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2016年加工編  法制審議会信託法部会  第19回会議 議事録
2016年02月13日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第19回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成17年7月29日(金)  自 午後1時30分

至 午後3時57分

 

第2 場 所  法務省第1会議室

 

第3 議 題

 

第4 議 事 (次のとおり)

 

 

 

議        事

 

  •  それでは法制審議会信託法部会第19回の会議を開きたいと思います。

暑い中お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。

 

きょうは、前回あるいは前々回から予告しておりますように、筑波大学の新井教授に信託についてのお考えをお話しいただきまして、その後質疑応答をしたいというふうに考えております。

資料等につきましては、○○幹事の方から配布資料について説明していただけますか。

 

  •  配布資料でございますが、かなりの部数がありますので一つずつは紹介いたしませんが、事前に資料を配付させていただいております。

 

それから、本日、○○参考人の方から追加資料といたしまして、この新聞のコピーでございますが、これを配付させていただいているところでございます。

本日の配布資料といたしましては、以上でございます。

 

 

  •  それでは、これから○○参考人にお話をいただきたいと思いますけれども、時間的な配分はどんなふうに。

 

 

  •  ○○参考人の方からの御講演を1時間半ほどいただきまして、3時をめどといたしまして、そこで若干休憩を挟みまして、あと質疑応答で、一応4時には終了するという見込みでおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

  •  それでは、○○参考人お願いいたします。

 

 

  •  ○○と申します。よろしくお願いします。

○○幹事の方から最初にここで話をするようにというお話があったときに、私としては大変躊躇いたしました。

 

 

といいますのは、私がここで話をしようとしていることは、当然、こちらにいらっしゃる委員の方は御存じのような話ばかりで、余り役に立ちそうもないというふうに考えたからです。

 

 

しかし、その後、参事官とお話する過程の中で、とはいうものの、一応今日こういう形で話をする機会があれば、それはそれで意味のあることかなというふうに思い直しまして、お引き受けすることにいたしました。

 

 

1時間半という長い時間で、内容的には乏しいものになるかもしれませんが、その点あらかじめお断りさせていただきたいと思います。

 

 

私の話のテーマとしましては、レジュメに掲げましたように、「高齢社会における民事(個人)信託制度の必要性」ということで話をさせていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

最初に、ニーズ・活用例というところ、このあたりは簡単にしてほしいという意見と、いや、実はよくここが知りたいんだという意見がありまして、その中間あたりのところでお話をさせていただきたいと思います。

 

 

東京都杉並区の老女失踪事件というのがありました。これは、杉並区在住の高齢の女性がおりまして、資産家なんです。価値のある不動産と多額の預貯金をお持ちでした。

 

 

家族構成としては、高齢の女性の方と40代のお子様が1人なんですが、重度の知的障害者。その女性の方は、希望としては3つ希望をお持ちでした。まず第1の希望は、不動産を死ぬまで売りたくない。

 

 

悪徳業者などもいますけれども、そういう処分の強制から免れて、死ぬまできちっと持っていたい。2番目の希望としましては、自分が亡くなったら、その不動産を娘に承継させたい。

 

 

3番目は、今度娘が亡くなったら、杉並区のお世話になった福祉施設の方に承継させたい、そういう3つの希望をお持ちでした。

 

 

この方の場合はどういうことになったかというと、悪徳業者に財産をだまし取られ殺されてしまったというのが杉並区老女失踪事件でした。

 

 

このときに、私、杉並区の方から相談を受けまして考えたのが信託の活用ということでした。

 

先ほどの3つの希望ですけれども、まず第一の希望である不動産を死ぬまで売りたくない、これは何かいい方法があるかということですけれども、信託を使って名義を変えておく。

 

 

すみれ

「だれに変えておくんだろ。」

 

 

信託目的として、死ぬまで売らないんだというふうにしておくという、信託で名義を変えておくこと自体が財産のプロテクトになるというふうに思うわけです。

 

 

 

 

 

 

 

2番目の希望ですけれども、知的障害のある娘に財産を承継させたい、そのこと自体は割合に簡単にできるわけですが、承継させたとしても、その娘が財産管理能力はありませんので、今度はその財産が収奪の対象になるということで、第三者にきちっと管理させた上で、利益だけがその娘に行くというスキームはないかということで考えてみると、これも信託が極めて適しているわけです。

そして、3番目の娘が死んだ後、今度福祉施設の方に財産を承継させたいと

いうのも、いわゆる後継ぎ遺贈ということで、信託を用いればできるというふうに思うわけです。

 

 

 

 

 

それで、私は当時、いろいろなところに働きかけたわけですが、当時バブルのころでして、信託銀行はこの分野は全く関心がないということで、けんもほろろであったということで、私としましては、個人信託制度の必要性を痛感した事件ではあったのです。

 

 

そして、ニーズも高いと思っているのですが、まだ実現には至っていないというわけです。

 

 

資料の最初のものですけれども、衆参両議院の方で附帯決議が信託業法の改正に際してついておりまして、それによると、福祉型信託の活用を検討すべきである。

 

 

私は、この福祉型信託の原点というのが、まさにこの東京都杉並区老女失踪事件にあるというふうに考えております。もう少しこういう高齢者、障害者のための財産管理の手法として、信託というものがあっていいのではないか。ニーズはあるけれども、まだ実現していないというふうに考えております。

 

 

2番目が、横浜市社会福祉協議会横浜生活あんしんセンター報告書についてお話ししたいと思います。

 

この横浜生活あんしんセンターといいますのは、高齢者、障害者の財産管理とか保全を行う社会福祉協議会の中にある独立したセンターです。

 

 

そして、成年後見法施行後は、法人後見人として法定後見とか任意後見の業務を行っています。ここで実際に信託のニーズがないかということで検討しましてまとめたのがこの報告書です。これから紹介する3つのケースはすべて実際のケースに基づいています。

 

 

最初のケースが、金銭を受託する場合ということで、この報告書の25ページをごらんください。

 

金銭を受託する場合ということで、信託銀行は信託された金銭を原資として通常の生活費・療養費等を定期金として支払い、さらに諸事情の変化により臨時の出費の必要が生じた場合には、センターとの相談・協議等に基づき臨時の費用を支払います。

 

 

利用者は脳梗塞のために外出が困難であり、また、妻も痴呆状態のために自分自身では金銭管理が困難な状況です。

 

夫婦は現在バリアフリー化した戸建住宅に居住しています。

 

子供は長女のみで他の都市に居住しています。

 

自宅をお持ちで、年金は夫婦合わせて910万円、預貯金総額4,000万円。

 

利用者の意向としては、今後も夫婦そろって自宅で暮らすことを強く希望しています。

 

 

 

利用者はこれまでに蓄えた資産を有効に活用し、自分や妻の生活費や療養費に充てて安定した暮らしを維持したいと思っています。

 

利用者は、自分や妻の病状が変化した場合等の臨時の出費にも対応できるようにするとともに、自分の死後も妻に安定した在宅生活が送れるように手配しておきたいと考えています。

 

 

スキームとしましては、利用者はセンターと任意代理契約と任意後見契約を締結します。これにより、センターは任意代理人となるとともに、任意後見受任者になります。

 

なお、妻の意思能力の状況により、センターには妻の法定後見人にもなってもらいます。

 

利用者は信託銀行と信託契約を締結し、金銭を信託銀行に信託します。第1受益者を本人、夫の死亡を停止条件として第2受益者を妻とします。

 

 

受託者は夫の生存中は夫に対して、また、夫の死亡後は妻に対して信託収益を支払います。定期金は夫婦の通常の生活支援や療養費等に利用されます。

 

 

事項のうち重要な事項が発生し、定期金では賄えない出費の必要が生じた場合には、受託者はセンターとの相談・協議等のもと臨時の費用を定期金とは別に支払います。

 

 

信託スキームのメリットとしては、任意後見人と信託銀行による高度な安全性を持った資産管理と、円滑な資産の承継の2点が挙げられるというふうに思います。

 

これが第1の事例です。

 

 

 

 

 

 

第2の事例としては、28ページをごらんください。自宅不動産を受託する場合です。

 

親の死後の障害のある子供の生活をいかに確保していくか、いわゆる「親なき後」の問題に関する一つの対策として、自宅を信託することが考えられます。

 

利用者の状況ですけれども、75歳の利用者と70歳の妻は、長男とともに戸建住宅に住んでいます。

 

長男は精神障害者で、地域作業所を利用しています。

 

夫婦には他に次男がいますが、次男は既に独立しています。

 

利用者は入退院を繰り返し体調に自信がなく、世帯全体の今後について不安を抱いています。

 

資産の状況は、自宅をお持ちで、年金は3人合わせて300万円、預貯金・株券等3,000万円をお持ちです。

 

利用者の意向としては、自分や妻の死後、長男に確実に資産を承継したいと思っています。

 

利用者は、長男に承継した自宅で安定した生活を送ってほしいと考えています。

 

スキームの構成ですが、信託契約の締結に際してセンターは任意代理契約あるいは任意後見契約を締結します。

 

委託者は受託者に自宅を信託します。同時に、将来の修理・改築に備えて、一定の金銭を信託します。

 

信託目的の一つとして、委託者の生存中は自宅を委託者に使用貸借させること、並びに委託者の死後は障害者である子に使用貸借させることを明記します。

 

任意後見開始後、センターは、本人の生活維持の一環として自宅の状況、同居人の有無等を随時調査し、必要に応じて受託者に報告します。また、センターは自宅に修繕等の必要が生じた場合には受託者に連絡・相談します。

 

 

受託者はセンターとの相談・協議等の上、修繕費等を支払います。

 

在宅生活ができなくなり、自宅の確保が不要と判断されるようになれば、受託者は信託事務の一つとして自宅を処分します。

 

スキームのメリットとしては、信託することにより自宅の所有権は受託者に移転するため、親なき後においても詐欺等により自宅が処分されることや賃借権の発生により不動産価値の下落を防止する点が挙げられます。また、自宅の現金化が必要になった段階での処分も容易になります。

 

これが2番目の例です。

 

 

 

すみれ

「受託者は信託銀行なのかな。」

 

 

 

 

 

 

3番目の例としては、37ページをごらんください。グループホームの信託です。

センターの利用者の中には、「自宅をグループホームにし、子には自分の死後もそのグループホームで生活させたい」という方がいます。グループホーム化した自宅に子を住まわせることについては、横浜市が設置を進めているグループホーム制度の中での活用が考えられます。

 

 

それにより、障害者本人の自立を支援し、地域での自主的な援助活動を尊重するという事業趣旨を生かすことができるように思います。

 

スキームとしては、不動産管理処分信託を活用することが可能です。

 

利用者は知的障害者である子と、自分名義の自宅で生活しています。

 

子供にはほかに姉が1人いますが、姉は既に結婚しており、利用者の死後に子の面倒を見ることは困難な状況です。

 

資産の状況等は、自宅をお持ちで、年金2人合わせて200万円、預貯金2,000万円という状況です。

 

利用者の意向としては、自分の死後自宅をグループホーム化し、障害のある子をそこで生活させたいと考えています。

 

子が自宅をグループホーム化するための一連の手続を実施することは困難であるため、利用者はできれば自分の生存中にその手続を終えておきたいと考えています。

 

 

利用者は、自宅のグループホーム化が規格等の関係で困難であれば、子を既存のグループホームで生活させる一方、自宅を活用して子の生活費を確保したいと考えています。

 

 

スキームのメリットとしては、最初に、信託することによりグループホームの所有権は受託者に移転するため、詐欺等により利用者の死後にグループホームが処分されることを防止できること、次に、グループホーム制度を通じて自宅資産を有効活用し、子の生活費を捻出できることが挙げられています。

 

 

これら3つは、現実に横浜市にあったケースに基づいて構想されたスキームであるわけですが、これについても現在に至るまでニーズはあるわけですが、実現しておりません。

 

 

これについては、報告書の45ページをごらんいただきたいのですけれども、生活あんしんセンター所長の山田弁護士がまとめの最後のところに、民間の金融機関とも密接な連携を図りながら、より広い支援ネットワークをつくっていかなければならないと考えているということをおっしゃっているわけですが、現在に至るまで信託とのネットワークというのは実現していないという状況であります。

 

 

 

 

 

 

 

その次に、信託銀行の関係のことを見てみたいと思います。

 

御存じのように、信託銀行は遺言信託ということでもうビジネスを始めておりますが、遺言信託というのは、実は遺言執行のことが多いというふうに言われております。そういう中で注目されるのが、パーソナルトラストと安心サポート信託というものであります。

 

 

まず、パーソナルトラストというものですけれども、これについては、この資料の「パーソナルトラスト」のしくみのところでしょうか、相続対策の事例、パーソナルトラストを活用した事例というものが出ております。

 

 

これをごらんいただくとわかるのですけれども、障害のあるお孫さんのた

めに信託を活用して、きちっとした財産承継を図りたいというニーズが書かれております。

 

 

このパーソナルトラストは、合同運用して金銭信託という商品に特約をつけているものですけれども、特徴としましては、同意権者というものを置いているという点、それともう一つは、成年後見制度との連携を考えているという、この2つが大きな特徴かと思われます。

 

 

そして、成年後見制度については、リーガルサポートとの連携なども図るようなシステムになっているということに注目したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

その次に、安心サポート信託について見てみたいと思います。

これについては、ケースの紹介として、1から5までありますけれども、例えば、ケース2のところで、配偶者が要介護状態になっている。片時も目を離せない。

 

 

自分に万一のことがあったら、その後の財産管理はどうすればいいのだろうかというようなニーズ。あるいはケース3のところで、子供が障害のため財産管理が難しい。

 

 

今はまだ親が2人がかりで世話をできるが、親が亡くなった後も財産が守られるようにしてほしい。いわゆる親なき後の問題、こういうものが具体的なケース・ニーズとして紹介されています。

 

 

この安心サポート信託も、合同運用して金銭信託という商品に特約をつけることになっておりますが、今度こちらの方は、同意権者ではなくて指図権者という制度を使っているという点に注目したいと思います。

 

 

同意権者、指図権者という違いはあるのですが、基本的には同一のスキームというふうに考えてよろしいかと思います。ただ、不動産は含まないという点にも注目しておきたいというふうに思います。

 

 

いずれにしても、信託銀行の一部にはこういうようなビジネスの展開も始まったということであります。

 

 

 

 

 

その次に弁護士会ですけれども、ここではまず、関西方面のある弁護士法人が信託業法の改正というのを契機にしまして株式会社を設立して、そして信託業法上の免許の取得というのを予定しているそうです。そして、そこでは今私が申し上げてきましたような個人信託を行いたいというような動きがあります。

 

 

したがって、弁護士さんが受託者として、業として個人信託業務を行うという動きが実現する可能性もあるというふうに聞いております。

 

 

それから、東京弁護士のオアシスというのは高齢者・障害者の委員会ですけれども、こちらでも、もし可能性があれば、今まで申し上げてきましたような親なき後対策に関する信託を行ってみたいというような意向もあるようです。

 

 

 

個々の弁護士さんも、私が理解しているところではもう幾つか信託契約を締結して、個人信託を既に受託しているというケースもあるようです。ただし、

 

これについては弁護士が信託業務を行うということについて、信託業法上どう位置づけるかという問題はまだ未解決の問題として残されているように思われます。

 

 

 

 

 

 

司法書士業界ですけれども、これは不動産の個人信託のニーズが非常に大きいというふうに聞いております。司法書士業界全体もこの分野に大きな関心を寄せています。

 

 

それで、リーガルサポートという公益社団法人がありまして、これは全国の司法書士3,000名でつくっている社団法人ですけれども、このリーガルサポート自体ができれば不動産の個人信託業務を行いたいということで積極的に考えていたわけですが、御存じのように、信託業法上は株式会社に受託者が限定されているということで、社団法人が免許を取得するという可能性は現在のところはありませんので、参入できないという状況になっております。しかし、その辺の障害がなくなれば、ぜひリーガルサポートも不動産の個人信託を行いたいというふうに聞いております。

 

 

 

すみれ

「参入といえば受託者をすることだったんだ。」

 

 

不動産業界ですけれども、これも建物に福祉的な付加価値をつける。福祉的な付加価値というのは、建物の構造を福祉的にするということだけではなくて、例えば介護サービスであるとか医療サービスを入居のときに付加するというようなスキームを考えるときに信託を使いたいというような検討も一部では始まっているように私は理解しております。

 

今申し上げてきましたように、私の目から見ると少なくとも個人信託のニーズというのは大変大きくて、活用例もいろいろなところにあるというふうに思われます。

 

ですから、今般の信託法の改正に際しては、ぜひその辺をもっと普及させるような形の措置をとっていただければ私は大変ありがたいというふうに考えております。

 

 

 

 

 

ニーズ・活用例を生み出す社会的背景ですけれども、これは高齢社会の進展ということに尽きます。

 

高齢化率というようなことが言われます。これは、65歳以上の高齢者が人口に占める割合ですけれども、7%を超えたのが1970年、わずか24年後の1994年には14%、2014年には25.3%、高齢者人口は3,199万人になるというふうに言われておりまして、こういうような状況は世界の高齢化の中でも類を見ないものだというふうに言われております。

 

 

それに伴って痴呆性とか虚弱高齢者の数はどんどんふえています。2002年には150万人、2015年には250万人、そして2025年には323万人が痴呆性あるいは虚弱高齢者等になるだろうというふうに言われております。

 

 

すみれ

「虚弱高齢者?」

 

 

そのほかに、知的障害者が現在でも約60万人、精神障害者は200万人いるというふうに言われています。こういう日本の21世紀の状況を考えると、先ほど申し上げました衆参両議院の附帯決議にあるように、福祉型信託の重要性というのは何人も否定できないのではないかというふうに考える次第です。

 

そして、財産管理ニーズの変化ということにも注目したいというふうに思います。

 

 

 

 

 

 

経済の高度成長、所得の平準化、資産価格の高騰というようなことに伴って、日本の財産管理のバックグラウンドが変わってきたというふうに考えます。

 

 

最初に、フローの面では高齢者の社会保障等が国際的に見ても高い数字に達していまして、大半は一応の暮らしに心配がなくなったことを挙げることができます。

 

2番目に、高齢者の持つ資産の価格が高騰し、いつの間にか高齢者の中には相当の資産家が誕生したこと。

 

そして3番目に、高齢者の身辺から資産・生計を管理する家族等が減少したことを挙げることができます。つまり、新しい財産管理のニーズが生じているわけです。

 

従来のように、地縁・血縁に頼らない、第三者による財産管理のニーズというのが今求められていると思います。そして、その一つが信託制度ではないかというふうに考えるわけです。

 

 

 

海外に転じてみます。

まず、イギリスにつきましては、デイヴィッド・ブラウンビルという方の資料を用意させていただきました。

 

この資料の中では、例えば118ページをごらんいただきますと、無能力、インキャパシティーというのを広くとらえています。

 

物理的理由に起因する無能力というのが118ページに書かれておりますが、従来の日本では、意思無能力というときにこういう見方はないのですが、こういうものも広くとらえて無能力というふうに定義し、さらに119ページですけれども、障害を持った子の将来の扶養・介護というものも無能力の中に含めて理解しております。

 

 

そして119ページには、私的家族信託の導入の意義を3点にまとめています。

 

 

 

すみれ

「無能力って言われると、ほんとに無能力になりそう。扶養、介護が無能力になるのかな。子が無能力っていうことなのかな。」

 

 

119ページの右の方ですけれども、最初に、代々の家族のために財産を適法に設定された信託財産として信託化しておけば、信託化された財産は信託設定者本人の固有の財産から切り離され、本人に関して制定法上の無能力者制度が適用されることになったとしても、その影響を受けることがない。

 

 

2番目に、財産をこのような形で信託財産化しておけば、本人不在の場合や本人が法的無能力者となった場合も、信託財産については、これにかかわらず、引き続き安定した管理運用が確保されることになる。

 

 

そして3番目に、家族信託を利用すれば、信託設定者の意向やその置かれている事情を十分反映した条件を定めた信託を設定することが可能であり、法律上の後見人制度や財産保全管理人制度やEPA、EPAというのは持続的代理権授与制度のことですが、日本では任意後見に相当します。このEPAを利用した場合と比較して、より大きな状況対応力や柔軟性が確保できるということでまとめられております。

 

 

 

 

つまり、イギリスでは高齢者・障害者の無能力に備えるための信託というものもあって、実務家が既にこういうのをまとめているということに注目したいと思います。

 

 

 

 

アメリカについてですけれども、これはエドワード・ホールバック先生の資料を用意させていただきました。

 

 

82ページをごらんいただきますと、信託が利用される理由ということで、4つほどホールバック先生は挙げていらっしゃいます。

 

まず、82ページの方で財産の管理運用ということが挙げられ、85ページで遺言検認手続きの回避、86ページで財産権に制約を付すということ、88ページで節税目的というような信託が利用される目的が掲げられておりますけれども、これらはすべて個人信託の類型に属するということに注目したいと思います。

 

 

 

すみれ

「アメリカでは、節税目的と遺言検認の回避が目的なんだ。」

 

 

そして、ドイツですけれども、これにつきましては北海道大学の藤原正則教授の「ドイツにおける遺産承継」という論文を用意させていただきました。

196ページをごらんいただきますと、先位・後位相続の紹介がなされています。

 

 

この先位・後位相続という制度の利用によって、家産が家族から遺失することを防止できる。例えば、妻を相続人として、妻の死亡後は息子を相続人とすると遺言しておけば、そこでは妻の生前の処分権は制限されているから、妻に生涯の遺産への収益を保障しつつ、夫は家産を息子に伝えることができるというような説明がなされております。

 

 

 

ドイツには、成文制定法としての信託法というのは存在しないわけですが、民法上先位・後位相続というものがあって、これは信託的性質を持つものだというふうに理解されております。

 

 

 

すみれ

「処分が制限されている面が信託的性質を持つのかな。」

 

 

フランスについては、山口俊夫先生の「概説フランス法 上」を用意させていただきました。

これの540ページをごらんいただきますと、継伝処分の紹介があります。

 

継伝処分は原則として禁止されておりますが、例外的に、恵与者の子または兄弟姉妹が継伝義務者とされ、かつ、これらの継伝義務者の現在または将来生まれる子が継伝指定者とされる場合には許される。その倍、継伝指定者は継伝義務者の子で一等親の者に限られ、かつ、男女長幼を問わずすべての子が受益者となるものでなければならないというふうに解説されておりまして、フランスにもやはり成文制定法としての信託法は存在しないわけですが、この継伝処分というのは信託的性質があるというふうに考えられているわけです。

 

 

 

 

 

 

以上の比較法をまとめてみますと、まず、意思能力喪失者の財産管理として信託が用いられています。障害者の財産管理についても同様です。そして、高齢者の老後生活の保障というものも信託という財産管理制度の大きな利用目的になっています。

 

 

つまり、高齢社会の財産管理として信託は既に海外でも利用されているということが言えるわけです。しかし、我が国ではこのような視点が欠落しているように思われるわけです。

 

 

 

 

法技術として一つの例を示してみますと、例えば受益者連続の問題があります。コモンローの国、例えばイギリスとかアメリカでは、この受益者連続というのはサクセスベネフィシャリーということで、信託の技術を用いて実現できるわけです。

 

 

信託を有しない大陸の国では、ドイツでは先位・後位相続、フランスでは継伝処分という形で行われるわけですが、日本には今まで信託でこういうことがなされていないのみならず、民法の中にもこういう制度がないということで、全く明文の規定を欠いているわけです。そういう意味では、受益者連続ということに光を当ててみれば、日本は後進国というふうに言ってもよろしいかと思われるわけです。

 

 

すみれ

「日本は後進国か。法技術が後進国ってことかな。」

 

 

次に、分類及び法的基礎に移りたいと思います。

個人信託はどんなふうに分類したらいいのかということですけれども、まず最初に掲げてある分類は私のテキストにある分類ですけれども、簡単に申し上げておきますと、最初が不動産管理信託ということで、杉並区老女失踪事件で申し上げたように、名義を信託的に移転しておくこと自体が不動産のプロテクトになるということに着目した制度であるわけです。

 

 

もちろんこういうものがまだ普及しているわけではありません。法的な問題としては、これが受動信託に当たらないかというような問題があるわけですけれども、こういう活用があります。

 

 

 

 

その次の信託利用不動産担保年金式融資というのは、いわゆるリバースモーゲージのことです。リバースモーゲージというのは、高齢者が年金式に資金を獲得して、その資金で本来福祉で受けられるサービスよりも少しレベルの高いサービスを実現したいというときに使うものですが、不動産に抵当権を設定すればこういうような資金は獲得できるわけですが、抵当権を設定するということではなくて、信託を設定する、つまり信託を設定して、その受益権に質権を設定して融資を受けるというような利用方法も可能です。

 

 

 

抵当権方式と信託方式を利用すると、もちろん私は信託方式がすぐれていると思うわけです。

 

 

なぜならば、信託というのは財産管理制度ですので、単なる融資ということではなくて、高齢者がお住まいになる不動産の管理も受託者は行えるということで、利用者には安心感がある。あるいは亡くなったときに清算、場合によっては処分するわけですが、そのときに抵当権方式ということになりますと、これは民事執行法の手続に基づいた処分になるわけですが、信託にしておけばマーケットでの売却ができるということで、信託方式というのがすぐれているわけですが、これはほとんど実現しませんでした。

 

 

リバースモーゲージというのは武蔵野市で始まりまして、武蔵野市から今度世田谷区とか東京の幾つかの区で実用化されるのですが、実用化された折に信託方式も使ったらどうかということだったのですが、ほとんど利用がなされなかったというのは、私としては非常に残念だというふうに思っておりますが、そのうちにバブルが崩壊しまして、金融機関が一斉にリバースモーゲージから後退したということで、最近は非常にこれが低調です。

 

 

ただ、一部の信託銀行で最近リバースモーゲージを始めようという動きもあるようですので、そういうようなスキームにまた改めて信託の活用を考えるということも意味があるのではないかというふうに考えております。

 

 

すみれ

「受託者は誰を考えておっしゃっているんだろう。家族以外かな。」

 

 

それから、老人ホームの信託。これは老人ホーム自体を設備信託というのを利用してつくるというようなことも考えられるでしょうし、入居者が老人ホームに入るときに信託を用いて、自分の財産とホームに預ける財産を分別するとか、あるいは入居保証金を信託にしておいて、現実に利用した分だけ信託の中から支払ってもらうというような活用方法もあろうかと思います。

 

 

私の分類はそういうような説明でよろしいかと思います。

 

 

すみれ

「受託者は老人ホームになるのだろうか。」

 

 

2番目の分類として挙げておりますのは、扶養型信託、遺産分割型信託、生前・死亡後連続型信託、事業承継型信託というものです。

 

 

これは、先ほど紹介しました関西のある弁護士法人が信託会社を設立したいという話を申し上げましたが、そこが行いたいと予定している信託スキームということになります。

まず、扶養型信託というものは、委託者が本人、親族その他の関係者の扶養のために財産を信託し、その収益を要扶養者が受け取るというものです。

 

特徴としましては、信託財産家ら発生する収益を委託者の指定する受益者に配分する契約であるため、委託者に痴呆が発生したり、事故による意思能力の喪失が発生したり、浪費癖等があっても、信託契約期間中は受益者の利益が確実に保護されるということが挙げられています。

 

 

 

 

2番目の遺産分割型信託というのは、委託者の相続発生後、指定された受益者が信託期間中、信託財産からの収益を受け取るというものです。

 

 

 

 

この特徴としましては、信託財産から発生する収益を相続発生後、信託期間中は委託者の指定した受益者に配分することができます。遺産分割を遺言、法定相続人による遺産分割、信託が医者の裁量による分割の3つの種類から選択することができ、信託契約終了後は遺産分割に従った財産の帰属が実現します。

 

 

すみれ

「医者の裁量による分割ってどういう感じだろ。」

 

 

 

また、遺産分割を随時するとか、一定期間凍結する信託も選択できます。さらにオプションとして、配偶者の生存中は配偶者を受益権者とし、配偶者死亡後、子供に信託財産を相続させる信託もあります。

 

 

 

 

 

3番目の生前・死亡後連続型信託といいますのは、生前の扶養型信託と死亡後の遺産分割型信託を連続して受託する商品で、今申し上げた1と2を組み合わせるスキームとなります。

 

 

特徴としては、信託財産から発生する収益を委託者の指定する受益者に生前から死亡後信託契約終了まで配分する契約であるため、委託者は安心して自分の意思を信託会社にゆだね、実行を任せることができるというものです。

 

 

すみれ

「信託会社が受託者として想定されていたんだ。」

 

 

そして、最後の事業承継型信託といいますのは、会社の事業承継者がまだ十分に育っていない場合や事業承継者がまだ決まっていない場合に、信託会社が会社のオーナーが所有する株式を受託し、信託会社が株主として議決権行使を行うことにより、会社の運営を監督する。

 

 

信託期間終了後は、オーナーの事業承継者に株式を戻すことにより、事業承継をスムーズに行うというものであります。

 

 

こういうものも、もし弁護士法人が設立を予定している信託会社に免許が与えられたということになれば、動き出すものというふうに考えられます。

 

 

すみれ

「信託会社が株主名簿に記載されるのかな。信託期間があるってことが多いと想定されていたんだ。」

 

 

3番目の分類が、ここに掲げられているような3つの分類ですが、これはある信託実務家が分類したものであります。

 

まず、自己の行為能力減退に備える信託は、これまで自分で財産管理を行ってきたひとり暮らしの高齢者が、行為能力の減退に備えて、自分のために金銭信託を契約し、存命中の生活や療養・看護費用などの交付が確実に受けられるようにしながら、財産の保全を図る、そういう信託です。

 

 

 

 

2番目の「伴侶亡き後問題」に備える信託は、痴呆が進行して行為能力を亡くした妻のために夫が遺言で信託を設定し、自分亡き後も妻が存命中の生活費、療養・介護費用、その他随時に必要となる費用の支払いに不自由しないよう配慮して、妻の一身専属型受益権を構成した上、妻死亡後による信託終了時の残余財産の帰属権者を指定するという信託です。

 

 

 

 

最後の「親亡き問題」に備える信託といいますのは、長年にわたり障害の世話をしてきた年老いた母が、自分が先立った後も、これまでどおりこの生活が維持され、かつ財産が散逸することのないように願い、自己存命中の自益型受益権を死亡と同時に子に承継させて、ですから、これは他益型受益権へ転換されることになりますけれども、子存命中に必要な諸経費をすべて信託財産から給付するようにし、子死亡による信託終了時の残余財産を、子が長年世話になった関係者に帰属させるように指定するという信託であります。

 

 

 

 

このように、日本でも幾つかの分類があって、実現に向けた相当の検討がなされているということかと思います。

 

4番目の分類が、実はABAですけれども、アメリカのバンカーズ・アソシエーションの方の「THE TRUST BUSINESS」というものからとった分類であります。

 

 

これの37ページ以下をごらんいただきますと、個人信託サービスというのは安全、心の平和、支配というものを売る商品であるということが書かれておりまして、39ページのところで、個人信託というのはいろいろなライフステージのさまざまなニーズに応じた信託を提供できるということで、ここに掲げましたような未成年者の保護から帳簿管理・資産管理に至るまでのニーズが個人信託によって満たされるというような説明がなされています。

 

 

 

 

分類としては以上のようなことがあろうかと思います。

そして、法的基礎ということですけれども、どうしても個人信託が意思無能力への対応、あるいは相続後の自己の意思の実現が図れるかということですけれども、これは信託の転換機能と言われることに求めることができると思います。

 

 

これは言うまでもなく、信託というのは、委託者が自己の有する財産権を自分の支配権から離脱させることによって信託財産の委託者が持っている属性を消し去るわけですね。

 

 

したがって、委託者がもし能力がなくなれば、当然、成年後見制度が発動されるわけですが、委託者の支配権から財産を離脱させることによって、その成年後見制度の適用がないようにする、あるいは信託をしていることによって相続の問題も回避するというのは、すべて転換機能から来ているということが言えるかと思います。

 

 

 

 

そして、転換機能の一つとして、私は財産の長期的管理機能というのがあるのではないかというふうに考えております。その中には意思凍結機能、これは何かというと、委託者が信託行為のときに設定した意思というのが、委託者、受益者が意思能力を喪失しても、あるいは死亡しても持続する、そういうのを意思凍結機能というふうにとらえてよろしいのではないか。

 

 

 

受益者連続機能というのは、信託期間中であれば、受益者を変更して構わない。

 

受託者裁量機能、利益分配機能というのは、当然信託の機能としてあるだろうというふうに考えております。

 

いずれにしても、法的基礎として信託の転換機能というのはこれからの個人信託を活用する上で非常に重要な視点で、この転換機能こそが信託が個人信託として大いに用いられるべき根拠だというふうに私は考えております。

 

 

 

 

以上のことを申し上げた上で、いよいよ立法上の課題ということに移りたいと思います。

 

第1点目に、意思凍結機能の承認ということを考えていただきたいと思います。

 

意思凍結機能といいますのは、信託の転換機能の一つであるわけです。これは今申し上げたように、委託者または受益者が意思能力を喪失しても信託は持続する。したがって、信託というのは高齢社会における財産管理として有用だということで、私はこういう信託の機能、これは先ほどイギリスの文献でも見たように、もう既に海外の信託の文献の中にも書かれているわけですので、ぜひ、こういう機能を信託の機能として認めていただきたいというふうに考えております。

 

 

ところが、私の見るところ、こういうような視点は本部会においては今まで全く議論がなされていないというふうに理解しておりまして、大変残念に考えております。

 

 

 

 

 

最近、井上聡弁護士がNBLの813、61ページに新しい信託法のイメージというのはビークルとしての色彩にあるというようなことが書かれておりまして、私もこういう見方というのは相当部分妥当するのではないかというふうに思います。

 

 

もちろん信託がビークルとしての性格を持つということは重要なことで、私はそのこと自体はいささかも否定するものではありませんけれども、ただ、信託が個人信託というものの重要性ということを申し上げてきましたので、ぜひ、こういうような信託の持つ意思凍結機能というものについても十分に留意していただきたいというふうに思っているわけです。

 

 

ですから、信託におけるビークルとしての色彩ということを強調することだけでは、信託の意思凍結機能は生じてこないということが言えるかと思います。

 

 

 

 

 

この意思凍結機能については、明文の規定は必要ないというふうに思われるわけですが、ぜひ、信託の機能としてこういうものがあるということを何らかの形で議論していただいて、どこかにそういうものを残していただければというふうに考えております。

 

 

ただ、そうはいっても、理論的な課題もあるわけです。それは何かといいますと、信託の意思凍結機能というものをもって受益者保護は十分と言えるのかという問題です。

 

 

特に2000年4月に任意後見制度がスタートしまして、任意後見制度とのバランスをどう考えるかという問題があろうかと思います。

 

 

 

 

これはどういうことかといいますと、信託の意思凍結機能というものは、信託財産を委託者の支配権から切り離す。そして、受託者は非常に厳しい忠実義務を初めとするいろいろな義務を負って信託財産を管理している。そうすると、受益者保護というものも、信託をすることによって十分に図られるだろうというふうに従来考えられてきたわけですが、任意後見制度の中の議論としましては、任意後見監督人というものが登場してきました。

 

 

これはどういうのかというと、本人と任意後見受任者が、本人が意思能力のあるときに任意後見契約をするのですが、そこで締結した代理権が発効するためには、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の選定というのが前提になっています。

 

 

つまり、公的機関の関与する監督人の選任というものが、意思能力なき後の代理権の存続の前提だということになって、そういう制度がスタートしたこととのバランスを考える必要があるというふうに思うわけです。そこの点は、信託の議論としてもぜひお考えいただきたいというふうに考えております。

 

 

すみれ

「任意後見とのバランスか。信託にも公的機関の関与が必要ということかな。もし自分が監督されていたとして、楽しいかな。」

 

 

ただ、民法学会の議論は、この点は私に言わせると非常に無関心でして、民法学会の通説は、いまだに民法111条に依拠しまして、本人が能力あるときに代理人に代理権を授与すれば、それは当然に持続する。

 

 

なぜならば、民法111条で代理権の消滅事由とされているのは、本人の死亡のみである。したがって、本人の意思能力喪失は代理権の消滅事由になっていないのだという説明がまだなされておりまして、ほとんどの教科書でそう書かれている。

 

 

そのことによって非常に混乱も起こっているということで、きょうお配りした信濃毎日新聞の7月18日の記事というものを用意しておりました。

 

 

 

任意後見というのは、通常、任意後見を発効する前に任意代理契約というのを結んでおくわけですね。任意代理契約というものがもし任意後見を必要とせず、本人が能力なくなった後も効力が生ずるというふうに考えると、任意後見監督人を選任してもらう必要がないわけです。

 

 

一部の業者は、そのことを濫用しておりまして、任意後見契約が非常に有用な制度だということで、言葉巧みにセールストークをもって契約させながら、実は任意後見監督人を選任せず、つまり、公的な監督なしに任意代理の範囲で好き勝手なことをしているというような実態がもう既に生じています。

 

 

 

 

ですから、まず一つは、これは本部会とは直接関係ないのですが、やはり民法学会には通説の持つ社会的な機能というものをきっちり認識した上でリツオンすべきではないかということを申し上げたいのと、本部会に対しては、意思凍結機能を機能させるための前提としての受益者保護というものを任意後見制度とのバランスでどう考えるかということをぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 

 

具体的に申し上げますと、やはり任意後見監督人とのバランス上、受託者を監督する機関というものが必要かと思われます。そして、それは場合によっては裁判所の後見的関与をつけ加えるというようなことにして受益者保護を図るということが妥当であるようにも思われるわけです。

 

 

すみれ

「信託も利用して、任意後見も利用したら監督は一人でいいんじゃないかな。」

 

 

いずれにしても、意思凍結機能が信託にあるということをぜひ御留意いただいて、そういう機能が発揮できるような形での御検討をいただければ、私としては大変ありがたいというふうに考えております。

 

 

2番目に、受益者連続機能を承認していただきたいというふうに考えております。

 

 

まず、受益者連続と信託終了による残余財産の帰属権利者指定というものは区別すべきであると考えます。

 

 

受益者連続というのは、最初に設定された信託、原信託が継続している真に受益者が交代することをいいます。

 

残余財産帰属者指定というのは、原信託が終了して、原信託における清算事務が完了した後の残余財産の帰属権者を指定することであって、本来の受益者連続には当たらないと考えます。

 

 

信託法63条の受益者は、残余財産引渡手続のために擬制された法定信託における受益者であり、原信託の受益者ではないからです。

 

 

この前提の上で私はまず第1に、原信託における受益者連続は、実現可能、適法かつ公序良俗に反しない限り、信託法1条を根拠に有効と解します。

 

 

第2に、信託行為による残余財産帰属者指定は、62条により当然有効であると考えます。

 

このように、現行法でも既に受益者連続機能は承認されているというふうに考えますけれども、現在信託法の立法作業を行っている本部会におかれては、ぜひ、立法的にも正面から受益者連続機能を認めていただきたいというふうに考えます。

 

 

これは先ほど申し上げたように、既にそういうニーズは我が国にもあり、それを検討したいというような研究もなされているということからそういうふうに申し上げたいと思います。

 

 

しかしながら、受益者連続を阻む要因というものもあるというふうに考えます。

 

 

 

まず第1が、民法学説においては後継ぎ遺贈というものが必ずしも承認されていないということが挙げられます。

 

2番目に、判例においても後継ぎ遺贈の法的効果については統一した見解が出されていないということがあります。

 

 

最高裁の昭和58年3月11日判決というのは、後継ぎ遺贈に関して幾つかの解釈の可能性を認めたものの、確定的な結論には至っていないということが言えます。

 

 

そして、一部の学説が、ある類型の受益者を明確に否定しているということがあります。

 

 

実務の中にはそういうような強い論調の受益者連続否定論があるためにちゅうちょしているというふうにも聞いております。そのことを少しこれから申し上げたいと思います。

 

 

米倉明教授は、特殊ケースにおいては無効との見解を示されています。米倉教授は、民法上の後継ぎ遺贈が無効ならば、信託の受益者連続も無効となるが、みずからは民法上の後継ぎ遺贈は有効と解するとされた上で、信託の受益者連続も特殊ケース以外は有効と解しておられる。

 

 

 

ちょっと複雑な構成ですが、米倉教授が無効とされる特殊ケースというのは、要するに、契約で設定した信託、生前信託において、自己の死亡を原因として相続人を二次あるいはそれ以降の受益者として連続させるケースのことです。

 

 

 

米倉説による無効理由は、生前信託により相続人を対象として死因処分をすることが相続分の指定や遺産分割方法の指定に当たり、これらの指定を遺言によらないで実質上実現することは許されないというものです。

 

 

この米倉説に対しては反対意見もありまして、私も次の2つの理由から反対であると考えます。

 

 

第1は、民法上の後継ぎ遺贈と信託の受益者連続とは同質のものではなく、民法上の後継ぎ遺贈の有効、無効にかかわらず、信託の受益者連続の有効性は信託法1条により維持されると解されると思います。

 

 

すなわち、民法上の後継ぎ遺贈は財産の所有権を遺贈者の意思で連続させるものでありますが、信託の受益者連続は受益権という財産交付請求権を委託者の意思で転換、これは自益から他益です。そして連続、これは他益から他益でありまして、問題となる権利の質が異なると考えます。

 

 

すみれ

「他人のための利益にしているから、良いってことか。そうなのかな。後継ぎ遺贈って受託者いないしね。当然に所有権取得でもないし。」

 

 

 

第2に、生前信託によるこのような死因処分は、相続分の指定や遺産分割方法の指定には該当せず、死因贈与に相当する行為と解されると思います。

 

 

そもそも自己の死亡を原因として特定の財産を特定の相続人に与える行為は、それが遺言によるものであれば遺贈、契約によるものであれば死因贈与であるというふうに解することができるように思います。

 

 

 

 

 

いずれにしましても、本部会は立法作業を担当しているわけですので、一部学説の立場も十分に尊重しながらも、ぜひ正面から受益者連続機能を認めていただきたいというふうに考えております。

 

比較法的には、受益者連続を認めない先進国というのはないということは既に申し上げたとおりです。

 

 

すみれ

「先進国ってのがあるとして、だから日本も、ってなるのかな。ちょっと分からないけど。」

 

 

3番目に、rule against perpetuitiesの導入について申し上げたいというふうに思います。

 

信託期間を限定するということに関して、我が国信託法には明文の規定はありません。

 

 

ただし、これは他益信託一般に必要な原則ではないかというふうに考えます。というのは、特に受益者連続機能を認めることになりますと、信託財産が家族世襲財産となるという不安もあるわけですから、ぜひこのrule against perpetuitiesについては導入していただきたいというふうに思います。

 

 

我が国の実務では、先ほど検討しましたパーソナルトラスト、これでは信託契約期間は原則上限20年、安心サポート信託では上限25年とされています。

 

 

 

民法上の時効期間、賃貸借の存続期間等を参考にして20年とか25年にするのが妥当であるように思われますし、実務上もそれで支障はないというふうに思います。

 

 

 

 

 

ところで、UTCにはrule against perpetuitiesに関する明示の規定はありません。これとの関係で、アメリカのダイナスティトラストについて少し述べておく必要があろうかと思います。

 

永続性を否定する従来のコモンローでは、信託を設定したときに、指定された者の死亡後21年を超えない時点で信託が移転されるか、あるいは消滅することが確実である限り有効であるとされています。統一州法委員全国会議が採択した統一法上の永続性についてのルールは成り行きに任せる、ウエイト・アンド・シー、形勢観望とか言ったりしますけれども、そういう選択肢も残しています。

 

 

つまり、信託が設定されたき、生存している個人の死亡時から21年を超えない時点で移転されるか消滅することが確実であるか、または信託設定から90年以内に移転あるいは消滅しない場合は、財産の権利は無効であるとしています。

 

 

 

 

 

しかしながら、1990年代の初めに、この永続性に関する従来のルールが注目を集めることになりました。統一州法委員全国会議が信託をより使いやすくする努力をしているにもかかわらず、州では別の方向に進み始めたというのです。

 

 

そのジェネレーション・スキッピング・トランスファー・タックスと100万ドルの税控除を採用した結果、サウスダコタ州は、信託の永続性禁止を放棄することになり、サウスダコタ州への信託の誘致活動も始まりました。

 

 

連邦免許銀行は、サウスダコタ州に支店を開設し、サウスダコタ州に100万ドルの税控除を使った信託を設定すれば、後に発生する遺産税、エステード・タックスを永久にゼロとすることができるというふうな宣伝を始めました。これがダイナスティトラストと言われるものの始まりです。

 

 

すみれ

「税金以外に何が良いんだろう。」

 

 

もし100万ドルを10%の複利、40%の税金を想定すると、実質金利は6%となりますけれども、これを運用すると、サウスダコタ州のダイナスティトラストは150年後には62億5,000万ドルに膨れ上がることになります。

 

 

 

すると、直ちにこの利益の上がる信託業務に参入するため、サウスダコタ州に続いて信託の永続性を放棄することをデラウエア、イリノイ、アラスカ及び幾つかの州が決定しました。

 

 

しかしながら、ダイナスティトラストが出てきたことに関して統一州法委員全国会議は注目しており、ジェネレーション・スキッピング・トランスファー・タックスの100万ドル控除のための信託については、以下に述べますように非常に懐疑的な意思表示を行っています。

引用です。

 

 

長期間を考えると、このような信託の管理は大変扱いにくいし費用がかかる。政府の統計によると、結婚した夫婦は平均して2.1人の子供を産む。この仮定を使うと、信託が設定された150年後には信託の受益者となる子孫の数は100人以上となり、250年後には2,500人、350年後には4万5,000人となる。500年後には生存する受益者は、驚いたことに340万人に達するというような根拠を挙げて、ダイナスティトラストについては必ずしも賛成しないというようなことを言っております。

 

 

 

それで、アラバマ、アラスカが非永続性を放棄しています。デラウエアは不動産の110年を除き放棄、イリノイは信託が永続するという書類が必要だ。あるいはユタ州とワイオミング州は、信託期間は1000年というような規定があるようです。

 

 

いずれにしても、アメリカではダイナスティトラストというのがブームになっているわけですが、ここはアメリカに追随せず、アメリカでも統一州法委員全国会議とかアメリカ法律家委員会が否定的な立場をとっているということですので、しかも、我が国はダイナスティトラストを認めるインセンティブはないように思われますので、ぜひ、rule against perpetuitiesに関する明文規定というものが必要ではないか。

 

 

そして、現状の実務にもさしたる支障はないというふうに考えます。

 

 

すみれ

「契約で受益者を一人から二人にしておけばいいし。一旦終了してもいいし。」

 

 

4番目に、信託管理人制度の強化・多様化について述べます。

現行信託法8条の硬直性を見直すべきであると考えます。現行信託法8条は、受益者が不特定、未存在のときに信託管理人は置けるというふうになっているわけですが、受益者が特定しているときも信託管理人は必要であるわけです。こういうような形にしていただければと思います。

 

 

受託者が監督する機関、受託者監督人というんでしょうか、これが新たに設置されるということであれば大変望ましい。要綱思案はそういう方向に進んでいるように思われます。

 

 

もっとも、先ほど申し上げ任意後見監督人とのバランスを考えますと、委託者が監督機関を設置することで十分に実効的な監督ができるかという問題が生じます。

 

とりわけ、受益者が意思能力を喪失した後は、何らかの形で裁判所が関与するか、監督機関を弁護士等に限定する、つまり資格者に限定するというようなことも一案かと思われます。

 

 

さらにはも形式的に監督機関を設置するよりも、受益者の後見人等が信託行為で指定された指図権者あるいは同意権者として受託者をチェックするような体制が最も実効的であるように思われます。

 

 

なお、これは信託と後見との連携の必要性ということになりますので、後で述べたいと思います。

 

 

 

すみれ

「後見人がどうして分別された信託財産に対して指図や同意することができるんだろ。」

 

 

5番目、個人信託における受託者の義務。

個人信託における受託者の義務というものは、私の考えでは任意法規化すべきではないと考えます。

 

これは、高齢者取引における適合性原則あるいは受益者保護というものを考慮してのことです。

 

受託者が業法上の免許を取得した業者あるいは弁護士であるということを考えて、受益者の同意があれば、信託財産である、例えば不動産の賃借が可能であるというような解釈をとったときに、果たしてどういう問題が生ずるかということを考えてみます。

 

 

 

 

 

例えば、弁護士が信託スキームの中で受益者の同意を得て信託財産に賃借権を取得するということ、これは忠実義務を任意法規化すればできるわけですが、信託法上それが可能であったとしても、恐らくそういうことをすると弁護士は懲戒を受ける。

 

 

今までの懲戒事例をひもといてみますと、それは弁護士の懲戒事由に当たるというふうに私は考えます。そうすると、信託法上許容されていても、弁護士倫理として許されないという問題があります。

 

 

したがって、少なくとも個人信託の分野については忠実義務というものは任意法規化する。

 

 

すみれ

「個人信託だから忠実義務が必要っていう考えも取れるかな。」

 

 

個人信託以外の分野はどうするか、それは議論があってもよろしいと思いますが、個人信託の分野についてはそう考えてはどうかと思います。

 

そもそも我が国において忠実義務というのはどれぐらい遵守されてきたのかということを考えてみます。

 

 

すみれ

「家族と信託銀行以外が受託者の場合を想像しているのか。」

 

 

既に私はテキストの中で書いているのですけれども、この話をすると常に思い出すのは、JASRAC事件と言われる事件です。このJASRAC事件、つまり日本音楽著作権事件というのはどういう事件かとごく簡単に申し上げますと、日本音楽著作権協会というのは、音楽著作権者の音楽使用料を受託者として徴収管理しているわけです。

 

 

これは年間1,000億円ぐらいの信託財産になるんですが、そのうちの77億円分をある受益者に貸し付けをして、その受益者がそのお金で建物を建てて、そしてJASRACがその建物の中に入居したという事件であります。

 

 

これは私の目から見ますと、典型的な忠実義務違反の問題であるわけですが、これが係争した裁判所において、裁判官はこれが忠実義務であるということを最初から最後まで一貫して認めなかったという事実があります。

 

 

これは単なる融資の条件の問題だ。当事者が同意すれば、いかような形でも融資ができるんだという形で処理されました。

 

 

したがって、私が見るところ、日本においては、少なくとも裁判所においてはと言うべきなんでしょうか、裁判所を初めほとんど忠実義務というのは遵守されていないというのが実態ではないのか。

 

 

すみれ

「そうなのかな。委任契約でも忠実義務はないのかな。」

 

 

そういう中で、私の申し上げているのは信託一般ではなくて個人信託の分野で申し上げているんですが、個人信託の分野で忠実義務を任意法規化するというのは非常に問題があるのではないか。

 

 

私はテキストの中で、忠実義務の死ということを書いているんですが、ぜひそのあたりも本部会において十分に検討していただければというふうに考えております。

 

すみれ

「忠実義務が死ぬんだ。」

 

 

信託銀行の場合には、銀行勘定と固有財産の双方がありまして、忠実義務を任意法規化してほしいという要請は私は非常によく理解できます。しかし、それは基本的には信託業法とは経営法の問題ということでよろしいのではないか。

 

 

個人信託の分野における受託者の忠実義務というのは、やはり強行規定ということでよろしいのではないかというふうに思いますが、こちらの委員の方には異論もあろうかと思われますが、ぜひその辺は検討していただければ、私としては大変ありがたいと思います。

 

6番目、7番目、8番目、このあたりは時計をにらみながら少しまとめてお話をさせていただきたいと思います。

 

 

 

個人信託における受託者の資質としては2つが重要であると思います。

まず1つは、長期にわたり信託行為の定めに従って適切な財産管理と信託事務を遂行し得る能力を備えた受託者としての財産管理能力、それからもう一つが、受益者の生活状況、健康状況等のきめ細かな見守りができる身上監護者としての保護能力です。

 

 

個人信託においては、これらの受託者としての財産管理能力と身上監護者としての保護能力との連携が必須でありまして、受託者と身上監護者とが綿密な連携をとることによって財産の保全並びに受益者の実需に即した適切な財産給付が可能になると思います。ここに後見と信託とが連携する必要性が出てくるわけです。

 

 

 

すみれ

「受益者ってとっても弱い人なのかな。」

 

 

 

 

ある信託実務家は次のように述べています。

高齢者あるいは障害者の生活支援等のために信託が独立して利用されることがあるかもしれないが、しかし、信託が独立して利用されるよりも、本人の生活支援等に関係の深い任意後見制度等と併用される方が効率的に生活支援等がなされるものと思われる。

 

 

この意味で、信託は任意後見制度とのバックアップシステムと考えるというのがある信託実務家によって指摘されておりますが、このことはとりわけ信託銀行に当てはまるというふうに考えておりまして、極めて的確な指摘ではないかというふうに考えます。

 

 

すみれ

「信託がバックアップシステムなのかな。」

 

 

それで、後見と信託との連携ですけれども、3つのタイプがあるというふうに考えます。

 

第1の形態としては、財産管理を信託で担い、身上監護を成年後見人等が担当するという形態があります。それぞれの機能と得意分野を生かしながら、互いの不得意分野を補完し合えるということになります。

 

 

2つ目の形態は、財産管理における分担、連携です。大きな財産を信託財産として管理運用し、信託財産から給付された、いわば財布がわりの金銭の管理と、そこからの日常的支払いを後見人等が担当するという連携です。これによって、財産管理に関する後見人等の負担が大幅に軽減できることになります。

 

 

3番目の連携の形態は、信託財産の給付面における連携です。受託者が管理している信託財産からの給付内容について、受益者の後見人等が信託行為で指定された指図権者あるいは同意権者として受託者と協議しつつ、給付の指図や同意を行うという連携です。日ごろから受益者の生活面の三間森を行う後見人等が信託財産の給付指図等にかかわることによって、実需に沿った適切な財産給付が確保できるというふうに思います。

 

 

 

すみれ

「3間森ってなんだろ。」

 

 

受託者を担う立場としては、個人信託分野での信託の活用、普及を図るため、親族たる後見人だけではなく弁護士、司法書士、社会福祉関係者など後見業務を担う専門家、実務家との連携、相互補完の事例を数多く積み上げ、被後見人等の身上監護面や生活にマッチしたきめ細かい財産管理や財産給付が可能となる連携モデルをつくっていることが必要であるというふうに考えます。

 

 

立法上の課題としては、同意権者、指図権者の位置づけが重要です。

 

同意権者、指図権者は、信託行為によって指定された受益者の後見人等に限定するか、それとも同意権者によって同意権の行使、指図権者による指図権の行使を信託管理人の職務と考えるのか、あるいは受託者監督任の監督に含むものと考えるのか、それとも同意権者を独立した機関として規定するのかという問題があります。

 

 

 

すみれ

「自分が委託者だったとして、そんなこと望むのかな。」

 

 

いずれにしても、既に実務で用いられている同意権者、指図権の位置づけを明確にしていくことが実務のより効果的な運用に資するというふうに考えます。

そして、法定後見、任意後見、信託の優劣の問題があります。

 

 

まず、法定後見と任意後見との関係ですけれども、これは任意後見契約法の10条の規定がありまして、そこでは、任意後見優先の原則がうたわれています。本人の利益のため特に必要があると認めるときは法定後見が発動されますが、それ以外は任意後見が優先するというものです。

 

 

法定後見と信託との関係はどうでしょうか。任意後見契約10条が類推適用されるということになるのでしょうか。この辺の検討も必要かと思われます。

 

任意後見と信託との関係はどうでしょうか。両者の内容が抵触する場合の優劣についての規定は必要でしょうか。あるいは受託者が個人信託を受託する際に、任意後見登記を調査する義務を侵して、抵触を事前に回避するということが賢明な手段ということでしょうか。この辺の検討も必要かと思われます。

 

 

 

 

 

親族後見人が親族等からの批判を受けて法定代理人として信託設定をするということが既に実務上行われているというふうに聞いております。

 

 

これは、親族後見人が自己の行っている後見事務の透明性を確保するという必要からです。

 

 

親族後見人が信託を設定するという場合、法定代理権と信託との調整が必要になるように思われます。つまり、そこでの信託受託者というのは、法定代理人と複数後見的な関係になるのか、あるいは履行補助者となるのか、その辺の整理も必要かと思われます。

 

 

 

 

いずれにしても、法定代理人が信託を設定するというケースはこれからふえていくものと思われます。

 

 

 

そこをスムーズに行えるような規定が必要かというふうに思われます。

 

そして、任意後見人がその代理権の範囲内で信託を設定する場合にも同様の問題があると思いますので、これについても検討いただければ幸いです。

 

 

 

9番目、現行法23条の存置と現行法62条の明確化。

現行法23条は、個人信託受託者は長期間にわたる財産管理に関して善管注意義務、忠実義務を負うわけですけれども、事情変更への対応というものを受託者に容易に認めるためにある規定だと思われます。

 

 

これについては、個人信託の分野では必要な規定だと思いますので、ぜひ、現行法23条のような趣旨を存置していただければというふうに思います。

 

現行法62条ですけれども、これは実務上不都合が生じているというふうに聞いております。

 

 

これは他益信託による一身専属的受益権とか期限付き受益権が終了した場合の信託行為で定めた帰属権利者の範囲が不明確なため生ずるものです。つまり、原信託の受益者というものを帰属権利者に含めることができるのかどうか。今実務ではそれを特約で決めているようなのですが、62条の趣旨は必ずしもその辺が明確でありませんので、この辺は明確にしていただければ、実務上も大変ありがたいというふうに思われます。

 

 

 

 

そして、立法上の課題の最後ですけれども、生前信託と死因贈与・遺贈について述べたいと思います。

 

ここでも米倉先生の説をまず紹介させていただきます。

米倉教授は、契約で設定した信託、生前信託において、自己の死亡を原因として相続人を二次受益者として連続させるケースを無効としています。米倉説による無効の理由は、生前信託により相続人を対象として死因処分をすることが、相続分の指定や遺産分割方法の指定に当たり、これらの指定を遺言によらないで実質上実現することは許されないというものです。

 

 

 

先ほどの2の受益者連続機能の承認のところで既に述べましたように、この米倉説に対しては反対意見があり、私も先ほど申し上げた理由から反対です。もう一度申し上げたいと思います。

 

 

第1は、民法上の後継ぎ遺贈と信託の受益者連続とは同質のものではなく、

民法上の後継ぎ遺贈の有効、無効にかかわらず、信託の受益者連続の有効性は信託法1条により維持されるものと解されます。

 

 

すなわち、民法上の後継ぎ遺贈は財産の所有権を遺贈者の意思で連続させるものですが、信託の受益者連続は受益権という財産交付請求権を委託者の意思で転換・連続させるものであり、問題となる権利の質が異なるからです。

 

 

第2は、生前信託によるこのような死因処分は、相続分の指定や遺産分割方法の指定には該当せず、死因贈与に相当する行為と解されます。そもそも自己の死亡を原因として特定の財産を特定の相続人に与える行為は、それが遺言によるものであれば遺贈であり、契約によるものであれば死因行為であると考えます。

 

 

 

 

 

これは先ほど申し上げたところですが、その次がここでは重要かと思われます。

 

死因処分行為の対象となった財産以外の依存の分割を考える場合、その死因処分行為の対象財産と受益者の相続人について、相続分の指定や遺産分割方法の指定があったものとみなして、それ以外の遺産の分割方法を決めることは理解できます。

 

 

しかしながら、遺産処分行為そのものを相続分の指定や遺産分割方法の指定と解するのは妥当ではないように思われます。その死因処分行為自体はあくまでも遺贈もしくは死因処分です。

 

 

民法は、生前行為による死因処分として、死因贈与を容認しており、これに準ずるものとして相続人を対象とした生前信託による死因処分としての受益者連続及び残余財産帰属者指定を有効と解しています。この場合も、相続人の遺留分減殺に服すべきことは死因贈与の場合と同様であると考えます。

 

 

 

生前信託と死因贈与・遺贈については、以下のように明確にしておくことは課税上の関係あるいは民法を援用する際にも必要なことではないかというふうに考えます。

 

 

 

 

 

あと10分で残りのⅤのところをまとめたいと思います。

 

Ⅴは個人信託からやや離れるのですけれども、信託法改正に望むことということで何点か述べさせていただきます。

 

最初に、信託の実質の尊重ということについて申し上げたいと思います。

 

これはどういうことかというと、本部会においては、一体どのような信託類型を普及させたいというふうに考えるのかということが重要ではないかと思われます。

 

信託というのは、申し上げるまでもなく、財産権の名義を委託者から受託者に移転し、転換機能を生じさせるというのが信託の本質であるように思われます。

 

 

しかしながら、私が議事録を拝見した限りでは、その辺の視点が非常に弱いように思われるわけです。

 

先ほど、井上弁護士の本部会の目指すところが、信託のビークル性であるということを申し上げました。それはそれとしてわかるのですが、もう少し本来の転換機能を生かすような場面の検討もぜひしていただきたいというふうに思います。

 

 

その観点から見ますと、例えば要綱思案における第1の2でしょうか、当事者の合意だけで信託の効力が生ずるというのは、名義の移転によって信託が効力を生ずるという従来の信託の理解からは相当隔たっているように思われるわけです。この辺もきちっと整理していただきたいというふうに思います。

 

 

 

 

 

それから、信託宣言を許容するかどうかということについても、委託者から受託者への財産権の移転ということが本当に行われているのかどうか、そこをどう見るかということをぜひお考えいただきたいと思います。

 

 

これは目的信託についても同じでして、それから事業の信託、これについても同様な視点から、なぜこれを信託にするのかというような検討が必要ではないでしょうか。

 

 

すみれ

「名義の移転は、財産権の移転そのものではないって考えもとれるかな。」

 

 

 

ところで、不動産の流動化、証券化のスキームで行われている信託というのは、御存じのように、まず信託をして、そしてその信託受益権を直ちにSPCに譲渡するというスキームです。

 

 

なぜ、そこで信託をするかといえば、それは転換機能とは全く関係ないことだと私は理解しております。

 

 

1つは、不動産流通税の問題、不動産流通税を回避したいということ。それから、不動産特定共同事業法の適用を回避したいという理由で信託を用いる。

 

 

ですから、信託をしたことによって倒産隔離が使用ずるわけではなくて、SPCに譲渡することによって倒産隔離が実現するというふうに私は理解しております。

 

そうすると、そのような信託、つまり不動産の流動化、証券化で行われているような信託、これは考えようによっては非常にフレキシブルな信託が既に実務で行われているわけですね。

 

 

これ以上さらにフレキシブルに必要があるのでしょうかということを私はお伺いしたいわけです。つまり、いろいろこれから信託を柔軟な形にして、いろいろな信託を普及させたいということなのですが、例えば今申し上げた類型の信託について、果たしてこれが信託と言えるのかどうか、そのあたりの整理もやはりきちっとしていただかないと、ますます信託の本質、私の言うところの信託の実質から離れた信託ということが生じてきて、非常に希薄化されるというような心配を持っております。

 

 

 

 

 

そして、少し順番を変えますが、先に3の濫用への対応というところを申し上げた方がよろしいでしょうか。

 

私の見るところ、信託が今濫用されています。これは一部勢力が信託を濫用して、私の目から見ると社会問題になっているというふうに思われるんです。

 

 

当然、こちらは議論の前提として実態の把握をされていると思うんですよね。

 

 

つまり、不動産登記法の中で信託を設定しているものから受託者が信託銀行であるものを除けば、それがほぼ濫用のケースとみていい。

 

 

これが一体日本でどれくらいあるのか。普通の弁護士さんであれば、一、二件そういう事例は抱えているはずなんです。それが全国に何件あるのか。あるいはサガイ信託の訴訟の件数を把握してもいいと思うんです。そういうように、一部勢力による信託濫用の実態というものをきっちり調査して--もう調査されていると思うんですが、そういうようなケースに基づいて、この濫用についてどう対応するかというようなことも、やはり本部会においてはきっちりとしたポリシーとして出していただく必要があろうかと私は考えております。

 

 

すみれ

「改正前から既に濫用はあったんだ。」

 

 

そういう立場から見ると、信託宣言、目的信託、有限責任信託、あるいは受託者の忠実義務の任意法規化というのは、一部勢力にとっては極めて好ましい制度だというふうにも言えると思うんです。

 

 

しかも、これは1つの信託の中ですべてできるというふうに理解しております。

 

したがって、信託宣言で目的信託を行い、有限責任にし、忠実義務を任意法規化する、そういう信託が先ほど申し上げたような信託の実質ということからして果たして可能なのかどうか。濫用の歯どめということとのバランスにおいて、ぜひここのところは検討していただきたいというふうに私としては希望しております。

 

 

それともう一つ申し上げたいのは、任意後見制度が先ほど2000年4月にスタートしたと申し上げました。これは本人が能力がなくなったときに、民法の原則と違って、任意後見監督人が選任されなければ発効しないという制度です。

 

 

この制度について、一部の弁護士さんは、これは余りにも重たい制度だ。私的自治の制度からはいかがなものかということでいろいろな批判をされました。

 

 

5年たった今、どういう状況にあるかというと、その重いと言われた任意後見制度すら既に濫用の兆しが見られています。一部の悪質な業者は、任意後見契約を濫用して高齢者を食い物にするというような実態も見られるわけです。

 

 

したがって、ぜひともこの濫用の問題というのは真摯に考えていただきたいと思いますし、私は、きょう主として申し上げた個人信託の分野、とりわけ高齢者・障害者が関与するような信託においては、やはり受託者の忠実義務の強行規定化ということは、ぜひその方向で考えていただければ私としてはありがたいというふうに思います。

 

 

すみれ

「家族だったら仕方ないって考えることはできないかな。」

 

 

 

少し戻りまして、2番目の商事信託への偏りということであるわけですけれども、この商事信託の必要性はいささかも否定しません。こういう類型の信託があるべきだというふうに私も考えております。

 

 

しかしながら、今までの議論は余りにもそこのところに偏り過ぎていたのではないか。

 

 

ですから、外部から見ると、ビークル性を取り入れただけの信託法になるのではないかというような危惧もされているわけです。

 

 

ですから、商事信託はさらに効率的に普及できるようにすると同時に、それのみならず、やはり信託のいろいろなバランスを考えて、個人信託も公益信託も、あらゆる類型の信託がバランスよく発展できるような形にしていただきたい。

 

 

商事信託だけに偏っているというような誤解はぜひ避けるようにしていただきたいというふうに思います。

 

 

 

そして4番目ですけれども、比較法とのバランスということで申し上げたいのは、私が議事録で拝見してきたところでは、比較法の検討は偏っているように思われます。

 

 

これはUTCのみに限定されていたというふうに私は思うのです。

 

例えば、今OECDが信託について注目しており作業しております。これは要するに、9・11以降のいろいろな問題、信託の悪用事例にいかに対応するか、オフショアーにおける信託の濫用事例、こういうものに対応するような作業もやっておりますので、そういうものもぜひ参考にしていただきたい。

 

 

それからスイス、これもハーグの信託条約を批准するために信託法を制定しました。

 

 

例えば、日本も大陸法国ですので、大陸法国でまさにできたての信託を持っている、例えばスイスのこういう事例も参考にしてみるというようなことも必要ではないかというふうに思うわけです。

 

 

 

 

そして、私が見るところ、信託の基本法としては、やはりビークル性だけを強調した信託法というのはやや異例ですので、比較法的にももう少しリーズナブルな線に落としどころを見つけたらどうかというふうに考えております。

 

 

日本の信託法の改正は世界的にも注目されています。日本がどういう信託法をつくるかというようなグローバルな影響もぜひ考えて、もう少しいろいろな比較法の検討がなされてもよろしいのではないかというふうに考えております。

 

 

すみれ

「OECD、ハーグ信託条約、スイスか。世界的にも注目されていたんだ。すごいね。」

 

 

 

5番目が、信託業法とのバランスということです。

これは御存じのように、業法の29条1項では、信託財産に損害を与えるおそれがない場合を除いて、自己と信託財産との取引、信託財産と他の信託財産との取引をしてはならないというふうに規定しており、そして業法の29条3項では、そのような取引をした場合には、書面の作成と受益者への交付を義務づけているという規定になっております。

 

 

それで、信託業法の29条と受託者の忠実義務の任意法規化というのは著しくバランスを欠くことになります。

 

 

信託法を改正すれば、信託業法についてはさらなる改正があるというふうにも聞いているわけですが、その辺もにらんで、ぜひこの辺は検討していただきたい。

 

 

そのときに、ぜひ信託業法と経営法との差異というものに注目すべきではないかと考えます。つまり、信託業法に基づく信託会社は専業義務を負っているわけです。

 

 

信託銀行は、銀行業務と信託業務を兼営しているわけです。それで、忠実義務の任意法規化というのは、免許業者であって兼営業者である信託銀行については任意法規化したいという、その気持ちあるいは理屈、実態はよくわかっているつもりです。

 

 

しかしながら、専業義務を負う信託会社についてまでそうする必要があるんだろうかというようなあたりも検討する必要はあろうかと思われます。そして、一般の民事信託、とりわけ個人信託の受託者を規制する信託法にとっては、やはり忠実義務の問題、ここのところは厳格に考えていただきたいというふうに私は考えております。

 

 

すみれ

「信託法は受託者を規制するためにあるのかな。」

 

 

 

そして、これは書いてありませんでしたが、6番目として追加で申し上げたいのは、自益信託と他益信託の区別の軽視ということです。

 

私が非常に強く感じておりますのは、本部会はいろいろなアイデア、柔軟な思考をして、非常に多面的な展開をしているということではすばらしい議論を展開しているというふうに思うんですね。

 

 

ところが、非常にかたくなに拒絶しているものもあるんです。それは何かというと、自益信託と他益信託の区別です。

 

 

 

 

私は立場上申し上げますが、この本を自益信託、他益信託の分類に従って展開しているという立場をとっておりますので、これは申し上げざるを得ないのですが、それだけいろいろなところを柔軟にしながら、なぜ、他益と自益の区別だけかたくななまでに拒絶するのか、それが私には理解できない。

 

 

 

つまり、他益信託と自益信託という区別も、それが絶対だとは決して思っておりませんが、一つの有力な考え方ではないのか。例えば、受益者の補償請求権の問題なり受益権の放棄というようなことを考えるときに、一つの考えるヒントにはなり得ると思うんです。

 

 

しかし、それをかたくなに拒絶してしまったということでありまして、私としては、今後の展開が非常に楽しみである。それはどういうことかというと、こちらにいらっしゃる先生方が、それほどまでにかたくなに拒絶しましたので、信託法ができた後、自益と他益の区別を御自分の論文なり著書の中で述べることは決してないだろう。

 

 

 

そうなった場合に、一体どうやって信託をうまく分類していくのかなということで大変楽しみにしております。

 

 

私はかたくなに拒絶された自益と他益の分類になお固執して今後も議論を展開するという、本来アナログ人間ですので、そういうことをしていきたいということを考えております。

 

 

 

 

 

時間を恐縮して申しわけないんですが、最後に一言。

いずれにしても、きょうは貴重な時間をいただいて、私のつたない報告を聞いていただいて、心から感謝しております。それで、ぜひ個人信託の有用性というものを信託法の中でお認めいただいて、それが普及できるようなことにしていただければ、私としては大変ありがたいと思っております。

御清聴どうもありがとうございました。

 

 

  •  大変どうもありがとうございました。

それでは、20分まで休憩して、その後質疑応答をしたいというふうに思っております。

 

(休     憩)

 

  •  それでは時間になりましたので、審議を再開したいと思います。

 

ただいま非常に貴重な御報告をいただきました。非常に内容豊かだったと思いますが、この報告につきまして、皆様の方から御自由に御質問、御意見、また○○参考人の方からも御自由に御発言をいただくというふうにしたいと思います。

 

ということで、いかがでございましょうか。どうぞ、皆様の方から御自由に御発言ください。

 

 

  •  1つ確認と、それから1つ具体的な問題についてお教えいただきたいと思います。

 

きょうの○○参考人の御報告、非常に明快で有益でありがたいと感謝しております。

 

大きなというか確認の問題ですが、個人信託という言葉の意味ですけれども、それはどの部分が個人であることを指しているのかをまずはっきりさせていただいた方が全員が理解を共有できると思います。

もう一つは別の問題ですので、とりあえず。

 

 

 

  •  わかりました。では、とりあえず個人信託ということで○○参考人がどういうことをお考えになっているかということですね。

 

  •  ありがとうございます。

 

個人信託という言葉は、日本語でそう言っているんですけれども、英語で言

うとファミリートラストなりパーソナルトラストということになるんでしょうか。

 

 

ただ、パーソナルトラストというのはある銀行が使っていましたので、意識的に避けました。

 

それで、要するに、英米で言われているようなことですね、家族間の財産管理であるとか、家族間の財産承継、商事信託とは一応別だという意味で個人信託というふうに理解しているんです。

 

 

ですから、明確な定義をするというのはなかなか難しいのですけれども、恐らく委託者とか受益者は家族のメンバーのことがほとんどだろうと思います。

 

 

受託者については、もちろん法人もあっていいだろうということで、英語で言えばファミリートラストの意味だというぐらいでお答えになったでしょうか。

 

 

 

  •  わかりました。どうもありがとうございます。

 

もう一つ具体的な問題でございます。受益者連続機能の承認ということをきょう1つ具体的にお示しいただきまして、それは非常によく理解できることでございます。

 

 

ただ、○○参考人のお話は、それとrule against perpetuitiesの導入とがセットになっているのではなかろうかと思います。仮にrule against perpetuitiesの導入がないことになった場合に、それでも受益者連続機能を承認すべきか。

 

 

承認すべきだとして、別の歯どめが何か考えられるだろうかという点についてお教えいただけますでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  私は、申し上げたように受益者連続とrule against perpetuitiesをワンセットでやるべきだというふうな意見を持っています。そうでないと、結局ずっと続くということになると非常に問題があるというふうに考えます。

 

 

今、○○委員がおっしゃった、もしそうでない場合の歯どめということになると、これは非常にまた難しい話になりますね。例えば、信託目的によって制限するのかというような議論になるのですが、私としてはそこは非常に考えにくくて、要するに、他益信託がずっと継続し、かつ委託者の意思がずっとそれに付着するというのはどこかの時点で切るべきだというふうに私は考えております。

 

 

ですから、歯どめよりは、ぜひセットでお願いしたいというふうに考えております。

  •  どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

  •  私もちょうど受益者連続の話を伺いたかったんですが、それは飛ばしまして、その1個上の意思凍結機能の承認というところで一言お伺いしたいんですけれども、○○参考人は先ほど、条文化せよという話ではないという話をされたんですけれども、具体的に意思凍結機能を承認するということは、それを正面に置く条文を置かないとしても、他の条文のどんなところにその考え方が響いてきたり、あるいは解釈論のところに響いてくるというふうにお考えなんだろうか。

 

 

例えば、ある設定後の信託条項の変更とか、そういうところに響いてくるんだろうか、どこなんだろうかというのがちょっと気になりましたので、それによって達成されようとしている他の箇所の立法論といいますか、そういうのについてお教えいただければと思うのですが。

 

 

 

 

 

  •  まず、意思凍結機能自体については明文の規定は多分要らないだろう。今、○○幹事のおっしゃったこととの関連で言いますと、1つは監督だと思うんですね、意思凍結機能を持っている受託者の監督をどうするか。

 

 

すみれ

「受託者が意思凍結機能を持っているのかな。」

 

 

 

それはさっき申し上げたように、任意後見監督人との関係でどういうふうにバランスをとるかということです。必ずしも任意後見監督人と同じにしなくてもいいんですが、やはり監督ということが必要でしょう。

 

 

もう一つは、長期間にわたりますので、義務をどこまで課し、逆にどう緩和するか。それは長期間善管注意義務を負っているということですと、やはり現行法23条みたいなものも必要と思いますので、そのあたりの規定です。

 

 

 

ですから、直接意思凍結機能の明文規定による承認は要らないとしても、随所に個人信託の意思凍結機能のことを考慮していただいた規定を入れておく。

 

 

そして、その説明のところにこういう個人信託にも対応しているんですよというような説明があって、総体として意思凍結機能が認められるということかなと理解しておりますが、それでお答えになりましたでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  どうもありがとうございました。

 

  •  私も、いわゆる後継ぎ遺贈型の受益者連続の話とrule against perpetuitiesに関しての質問でございますけれども、今回の要綱思案の62条で御提案がありますように、今回それを認めるべきかという提案がなされているわけです。

 

それで、従前は何年にすべきかというのは注意書きで入っていたんですが、今回それが落ちているので、多分補足説明で出てくると思うんですが、ただ、何をすべきかどうかということを考える際に参考までに教えていただきたいということなんですが、○○委員と同じ質問になるかもしれませんけれども、このrule against perpetuitiesがなければどういう弊害があるのかという話ですが、私の理解が不足なのかもしれませんけれども、先ほどの御説明では2つ、つまり1つは、現行民法との平仄の問題と、もう一つは、何年後には非常に多くの受益者が出てきてしまう。

 

 

 

よって、非常に管理とかが難しいという文脈と理解したわけですが、それに加えて、社会的な問題というのがそこにあるのではないかなというふうに思っております。

 

 

 

 

 

といいますのは、某協会でアメリカの信託の御教授が御講演されたのを拝聴したことがあるんですけれども、やはりダイナスティトラストということからわかるように、基本的に大金持ちの一族が、その資産が分散されないようにそういう信託を使っている。

 

 

税金とagainst perpetuitiesのルールの緩和と伴って、社会的に二極化がふえているという御指摘があったと思うんです。

 

 

そういったことを日本に置きかえて、本籍で信託について議論するときに、こういう法的な話とか実務的な話に加えて、社会的な側面ということも考える必要はあるのではないかと個人的には思ったりもしまして、よって、御質問なんですけれども、この点に関する先生の御意見と、それからアメリカとかほかの国における経験というのを御紹介いただければありがたいと思うんですけれども。

 

 

 

 

  •  ありがとうございました。

御指摘のとおりでして、アメリカのダイナスティトラストというのは一部の富裕層が活用したいと、金融機関もそれにこたえているということで、相当なボリュームのビジネスが展開されているようですが、それに対する批判もあって、法律家はどちらかというと批判的で、その背景にあるのは、まさに今御指摘のあった点でして、資産の二極化みたいなことになるというようなことの指摘があるように思います。

 

 

そのことを申し上げた上で法律論としましても、まず1つは、受益者の数が飛躍的にふえる。

 

私エピソード的に紹介したこともあるのですが、そのほかに2つ指摘したいのは、1つは、受益者連続というのは委託者、亡くなった委託者の意思が信託財産にずっと付着する。

 

これは英米ではデッドハンドコントロールというふうに言うんですが、それは民法の体系からするとおかしいわけですよね。やはり所有者が生存していて、その所有権を行使する。

 

 

ところが、亡くなった人の意思がある所有権に付着しているというのは理論的にはまずいだろうということが1つと、それから、これは四宮先生の言葉ですけれども、物資の流通を阻害する。つまり、例えば不動産に受益者連続型の信託というものが設定されていて、何十年も何百年も売れないということになると、取引関係の活性化というのを阻害して、これは民法90条に反する。

 

 

原理的にはその2つの面からも少し制約すべきで、やはり一定の期間は要るのかなというふうに私は考えております。

 

 

 

 

 

  •  私が発言するのはあれですが、財産が集中するということに関連しては、日本だと--諸外国もあるけれども、遺留分減殺とか、それは受益者連続を認めても重ねて適用するということはあり得ると思うんですけれども、○○参考人はそこはどういうふうにお考えですか。

 

  •  遺留分の問題……

 

  •  相続という形でもって、受益者連続一般ではなくて、やはり死亡をきっかけにして連続するという形をとると、そこには相続があるので、信託の仕組みによって移転するにしても、遺留分減殺請求権は認めるという考え方があり得るかもしれないと思うんです。

 

 

すみれ

「信託法には相続という言葉は出てこないけど、相続があるんだ。」

 

 

 

  •  そうですね。ただ、受益者連続でいったときに、第二次受益者以降のものを全部遺留分減殺でかけられるかという議論は必要かもしれませんね。

 

 

 

 

  •  ごめんなさい、私が勝手に。

ほかにいかがでしょうか。

 

  •  ○○参考人が最後の方で濫用のお話がありまして、今回のいろいろ新しいメニューをふやす中で、例えば有限責任信託とか目的信託とか信託宣言、こういうのを組み合わせるとより濫用ができるのではないかという話だったと思うんですけれども、他方で、○○参考人がおっしゃる個人信託を今後進展させるためには、やはり有限責任信託というがあった方がより柔軟な対応といいますか、固有財産で信託債務を弁済するという仕組みから逃れることができるということもありますし、目的信託も、公的信託がどの程度認められるかによって違ってくるかとは思うんですけれども、それでもどうしても公益信託から外れる部分に関して目的信託というのは非常に有用である。

 

 

 

ですから、先ほどの○○参考人が横浜市の事例で最後にどこかに寄与したいということをおっしゃっていましたけれども、あれは公益信託になるので、カバーできればいいんですけれども、仮に公益信託として認定されなくても、目的信託があればできるかもしれないとか、信託宣言も、ちょっと観点が違うかもしれませんけれども、他人の財産を預かっている場合、ただし、預かる行為自体が信託行為とは認定できない場合に信託宣言で、それを自分の信託財産として管理するというような視点で、ですから、どういう制度でも濫用はあるし、現状でも濫用されているし、より柔軟な制度、多様なメニューになれば、よりいろいろ悪用する人はいるかもしれませんけれども、他方において、それ自体が有用に個人信託の分野で利用できるのではないかと思うので、その辺についての○○参考人の御意見と、結局つまるところ担い手の議論ではないのかな--

 

 

 

 

 

 

 

 

それだけではないかもしれませんけれども、思うところもありまして、私は弁護士会から来ている弁護士ですから、弁護士が正しいと思いますし、既存の信託銀行も当然ふさわしいと思いますけれども、今後登場するところの信託会社が全部正しいかどうかというのはわからないところもあるかもしれませんが、その辺の担い手についてどう考えるかということと、その辺までを含めて現行の信託法の改正の中で対応するということは現実的に法制度として可能なのか、その辺について、仮に○○参考人が言うような形で信託法の改正がなされたとしても、それによって濫用事例が減るんだろうかとか、民事信託という意味で、高齢者の在宅管理という意味において、それが非常に幅広く利用されて、高齢者にとって非常に有用な制度になり得るのかどうかという、そうすると担い手の議論とか担い手のあり方の議論とか、その辺も関連してくるのではないかと思うんですけれども、その辺についての○○参考人の御意見をお知らせいただければと思うんですが。

 

 

 

 

  •  ありがとうございました。

まず、担い手のことについて言うと、特に私がきょう話をさせていただいた個人信託の分野については、信託法に直接的な規定を盛り込むというのは難しいと思うのですが、ただ、そのことも想定しながら議論していただく必要があるだろう。

 

 

それから、今度、信託業法の改正なり兼営法の改正ということもあるんでしょうか、そういうこともにらんだ上でこちらとしては議論を進めていっていただく必要があろうかなというふうに思います。

 

 

つまり、株式会社だけに限定されるということで果たして可能なのかどうか、弁護士法人、司法書士法人をどうするか。そのときに、もちろん責任の問題がありますね。

 

さっき申し上げたように、今度弁護士会が株式会社をつくってやる。そのあたり、弁護士さんが個人でやる場合の担い手の問題と、株式会社組織にする場合、それから弁護士法人にする場合、いろいろなオプションがあると思うんですが、そのあたりをどういうふうにしていくのか。その担い手の類型を選ぶかによって責任の類型も違ってきますので、そのあたりもできればこちらでぜひ議論していただいて、個人信託の基本モデルみたいというんでしょうか、担い手の推奨モデルみたいなものぐらいは置いていただいた方がいいのかな。

 

 

 

ただ個人信託できますよということだと、正直言って私も非常に心配です、いろいろな個人がいますので。ですから、○○参考人がおっしゃったように、担い手のことも考慮しながら、ぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 

 

 

 

 

それから、濫用の話ですが、○○参考人がおっしゃったとおりで、どんな制度にも濫用があるのですが、立法するときにやはりそれが可能な限りないようにベストを尽くすべきではないかというふうに思います。

 

 

あとはどういうふうな実務の運用になるかということなんですが、信託宣言にしても目的信託にしても、一番気になるのは、そちらの方はむしろ濫用よりも信託のセオリーですね、信託をどう考えているかというところが私にはよくわからない。

 

 

部会の目指すところがよく見えてこない。では、信託宣言で何をやりたいんですかと、私きょう、個人信託でこういう例があるということを申し上げましたけれども、では、信託宣言は何なんだ。

 

 

 

事業信託についてはきのうかおとといの日経金融に出ておりましたけれども、あれが本当に可能なのかという議論です。そういうのを少し詰めてやってみていただいたらどうなのか。

 

 

少なくとも日経金融の事業信託で見たところ、あれは信託なのかなと素朴な疑問を持ったのですけれども、そういう議論をざせていただいた上でどうでしょうか、濫用の問題、少し考えてみたらどうかと思いますけれども。

 

 

 

 

つまり、信託宣言というのは特に制約はないわけですよね。どんな目的でもいいというのが今こちらのお考えだと思うんですよね、公正証書にするかどうかは別として。

 

 

そうした場合の濫用というのはすごくあるのではないでしょうか。それでも倒産隔離なりいろいろな信託のいいところは全部とれるわけですよね。それがほかの法制度との関係でバランスがどうかなという点が気になります。

 

 

 

 

 

お答えにならなかったかもしれませんけれども。

  •  私も○○参考人と一部似た感覚を持っていますが、個人信託という分野で、あるいは民事信託と言ってもいいかもしれないけれども--広げるとなると、とにかく担い手もいろいろなタイプのが出てくるし、そういう奏で、そっちは広げたいんだけれども、しかし、広げることによって濫用に誓いものも出てくるかもしれない。

 

 

だけど、それを恐れて信託宣言とかそういうのを制約していいのかというと、私の場合はそこは制度として残しておきたいと思うんですけれども、しかし、悩みがあることは確かですね。

ほかにいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  ○○参考人のお話の中に信託銀行についても言及していただいていましたので、若干述べさせていただきたいと思います。

 

○○参考人のお話の中で、ある一定の時期だったと思うんですけれども、こういう個人の信託について、信託銀行は非常に消極的だったというような部分もありまして、確かにそういう部分もありまして、これは結構時代的な背景が大きかったんではないかと思いまして、○○参考人のお話の中で、入れていただいた私どもの安心サポート信託とかパーソナルトラスト、こういったところにもついても、まさにある程度信託銀行、銀行界全体そうですけれども、落ち着いて、これから先どういう形で信託制度なり金融制度を考えていこうかという中で、やはり民事信託といいますか、こういう個人の信託というのは重要であるというふうに理解しておりまして、この部会の中でもぜひとも御検討いただきたいというお話をさせていただきましたので、きょうのお話は非常に心強いお話だったと思います。

 

 

 

 

もう1点、非常にありがたいお話といいますか、私ども方でずっと主張させていただいていた信託の弊害について、先ほどもお話がありましたけれども、まさに民事的なところでの信託を前提にする限りにおいての弊害というのは、やはり心配なものがたくさんありまして、それによって信託制度全体の信頼性を失うというようなおそれがありますので、ここについては、これは前から申し上げていますけれども、これはこの場の方々にということですけれども、御検討いただきたいなというふうに思っています。

 

 

 

その際に、○○参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど、忠実義務を任意規定化するんではなくて強行規定化するというようなお話がありましたけれども、これについては今現在、我々信託銀行がやっているような実務を前提にする限りは、任意規定というのがふさわしいだろうと、そこら辺のところは御理解いただいているということですので、そういうことを前提にする限りにおいて、1つ御指摘されたのが、一般信託法の方で強行規定にして、業法でそれを緩和するというようなお話がありましたけれども、例えば、信託法の中で、この場で検討するわけですから、今、忠実義務を一つの事例として出しましたけれども、こういう塀外的なものを検討するに当たっての類型化といいますか、信託法の一般手法の中での類型なり何なりを考えて、それで例えば民事的な信託についてはこういう規律、商事的な信託についてはこういう規律というような類型化という観点で見て何かお考えはありますでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  そうですね、理論的な可能性としてはそれも考えられるのではないでしょうか。

 

商事信託類型と、例えば個人信託、民事信託類型と分けて、忠実義務なんかも少しそこで差を設けるということはあってもいいかもしれませんね。ただ、立法技術的には非常に難しいのではないでしょうか。

 

 

そういう懸念はありますけれども、こちらでそういうような方向を選択するというのも一つのオプションだとは思います。

 

 

私個人としては、信託法と信託業法と経営法、そのあたり、これで一貫して信託制度をサポートしているわけですから、その中で違った類型の義務を違ったように規定するというのが望ましいと私個人としては思っていますけれども、類型別に義務を規定するという、そのあたりがこちらとしては一番リーズナブルな生き方かもしれません。

 

 

 

 

 

お答えになっていないかもしれませんが。

  •  ありがとうございました。

 

  •  ここで余り積極的な議論を展開というかお互いに討論する場ではないのかもしれないけれども、従来、信託銀行は監督規制をされていて、そういう意味で担い手としては安心なので、そこで公益班のところではいろいろ緩くしていても大丈夫だ。

 

 

だけど、それをしたい担い手に対する規制がないようなところでは厳しくしないと危ないという議論ですよね、今のはある意味で。それを信託法の中に持ち込んでくるというのは、非常に簡単に言うと、ちょっとこういう言い方は語弊があるかもしれないが、信託銀行に適用されるのは非常に緩くなって、それ以外は厳しいという、何となくちょっと変なことになるのでね。

 

 

 

  •  今、担い手という意味合いではなくて、基本的にはまさに信託の種類、類型というようなこと。

 

 

  •  だけど、そうすると民事はあれで、商事は緩いというね……、ここでは余り議論しない。

 

 

  •  感想めいたことなんですが、学会の縦割りで商法をやっているものですから、商事信託ということについては書いたことがあったんですけれども、きょう○○参考人がおっしゃっていただいたようなことについて書いたことがないものですから、感想を申し上げたいと思うんです。

 

 

 

○○参考人から正しく御指摘いただきましたように、商事信託についても改正の必要はあるとおっしゃって、きょうは○○参考人が御報告された分野について、おっしゃっている実質について私も全く違和感がないのみならず、ほとんど賛成であり、ぜひそういう検討がなされるべきだというふうに思います。

 

 

ただ、1点多少違うかもしれないと思いますのは、どこまでを信託法改正でやれるかということでして、実は、私の感覚では、商事信託の観点から信託法改正が求められるのは、現在の信託法が商事信託を阻害している面があって、それを特別法でこれまで緊急避難的に解決してきた面がかなりあるというふうに思っているからです。

 

 

例を挙げるまでもありませんけれども、受益権の有価証券化、多数決による信託契約の変更、その他信託法上必ずしも規定はありませんので、特別法でこれまで対応してきた。

 

 

今後もそれでもいいのかもしれませんけれども、そうすると、個別に全部特別法をつくっていかなければいけない、あるいは受益者多数の場合について言えば、特別法によってその対応は違っていたりしまして、したがいまして、そういう観点から言いますと、商事信託が今後発展していく上では、ほかにもいろいろな論点はあろうと思いますけれども、信託法をここで改正していただく必要があるという論点がかなり大きい。これは○○参考人も賛成してくださっているという理解。

 

 

 

 

今日、○○参考人がおっしゃったことは、私も将来ぜひ実現していただきたいと思うんですけれども、手短に申しますと、私のような法形式よりは機能を重視する感覚からしますと、障害になるのは信託法よりも次の3つだと思います。

 

 

 

 

 

第1は、相続法、代理人・後見法を含めての民法の体系、第2が業法、そして第3が税法だと思います。もうちょっと具体的に申しますと、先ほどの意思凍結、あるいは受益者連続というものを信託にだけ認めて、代理人、相続には仮に認めない。

 

 

そういう選択肢をしていいのかどうか。私の感覚では、信託を優遇するような、そして委任・代理・相続ではだめという政策判断というのはいいのかどうか、私は専門ではないのでわかりませんけれども、直感的には機能論者としては両方整備すべきように感じますけれども、その点はわかりません。いずれにしても、そういう問題があります。

 

 

 

 

 

それから、業法の問題は先ほどから出ていますけれども、信託銀行は今でもやれます。

 

 

ただ、信託会社になればできるからいいんですが、だれでも個人でもということになりますと、今、業法はないわけでして、仮にいいということになりますと、恐らく委任についても同じ問題があると思うんです。すなわち、きょうお配りいただきました新聞でいいますと、だれでもいいということになりますと、Bさんとここの新聞に書いてあるんですけれども、Bさんが受託者になるというだけの話であって、もしそこに家庭裁判所が選任した監督人のチェックという、新聞の図でこういうものが必要だという議論、これは○○参考人がおっしゃった議論で私も賛成ですけれども、そうだとすると、委任の場合であっても、信託の場合であっても、どちらを利用したとしても、こういう制度が必要になってくる。それはまさに後見制度との調整というふうにおっしゃった。

 

 

 

したがって、言葉はいいかどうかわかりませんけれども、先ほどもお隣の桜井さんと雑談していたんですけれども、今、投資サービス法とか金融サービス業法という法制度を議論しているように、業法として高齢者財産管理業法というかそういうものが必要になってきて、そういうものがないと、受益者保護という言葉でおっしゃいましたけれども、高齢者・利用者の保護が図れない。

 

 

その場合の法形態は、言わば商事信託の方で会社形態と信託形態の両方が--先ほどビークルという言葉をお使いになりましたけれども、つかれるのと同じように、こちらの方では委任形態もあるし、信託形態もある。ただ、どちらの形態をとったとしても、財産管理業をする人に対する業者規制、あるいはここでいう後見規制というんでしょうか、そういうものを横断的に整備しませんと、結局、一方を閉めると他方へ行くということになるように思います類似が両方の問題です。それから3点目に税法の問題があろうかと思います。

 

 

以上が私の雑駁な感想なんですけれども、もう一、二、もしお許しいただければ。

 

 

 

 

 

1つは、信託のニーズということですけれども、なぜ信託が余り使われないのかということで、先ほどリバースモーゲージということがありました。○○委員からは、そのときの時代の背景ということもあるという御指摘がありました。

 

 

私は、きょうの個人信託の分野で、なぜ信託が使われないのかというのは、いろいろ法制度上の理由もあると思いますけれども、やはり業法の理由とか税法の理由が大きくて、結局、信託を使うことがよりコストになるから、ほかの形が使われているという、そういう話だと思います。

 

 

 

逆に言いますと、なぜアメリカやイギリス、あるいはその他で信託が使われているかというと、信託を使わない方がよりコストになるというか、信託の方がより合理的であるということではないかと思います。

 

 

 

一、二例を挙げますと、例えば税ということで言いますと、これは○○参考人の本に書いてありますけれども、特定贈与信託、これはもし税の恩典がなかったら恐らく全く使われないと思います。

 

 

つまり、他益信託は贈与税というのは全く英米と反対の考え方でありまして、そういうところが非常に使われなくなっている、もっと一般的に言うと信託が使いにくくなっている大きな理由のように思います。

 

 

 

 

 

そこで、もう1点、例えば信託法を強めますと、濫用というところでの御指摘の実質は私も全く賛成なんですけれども、信託を閉めると、結局信託が使われないので、委任とかがほかへ行くのではないかというのが私の感覚なんです。

 

 

 

そこが非常に悩ましいところで、ですから、忠実に閉めるのであれば、高齢者相手のこういうサービスは委任の忠実義務も--忠実義務とは呼んでいませんけれども、現在の法律はやはり強行法規にしてもらわないと困るというのが私の感覚でして、それは先ほど申し上げました財産管理業法みたいなものでやるのか、あるいは私法のところで横断的にやるのかという、そういう話のような感覚がいたします。

 

 

つまり、信託だけを締めつけるとほかへ逃げていかれてしまうので、逆に今度いい信託は、かえって今度は使いにくくなるというのが悩みであるように思います。

 

 

これは、これまで商事信託の分野で主として議論してきましたけれども、きょうのお話を伺って非常に難しい話だなという感想を持ちました。

以上です。

 

 

 

 

 

  •  何かコメントがありますか。今のは○○委員の御意見だけれども。
  •  御指摘ありがとうございました。○○委員らしい御指摘で、大変示唆的でありがとうございました。

 

 

まず、意思凍結機能について、信託だけでやらせるというふうには私も考えておりませんで、コンペティターとしては、例えば任意後見契約というのもあるわけですので、当事者がどちらかを選択するということでいいと思うんです。

 

 

ただ、任意後見契約の方は御存じのように裁判所も関与するということになったので、そうすると、信託の方はどうか、完全に私的自治だけでできるかということとのバランスが大切だろうということを特に強調したかった点です。

 

 

民法学会の方は、そういう議論から全く別で、民法のレベルでもそれができるとまだ言っているんですね。ですから、当事者保護という点については、ここに民法学会の主要メンバーがいらっしゃるので、ぜひその点は今後検討していただければ。

 

 

ですから、受益者保護ということを考えながら、信託は決してオールマイティだと思っておりませんので、機能的に類似の制度を使ったらどうか。

 

 

 

それから、担い手というのも、これも非常に重要な点で、おっしゃるとおりです。担い手が育たなければ、結局信託も利用されない。私、個人信託と言いましたけれども、担い手がまだ十分に育っていない段階でどうするんだということがありますので、業法の方でもぜひ担い手、マル適マークのある担い手というものを育成するような形で、ぜひ今後とも考えていただきたい。

 

 

ですから、株式会社だけではなくて公益信託、公益法人も入れるとか、NPOはやや問題かもしれませんけれども、一定のレベルに達しているものは担い手としていくというようなこと。

 

 

他方で、法定後見と任意後見は全部裁判所が関与しているんです。信託も今度監督がある。他方、民法の世界という広大な世界があって、それは業者が何の規制もなくできるんですよね。そこが社会全体で見ると非常にアンバランスだなという御趣旨かと思いますし、私も全くそういうふうに思っています。

 

 

ですから、そこにどう網をかけていって受益者保護を図るかというあたりが一つ大きな課題かなというふうに思っております。

 

 

 

 

○○委員のお話を聞いて、商事信託と民事信託はそう違いませんよということを一番おっしゃりたかったのかなというふうにお聞きしました。

 

 

  •  ほかにいかがでしょうか。--きょうはいろいろおもしろい、また示唆的なお話をいただきまして大変ありがとうございました。

 

 

比較法的な観点からも、確かにヨーロッパの方は大分いろいろ動いているということは承知はしていたんですけれども、なかなかそこまで目が行き届きませんで、私も余り調べてはいないんですけれども、○○参考人の御研究等がいろいろありますので、そういうのを参考にしたいなどと考えております。

 

 

また、先ほどの忠実義務の任意法規化にするのか強行法規化にするのかというのに非常に典型的にあらわれているわけですけれども、非常に重要な問題提起もございました。

 

 

これから後半というんでしょうか、そこでいろいろ検討する際に十分検討していきたいというふうに考えております。

ということで、若干時間がございませんけれども、特にほかに御意見がなければ、きょうはこのぐらいにしたいと思います。

○○参考人、本当にどうもありがとうございました。

  •  それでは、これで終わります。

どうもありがとうございました。

-了-

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。おしゃれ泥棒観ました。」