転・設定行為をそのまま指すことになってしまいますので,○○幹事から御指摘のありましたように,(3)の中に(4)が含まれることにもなってしまうほか,改正試案を出す前に○○幹事や○○幹事から御指摘のあったような,相手方が信託のためだとは知らなかった場合について,取り消せないからといって信託財産に対して執行を認める必要はないではないかという御意見にも答えたような形には文理上,なっていないように読めてしまうかもしれませんが,ここの趣旨は,その実質を変えたわけではございませんで,条文ではないというところに甘えさせていただいて,第31の1(2)に掲げるという意味,第31の1の(2)の相手方が信託財産のためにされたものであることを知っている場合に限定した上で,第31の1による取消しがされていない場合と分けております。

 

 

 

 

 

  •  どういう場合はどうかという御説明は,おおむね「そうかな」と思って聞いたのですけれども,その上で,こうまとめていいのかということだけなんですが,(4)の場合は,相手方が知らないわけですから,第31では取り消せないですよね。

 

 

 

(3)の場合は,そもそも取り消せない場合も含まれているし,取り消せるけれどもまだ取消しが行われていない場合も含むということですよね。要するに,(3)(4)は,いずれにせよ第31によってもう決まることであって,つまり取り消すことがそもそもできなければだめだし,取り消せるとしても取消しの意思表示をしなければだめだ,そう理解してよいかということだけです。

 

 

 

  •  その点についてはそうなんですが,書き方の点で,第12の1の(3)の中に(4)は含まれているから,(4)を削ればいいかというと,そういう問題ではなくて,例えば借り入れなどをしたときに,信託財産のためにしたと思って受託者はやったんだけれども,相手方は,それは信託財産のためにしたことは知りませんでした,それが権限違反でしたというときに,確かにその場合,その受益者は取り消すことはできません。

 

 

 

だけれども,だからといって信託財産に執行できるというわけではなくて,その場合は権限違反で借り入れをしただけなんだから,それは固有財産に帰属させて,固有財産に執行させればいいでしょうという帰結になりますので,すみません,ちょっと書き方が悪い上にこんなことを申し上げて恐縮なんですが,(4)は(3)に含まれるので(4)を削ってそれで終わるかというと,そういう問題ではなくて,第31の1(1)によって取消しがされていないものと,第31の1(2)と書いて(信託財産のためにされたものであることを相手方が知っている場合における当該権限違反行為に限る。)という限定をつけた上で取消しがされていないものという,そういう整理になるかなということを申し上げたところであります。

 

 

 

 

 

 

  •  これは第31についての確認ですけれども,今,借り入れの例を挙げられましたけれども,これは第31の方で言うと,1の(2)のロに当たらないんですか。

 

 

  •  借り入れですか。
  •  ええ。

 

 

  •  ロに当たります。したがって,受益者の取消しはできない。だけれども,第31で取消しができないものが全部信託財産に執行できますかというと,それはそうではないですよねというために,(3)のところで相手方が知っている場合に限るという限定を,借入行為についてはつけないといけない。そこを丁寧に書き分けないといけない。

 

 

 

  •  それが今の(3)の表現で落ちているということですか。
  •  そうです。そこは申しわけございませんでしたというか,経緯からそういうふうに書いてしまったのですが,説明ではそういう説明をさせていただいておりまして,条文を意識したものではないとはいえ,試案の書きぶりは,ちょっと正確ではなかったかなと思います。

 

 

 

  •  とりあえず,確認だけですので。
  •  今の第31の1の(2)のロが借り入れに当たるということで,それは外すんだという御説明だと思いますが,このロについては,例えば権利の変更行為も入るのではないかと思うんですけれども,それも落ちてしまうことになるんでしょうか。

 

 

 

  •  権利の変更と申しますと,例えば……。すみません,ちょっと具体的に。
  •  一般的に言えば,不動産の対抗要件のところで権利の設定または変更というように言われている,その変更。いろいろなものがあると思いますけれども,この文字面だけですと,設定・移転行為以外ということですと,そういうものも入り得るのではないか。

 

 

それをまとめて除外するのが適当かどうか。むしろ借り入れについてが特別のルールがあり得るのではないかと思ったんですけれども。

 

 

  •  権利の変更について……,そうですね,今まで具体的には考えてこなかったけれども,この表現だとそれが借り入れと同じ扱いになってしまうわけですよね。

 

 

今まで変更のことは余り考えていなかったけれども,借り入れと同じに扱った方がいいという積極的な意見があったわけではなかったですね,確かに。

 

 

それは,もしそういう御意見であれば,表現をそれに揃えるように書き直すことはできると思います。いずれにせよ,借り入れがとにかく一つのキーポイントだったわけで。

 

 

 

ごめんなさい,この点また戻るかもしれませんけれども,もし○○委員が関連することであれば。

 

 

 

 

  •  十分理解しての質問かどうかわかりませんが,ただ,大ざっぱな質問なもので通用すると思うんですが,重過失の議論なんですけれども,今「信託財産のためにすることを知り」というところに重過失を入れるべきではないかというふうなことを言わんとしているんですけれども,そう言うことが,信託財産のためにしていなければ,そもそも信託財産に掛かっていけないんだと思って,仮に受託者の行為が信託財産のためであってもという議論だとすると,ちょっと言っていることが矛盾してしまうんですけれども,言わんとしていることは,民事信託を考えた場合,御説明にあったように,受託者名義ですから取引の相手方はわかりませんけれども,通常の場合というか,商事信託であれば信託会社は専業義務を課せられていますし,信託銀行であれば何々信託銀行ということですし,まして動産であれば分別管理ということで,分別して管理されていますから,ですから,取引の相手方というのはかなりの程度,ちょっとした注意義務をもってすれば信託財産であること等はわかると思うので,そういう場合でも取引の相手方を保護するような議論--と私は理解しているんですけれども,そうではないとすると意味がない議論になってしまうんですが,そういうのはどうなのかなと。

 

 

 

要するに,分別管理,それから信託会社における専業義務という視点から,信託財産のために行動することは取引の相手方だったらわかり得るのではないか。

 

 

それからあと,信託の公示制度そのものがかなり軽減化されているという現実が,他方において分別管理で賄われるという全体の建てつけですから,そういう意味において,幾ら同じ受託者名義とは言いながらも,信託との取引ということが注意義務としてある程度は課せられてもいいのではないかというコメントと,あと,不動産とか登記・登録を要するものに関して,登記・登録がすべての判断の基準という建てつけのようですし,基準としてのわかりやすさはあると思うんですけれども,あと,以前にも議論した,背信的悪意者みたいなものは入るかもしれないという話だったと思うので,その辺の確認と,仮に登記・登録していなくても,信託銀行が信託財産として預かっていることを相手方が知っていれば,それはそれで悪意として,その効果というものは考えてもよろしいのではないかと思うんですが。

 

 

 

細かいところの理解が間違っているかもしれないので,検討違いの議論かもしれませんけれども,そういう視点から何か御見解をいただければと思うんですが。

 

 

 

 

  •  ○○委員のおっしゃった最後の,当該財産が信託銀行が信託財産のために預かっていることを知っているかというのは,もう文言ばっちり,「信託財産のためにされたものであることを知り」というところに当たるかと思いますので,あとはその権限違反について,善意・無重過失であるか悪意があるかどうかを論ずればよろしいのかと思うのですけれども……

 

 

 

  •  それは,登記・登録を要するものであっても,もうそれはそこで決めるということですか。

 

 

  •  登記・登録を要するものについては,信託の登記・登録がされていれば,相手方が信託のためにしていることを知らなかったとは言わせないというのが第31の1の(1)ですので,信託の登記・登録があるものについて,その登記・登録があれば相手方は「いや,私はあなたが信託のためにやったとは知らなかったよ」という主張はできなくて……

 

 

 

  •  登記・登録を要するものが登記・登録していないんだけれども,分別管理され,信託財産として管理されていることを相手方が知っている場合。

 

 

  •  その場合は,信託の登記・登録をすることができる財産であれば,相手方は,これも前回,○○委員の御発言にもあったかと思いますけれども,背信的悪意者に当たらない限りは,それは信託の対抗問題として,相手方というか,受託者が信託であるということを相手方に言えないわけですから,先に履行してとってきてしまえば,それはもう対抗問題として相手方が勝つことになるのではないかと思います。

 

 

 

  •  背信的悪意者というのは,結局悪意・重過失……,ちょっと昔の議論を忘れてしまったんですけれども,それほど加重されていなかったような気もするんですけれども。--いや,ちょっとわかりません。私の理解が間違っているかもしれませんけれども。

 

 

 

  •  背信的悪意者ということであれば,それはもう受益者,これは信託であるということは対抗できますよという話になって,あとは軽減違反について別途,善意・無重過失かどうかというところで決せられることになるかと思います。

 

 

あと,ちょっとつけ加えですが,信託の登記または登録をすることができない動産のようなものを売るときに,これも○○委員から,民事であれば確かにこの主張は妥当するけれども,商事であればいかがかという御指摘があったかと思うのですが,確かに分別管理はしてあるわけですけれども,何か実際の売買のときに,商事であれば動産をポッと出されたときに,それは信託財産の財布から来たか固有財産の財布かということを常に考えなければいけないという注意義務を若干なりとも課すことが適切かどうかということで,とりあえずこの案では重過失は問わずに,悪意か善意かだけを問うという案にさせていただいているということかと思います。

 

 

 

  •  そこは判断の分かれるところだから,いろいろな考えがあるのかもしれませんけれども,普通,民法的な議論をすると,故意と重過失はかなり同視されるような行為として考えますよね。

 

 

ですから,そういう意味において,悪意のみというのも何か強いような……。将来の解釈に委ねるという趣旨であれば,それはそれでいいのかなと思うんですけれども,ここの規律だけ「重過失」という言葉が結構はっきり出てくることによって,悪意は悪意だけみたいな感じもしますし,将来的に軽過失でいいんだという議論が逆にしにくいような規律にもなっているのかなと。

 

 

民法一般としては,やはり外観法理にしろ何にしろ--と言ったらちょっと間違っているかもしれませんけれども,やはり過失があれば責任があるということかと思うんですけれども,ここだけちょっと,ある意味では将来の解釈論が確定してしまっているのが分別管理,先ほども言ったように,信託の専業義務という視点からすると,信託財産が結局受託者,その受託者を信じたあなたが間違っていたんだと言われてしまえばそれまでかもしれませんけれども,分別管理されているものを取引した人が,重過失があるにもかかわらず保護されるようなシチュエーションというのは,民法的な視点からも信託を守る視点からも,何かちょっと感覚的にそぐわないところがありまして,再度確認している次第ですけれども。

 

 

 

 

  •  いろいろな問題があったと思いますけれども,1つは,信託の対抗という問題を正面に出しているために,信託の登記・登録ができるのにしていないと,もう信託を対抗できないということで,あとは背信的悪意者でないと受益者というか,信託が保護されないとなっていることがどうかというのが後半の問題ですよね。

 

 

これは信託の対抗がもうできないと言われてしまうと,あとは背信的悪意者しかとにかく保護しようがないので,そこで過失があってもだめだとはなかなか言いにくい構造になってしまっている。これをどうするかが1つの問題であることは確かですね。

 

 

 

もう一つは,あるいは○○委員の問題意識と私のと完全にオーバーラップするかどうかわかりませんけれども,信託の登記・登録をした場合であって,ですから,これは相手方はもちろん信託財産であることを知っているし,そういうときに相手方に要求される要件が,故意・重過失があれば取消しができて,しかし,軽過失があった程度では取消しができないという部分,ここもちょっと私は,個人的にはこれでいいのかどうかちょっと気になっていまして,特にこれ,今までの信託法第31条の取消権というのは,これも硬直的で,これを直そうというのが出発点だったわけですけれども,少なくとも今までの信託法第31条の取消権の場合には,登記・登録があると,これは相手方の善意だろうが無過失だろうが,それに関係なく常に取り消せるというので,これはちょっと極端である,とにかくこれを変えようと。

 

 

番人

「登記の意味が重すぎるってことかな。」

 

 

 

 

変えようとなったんですけれども,今度は反対側の方に振り子が完全にいってしまって,故意・重過失の場合にしか信託の方は保護されない。おまけに挙証責任も受益者の方で証明しますので,受益者の方で,信託財産の取引の相手方が悪意または重過失があることを証明しないと保護されないということになって,従来の第31条の下で保護されていた受益者,あるいは保護されていた信託からすると,極端に取引の安全の方に移行してしまっているのではないかという気が個人的にはしております。

 

 

 

信託財産というものはそういうものだと割り切ってしまうのも1つかもしれませんが,そこまで極端な議論をしなくても,法人などの場合で取締役が定款などで定められている,制限されている権限に違反して取引をした場合とのバランスみたいなものを考えた方がいいのではないか。

 

 

 

これも事務局にはちょっと調べていただいたわけですけれども,民法で言うと第54条の問題ですかね,全く同じ問題かどうかわかりませんけれども,取締役の権限が制限を受けているときに,その制限に反して取締役が取引をした。

 

 

そのときに第51条,条文上は確かにこれ,善意としか書いてありませんけれども,いろいろな解釈によっては善意・無過失の相手方を保護する,ですから過失があれば逆に保護しない,そういう規定として理解している人たちもいると思うので,民法第54条とのバランスみたいなものを少し考えた方がいいのではないかと思っておりまして,○○委員と多少共通するところがあるんだろうと思いますが。

 

 

 

  •  そのとおりですね。
  •  ただ,民法第54条は,条文上は善意だけになっているので,そこはちょっと問題と言えば問題なんですが。

 

 

  •  他の箇所でもそうなんですけれども,民法と平仄を合わせるということで善意としか書かずに,ただし解釈論で多分,過失も入るでしょうと。ここも将来の解釈論に委ねるような規律,だから過失か重過失かこの場で決めずに,「善意」とかいう言葉を使うことによってという規律でもよいのかなという気がしております。

 

 

  •  さっき言われたように「重過失」とまで書いてしまうと,過失についての解釈がそこで決まってしまうのでということ。

 

 

  •  はい。

 

 

 

  •  ほかに,いかがでしょうか。
  •  余り強く申し上げるつもりは全くないのですけれども,今の重過失の点で,権限違反の方も問題になっておりますけれども,もともとの信託への帰属の方で,御提案は登記・登録で一律に決するということで,重過失のような判断はしないということ,それも一つの割り切り方かなというふうには思っているのですが,ただ,それで大丈夫だろうかということも考えなくはないですので,その点だけお話しさせていただきたいと思います。

 

 

1つは,もう既に出ておりますように,少し調べればわかるようなものについて調べなくていいかという点でございまして,特に,結局取消しが問題になるということは,権限違反について,悪意であるとか,あるいは重過失があるという要件を満たさないといけないわけですので,そのことは知っているというような状況において,それが果たして信託のための取引なのかどうか若干の調査をしなくていいのだろうか。

 

 

 

先ほど例に挙げられました動産のようなものは,安心してやってよいというのが適切であるとすれば,そのときには,もうそれで既に重過失はないと判断されると思いますので,どうなのかというのが若干気になっております。

 

 

もう一つは,登記・登録との関係なのですけれども,これは恐らく信託の登記・登録のあり方とも関係してくるものではないかと思うんですが,現行法のような形であれば,もう登記・登録があれば当然に悪意擬制と同じという扱いで,それでよろしいと思うんですが,もう少し登記・登録のあり方が柔軟に,あるいは必ずしも現行のように確固としたものでないものが出てきたときに,当然登記・登録はチェックして取引すべきだということが常に言えるのかどうか,若干気になるところでして,これは事例自体は全然違う話ですから,引くのが適切でないことは理解しているんですけれども,動産の譲渡登記などですと当然それは見てしかるべきで,当然悪意擬制がされるような性質のものでもないということがありますので,登記・登録制度のあり方によっては,もう少し考える余地があるのではないか。

 

 

 

そうだとすると,登記・登録を見てしかるべきということは,当然重過失があるというので判断できるという仕組みも,より適切な結果を導けるのかなという気はしているのですが。

 

 

ただそういう観点もあるのではないかということだけ,補足的に申し上げます。

 

 

 

 

  •  その点は,全くそのとおりだと思います。
  •  今,○○幹事が御指摘になったポイントでございますが,2つ目の登記・登録されているものについて,信託の登記・登録のあり方が変わってくるような場合で,まさしく御指摘のあったとおり,動産の登記というのは別に,今回の場合,動産の登記をしてあったから信託云々という話ではなくて,(1)の話は信託の登記・登録がある財産についての話でございますので,動産の登記があれば,それを見たって信託のことはわからないことは,もちろんわからないわけでありますけれども,仮に,例えば信託の登記とか登録を免除しているというか,一時的に免除しているといったときに,第三者と受託者の取引をして,それで第三者の方が権利移転の登記も移してしまったようなときに,受益者と第三者とでどちらが勝つかといえば,それは第三者が勝つのではないか。

 

 

そこは権限違反云々という主観的要件を問題にすることもなく,そういうことになるのではないかと思いますので,信託の登記・登録の運用のあり方が確かに変わってくることは変わってくると思うんですけれども,第三者と受益者とでその財産を取り合いになったときに,ルールとしてどういうふうに決するかというふうに考えますと,その場合は,まず受益者としては,権利移転の登記をする前に信託の登記・登録をしなさいということを受託者に言って,受託者がそれを移した後で,それをもって取消権を行使するとかいうようなことになるのではないかと思います。

 

 

 

すみません,ちょっとお答えになったかどうかわかりませんけれども。

 

 

  •  いずれにせよ,さっきから問題になっているポイントは恐らく大きく2つあって,登記・登録できるけれどもしていない,しかし,何らかの形でそれが信託財産であることがわかるような場合に,どこまで受益者というか,信託の方を保護し,取引の相手方の方が多少負担をすることになるのか。

 

 

 

今のところ,登記・登録できるのにしていないものは,もう一切信託が対抗できないので,これは当事者間の合意でもって免除している場合も同じような扱いになるということですね。これについての御意見がさっきから上がっている。

 

 

 

 

○○幹事の御意見は,私の理解では,登記・登録ができる場合で,かつしていて,そのときの相手方の主観的な要件の問題で,この原案がいいのかどうかは,どういう登録制度があるかによって違ってくるだろう。

 

 

現在の不動産の登記のように信託財産目録があって,そこでかなり詳しく信託財産の中身が判断できるようなものについては,例えば,それを見なかったら悪意というふうな推定が働くんですかね,そういうことで解決できるけれども,そういう信託財産目録のような,情報を完備しているような登記・登録制度ばかりではないので,そういうものについては果たして適当なのかどうか,不動産の登記と同じように扱っていいのかどうか,そういう問題ですよね。

 

 

これも登記・登録制度がどうなっているのか,よくわかりませんけれども,今のところ不動産に関しては,現在の信託財産目録というのは大体同じような制度が引き継がれていく方向にあると理解してよろしいんですか。

 

 

それ以外のいろいろな登記・登録制度ですよね,こっちがまだはっきりしない。そういうもとで,どういうルールがいいか。

 

 

  •  今の登記・登録制度のところで,信託目録が現在の制度と同じようなというお話がありますけれども,そこはそんな形なんでしょうか。少なくとも権限といいますか,そういう部分は書かれないというふうに,何となく……

 

 

 

番人

「最低限、登記するのは、信託財産の管理方法かな。」

 

 

  •  すみません,私がちょっと先走ったことを言ったかもしれませんが。

 

  •  またここの議論をしていただこうと思ってはいるのですけれども,逆に言えば,権限のところを書かれないというような整理がされた記憶もないんですが,いずれにしても,信託がどれであるかを信託の公示を見てわかるようにしなくてはいけませんね,少なくとも不動産についてはという,そこはたしか昔,パブリック・コメントをする前に御議論いただいたのかと思っております。

 

 

 

その際に,では,どういう情報が特定のために必要なのかという観点から考えると,権限だけは要らないだろうといった議論がそう簡単にできるのか。

 

 

つまり,契約を特定するという作業の中で何が必要なのかという話を,またいずれしていただきたいとは思っておりますけれども,逆に言えば,権限は要らなくなるというのは,確かに効力の問題としては,権限の有無と信託の公示は切り離されましたけれども,それと,公示の際に何を書かせなくてはいけないのかというのとは直接にはリンクしない問題ではないかという感じがしております。

 

 

 

 

  •  また別途議論させていただきます。
  •  公示の中身については,また御議論いただけると思います。

 

 

 

  •  先ほど来,問題になっております,信託の登記とか登録をしていない場合に相手方が,それは信託財産であるとわかって取引をした場合については,例えば信託財産,受託者の固有財産に属する債務に係る債権者が信託財産だとわかっていて登記・登録をしていなかったら,そこは登記で差し押さえてしまったら,どっちが早く登記をとったかというような話で決することになりますので,確かに心情的に多少なりとも忸怩たるものはございますけれども,第3条でそういう整理をした以上は,やはりそうなるのではないか。

 

 

 

この嫌らしさというのは,通常の二重譲渡のときに,AさんがBさんに売ったことがわかっていて,もうBさんにいってしまったときでも,後から売買契約して登記を先に備えてしまえば勝てるという,その通常の対抗要件主義をとって決するというふうにしたことと同じ,そのときに思う気持ちと同じようなことなのではないか。

 

 

 

それで,信託の登記・登録が制度として整備されている以上は,登記・登録を見ればどれがこの信託に属する財産かというのは,やはり明確になるように制度整備を図っていかなければいけないのかなとは思いますけれども。

 

 

他省庁が所管しているものまですべて明確に確認したものではないので,その点はもう一度,信託の登記・登録制度自体は見てみる必要があるかと思いますけれども,現行法の建前は一応そこは区別されているんだ,特定できるんだという建前でできているのではないか。

 

 

そうではないと,信信間だって対抗要件で決するわけですから,それが登記で明らかになっていないということになると,法の建前自体がおかしいということになってしまうのではないかなとちょっと思いますので,補足させていただきました。

 

 

 

 

  •  前回もちょっと質問させていただいたんですけれども,対抗問題であるということで,今,ちょっと話があるんですけれども,典型的な対抗問題とはちょっと違うのではないかという気がずっとしておりまして,必ずしも対抗問題としてとらえる必要があるのかなという気がしております。

 

 

 

受益者の立場からすると,登記にそこまでの意味を持たせるのはちょっと厳しいなという気がしておりまして,これは私の方から申し上げるべき意見かどうかわかりませんけれども,ここで登記に重い,そういう登記によって取消しができるかどうか切り分けられることになりますと,かえって公示のところで多少柔軟にしたいという要請があるところとぶつかる場面が出てきはしないかなという気がちょっとしておって,そういったことですとか,先ほど○○委員から話がありました信託銀行等の実情等をお聞きすると,どちらかというと,登記・登録では切り分けずに,もう悪意・重過失だけで取消しの有無を切り分ける方がすっきりするように思うんですけれども。

 

 

 

  •  以前からそういう意見もあったわけでして,ほかに御意見ございますか。
  •  一般的要件の証明責任についてですが,お書きになられているところは14ページから15ページにかけてなんですが,少なくとも民法でこの種の問題をお話しするときは,権限がある場合とない場合を分けて,権限がある場合でも,さらに内部的な手続違反だとか,あるいは内部的な義務違反がある場合という分け方をした上で,どういう議論をするかというと,権限があれば効果は帰属するし,権限がなければ効果は帰属しない。

 

 

 

ただ,権限がなければ効果は帰属しないけれども,一定の特別な要件を満たす場合には,例外的に効果が帰属する場合を認めるという考え方だと思うんですね。

 

 

そうしますと,権限外の場合は,やはり特別な要件,善意だったとか善意・無過失だったというようなことは,あくまでも相手方の方で証明責任を負うというのが通常の考え方だと思います。

 

 

その上で推定などで変わってくるのはもちろんありますけれども,それがベースですね。それに対して,権限はあるんだけれども内部的な義務違反だという場合は,内部的な義務違反があるというだけでは効果の不帰属は基礎づけられなくて,やはり権限があるわけですから,効果は帰属してしまう。

 

 

だから,義務違反があって,かつ相手方がそれを知っていたではないかとか,過失がある,あるいは重過失があるということまであわせて言わないと効果の不帰属は基礎づけられないので,この場合は財産を持っている側がそこまでの主張,立証をしないといけない。

 

 

この14ページから15ページに書かれている内容というのは,むしろ内部的な義務違反の場合に寄せて考えようというような御説明に近いのかなというふうに伺ったんですけれども,やはり権限という言葉を使う以上は,権限がないならば効果はもう帰属しないわけであって,そうすると,例外的に効果が帰属するということを,つまり受益者の側としては権限外だということを言えば足りて,相手方の方で,いや,知らなかったし重過失もないんだと立証責任を負う方が,少なくとも民法の考え方からは自然なのかなというふうに伺いました。

 

 

ただ,これ商法はどうなっているのか,やや心配なところはありますけれども,少なくとも民法の普通の考え方からすると,この14ページから15ページに書かれていることは権限外なんだけれども,それについて相当政策的な操作をしておられるのかなという気がいたしました。

 

 

 

 

 

  •  今の御指摘につきまして,相手側,受託者側,こちら側というお話がございましたけれども,受益者は,経済的な利益の実質的な帰属先という観点からいきますと,確かにこちら側なのでございますけれども,やはり受託者とは違う第三者なのでございまして,受託者と取引の相手方との取引を,取引当事者でもない第三者たる受益者がその効果を取り消すという話ですから,例えば第54とかいうようなときに,無効をどちらが証明するか,しないかということを考えるときには,実際に取引をやった理事の方と,それから相手方との証明責任,どうですかということを多分,考えて議論しているのだと思うのですけれども,本件におきましては,全くの取引当事者でない受益者がパラシュートのようにおりてきて「取消し」と言うわけですから,一般の民法のときの証明責任と同様に考えるべきなのだろうかと。

 

 

そういうことを踏まえて,現行法は受益者の方に証明責任を課しているのではないかというのがこれまでの議論,資料等を拝見して考えたことなのですが,いかがでございましょうか。

 

 

  •  お考えは,もちろんわかるようなところはあることはあるんですけれども,法人の場合だって,法人自身がこれは権限外だというようなことを言う場合もあれば,それ以外の者が言う場合もあって,いろいろだろうと思うというのが1つと,それから,やはり受益者が言うのであれば,権限外だということを言わないとだめなわけで,権限外だということが言えてしまうと,もう本来は効果が帰属しないというふうになるのが民法の考え方からすると筋なのかなと。

 

 

 

そうすると,それ以上なぜまだ主観的要件まで言わないといけないのかというのは,ちょっと平仄が合わないのかなと。

 

 

 

少なくともここまで,しかも○○委員がおっしゃいましたように取引安全をかなり重視したような制度の仕組みになっている上に,証明責任のところまでさらに変えていくというのは,ちょっと--御説明わかることはわかるんですけれども,かなり一般原則から踏み出しているなという感じが否めないところです。

 

 

 

 

  •  先ほど商法の方は御存じないと言われたんですが,例えば商法第42条,もう番号は変わったかもしれませんが,六法に載っているので言えばですけれども,表見支配人などのケースですと,悪意ならばそうではありませんという形でありまして,ある種の肩書を与えた場合には当然効果が帰属して,悪意ならそうではありませんといった形になっております。

 

 

代表取締役も似たような発想でして,ある種の包括的な代理権,代表権みたいなものを与えられるような外観を持っている場合,及び商法の場合は迅速な取引の補償といった別の要素があるんですけれども,あわせて証明責任が引っくり返っているんですね。

 

 

信託の場合,どちらかというと,当然に商事信託ばかりとは言えませんから,商法的な,迅速な取引の安全の保護という発想は正面に出しにくいかもしれませんけれども,包括的な代表権,代理権が与えられているような外観に近いような基盤は,あると考えるなら,この証明責任は一応は説明できる。

 

 

 

それが最終的に商法と同じだからいいんだというふうな,そんな簡単な説明はできませんけれども,全く説明がつかないわけではないような気がしました。

 

 

 

 

あわせて,第31について質問させて痛きたいんですが,私,おくれて来て聞き逃したのかもしれないんですけれども,1の(2)の方で「信託財産のためのものであることを知り」と掲げられていますが,後半は権限についての悪意・重過失なんですけれども,意味が非常に違うような気がするんですね。

 

 

 

後半の悪意というのは,いわゆる表見法理などの悪意と同じような意味なんですが,前半は,悪意だから保護されないとかそういう話ではなくて,そもそも信頼できる信託財産の取引をしているという前提でやって,なおかつそれが権限外であることを知っていたからだめだという話,それを並列して悪意として書くような話なのか。

 

 

何かちょっと構造が違うわけですね。要件として書けばこうなのかもしれませんけれども,その辺わかりにくくなっているので,書き方だけなのかもしれませんけれども……

 

 

  •  趣旨は,今,○○幹事が言われたとおりだと思います。
  •  その趣旨を,条文で書くときも何か工夫していただければと思います。

 

 

  •  1の(2)の「信託財産のためにされたものであることを知り」ということですけれども,これ,取消しの積極要件という位置づけだとするならば,受益者の側で,当該行為が信託財産のためにされたものであり,かつそのことを相手方が知っていることを立証しないといけないということなんでしょうか。

 

 

 

でも,何か自然な流れというのは,当該行為は信託財産のためになされたものではないんだということを受益者の方が言い,それに対して相手方が,「いや,仮にそうだとしても自分は知らない」というようなことを言って争うのが普通の流れのような気がして,考え方はわからないではないんですけれども,何かどうも,前からずっとなんですけれども,もう一つ何か頭の中にしっくり入ってこないなという点と,今ちょっと言われた若干性格が違うのではないかというのと,リンクしているのかなという気がどうしてもします。

 

 

 

 

 

  •  これはいろいろな御議論がありますので,大きな方向はそれなりに御了解いただいていると思いますけれども,今の証明責任とか,それから--もちろん大きな方向も若干御議論あったわけですが,これでいいかどうか,もう一回確認していただくということでよろしいですか。

 

 

 

  •  整理はついているのに私が読めていないだけかもしれませんが,強制執行というのは,引き渡しの強制を求めるというのも含まれますよね。

 

 

だから,信託財産に属する財産が売却されたという場合の,その履行を求める強制執行と,例えば,それが債務不履行になったとかいうふうなことで損害賠償請求権を持った,それで強制執行をしていく,損害賠償請求権の金銭債権の満足のために強制執行をかけていくという場合とは,かなり違うような気がするんですが,それは区別されているんですか。

 

 

「信託財産のために」という言葉を使うときには,これは総信託財産という感じで,「信託財産に属する財産」というのは個別の財産という感じで,第31条では何となくわかるんですが,その言葉遣いも何となくそれでいいのかなという気もしますし,強制執行のときなどで第12の1の(4)などのときに,当該財産に対して引渡しを求めていくことができるというのと,損害賠償の問題とは,どう区別すればいいのかがよくわからなくてクリアなことが言えないんですが,御意見があればお聞かせいただき,あれでしたら再検討の際にその辺を書き分けていただければありがたいと思うんですけれども。

 

 

 

  •  ○○幹事の御指摘は,例えば信託財産に属する動産について取引をしましたというときに,相手方は確かに信託だということを知らなかったので,この財産だと信じたから,その信頼を保護していいではないかというのはあるにせよ,それで債務不履行になって損害賠償請求権の金銭債権に化けたときに,だからといって信託財産という,そちらの方にいかせるのは信頼の保護としてちょっと行き過ぎなところがあるのではないか,そういったものをきちんと(4)で書き切れているのかというお話だと思いますので,書き方をもう少し検討します。

 

 

 

  •  では,それも含めて検討させていただきます。

 

 

それでは,不法行為についても御感触だけ伺っておきたいと思いますが,受託者の不法行為に基づく債権が発生したときに……

 

 

  •  今,事実的不法行為と取引的不法行為の区別も必ずしも明確ではないし,信託事務処理過程における不法行為だからという,この2つの理由で信託財産に掛かっていってもいいのではないかという結論と書かれているんですけれども,やはり,区別が不明確というのはそのとおりかもしれませんけれども,被害者の方が信託事務処理であることを認識し,信託財産の存在を認識しているケースと,たまたま受託者が,余りいい例ではないかもしれませんけれども,交通事故を起こしたと,不動産の信託で。

 

 

すみれ

「受託者が交通事故、か。」

 

 

 

それが一応,信託事務処理過程においてのことかもしれませんが,それが,わかりませんが,それが事実的と仮に呼んだときに,区別していい,また,区別しないと何か,信託の方がもしかして本来守るべき--というのも勝手な価値判断かもしれませんけれども,倉庫で物を預かっている場合,委任で他人の物を預かっている場合には,その物にかかわっていくわけでもないにもかかわらず,信託のときだけ何か,被害者の方が実は予想もしなかった財産にまで掛かっていけることができるような状況になってしまうと思うんですよね。

 

 

 

ですから,どこかで区別した方がいいと思って,結局は事実的不法行為と取引的不法行為で分けようではないかというのが一つの今までの議論だったと思うんですけれども,まだそこの区別が不明確だからということで,やはり恣意的に信託財産というふうに持っていってしまっていいのかなというところは,ちょっとまだ判断しかねるところがあるんですけれども。

 

 

 

 

 

  •  おっしゃることは,よくわかるつもりであります。取引的な不法行為に関しては,特に御異論はないということですね。

 

 

確かに交通事故などの例を挙げられますと,果たしてその信託事務の執行の過程で自動車を運転して事故を起こしたときに,信託財産に掛かっていけるかというと,それはちょっと行き過ぎかなという感じもしないではないですね。

 

 

 

ただ,一方で,第715条と同じでいいではないかという意見もあり得るとは思いますけれども。

 

皆さんの感触を。

 

 

  •  私は,区別が難しいということと,それから,今,第715条を挙げられましたけれども,その同じような考え方で,どちらについても信託財産に対して掛かっていくことができるというのでいいのではないかと,もう割り切って考えました。

 

 

 

割り切ってしまうと,さらにその先にまで行きまして,受託者の被用者についての場合,第715条の場合であるとか自賠法第3条の場合だとか,第717条の場合も,そこではもう切れなくなってしまうのではないかと思います。

 

 

  •  なるほど。

 

まだ両論あるようでございまして,今日は○○委員も来ておられないので,ちょっと慎重を期して,全体の見直しの際にもう一回検討したいと思います。

 

 

  •  例えば,年金の事務処理過程で事故を起こす,あり得ると思うんですよね。

 

そういう場合も,実は被害者の方が年金の財産にかかわっていける。何となく変というか,相手方が知っていても掛かっていけるんですかね。

 

 

  •  信託財産の執行ということですか。

 

  •  ええ。信託銀行が年金事務処理をしていて,不法行為--だから取引的不法行為かもしれません,場合によっては債務不履行で構成できるけれども,どうも不法行為で構成した方が信託財産に掛かっていけそうだという判断のもとに掛かっていくということが,何となく不自然に思われるんですよね。

 

 

 

交通事故というのはちょっと,わかりやすい分だけ,また逆に違った意見もあるかもしれませんけれども。

 

 

  •  私も,どういう要件でもっていくのがいいのか,第715条と全く同じ要件でいいのか,そこはもうちょっと検討した方がいいだろうという気がしますけれども,ただ,受託者の行為が信託財産のために行われた行為で,たまたま相手方がそれによって被害を受けたときに,受託者が無資力という場合もあり得るわけですが,そのときに信託財産に全然掛かっていけないというのはいいのかどうか,そういう判断なんですけどね。

 

 

 

要件も含めて,少し検討させていただければと思います。

 

 

  •  これは私もどちらがあれという意見を持ち合わせているわけではないんですけれども,これ,もし不法行為で掛かっていけるとした場合,強制執行を認めた場合に,その後処理といいますか,信託財産から財産が出ていくわけですけれども,その後の,例えば受託者がそれを埋めなければならないのかとか,そういった点については。

 

 

 

  •  受益者が,受託者に対して損失てん補責任追及をしていく。

 

 

  •  そうすると,基本的には,それは損失てん補請求の枠組みで処理されるという前提ですね。

 

 

  •  はい。
  •  それでは,これもいろいろ御意見いただきましたので,もう一回検討したいと思います。

 

 

次に,13ページに□で2つほど,パブリック・コメントで出てきた意見に対してですけれども,消滅時効の話と無権代理人の責任について,代理と同じように考えるべきかどうかという話ですが,これはどうでしょうか。何か御感触があれば。

 

 

 

  •  まず,この1か月というこの期間ですけれども,やはり実務的な感覚で言うと短か過ぎる。

 

 

特に弁護士が日常的に,仮にこの取消権行使で相談を受けて何かする,そういう発想でいくと,取消権を行使するなと言うに等しいぐらいの期間であるという意見が多くの弁護士から出ています。

 

 

 

 

 

 

 

それから,1年という方の期間ですが,これも報告自体が1年に1回義務づけられているような制度なので,短か過ぎると。

 

 

例えば,1月1日に何かそういう行為が行われて,12月31日に報告によってそのことが初めてわかった。そうすると,次の日にはもう1年たってしまうよということになりますし,これももう何年か,3年なり5年なりといった期間にしてもらわないと,なかなか使いようがないのではないかという感じがいたします。

 

 

 

先ほどの立証責任が,本当は一番扱えるかどうかというところが大きいんですが,それに加えてこの期間の問題というふうに思います。

 

 

  •  取消権の期間のところですけれども,先ほど○○委員の方から,受益者側から見たら1か月ではどうしようもないのではないかというお話でしたけれども,受託者の事務処理上の問題からしますと,当然商事信託でかなり大量の信託財産を日々動かしているという観点からいきますと,1か月でもなかなか,どうなるかよくわからんなというところがありまして,とはいうものの,やはりそういう期間設定も要るとすれば,やはり現行法と同じぐらいの期間が望ましいのではないかと考えております。

 

 

 

  •  ほかに,この点について御意見は。

 

今,時効期間については両論の御意見があったと思いますけれども,無権代理の方は,これは一応原案といいますか,先ほどの説明ではなくていいというふうに考えておりますが,それでよろしいでしょうか。

 

 

では,こちらはそういうことで。

時効の期間につきましては両方に分かれているので,どちらが多数とも今,簡単には言えませんけれども,今度,見直しのときにもう一度伺いますので,そのときまでに御意見を固めておいていただければと思います。

 

 

それでは,先を急がせていただければと思います。

 

  •  それでは,続きは第44の信託管理人等と,第51の受益債権と信託債権との優先劣後関係,あと,営業信託の商行為性と受益権の有価証券化という4つの論点を先にやらせていただきたいと思います。

 

 

まず,信託管理人でございますが,受益者が現に存しない場合に限定して信託管理人の選任を認めるとの試案の考え方に対しては,賛成意見が多数を占めております。

 

 

 

まず,資料22ページの(イ)でございますが,受益者の一部が未存在の場合にも,信託の変更等の意思決定を可能とするためには,信託管理人の選任を認めるべきではないかとの意見がございました。

 

 

 

しかし,事務局の考え方でございますが,受益者の一部について未存在の者を指定した委託者としては,残りの受益者によって信託に関する意思決定がされることを期待していると考えることが合理的であると思われます。

 

 

そうすると,一部の受益者が未存在であるからといって信託に関する意思決定ができなくなるわけではございませんので,未存在の受益者のために信託管理人の選任を認める必要はないのではないかと思っております。

 

 

もっとも,未存在の受益者と現存する受益者との間で利益相反関係があるときには,現存する受益者のみで意思決定がされるような場合があって,これが問題となるわけでございますが,この場合は受託者の公平義務の遵守に期待するほか,委託者において後述いたします信託監督人を選任して受託者の公平義務の遵守を監督させることなどによって,未存在の受益者の利益を図ることができるのではないかと考えております。

 

 

ポリー

「受託者は存在していない人も含めて公平に扱うのですね。大変ですね。」

 

 

 

 

次に,資料23ページのイの(ア)から(ウ)に関してでございます。

まず,(ア)でございますが,信託の利益の受領権については,受益者との委任関係にない信託管理人が配当を受領して保管しておくよりも,受託者が信託財産の一部として管理しておくことの方が委託者の意思にかなうと思われますので,信託管理人にはこの受領権までは認めないこととしております。

 

 

ただ,信託管理人が受益者を保護するために受益債権を保全するための権利の行使,例えば受益債権の消滅時効中断のための措置をとるようなことまで否定するわけではございません。

 

 

 

次に,(イ)の点でございますが,信託管理人の権限は,自益的な権利に限るべきであるとの意見がございました。しかし,信託管理人が未存在の受益者にかわって受託者を監督することが期待されているということですとか,受益者未存在の間にも信託の変更の必要性が生じたような場合におきまして,信託管理人にその同意権を付与することが相当と考えられることなどから,信託管理人には別表1,別表2,これは28ページから29ページにございますが,ここにありますとおり,共益的な権利や,信託に関する意思決定への合意権なども付与することが相当と考えております。

 

 

 

(ウ)でございますが,信託管理人が選定されている場合には,最終計算は信託管理人の承認でよいとすべきであるとの意見がございました。

 

 

 

この点については,受益者が未存在の状態でも信託が終了することはあり得ますので,これを認めてよいのではないかと考えております。

 

 

なお,この最終計算の承認権につきましては,これを受託者に対する監督的な権利であると位置づけますと,これは信託監督人等の話に多少入ってしまうんですが,別表1の範疇,監督権に属することになりまして,そうすると,後述の信託監督人とか受益者代理については,受益者と重畳的にのみ行使し得ることになると思われます。

 

 

他方,これを受託者の責任の免除に類するものと考えれば,別表2の範疇に属することになりまして,信託監督人には認められませんし,受益者代理は専属的に行使できることになると位置づけるのかなと考えられるところでございます。

 

 

番人

「信託監督人と、受益者代理人の違うところだね。」

 

 

 

それから,信託管理人に関する最後,資料24ページの(ウ)でございますが,資格について何らかの要件を設けたり,不適格者の範囲を広範なものとすることについてでございますが,消極的に考えております。

 

 

 

ただ,受託者不適格者に関する規律に準じまして,未成年者,成年被後見人,被保佐人,そして監督されるべき受託者自身を不適格者としてはどうかと考えております。

 

 

次に,2の信託監督人についてでございますが,受益者が受託者を適切に監督できない場合に,受益者にかわって受託者を監督する者として,信託監督人は重要な役割を果たすという観点から,信託監督人制度を設けるとの考え方に対しては賛成意見が多数を占めております。

 

 

 

 

 

 

もっとも,資料24ページの(ア)のとおり,信託監督人制度と受益者代理制度とを併存させることは不要であって,受益者が現に存しない場合の信託管理人制度と,受益者が現存する場合の受益者代理制度とを設ければ足りるとの意見がございました。

 

 

しかし,次のページの(イ)に書きましたとおり,信託監督人といいますのは,すべての受益者のための別表1の共益的権利を行使するものでありまして,信託の機関としての法的性格を有して,自己の名をもって権利を行使する。

 

 

 

ですから「信託監督人」という名称に仮称を変えているわけでございますが,そういう性質のものであるのに対しまして,受益者代理はあくまでも受益者の全部または一部のための代理人としての法的性格を有するものでございます。

 

 

 

このような性格の違いにかんがみますと,併存させることが相当と考えております。

 

 

それから,資料25ページの(ウ)でございますが,裁判所による信託監督人の選任につきましては,信託行為で信託監督人を選任していないという委託者の意思に反しない範囲で限定的に認めることが相当と考えております。

 

 

そこで,裁判所による信託監督人の選任につきましては,信託行為の当時には予見できないような特別な事情が生じまして,受益者が受託者を適切に監督することが困難な場合に限られるべきであると考えております。

 

 

 

したがいまして,他に受益者が多数であるというだけでは,この要件を満たさないと考えられますし,受益者が複数いる場合におきまして,一部の受益者によって受託者の監督が適切に行われているときにも,裁判所による選任要件を満たさないものと考えております。

 

 

最後に,資料26ページのイでございますが,信託監督人が選任された場合に,受益者にも重畳的に権利の行使を認めることにつきまして,信託事務処理の円滑性を害するのではないかという意見がございました。

 

 

 

しかし,そもそも信託監督人が行使する権利といいますのは,受託者の監督のために各受益者がそれぞれ単独で行使できる権利でございますので,重畳的な権利の行使を認めましても,いわば単独で権利行使できる受益者が1人増えたのと実質的には変わらないわけでございまして,信託事務処理の円滑性を害するとの批判は当たらないと考えております。

 

 

 

 

最後に,3の受益者代理でございますが,受益者が特定多数の場合ですとか,時々刻々とと変わるため不特定とされる場合につきまして,受益者保護の観点から受益者代理の制度を創設するとの考え方に対しては,賛成意見が多数を占めております。

 

 

 

 

まず,受益者代理の選任方法につきまして,26ページの3の(2)のアのとおり,受益者が時々刻々と変わる場合におきまして,裁判所による選任を認めないことに異論がございました。

 

 

 

しかし,この場合には,ある特定の時点を切ってみれば受益者は特定しているのでございますので,それにもかかわらず,信託行為の定めという私的自治によらずに裁判所が受益者代理を選任して受益者の意思決定権限を喪失させてしまうことになりますと,委託者の意思に反しますし,受益者の利益にも資さないことになると思われます。

 

 

 

そこで,試案と同様に,裁判所による受益者代理の選任は認めないこととしております。

 

 

それから,26ページのイの(ア)から(ウ)までの点でございますけれども,まず(ア)のとおり,受益者代理に対して信託の基礎的な変更に関する同意権を付与することに反対する意見がございました。

 

 

 

しかし,信託行為の定めをもって受益者代理が選任されている場合には,受益者も受益者代理が選任されて意思決定権限を専属的に有することを認識しているわけでございますので,基礎的な変更に関する同意権を認めるとしても,不測の不利益を受益者に与えることにはならないと考えております。

 

 

 

次に,(イ)でございますが,受益者代理が受益者に変わって信託の利益を受領する権限を信託行為で付与できるとすることについて,反対の意見がございました。

 

 

しかし,受益者以外の者が受託者から配当を一たん受領した上で受益者に配当を交付するというニーズは,現行の信託実務においても強く認められまして,信託行為の定めによりこのような方法を採用することを否定するまでもないと思われますし,受益者代理は受益者に対して民法上の受任者と同様の義務及び責任を負うことにかんがみますと,受益者代理に信託の利益の受領権を信託行為で付与することを認めても差し支えないと考えております。

 

 

 

それから,(ウ)でございますが,受託者の受益者に対する通知義務の取扱いにつきましては,多数の受益者にかえて受益者代理に対して通知することを認めれば,信託のコストの削減につながるということ,受益者代理は受益者の代理人であるとの位置づけであるところを,一般代理では代理人に通知すれば本人に重ねて通知することまでは要しないと考えられていることなどにかんがみまして,受益者代理にのみ通知すればよいと解しております。

 

 

 

 

最後に,28ページのウでございますが,社債管理者に関する会社法の規定に倣いまして,受益者代理が複数の受益者を代理して権利を行使する場合には,個別の受益者を表示することを要しないものとしてはどうかと考えておりまして,そのことは資料21ページの3の(2)のイで新たに規律を設けているところでございます。

 

 

 

続きまして,第51の受益債権と信託債権との優先劣後関係に移らせていただきます。

 

 

試案におきましては,本提案と同一の内容をパブリック・コメントに付しましたところ,甲案を支持する見解が多数を占めました。

 

 

資料30ページの2以下に記載いたしましたとおり,甲案を支持する見解

といいますのは,実体法上,信託債権を優先されるとした方が公平の観念にかなうということ,あるいは一般の信託においては受託者の固有財産も責任財産となるとはいいましても,信託債権者の信託財産に対する信頼を保護すべきであることなどを主たる理由とするものでございます。

 

 

 

これに対しまして乙案を支持する見解といいますのは,いわゆるABLスキームなどにおきましては受益債権と信託債権の経済的同一性をとらえまして,両方を同順位として組成している投資商品があること,あるいは信託行為により受益債権の劣後特約を締結することにより,柔軟なスキームの構築が可能となることなどを主たる理由とするものでございます。

 

 

 

しかし,事務局の考え方でございますが,乙案の言う受益債権と信託債権との経済的同一性といいますのは,ABLスキームなど一部の信託についてのみ妥当するものであるということ。

 

 

確かに,乙案のように原則として両者を同順位とした上で,別途信託行為により受益債権を一律に劣後させる旨の定めを置くことができるとした方が,より柔軟なスキームの構築に資する面があることは否定できないと思われますが,甲案によりましても,取引による信託債権につきましては受益債権と同順位とする旨の特約を取引の都度,締結することなどによりまして,ABLスキームなどに対応し得るだけの柔軟性は確保できると思われることなどを指摘することができると思われます。

 

 

 

以上のようなパブリック・コメントの概要と,とりあえずの検討結果を踏まえまして,いずれの考え方をとるべきかという点について御審議をいただければと思います。

 

 

 

続きまして,資料50ページ,営業信託の商行為性に移らせていただきます。

 

試案に対しては賛成意見のみでございます。ただし,信託法と信託業法との建てつけが強く関連されているとの理解を前提に,民事信託の拡充を図るという見地から,弁護士による信託の引受けは営業に該当しない旨のただし書きを付すことが相当であるという意見がございました。

 

 

 

しかし,この規律は,営業的商行為に関する商法第502条に1号を付加するのと同様の効果を有するところでございますが,商法第502条には,特定の業種の事業については営業の解釈から当然に外れることを前提とした除外規定は置かれておりません。

 

 

このことにかんがみますと,特に信託の引受けに限ってこの意見のような除外規定を設ける必要はないものと考えております。

 

 

なお,念のため,本提案はあくまでも私法上の商行為に関する規律でございまして,信託業法における信託業の解釈とは,理論的には別個の問題であることを付言させていただきます。

 

 

続きまして,第67の受益権の有価証券化についてでございます。

 

試案の考え方に対しましては,基本的に賛成する意見が多数でございましたので,以下では,個別的な意見に対する検討結果について御説明申し上げます。

 

 

まず,資料51ページの(2)のアのとおり,そもそも受益証券の発行を信託法によって一般的に認める必要はないとの意見がございました。

 

 

しかし,有価証券の発行手続や効力に関する規定を,私法である信託法に設けることは当然でございまして,あとは受益者保護等の見地から,必要があれば業法をもって対処すればよい問題であると思われます。

 

 

次に,受益権につき有価証券が発行されている場合には,受益権の譲渡に受益証券の交付を要することになるわけでございますが,資料52ページのイに書きましたとおり,受益証券が発行されているとは知らずに指名債権譲渡の方法によって受益権を譲り受けてしまった譲受人は,受益権は取得できないこととなって,その利益が害されることになりますので,受益証券の発行に関する公示制度を設けて,取引の安全を図るべきであるとの意見がございました。

 

 

 

しかし,譲受人としては,受益証券の発行の有無をあらかじめ受託者に確認することが可能でございまして,(※1)のとおり,受益者名簿または受益権の原簿の作成,閲覧の制度を設けることもあわせて考えますと,このような公示制度まで設ける必要はないと考えております。

 

 

 

 

 

 

 

次に,ウでございますが,受益証券を発行した信託を利用することにより,不動産の善意取得が認められたのと同様の結果になるのは不合理ではないかとの指摘がございました。

 

 

しかし,受益証券が発行されている信託においては,不動産を信託財産に含めることを禁止するというのはおよそ非現実的でございますし,不動産の善意取得と類似の状況が生じますのは,主として不動産のみが信託財産である信託におきまして,単数ないし少数の受益権が証券化されている場合であると思われますが,合理的な判断としては,このような場合には流通性の付与を目的とした有価証券化がされることはないと考えております。

 

 

 

結局,信託財産中に不動産を含めまして,これを受益権に化体させることにより善意取得の可能性を含む流通の強化を図ることは,信託の,いわゆる転換機能を重視する以上,むしろ当然あり得べき結論でございまして,先の批判は当たらないものと考えております。

 

 

 

それから,資料53ページのエでございますが,無記名式の受益証券が発行された場合においても,受益者名簿が作成された場合には,受益者名簿への記載をもって受託者対抗要件とすべきであるという意見がございました。

 

 

 

試案では,無記名式の受益証券については,受益者名簿の作成にかかわらず受益証券の占有をもって受託者と第三者の双方に関する対抗要件としておりまして,会社法における無記名社債についても同様の措置がとられております。

 

 

 

しかるに,無記名式の受益証券につきまして受益者名簿が作成されていない場合には,受益証券の占有で,受益者名簿が作成されている場合には受益者名簿の記載で対抗要件とするというような3つの選択肢といいますか,複雑な選択肢まで認める必要が果たしてあるのか,御意見を伺えればと考えております。

 

 

 

最後に,提案に付記した(注)についてでございますが,まず,受益権を振替制度の対象にするかという(注3)につきましては,パブリック・コメントの結果を踏まえまして,積極的な方向で検討を進めたいと考えております。

 

 

次に,(注4)の,いわゆる(仮称)信託債の制度に関しましては,パブリ

ック・コメントの結果,このような制度の整備に賛成の意見が多数寄せられまして,その場合,責任財産は信託財産のみとして,その発行には取締役会の決議を要しないものとすべきとの指摘がある一方,個人の受託者にも発行のニーズがあるとの指摘はございませんでした。

 

 

 

そこで,資料53ページの①,②に書いてございますとおり,ここでの(仮称)信託債につきましては,株式会社が有限責任信託,仮に入ればでございますが--において発行する取締役会の決議が不要な社債であると構成することによって,ニーズにこたえた適切な落ち着きどころと言えるのではないかと考えております。

 

 

この点についても,御意見があればお伺いしたいと思っております。

 

  •  それでは,たくさんありますけれども,よろしくお願いします。

 

 

  •  第44の信託管理人等について,1点,御質問をお許しください。

 

この信託管理人,信託監督人,受益者代理の制度でございますけれども,具体的にこの管理人,監督人,代理についてはどういった類型を考えておられるか。

 

 

自然人なのか法人なのか,あるいは業をもってなすものがここに入るのか,そういったことをイメージで教えていただければありがたいんですが。

 

 

  •  特にどのというか,法人であれ個人であれ業者であれ,特にこちらでは特定の類型を念頭に置いているわけではなくて,適切に信託行為なり裁判所で選任されればいいのではないかと考えております。

 

 

  •  第44の信託管理人等の22ページの(ウ),最終計算の承認のところなんですけれども,信託管理人の方についてはいいでしょうということで,あと,信託監督人とか受益者代理が選任されているときに最終計算の承認権限かどうかというところで,相当ではないということなんですけれども,これはまさに実務的な問題として,これとはちょっと違うところで,実際に配当を受領するといったところがありましたけれども,例えば顧客分別金信託とか社内預金引当信託,これは終了したときに資金を受け取ることになっていまして,受け取ると,やはりその人が最終計算の承認をするというのが一般的なことですので,今現在の実務はそういう形になっているんですね。

 

 

 

といいますのは,各受益者は受託者の方からは顔が見えないということですので,各受益者に対して直接最終計算の承認をするということが実際にできないわけですね。このタイプの信託というのは,大体不特定多数の方々の財産を保全するための信託ということで,これから先も結構出てくるのではないかと思われる信託ですので,ここの部分については認めていただかないと,実務上しんどい部分があるかなと思います。

 

 

 

  •  御意見はよくわかります。

 

 

  •  この資料を書きましたときは,ここまで受益者代理に認めるのは適当ではないのではないかといったことも考えたんですが,別表2をごらんいただきますと,例えば受託者の責任の全部又は一部の免除というのは受益者代理ができるとしておりますので,このように考えますと,受益者の代理人という受益者代理は,やはりこのような承認もできるようにした方がよろしいのではないかというふうに,今,事務局内部では考えておりまして,そのような考え方の当否につきまして,ここで御審議いただければと考えております。

 

 

 

 

 

  •  それに賛成するということですね。

 

  •  これは質問なんですけれども,22ページの(注3)のところで,これは今回変わったわけではありませんけれども,信託行為の定めで信託管理人と信託監督人または受益者代理の権限を変更することができるということなんですけれども,この権限の変更の範囲といいますのは,どこまでなんでしょうか。

 

 

例えば,信託監督人といいますのは別表1の権利だけということですけれども,例えば別表2の権利というのは,これは契約によって変わるんでしょうか。

 

 

 

  •  ここのところも,第三者にどこまで別表2の権限を委ねることができるのかということと関連するかと思うんですけれども,仮にそちらの方でOKということになるのであれれは,信託監督人にそういう権限を与えることもできますが,ただ,その場合に,自己の名前でするのかどうかというのは第三者の方と平仄を合わせる。

 

 

 

少なくとも信託監督人が自己の名前で裁判所の権利を行使できるのは,ここに書いてある別表1の権利に限られることになるのではないかと思います。

 

 

 

  •  1つは,信託監督人の裁判所による選任の要件のところなんですけれども,例えば高齢者や障害者が受益者である場合に,そういう立場にあるので十分監督ができないといったことになったときには,この要件は充足されることになるんでしょうか。

 

 

 

実は,前回の中で,委託者の権限について制限するというような方向で確認いただいていると思うんですけれども,その中で,委託者側のとり得る手段として,この信託監督人を選任できるということがあったものですから,これが実際上,もし対応を考えるとすれば重要なところかなと思ったりしているものですから,ちょっと質問させていただいたんですけれども。

 

 

 

 

 

 

  •  その場合,その人だけが受益者ということで,ほかに適切に監督できる受益者がいないのであれば,それは選任要件を満たすと考えております。OKということでございます。

 

 

 

  •  そうすると,当初からそういう状態であっても,途中でそういう必要が出てきた場合には可能であると。

 

 

  •  大丈夫です。
  •  2つ目ですけれども,この御説明の中で,26ページから27ページの信託の基礎的な変更に関する同意権というところで,例として,会社の年金の受給権者に関するものが挙げられています。

 

 

 

この基礎的な変更まで認めるかどうかについては議論があり得るところかというふうには思っておるんですけれども,ここまで例として挙げられると,ちょっと難点が多いのかなと思っております。

 

 

 

例えば,年金の関係で,軽微なものといいますか,余り重大でないものについては受益者代理で同意をすることは必要なことかなとは思いますけれども,例えば,ここには基礎的な変更に関する例として出てきているものですから,そこまでということになりますと,例えば受益権の引き下げ,かなり引き下げることを代理でできるかということになると,それはやはり行き過ぎではないかと思われますので,この点については,少なくとも例としては,余り適切ではないのではないかと思われます。御検討いただければと思います。

 

 

 

 

3つ目に,これは意見なんですが,別表2の中で,先ほどもちょっと出ました12番の受託者の責任の免除に関する合意権なんですけれども,ここについては,受益者代理にこれを認めるということは,私の意見としては消極です。

 

 

 

やはり受益者の責任については余り簡単に免除できるというような規律をすることは,慎重であった方がいいと思いますので,この点については慎重に御検討いただけないでしょうかということです。

 

 

すみれ

「受託者かな。」

 

 

  •  まず,基礎的な変更の権限を受益者代理に与えるのかどうかという点ですけれども,ここは後で検討いたします第54の信託の変更のところと密接に関連するのですけれども,少なくとも受益者代理のところに限って申し上げさせていただきますと,受益者代理は委託者と受益者だけで解任もできますし,受益者代理と受益者との間につきましては善管注意義務の関係にありますので,仮にいけない同意等をすれば,損害賠償請求等もすることができるとなっておりますので,御懸念の点は,それで大分解消できるのではないかと思われますし,そもそも第三者に変更権限を委ねることにつきましても,事務局内部としましては,契約事由の原則があるので,そこをできないと言うのが果たして妥当なのかどうか。これはもちろん後で議論していただく点でございますが,そのように考えております。

 

 

 

それと同じように,責任の全部または一部の免除というものにつきましても,ここは受益者が多数の場合につきましては,やはり余り信託事務処理に関心を持っていないようなケースもあるかと思われますので,やはりこの点は信託の設計の中で,信託行為の定めに受益者代理を置くようなケースにおきましては,ここまで認めてあげても結構なのではないか,仮にこういうものが妥当でないと受益者が思う場合には,そもそもその信託の中に受益者は入ってこないということになるかと思いますので,それでカバーできるのではないかというのが現在の考え方でございます。

 

 

 

 

 

  •  受益者代理について多少気になっている点が2点ございまして,1つは,受益者代理,「代理」という言葉がついているんですけれども,基本的にはこれは信託行為で定められるということで,具体的に受益者から何か授権があるというような関係ではないので,そこがちょっと,「代理」という言葉から感じるところとちょっと違うのかなという気がしておりますのと,信託の変更の場合には,変更の仕方について信託契約の中に書かれることになるんだろうと思いますけれども,この受益者代理の場合には,信託契約の中にどう書かれるかわかりませんけれども,もし代理を選任するということだけ書いて,その権限内容等が書かれないことになるのであれば,契約を見ただけではちょっとわからないといった問題もあるのかなという気がしておりまして,受益者の予測可能性等の観点からも,信託の変更の場面とはちょっと違うかなという気がしております。

 

 

 

  •  一つの論点であることは確かだと思います。

 

ほかに,いかがでしょうか。

 

  •  信託行為の定めで裁判所の行為の代理権も与えられるという点が,やはり

……。

 

 

社債型の信託を考えれば理解できないことはないと思うんですけれども,これは信託制度ですから,あらゆる民事,普通の信託でも何でも可能なんですけれども,そこの段階でやむを得ない状況がある場合というのではなくて,いずれにしても信託行為の定めによって受益者代理が定められて,そうすると裁判所の権限も与えられるということになると,裁判における弁護士代理の原則とか,その辺が潜脱されるおそれもあるのではないか。

 

 

 

それはそれとして違法である,脱法であるという議論をすることになるのかもしれませんけれども,一応そういう懸念が会内での議論ではされましたということをお伝えしたいと思います。

 

 

  •  その点に関しましては,現行法第8条につきましても,受益者が不特定の場合には信託管理人を選任することができるとなっておりまして,その中には,転々変化する受益者がいるから信託管理人を置くことができるんだという説明が立法・制定当時にはされております。

 

 

 

そう考えますと,今回の受益者代理というのは受益者が不特定の場合について,信託行為の定めで受益者を代理を置くということでして,現行法第8条第1項ただし書きの場合とほぼ同じことを考えていると言えますので,現行法の考えを維持しているという意味では,確かにおっしゃるとおり,弁護士代理の原則との問題があるかなということは認識してはおるのですけれども,どうにかなるのではないかなと考えてはいるんですけれども。

 

 

 

 

 

 

  •  受益者代理にこれだけの権限を与えるのは,事務局の方もこんなに権限を与えてしまっていいのかと当初思っていたというお話がありましたけれども,私は今でも,こんなに権限を与えてしまうのか,なかなか受け入れ難いなと思っているところがあるんですが,いずれにせよ,権限を与える以上,義務も何かつくる必要があるのかなと考えたんですが,多数の受益者の場合の信託ばかりでなくて,どういう信託でも結局つくれることになりますから,何か義務の規定を考えられた方がいいのではないかと思いました。

 

 

  •  その点につきましては,(注4)で「信託管理人等の義務及び責任は,民法の受任者の義務及び責任と同様とするものとする。」という規定を置く予定ではございますが,これ以上に重い義務を課した方がいいという御意見でしょうか。

 

 

  •  そうです。
  •  確かに権限が広いので,十分な義務も伴っていないといけないと思いますけれども,ここに書いてある以上にどんなことができるか,ちょっと検討してみたいとは思います。

 

 

いかがでございましょう。ほか,よろしいですか。

この信託管理人,それから監督人,受益者代理,結構重要な制度でして……

 

 

 

 

  •  先ほどの義務を重くするという点につきましては,この部会の中でも御検討されたかと思うんですけれども,そのときの御検討の結果といいますのは,ここで仮に受任者の義務を重くすることになりますと,委任のところにおける受任者の義務との平仄が合わなくなるのではないか,そう考えますと,ここでは受任者の義務と同様にするということにした上で,解釈に委ねておくのが適当ではないかということではなかったかと思うんですけれども,その点はいかがでしょうか。

 

 

 

  •  そのときの受益者代理権限と今回の受益者代理の権限が随分違っているので。

 

 

  •  そのときも,「信託管理人」という名前であったかもしれませんが,できる権限について,このように広く認めるというところは同じであったと認識しておるんですけれども。

 

 

  •  現行法との比較で言うと,今まで信託管理人という一つの制度で,実はいろいろなものをたくさんその中に盛り込んでおりまして,それを機能分化して整理すると,こういうふうに分かれて,これである程度適切な対応ができるのではないか。

 

 

 

いろいろ不十分であったり,細かいところでいろいろな問題はまだあると思いますけれども,基本的に,この信託管理人,監督人,受益者代理というふうに分けて考えると,今までの需要にも応ずることができるし,適切な対応ができるのではないかということだと思います。

 

 

 

ただ,細かいところで今のように,受益者代理にもうちょっといろいろな義務があった方がいいとか,いろいろな問題があるわけでございますが,規定ぶりはもうちょっと検討いたしますけれども,もし基本的な御承認がいただければ……。

 

 

 

先ほどの御意見は踏まえながらまた検討したいと思いますけれども,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  受任者の義務だけで足りるかということで,公平義務のようなものはあり得るんでしょうか。社債管理者はそういう義務をたしか課されているんですが,あれは善管注意義務からも,当然には出てこないという前提で入っていたと思うんですが,多数の受益者を相手の管理人,例えば受益者代理などであれば想定し得るとすれば,多少考える必要があるような気は--重く,軽くではなくてですね。

 

 

 

  •  それは規定の形になっているんですか。
  •  商法ですか。なっています。

 

 

  •  ある程度,類推適用がそんな簡単にできるかどうかわかりませんけれども,今の公平義務みたいなものが,例えば解釈なりで加わる可能性があるのではないかという感じは,ちょっとしているんですけれども。規定がないとどうかという気がいたしますけれども。

 

 

いかがでしょうか。大筋では御承認いただけるということで,よろしいでしょうか。

 

ほかの点は,いかがでしょうか。

  •  第51の受益債権と信託債権の優先劣後関係について,確認と意見を述べたいと思います。

 

 

そもそもこの問題については審議の後半に入れておりまして,十分な審議がなされているかというと,もうちょっと議論が必要なのかなと思っております。

 

 

問題の立て方であるとか受益債権の考え方について,パブリック・コメントにも出ましたように若干の混乱が,また認識の違いがあるように思われまして,実際に資料30ページの(注1)にありますように,こういうような問題の立て方についての認識の分かれがあると思っております。

 

 

 

本点については,そこら辺の問題の立て方について,まずは共通認識を持っておかなければならないと思っています。

 

 

そこで,一つの確認なんですけれども,私はこの問題について,以下の3つのレベルに分けて考える必要があると思っておりまして,一つの整理の仕方なんですけれども,1つは,いわゆる受益債権について,例えば信託計算が終わって期限が到来して,具体化された債権についてどうであるのかという話です。

 

 

 

2つ目は,期中の債権でありまして,典型的な問題状況としては,いわゆる社債型の1年に100万円払うというような受益債権である。これを債権と言うのかどうかはまた別の議論になりますけれども,そういう期中においてどうなのかという話です。

 

 

3つ目につきましては,信託が終了したときに残余財産の分配において受益債権がどうなのかという話です。

 

私は,この3つに分けますと,ここで論じるべきものは2番目なのかなと思っております。すなわち,1番目について具体化された債権については,恐らくこれは受益債権であれ信託債権であれ,通常の一般債権であるわけですから,これは同順位であるということについて,余り異論がないような気がしております。

 

 

 

ですから,ここで余り論じる必要はないのかなと思っております。それから,3番目の残余財産の分配権については,これは受益債権の方が劣後するということも認識は同じであるのかなと思っております。そこで,2番目がここで議論するべきものなのかなと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

まずはこのような問題の立て方でよいのかどうかということを,提案なのかもしれませんけれども,ちょっと御確認したいと思います。

 

 

そこで,私ども銀行界としてもいろいろ議論した中で,そういう問題の立て方とか状況がよくわからないなという中で,意見としては甲案,特に信託債権者の立場から,甲案の方がいいのかなと現時点で思っているわけでございますけれども,それについての理由を述べたいと思います。

 

 

 

1つは,前提としては,やはりエクイティといいましょうか,実務的な認識としては,一部例外的な実務運用はあるかもしれませんけれども,全般としては,やはり信託債権と受益債権と比べれば信託債権の方が優先すると思っているわけでございます。

 

 

 

そのように実務運用がされているということでございます。

 

2番目に,経済実態的に考えますと,仮にそれが,信託という財産があって,それに対してのファイナンスということを考えれば,今まで信託債権が優先するというふうに考えていましたので,引当財産というのは信託財産であると思って与信の判断をしていたということでございます。

 

 

 

ところが,これが仮に受益債権も同列である,かつ,それがいわゆる社債型の定期給付型も同順位であるということになりますと,その債権の額が一体幾らなのかということは,もちろん信託契約とか見なければなりませんし,また,それの変更もあり得ることを考えれば,当然のことながら,自己の信託債権の同順位者というのがもちろん増える,プロラタになるわけですけれども,増える。

 

 

 

また,その受益債権の金額も十分に計算できないということもあり得るわけです。

 

 

そうしますと,その信託財産に係る与信全体を見ますと,いえば信託債権者からすると,隣にいる受益債権の金額がわからないだけ,ある意味,保守的に与信判断をすることになると思いますので,全体の枠としては与信額が下がるのではないかと思っています。

 

 

いわゆる萎縮効果になってしまうのかもしれませんけれども。

 

そうすると,いわゆるファイナンスの観点から,また経済的な観点からすると,やはり債権者をまず保護して,そして受益債権を劣後させる方が,デフォルト・ローであることを前提にしますけれども,その方が経済的には妥当だと思っています。

 

 

 

2番目に,実務的な観点からして,受益債権というのもいろいろ,設計によっては劣後債権,優先債権とかあるわけでして,これが信託債権と並びますと,この3つの中で一体どれが優先するのか,よくわからなくなってしまうのではないかと思っています。

 

 

信託債権があって受益債権があって,これが同順位であるとなるのが乙案なんですけれども,その中で,受益債権の中で優先劣後というのが出てくると,では,その2つの受益権の中では優先劣後があるわけですけれども,信託債権との関係が,そこだけではわからないわけですから,これは実務的にもなかなかうまくいかないのではないかと思っています。

 

 

 

 

 

 

これは一部パブリック・コメントにもありますけれども,あとは理論的な話で,これは一つの商品設計的な議論だと思うんですが,やはり受益債権というのは受益権としてのコントロール権を持っているわけですから,株券とも同じだと思うんですけれども,そういうものがあるからこそ,一般債権よりは劣後することが妥当ではないかと思っております。

 

 

 

他方,乙案に関してのニーズがあることは認識しておりますけれども,これはやはり信託全体からすると,私どもの認識では,それほどないのではないかと思っておりまして,そうすると,全体的にはどちらをとるかということであれば,甲案の方がよろしいのではないかと思っております。

 

 

 

無論,甲案としたとしても,これはデフォルト・ローであって,先ほど○○幹事から,同順位としたいのであれば同順位の特約を設ければいいという御説明がありましたけれども,そういうふうな対応でやればいいと思いますし,現状もそうしているのではないかと私は思っております。

 

 

ただ1点,御提案とすれば,この提案では乙案のときの劣後特約が有効であるということを裏の意味から認めることを明記する,明確化しておりますけれども,甲案であったとしても,今度は逆に,同順位特約が信託法上,有効であるということの明確化を図っていただければありがたいなと思っております。

 

 

 

  •  今の○○委員のお話,また,この甲案,乙案の今回の検討課題の中の説明でも,立法提案ですから,ある意味では政策的な視点からの議論が中心になっていると思うんですけれども,この論点に関しましては,まさしく検討課題の中でも書かれているように,実体法の問題ということなので,やはりまずそこから考えていく,そしてその後に,甲案,乙案どちらがいいかというわけではなくて,仮に実体法上,劣後することにいろいろな問題があるとしたら,その問題点について逐一条文といいますか,立法的に対応しておく,こういうことをしないと,一般的に優劣を決めてしまった場合,今,デフォルト・ルールというお話がありましたけれども,相対でのデフォルト・ルール--相対で契約するのは別にデフォルト・ルールというわけではありませんから,一般的にだれかとだれかが約束したからといって優先劣後が全部引っくり返ることはないと思うので,デフォルト・ルールではないと思うんですよね。実定法上,もう順位が決まるということだと思うんです。

 

 

 

 

 

 

そうすると,余り例はないかもしれませんけれども,実体法の議論ですから議論しても構わないと思うんですが,例えば信託受益権に担保をつけたい。

 

 

 

それは受託者にとっても将来何らかの形で,その信託財産が毀損されたら嫌だとかですね。そのときに,受益債権に担保をつけるといったときに,その担保は有効や否や。

 

 

民法的には有効なはずですけれども,ところが,担保付債権が無担保の一般債権より劣後するというシチュエーションが生じるわけですね。それが一つの例。

 

 

もう一つ二つ,似たような例としては,一般債権が強制執行したときに,配

当加入していたときにどういう扱いになるかということもありますし,逆に,担保をつけなくても受益権者が,受託者が配当してくれないので強制執行していった,そのときに,他の一般債権者が入ってきたときに,強制執行した人が実は劣後的に扱われる。

 

 

それは扱えばいいではないかという一つの議論があるかもしれませんが,そういう実体法上の問題がある。

 

 

もっと由々しき状況としては,信託の破産とか受託破産とか,そういう状況に関連するのかもしれませんけれども,一般的に劣後するということは,最終的に信託債権が弁済できないときに,受託者から受益者に対する受益権,受益債権の支払いというものが,ある意味,法的には,本来払うべきものでなかったのに払ってしまったということで,受益者は不当利得を得た,株に関して言えば違法配当を得たようなシチュエーションが生じてしまうのではないかと思うんですね。

 

 

払った時点においては,それは認識しなかったかもしれませんけれども,最終的にはそういう状況が生じる。また,そういう状況が生じるがゆえに,受託者としてはやたらに払うわけにはいかないというような,やや萎縮的な効果も出るかもしれません。

 

 

……等々いろいろ考えていきますと,やはり手続法レベルの議論は別としまして,一般的に債権に優劣をつけるということは,実体法上,いろいろな問題が生じてしまう。だから,そこから先の,とはいいながらも甲案がいいんだという議論は政策的な議論ですから,それはそれで傾聴に値しますけれども,そうすると「受益権とはこういうものである」とか,いろいろと例外的な扱いということを議論し,規定していく必要が出てくると思うんですね。

 

 

 

ここから先は判断の分かれるところですが,そういうような非常に難しい問題を果たして議論していくというか,個々に解決していくべきかどうかというと,従前でも,この議論というものは特にクローズアップされずに,またはそれぞれ思うところもあってやってきたのかもしれませんけれども,今の段階で優劣をつけることによる立法というものが,逆にどれだけ意味が出てくるのかなという意見を持ちます。意見です。

 

 

その辺は価値判断の問題だと思うんですけれども,実体法の問題としては,多少頭の体操的なところがあるかもしれませんけれども,やはり債権に優劣をつけるということは,いろいろなところでひずみが生じるのではないかと思いました。

 

 

  •  なかなか難しい問題をたくさん提起されましたね。

 

時間の関係もありますので,議論が途中になるかもしれませんけれども,あとお一人ぐらい。

 

 

 

 

  •  最後,どうせ詰め切れないと思いますので,一言だけ申し上げますが,○○委員の3つの分け方,見事だと思うんですけれども,計算して確定している受益債権,既に発生している。

 

 

 

これは当然に平等ですよねというのは,必ずしも当然でないような気がします。

つまり,株式の配当ですと,配当制限等がいろいろあって,むやみに配当してはいけないというのがあるわけですので,それが決定したという場合と,例えば信託行為で月々何十万円と決めて受益とさせることになって,それが弁済期が到来したということになりましても,それは本来は債権者に弁済した残りの額を払うべきなのであって,30万円の弁済期が到来したからといって当然に平等になるわけではないような気がいたしますので,結論としては平等にするということでいいのかもしれませんけれども,「異論がない」とおっしゃられたので,異論もあり得るのかなということを,もし検討する際には考慮に入れていただければと思います。

 

 

 

  •  そこも含めて,恐らく議論があるところだと思います。

 

  •  私も3つに分けられたところで,ちょっと。

 

3番目の残余財産なんですが,ここは恐らくパブリック・コメントでは,すみませんが,私どもの補足説明の書き方が悪くて勘違いされた方がいらしたと思いますけれども,恐らく部会の中では皆さん同じようなお考えで,②は定期的な話で,まさに今の①のところ,その具体化した,あるいは確定したから何か性質が変わるんだというところが私もよくわからないところがございまして,これは確認なんですけれども,受益債権ですと物的有限責任になりますということなんですけれども,その性質自体も失われる,そんなことはないわけでございますよね。

 

 

  •  それは同じでしょうね。
  •  「独立性がある債権になります」と言ったからといって,物的有限責任制は失われない。

 

 

だけれども,順位としては平等になるというのは,どういう理屈でそういうことになるのかなと。つまり,受益債権と言えば物的有限責任だというような,コアといいますか,そういう重要な性質があって,そこは変わらないんだけれども,順位の問題としては,弁済期が来たからというような異存があり得るのかどうか,その辺が私にはいま一つわからなかったんですが,今日はもう時間がないので,また次回以降かと思いますけれども。

 

 

 

 

  •  これは予想どおりというか,政策である程度決めるべき場所かもしれませんけれども,理論的には非常に難しい問題を抱えておりまして,すみませんが今日はたくさん残してしまいまして,また次回,もうちょっと効率的にやりたいと思いますけれども,今の問題も含めて,これはもう一度ここで御議論していただくことにいたします。

 

 

  •  ほかの論点でも議論があるんですが,それは次回以降,持ち越しということでよろしいですか。

 

 

  •  すみません,次回にさせてください。それでは,これで終わります。

-了-

 

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。イラン映画、駆ける少年観ました。」

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