〒903-0114沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地 TEL098-945-9268 受付時間平日9:00~17:00

司法書士宮城事務所 > お便り > 家族信託・民事信託 > 2016年加工編  法制審議会信託法部会  第15回会議 議事録

2016年加工編  法制審議会信託法部会  第15回会議 議事録
2016年01月31日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第15回会議 議事録

 

 

 

 

 

 

 

 

第1 日 時  平成17年5月20日(金)  自 午後1時14分

至 午後5時20分

 

第2 場 所  最高検察庁大会議室

 

第3 議 題

信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限について

受益者が複数の信託の意思決定方法について

受益権の譲渡について

受益権の有価証券化について

受益債権等の消滅時効について

私益信託における委託者の権利義務

契約による私益信託における委託者の相続人の権利義務について

信託行為の変更について

信託の併合(仮称)について

信託の分割(仮称)について

反対受益者の受益権取得請求権について

遺言信託について

 

第4 議 事 (次のとおり)

議        事

 

  •  ちょっと遅れましたが,まだいらしていない方もおいおい来られると思いますので,これから法制審議会信託法部会を開催したいと思います。

いつものように幾つかに分けて行いますので,初めに○○幹事から,進行方針について説明をお願いします。

 

 

  •  本日の進行でございますが,最初に,信託の変更,併合,分割に関する問題をさせていただきます。

 

 

それから信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限と,受益者複数の信託の意思決定方法の問題をしまして,3番目に,反対受益者の受益権取得請求権の問題をさせていただきます。

 

 

その後,私益信託における委託者の権利義務とそれから遺言信託の問題,最後に受益権の譲渡,有価証券化,受益債権等の消滅時効の問題ということで,全体を5つに分けてさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

 

 

 

  •  では,お願いします。
  •  では,まず第57になりますが,信託の変更の問題から御説明させていただきます。

 

 

これは,信託の事後的変更が必要となった場合におきまして,柔軟かつ迅速に変更が可能となるような規律を提案するものでございまして,提案項目ごとに重要な検討事項を含んでおりますので,順次説明してまいりたいと思います。

 

まず,前回提案の1及び2,今回提案の1及び2と同じでございますが,これは,合意による信託の変更については原則として委託者,受益者,受託者の3者の合意を必要としつつ,例えば,受託者の利益を害しないときには受託者の合意が不要となるとの規律等を提案しております。

 

 

これに対しまして,前回会議におきましては,受託者の利益を独立に取り上げること自体が妥当ではなく,受託者は委託者の意思,すなわち信託目的を実現する道具にすぎないのであって,信託の変更について受託者の合意を要件とすべきではない,それにもかかわらず受託者の合意を要件とするときには,信託の変更の場面において受託者が自己の固有の利益を主張することを容認することにつながり,受託者の忠実義務に明らかに抵触することになるのではないかとの指摘がされました。

 

 

 

 

 

しかし,受託者の善管注意義務,忠実義務につきましては,当初設定された信託行為の枠組みの範囲において履行されるべきものであって,受託者が自己の関与しない信託の変更によって,当初予定していた以上の義務を負わされることになるのは酷ではないか。

 

 

 

もっとも,受託者の辞任を容易に認めればよいのではないかとの指摘もされましたが,受託者の辞任を容易に認めてしまいますと,委託者や受益者としては代わりの新受託者を選任する時間的,費用的コストを要するのでありまして,受託者が信託の変更を契機として容易に辞任できるとの制度設計は,決して望ましくないのではないか。

 

 

 

また,仮に原則として受託者の合意は不要としても,結局,営業信託の受託者であれば,信託の変更のためには受託者の合意を必要とする旨の特約を設けることになるでしょうから,いわば素人の受託者のみが自己の関与しない信託の変更によって新たな負担を負うことになってしまうことになりかねず,均衡を失するのではないかなどの問題点を指摘できると思われます。

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

 

以上の点から,今回の提案におきましても前回の提案と同様の,3者の合意を原則とする案を提示するものでございます。

 

 

なお,前回申し上げましたとおり,ここでの「受託者の利益」と申しますのは,固有の利益ではなくて,「受託者が善管注意義務違反や忠実義務違反に問われることなく,適切に信託事務を処理し得る利益」と考えていることを改めて申し述べさせていただきます。

 

 

 

次に,前回提案3,通知に関する点でございますが,これは前回は,強行規定としまして,変更内容の通知は,変更の効力が生ずる日の前日までにしなければならないとしておりました。

 

 

 

しかし,そもそもこの通知は変更の効力自体に影響を及ぼすものではなくて,いわば信託の変更がされることについて当事者に警告を与えるとともに,判断の適正を担保するという趣旨にとどまるものであったことに加えまして,常に事前の通知をしなければならないとしますと,必要以上のコストが生じたり,事前の通知に拘泥する余り変更のタイミングを失するなどのおそれもございます。

 

 

 

そこで,今回の提案におきましては,通知は変更してから事後的に遅滞なく行えば足り,しかも通知義務自体がデフォルトルールであって,信託行為の定めにより通知自体を不要としたり,受益者が多数に及ぶ場合には,個別の通知をしなくとも,公告をもって対処するなどの方法をとることも許されるとの提案に改めるものでございます。

 

 

 

 

 

次に,前回提案4におきまして,信託行為において受託者,特定の第三者あるいは受益者に信託の変更権限を与えることも有効であることを前提に,その変更権限に一定の制約を加えるべきか否かというレベルでの提案をしておりましたところ,前回会議におきまして,そもそもこのような授権行為自体が有効かという,いわば出発点のレベルから問題提起がされました。

 

 

 

 

そこで,今回の提案におきましては,信託行為をもって特定の者に変更権限を授与することの可否につきまして,全面的に否定する甲案,全面的に肯定する乙案,原則として有効だが一定の限界があるとする丙案の3案を併記して,御意見を問いたいと考えております。

 

 

すみれ

「最初は誰が持っているんだろ。信託行為で生まれる権利かな。」

 

 

ただし,学説を拝見いたしますと,信託行為をもって特定の者に信託条項の変更権,英米法ではパワー・オブ・アポイントメントと言うのだと思いますが,これを与えること自体は否定されていないようでもございまして,これを一切否定する甲案は,資料29ページの例に示しましたとおり,実務上の要請にかなわないのではないかとの懸念がございます。

 

 

 

すみれ

「パワー・オブ・アポイントメント?」

 

 

 

最後に,今回の提案5は,裁判所による信託の変更に関して2案を提案しているものでございます。

まず,甲案は,現行法第23条にあります「受益者ノ利益ニ適セサルニ至リタルトキ」という要件を「信託の目的に適合しなくなることとなったとき」と改めた点を除いて,現行法を維持するものでございます。

 

 

これに対しまして乙案は,受益債権の権利の内容まで裁判所が変更できるとすることについては躊躇されるものの,信託行為の当時予見することのできない特別の事情によって変更の必要が生ずるのは,信託財産の管理方法のみに限られるわけではないと思われることに配慮したものでございます。

 

 

 

すなわち,30ページの例に挙げました多数決制度の導入ですとか自己執行義務の緩和など,いわば管理条項にはとどまらないものの,分配条項には達しない,中間的な信託運用条項とでも言うべきものにつきましては,一定の要件のもとで裁判所による変更を許容するものでございます。

 

 

 

確かに,多数決の導入ですとか自己執行義務の緩和という点につきましても,委託者の目的ですとか第三者に対する委託の相当性の有無などについての実質的な判断が必要になるわけでございますが,受益債権の内容を裁量的に変更できることに比べれば,その判断はなお容易ではないかと思われるわけでございます。

 

 

 

しかるに,裁判所による乙案のような事項の変更も許されないとすれば,信託当事者の私的自治で対応できない限り,当該信託は目的不達成により終了せざるを得ないことになると思われまして,受益者の利益にかなわないことになってしまうのではないかと懸念されるわけでございます。

 

 

 

なお,前回会議におきましては,現行法第23条にある「受益者ノ利益ニ適セサルニ至リタルトキ」の要件についても,より明確化すべきではないかとの指摘がされました。

 

 

 

この点につきましては,法文上,対応可能な限度として「信託の目的に適合しなくなることとなったとき」と改めることを提案するものでございます。

 

 

 

これは,例えば受益者が多数の信託におきましては,受益者の利害はそれぞれ異なり得ることに鑑みますと,総受益者の利益に適合するか否かは必ずしも明確ではないのに対しまして,委託者の定めた信託の目的については,受益者の多寡にかかわらず一義的に明確なはずであって,判断基準としては,より明確ではないかと考えられるからでございます。

 

 

 

以上の諸点,特に信託行為をもって特定の者に変更権限を与えることの可否及び範囲の問題,それから,ただいま申し上げました裁判所による信託の変更の範囲の問題を中心に御審議いただけるとありがたいと存じます。

 

 

続きまして,信託の変更の特殊類型として,信託の併合と信託の分割の問題について御説明いたします。

 

 

定義は前回の資料に書いたとおりでございまして,今,申し上げましたとおり,いずれも信託の変更の特殊類型であると考えられますが,現行法上は規定もなく,いかなる手続によるべきかが明らかではないために,手続を明確化するためのルールを設けることといたしました。

 

 

 

第58,第59とも,前回提案からの検討点は共通して2点でございますので,あわせて御説明いたします。

 

まず第1は,前回会議における指摘を踏まえまして,信託の併合,分割の手続において明示すべき事項はデフォルトルールであることを,分類上,明らかにしたものでございます。

 

 

 

その結果,例えば信託の併合ですとか吸収信託分割の場合におきましては,他の信託の内容を明示しないことも可能になるわけでございます。

 

 

もっとも,その場合には,受益者としては,このような信託の併合や吸収分割には同意することが困難となり,結局,提案に係る併合や吸収分割が実現できなくなる可能性が高くなるだけのことだと思われるわけでございます。

 

 

 

第2に,前回会議におきまして,信託の併合や分割が会社の合併や分割に例えられるべきものであるとすれば,会社の合併無効の訴えや分割無効の訴えに準ずる制度を設けるべきではないかとの指摘があった点についてでございます。

 

 

 

確かに,このような制度を導入することとすれば,法的安定性には資することになると思われます。

 

 

しかし,他方,会社の合併や分割のように法人格をまたぐ場合と異なりまして,信託の併合や分割につきましては,いずれも受託者という同一の法人格の内部で行われるものでありまして,第三者から見ますと契約相手方が変更されるわけではなく,それだけ第三者に対する影響は少ないと思われます。

 

 

すみれ

「受託者って法人格なんだ。」

 

 

 

また,仮にこのような制度を導入するとしても,会社のように合併または分割の登記をもって訴訟提起期間の起算日とする場合と異なりまして,登記の予定されていない信託の併合,分割の場合には,どの時点をもって訴訟提起期間の起算点とすべきかが難しいといった現実的な問題もございます。

 

 

 

 

 

以上のような問題点を考慮しても,なお無効の訴えの制度を設ける必要性が高いと言えるかどうかにつきまして,御審議をいただければと思います。

 

 

なお,第59に関して,36ページの※に記載してございますが,信託の分割によって信託債権者を信託財産によって切り分けることに関する規定を設けるか否かについては,そのニーズを踏まえて検討したいと考えておりまして,実務上,このようなニーズが存するかにつきまして,前回会議に引き続き御教示をいただければと存じます。

以上で終わります。

 

 

  •  それでは,変更から今,説明があったところまで御議論をお願いしたいと思います。

いかがでしょうか。

 

 

 

  •  では,変更について3点申し上げます。

基本的には前回申し上げたことでございますので,簡単に申し上げます。

まず1点目は,3番の変更の通知のところでございますが,先ほど○○幹事からお話がありましたように,「効力を発する前日までの通知」というのを「遅滞なく通知」と変更していただいた点と,あと大きな点で,強行規定からデフォルトルール化していただいたという点につきましては,前回この場でお願いした点でもございますので,非常に歓迎しておりまして,ぜひとも維持をお願いしたいと考えております。

 

 

 

 

2点目は,4の,信託の変更に係る別段の定めを置くかどうかというところでございますが,これについても前回申し上げたとおり,変更権をだれかに与えることも含めて,特段の制約を行わない乙案を支持したいと考えております。

 

 

3番目は,5の,信託行為において予見することができない特別の事情が生じた場合の特例についてでございますが,これはもう実務上の観点から見た場合については,当然その管理方法以外についても,これも○○幹事からお話ありましたけれども,いろいろな局面で判断に困ったり,デッドロックに乗り上げたりするようなことが考えられまして,そのときに裁判所の関与する変更というものがあればいいなということで,そこの範囲についてはできるだけ広ければありがたいと考えております。したがいまして,これについても乙案を支持したいと考えております。

 

ポリー

「災害などですかね。」

 

 

ただ,ここに括弧書きで「(受益債権の変更に係るものを除く。)」と書いてありますけれども,先ほどの御説明によりますと,例えば分配事項的なものを除くというような御趣旨だと思うんですけれども,ちょっとそこら辺は読みづらいところがございますので,工夫をお願いしたいと考えております。

 

 

 

  •  2番目について御質問が1つと,4番目,5番目についてコメントを申し上げたいと思います。

基本的には,前回会議において申し上げたことでございまして,基本的には任意規定化を追求していきたいという立場から申し上げるわけでございますけれども,まず,2に関しての質問でございます。

 

 

ウとエについては受託者の関与しない変更もあり得るという話でございますが,これ自体も信託行為において任意化できるのかどうかということでございます。

 

 

 

例えば,受託者に柔軟な対応ができないのを承知で無理に受託者に依頼したような場合には,受託者サイドからすると,信託行為で,受託者の同意がない限り変更できないと規定したいところもあるのではないかと思っております。

 

すみれ

「無理な依頼は受けないってことはできないのかな。」

 

 

また,これは受託者の利益を害することが明らかという基準が必ずしも実務上,明確でないということもあって,受託者からすれば,この内容を個別具体的な事案に応じて定義ないしは縮小・拡大する必要性もあるのではないかと思っております。

 

 

 

また,ここで言う受託者の利益というのは,先ほどの御説明では,専ら受託者としての立場の義務を追求する観点から定義されるという御説明でございましたけれども,仮に,例えばこの変更があった場合に,受託者個人としての報酬,ないしは前回も申し上げましたように,例えばシステムの投下とか人員の拡大であるとか,どちらかというと受託者個人の損益に影響を及ぼすようなことがあった場合に,やはり受託者のサイドからすれば,ある一定の限度をあらかじめ持っておきたい。

 

 

または,そういうことを条件として信託の受託者として当初,応じたいというようなニーズがあるのではないかと思ったものですから,この御質問を差し上げる次第でございます。

 

 

 

 

次に,4番目の甲乙丙案でございますけれども,これは先ほど○○委員からも御発言がありましたけれども,乙案を支持したいと思っております。

 

 

もちろん,信託の柔軟性を高めること,それから,契約自由の原則,これにはいろいろ議論があるかもしれませんけれども,やはり実務サイドからは,乙案がよろしいのではないかと思っております。

 

 

加えて,実務的にも,例えばどうしても専門家に頼みたいというようなこともあるわけでございますので,そこにおいて,あえて一定の限度を置くことが必要なのかという疑問もございます。

 

 

最後に,5でございますけれども,これについてはまだ結論は出ておりませんが,今のところは両論あるのではないかと思っております。

 

 

 

先ほど○○委員から,信託受託者の立場からの御意見があったかと思いますけれども,ただ,その受託者の立場を思った場合に,例えば乙案が採用された場合に,受託者の管理能力を超えた変更が認められる場合もあって,このような場合に,簡単に辞任ができるのであればともかくとして,それができない,または適当でない場合に,対応困難な場合も生じるのではないかという懸念もあるのではないかと思っております。

 

 

 

他方,受益者等の立場からすれば,やはりデッドロックに陥った場合に柔軟な対応ができる。それもいろいろな場合において対応できる。

 

 

 

信託終了というのは一つの手ですけれども,それが不適当でないという場合には,第三者機関による公正な判断を確保して幅広に対応できる,そういう枠組みができるのが望ましいという考え方もあるのではないかということで,両論あるのではないかということでございます。

以上です。

 

 

 

  •  御指摘の点,御質問ありましたウ,エにつきましてもデフォルトでして,受託者の同意を必要とすることを定めることは可能だと考えております。

 

 

  •  変更権を第三者に与えるというあたりについては,ほかにいかがでしょうか。

 

これは,受託者に変更権を与えた場合に,受託者がその権限を行使するについては,受託者としての一般的な義務というのは当然のことながらかかってきますよね。

 

 

 

  •  はい。それはかかってきますね。

 

 

  •  第三者に権限を与えたときに,その第三者のいろいろな義務というのは。

 

 

 

  •  それは,もちろん善管注意義務とかそういうものはかかりますけれども,それはあくまでも委託者との関係でございますので,例えば受益者との関係での義務というのは委任からは出てきにくいので,別途何らかの制限を課すべきか,そこは基本的に自由でいいかという観点からの質問でございます。

 

 

番人

「委託者が持っていた権利なんだ。委託者と委任契約を結ぶのか。」

 

 

  •  そこはちょっと,全く受託者でない第三者に権限を与えた場合の一つの問題だろうという気がしますね。

いかがでしょうか。

 

 

  •  今の変更の問題について,意見を述べさせていただければと思います。

以前に述べさせていただいたことと重複するところもあるかもしれませんけれども,甲乙丙ある中では,丙案を支持する立場から意見を述べたいと思います。

 

 

先ほど来,乙案を支持する意見が出されておりますが,乙案の解説の中にも,民法の一般原則に照らして相当でないと考えられる信託行為の定めについては効力が否定されると記載されております。

 

 

 

例えば,この受益権取得請求権の原因事由として幾つかの点が挙げられておりますけれども,こういった信託の目的の変更でありますとか,あるいは受益権についての重大な変更がある場合には,やはりこういったものを第三者あるいは受託者に委ねるのは,この一般原則にも抵触する場合が相当出てくるのではないかと思われます。

 

 

 

そういった観点から,「民法の一般原則」といった言葉が使われていますけれども,この変更権の定めについて限界があるんだということについては,乙案とした場合でも前提となることでしょうし,また,そういった無効となる場合といいますか,効力が否定される場合がある程度,類型的に把握できるものであれば,やはりそれは規定の中にきちんと定めておいた方がよろしいのではないかと思われます。

 

 

 

 

特に,一般民事信託の場合を考えますと,法律のその規定を見て,何でもできると勘違いするといったことが起こっても困りますので,どういった場合認められて,どういった場合に認められないかということについては,やはり一定の基準といいますか,そういったものはきちんと定めておいた方がよろしいのではないかと考えております。

 

 

 

番人

「一般民事信託だ。嫌いな人は受益者にしないとか、税金が安い方の受益者を選ぶとかかな。」

 

 

それから,信託の柔軟性ということがずっと言われてきておりまして,これは私も基本的には賛同するところですけれども,ただ,やはり信託の変更というのはかなり,何といいますか,信託の内容が変わるということで,受益者にとっては影響の大きいところですし,受益者の予測可能性という点も重要であろうと思います。

 

 

それから,普通の契約関係においては,やはりその契約は拘束力をもって守られるべきものというのが原則であろうかと思います。

 

 

ですから,こういった原則に対して例外を認める場合には,やはり契約自由というのは一方でありますけれども,他方で契約の拘束力といいますか,私的自治といいますか,そういったものと表裏の関係になってあるものだと思いますので,そういった観点からは,ある程度きちんとした規律を設けるべきではないかと思います。

 

 

 

 

 

  •  その限界をどういうふうに設定したらいいかというあたりが,なかなか難しいわけですね。

 

 

いろいろな観点から議論ができるんでしょうけれども,一方で,信託の変更そのものの問題とは違うと思いますけれども,裁量信託というんでしょうか,これは信託自体を変えるわけではなくて,信託の枠組みそのもので受益者等を事情に応じていろいろ変更することができるというタイプの信託というのがあって,これは欧米などでも一般的に認められている。

 

 

 

例えば,子供たちに受益権を与えていろいろ給付するわけですけれども,事情の変更によって,ある子供については当初よりも多く与えなくてはいけない,ある子供については要らなくなった,そういうときに,まさに受益権の中身を実質的には変えるわけですけれども,それはもう信託全体として,その受託者--の場合が多いでしょうけれども,受託者に裁量権限を与えて受益権の中身を変えることができるような信託をつくっておく。

 

 

 

これは,理論的にはここで言う信託の変更そのものとは違うのではないかという気がするんですけれども。

 

 

 

 

 

信託の変更というのは,今の裁量信託とオーバーラップはしますけれども,信託の変更というのは,狭い意味で考えると,当初こういう信託として予定していたものが,その仕組みではうまくいかないという事情のもとで,信託の枠組み自体を変えてしまう。

 

 

 

ただ,実際上さっきの裁量信託と紙一重ですよね。そうすると,その枠組みを変更するということも,ある程度認めていいのかもしれない。

 

 

裁量信託というものがあるぐらいだから認めてもいいかもしれないけれども,その限界はどこまでがいいのか,どうも私もいま一つはかりかねているところです。

 

 

ポリー

「目的の範囲内、ですかね。抽象的ですが。」

 

 

先ほどちょっと質問の形でいたしましたけれども,受託者だからいいというわけではありませんけれども,受託者に権限が与えられているときには,一応信託法上のいろいろな義務でもって拘束は加えられていて,それによって受益者が保護される形になっていますけれども,完全に別な第三者だということになると,信託法のいろいろな義務が及んでこないために,ちょっと受益者の保護が薄いのかなと。

 

 

 

そういうものをちょっと関連して,いろいろ柔軟にも考えてみたんですけれども,やはり相変わらず,限界をどこら辺にするかがどうも難しいというのが私の感想です。

 

 

何か御意見いただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  遅れてきまして御説明を伺っていないので,重複するかもしれませんが,今の○○委員のお話とも関連して。

 

 

29ページに乙案についての御説明がありまして,一般的には,信託法上は有効だとして,しかし,それを限定するものがあるとすると,より基本的な民法の一般原則による限定。

 

 

それ以外に,信託法以外の法律において何らかの限定をすることがある,この2種類の限定を加えることを考えていらっしゃるんですが,民法一般の原則というのは大体わかりますが,信託法以外の法律における縛りというのは,具体的にどういうことを考えていらっしゃるんでしょうか。

 

 

 

それによって,今の限界についての線引きについても示唆が得られるのではないかと思うんですが。

 

 

 

  •  特に「この法律」というのを,今,具体的に念頭に置いているわけではないんですが,例えば消費者保護に関する法律などで,受益者を保護するというような一定の法規範があれば,それが一つの縛りになってくるのではないかといったことが考えられるわけでございます。

 

 

 

  •  そうすると,信託法の基本法的性質というものが曖昧になってきて,それと別に消費者保護などが働いてくるということだと思うんですが,むしろそれを信託法の中に取り入れられる部分はないんだろうか。

 

 

それがあるとしたら,そこが線を引く要因になるかなという気がするんですけれども。

 

 

 

  •  そうですね,できるだけ--というか,どこまでできるかは別として,何か信託の法理の中でうまく限界が見つけられればいいと思います。

 

 

  •  まさしく今の点に重ねてできる質問なので,よかったと思っているんですが,消費者保護に関する法律とおっしゃいましたけれども,より一般的な法として消費者契約法があって,消費者契約法の内容規制に関する一般条項である第10条で,契約内容の変更権限を特に契約の相手方に付与するといったタイプの条項が,少なくとも消費者にとってはどのような契約内容になるかわかりませんので,不当条項の一例として挙げられることが少なくないだろうと思います。

 

 

 

つまり,この点についてはもちろん争いの余地がかなりあるところだろうと思いますけれども,仮に消費者契約法第10条が一般条項として適用される可能性があるとするならば,ここから先は質問ですけれども,この消費者契約法第10条とここでの議論との関係は,どのように理解すればよろしいのでしょうか。

 

 

もう一つ,つけ加えて言いますと,29ページに書かれてあることの読み方なんですけれども,信託行為で別段の定めをすることができる場合に,別段の定め自体の効力の問題と,別段の定めに従って実際に行われた変更が不当なものか,不当でないのかという問題があって,この29ページの甲案の「こういう例があるではないか」ということでお書きになっているものは「こんな変更だったら問題ないでしょう」というタイプで,どちらかというと,後ろの方を考えておられるんですが,29ページの下の方になりますと,定めの効力の話になっていて,ちょっと混線があるのかなという気がしないではありません。

 

 

 

 

 

ですので,定め自体の効力を否定する可能性というのは,実は先ほどの消費者契約法第10条の話でして,その問題と,定め自体は包括的に定めて,それ自体は仮に無効としないとしても,実際に行われる変更によっては何か規制をかけてくることがあり得るのかというあたり,ちょっとわかりにくい質問で恐縮ですが,2点,お聞かせいただければと思います。

 

 

すみれ

「2つに分けて考えるのか。」

 

 

  •  明解な御指摘だったと思いますけれども,何か今の段階で。

 

 

 

  •  消費者契約法の解釈につきましては,「受益者」というのが直接出てきていないので,直ちに適用されるかどうかわからないところでございますが,おっしゃるとおり変更についても,一つの考え方は消費者契約法的な縛りがかかって,それが変更の限界を画するという考え方は当然あると思っております。

 

 

 

ただ,もう一つは,後で議論になるわけですが,消費者保護というような精神を,変更権限の制約という方向ではなくて,その変更を踏まえた受益権取得請求権を強行的に,一定の場合に認めるという方向で生かしていくこともできるのではないかと考えておりまして,事務局としては,変更権限は幅広く認めつつ,受益権取得請求権を強行的に認めるという方向での解決をすることではいかがだろうかと。

 

 

今,○○幹事や○○幹事がおっしゃった点も踏まえて,そういう解決の方向で御納得いただくことはできないかというのが一つの回答でございます。

 

2つ御質問とおっしゃいましたけれども,1つしか思い当たらなかったので,失念しているところがありましたらおっしゃっていただければ。

 

 

 

  •  今の点につなげたもう一つの質問ですけれども,仮に乙案をとるとしますと,信託法にはどう書くんでしょうか。つまり「別段の定めができます」ということを明確に書くおつもりなのか,それとも何も書かないで,しかるべき解説書などに「デフォルトです」とお書きになるか。書き方によって,消費者契約法第10条との関係をどう見るのかという点が問題になるかなと思います。

 

 

すみれ

「デフォルトってよく使うね。」

 

 

消費者契約法は,あくまでも消費者契約に関する一般法ですので,他の特別な法律で別段の定めがあるときは,そのルールによるというようなことがあるのかなと思います。

 

 

 

不当条項について,本当にそう言えるのかということが次の問題としてあることはあるんですけれども,それとの関係で,信託法でどういう書き方をされるのかというのは,法律間の関係という意味で気をつけておく必要があるのかなと思います。

 

 

 

  •  書き方としては,1の3者の変更が原則だというものに,特則という形で「別段の定めを設けて変更権限を付与することができる」というような書き方をしていくのかなというのが,現時点での考えでございます。

 

 

 

  •  それによって,消費者契約法との関係では,少なくとも信託法ではこのような条項は有効であるということを,法律自体が宣言したと見られるということなんでしょうか。

 

 

 

  •  そうですね,信託法としては有効で,ちょっとその関係はつまびらかではないですが,一種の特別法ですか,消費者保護の観点からの特別法の縛りがまた別途,その変更権限にかかってくるかもしれない。それは信託法の外の話だという感じがいたします。

 

 

 

  •  あとは,せいぜい公序良俗のような一般法がかかってくるだけだという御理解ですか。

 

 

 

  •  公序良俗とか,あるいは消費者保護,監督的な規制が別途かかってくるのではないかという考えでおります。その消費者保護のような精神も信託法に書き込む,そこまでは予定しておりません。

 

 

 

  •  さっき,2点目の質問は何かということでしたが,要するに,「別段の定めをすることはできる」と信託法で書いて,実際の信託行為で,これこれの事項については,例えば受託者ないしは第三者にその変更権限を与えるという条項が書かれる。

 

その条項の効力は,今の観点からすると有効だということで,それで終わりですよね。

 

 

  •  それで終わりでございます。
  •  それで,実際に行われた変更が不当なものか,不当でないかというようなお話は,受託者との関係では,忠実義務違反の問題はあるけれども,変更そのものの効力は維持されるという御理解ですか。

 

 

 

  •  それは維持されると考えております。あとは責任の問題だと思います。
  •  わかりました。

 

 

 

  •  議論を整理するための御質問ですけれども,先ほどの議論の中で,要は民法の一般原則だけで十分なのかどうかということで,言葉を変えれば,信託法独自の制限をする必要性があるのかどうかということでございますけれども,例えば,個々の変更行為において委任をする,通常の民法上の委任をするといった場合と比べて,本件のように,信託行為であらかじめ決めておくこととどこが違うのかということでございます。

 

 

 

一応包括的に,かつ受益権が譲渡された場合にはそれもくっついていくという話でございますので,必ずしも個々の委任とは同じではないことはわかりますけれども,そこを信託独自の制限をする必要性がどこまであるのかということでございます。

 

 

 

 

また,ちょっと逆の立場からの御質問ですけれども,仮に個々の委託をした場合に,民法ならば委託ではできる。

 

 

 

だけれども,信託においてこのような委託をした場合に,信託法の特別な法理でもって民法の委託行為が制限され得るのかどうかということも疑問になったりいたします。

 

 

すみれ

「民法の委託が信託法(理)で制限される可能性か。。」

 

 

 

議論の整理のために,教えていただければと思います。

 

 

 

  •  今の点に関しては,民法でもって,全く信託という枠組みがないところでどういう委託契約をするか,これはもう民法だけの問題だと思いますけれども,信託でもって基本的に受益者に何か利益を与えて,その利益を保護するために受託者にいろいろ義務などを負わせている,そういう構造があるときに,それを前提として別途,委託者との間の契約でもって自由にそれを変更させるような権限を与えるのが適当なのかどうか。

 

 

番人

「委任でも受任者の名義にして、受任者の計算とは別にできるのかな。できそうではあるね。」

 

 

 

 

そういう意味では,やはり信託法の基本的な枠組みとの関係で多少制約があるかもしれない,そういうことですね。

 

 

  •  いろいろな点を考えると,個々の取引というのはいろいろあるわけですから,信託法ゆえに,その制限をしなければならないという事由があるのかどうか。

 

 

 

 

 

  •  ですから先ほど,必ずしも信託法の内部にそういう制約を設けることは─検討した方がいいけれども,具体的にどんな制約があるかということについては,今のところまだ抽象的な議論しかされていませんけれども,信託法内部の問題として制約があるかもしれないというのは,繰り返しになりますけれども,やはり信託で受益者に基本的に受益権を与えている構造のもとで,それを何か別の--と言うと変だけれども,もともと設定行為のときに決めるわけですけれども,それを奪えるような構造が果たしていいのかどうかということですね。

 

 

さっきの消費者契約法との関係は,一たんこういうものが有効だということは宣言して,もう不当条項の問題にはなり得ないということではないんでしょう。やはりもう一回……,どうですか,○○幹事。

 

 

 

  •  消費者契約法第10条のみだとしますと,理解の仕方はいろいろあるだろうと思いますけれども,任意法規に反して一方当事者に不当に不利で,信義則に反してということで,仮に善意に解すれば,乙案でこう定めているということは,法律自身が少なくとも一方当事者に不利でないし,信義則に反しないものだという性質決定をしたというぐらいにしか理解できないのかなと思います。

 

 

消費者契約法第10条自体の特別法というのは,ちょっと考えにくくて,不当条項に当たらないという立法者の判断と読むしかないのではないでしょうか。

 

 

そんな読み方で本当にいいのかと言われると,すごく心配にはなるんですけれども。

 

 

 

  •  私の説明が非常に不適切だったと思うんですが,私の考えていたのは,あくまで信託法としては授権できる。

 

 

しかし,授権の有効性というのは民法の公序良俗とかもありますし,場合によっては消費者契約法の精神から,そのような授権が一種の公序良俗に反するものとして外的に無効になることはあるという意味で,世界が違うといいますか,一般法が信託法,特別法が消費者契約法みたいな理解をしているわけでございます。

 

 

 

  •  ちょっとさっきのと違って,消費者契約法によってさらに制約されることがあり得るという……。

 

  •  あり得ます。

 

  •  ただ,消費者契約法第10条が一般条項なので問題なんですけれども,しかし,何が第10条に該当するような条項かということを,もう少し類型化して挙げるという作業が行われつつあると思うんですが,そのときに契約内容の変更権限を,少なくとも契約の相手方に付与するというような条項は,第10条の典型的な不当条項の一例であるという解釈が仮に確立しているとなりますと,これとの関係は,今の御説明だとすごく難しくなるのではないでしょうか。

 

 

 

  •  そこがどうもさっきから,消費者契約法との関係で,乙案のような条項を設けたことの意味をどう理解するかが難しい問題ですね。

 

 

 

  •  一般的に,変更権限を少なくとも相手方に与える条項は不当条項だというのは,必ずしも根拠のない解釈論ではなくて,比較法的に見ても不当条項の例としてよく挙げられる例の1つですので,やはりそれとの関係はもう少し詰めておく必要があるのではないかと思います。

 

 

 

 

  •  ○○幹事の御意見は,もうちょっと詰めた方がいいと思っていますけれども,ただ,ちょっと逆のことを言うかもしれませんけれども,他方で,信託という契約における当事者というんですかね,それが一体何なのかということ。

 

 

受託者に仮にそういう権限を与えても,受託者というのは当然には,契約関係における対立的な当事者というわけでもないところもあるものですから,そこが難しい。

 

 

そういうことを考慮して,信託においてこういうふうにだれかに与えるのは,契約の構造のもとで相手方に与えるのとは違う,そういう意味で,一般的に有効だという理解の仕方もあり得るかもしれませんね。

 

 

 

しかし,ちょっと……

  •  ちょっとよろしいですか。

○○幹事から申し上げたことの補足にすぎないかもしれませんが,例えば消費者契約法第10条,○○委員も今,御指摘になられたとおり,契約の当事者でない受益者について,消費者契約法の第10条がどういうふうに適用になるかというのは,例えば,これが第三者のためにする契約だったらどうなるのだとか,そういうことを調べたのですがよくわかりませんでした。

 

 

 

したがって,現時点でどういうふうに適用になるかは率直に言ってわからないのですが,仮に何か適用になると考えたときにも,消費者契約法第10条といいますのは,その契約が公序良俗,民法の第1条第2項とか一般原則で判断するときに,契約の一方当事者が消費者であれば,それが公序良俗に反するか否かを判断する際にそういうものを斟酌して,それで無効とすることもあるよという規定かなと思っておりまして,例えば,第三者に変更権限を委ねるときの受益者が仮に法人だったりしたような場合には,それは,信託法においてそれが無効になるといったことではないのだと思うのですね。

 

 

したがって,先ほど○○幹事が申し上げたそれが信託法上は有効だと判断されるという意味は,例えば法人とか,仮にこういう行政法規なかりせばあったであろう状態。

 

 

例えば,消費者契約法は民法のほかにあるわけですから,民法があって消費者契約法があるように,信託法があって消費者契約法的な法律があると考えれば,この消費者契約法的な,行政法規的な法規がなかりせば有効だというようなものだって考えられて,そういうものは,信託法の上においては有効だと考えていけばよいのではないか。

 

 

 

それで,仮にこういう行政法規が適用になると考えて,一方の受益者が消費者というような弱い人たちですねというようなことで考えれば,一般原則との関係で,そういうものは無効だということもあり得るということかなと。

 

 

したがって,それは信託法のほかの法律が,信託法がとりあえず,こういう信託法案に別段の定めで置くことができますよという世界を開放した上で,その際ほかの行政法規でどういうふうに制限を加えていくかというのは,また別の法律において考慮されるべき問題だというのが乙案の考え方かなと理解しておりましたが。

 

 

 

 

 

  •  消費者契約法は,必ずしも行政法規というわけでもないのでね。
  •  行政法規というのは,ちょっと言い過ぎかもしれませんが。

 

 

  •  ただ,さっき私が言おうとしたのは,例えば,普通の自益信託で信託銀行に投資としてお金を委託するというタイプで,それを消費者が委託するということになると,これはもう典型的な消費者契約のパターンなので,恐らくそういうところで一番シビアに消費者契約法第10条との間の相克というのが出てくるんだと思うんですね。

 

 

ポリー

「たしかにですね。」

 

 

 

それと違って,民事信託のタイプかもしれないけれども,子供たちの間で財産を分配するために受託者が親から頼まれて管理しているなんていうことになると,これはまた消費者契約法の世界とは少し違うかもしれないということで,消費者契約法が関連するタイプの信託と,余り関連しないタイプとの信託があるのではないかとちょっと感じます。

 

 

 

 

  •  信託の変更のところで,消費者契約法第10条との関係がどうなるかというのは,前から考えていたんですが,まず当事者の問題で,受益者と受託者は普通の契約関係にはないので,そこだけで,消費者契約法第10条はそもそもかなり適用されにくい関係にあるのではないかと思っているんですね。

 

 

それから,信託行為で「別段の定めがある場合は」という例外を設けた場合に,消費者契約法第10条の不当条項の規定で,要するに,何も書かない任意規定と比べると,ちょっとまた適用の関係で,別個の1つの,法律で別段の定めを認めているという方向の評価がされると,やはりその適用がされにくい方向にいくことだと思います。

 

 

 

かつ,受益者の立場からすれば,自分の知らないところで信託の変更がされてしまうような条項が入っている場合に,それを原則として受け入れなければならないのかどうか,そういう問題を考えれば,受益者と受託者の間では直接契約関係がなくても適用されるんだ,そういうふうに消費者契約法第10条のあの規定を信託の世界で読みかえた規定をつくればはっきりして,しかも,受託者が事業者で受益者が消費者の場合にはそうするというふうにすれば,かなりはっきりするのではないかとは思うんですね。

 

 

 

ですから,何らかの形でこの乙案というか,結果的には丙案がいいと思うんですが,その場合,制限のつけ方として,やはり事業者対消費者の契約の場合の限定が何か考えられないか。

 

 

 

それは,消費者契約法第10条と同じ結果をここに当てはめるというふうに信託法で手当てしないと,消費者契約法第10条自体が適用されない。その前の形式的なところで排除されてしまうのではないか,そんなふうに考えます。

 

 

 

  •  今,消費者契約法との関係が出ていますが,もう少し一般的に考えた場合にどうなるのかということなんですが,一般論として,契約の効力として内容が確定しているということが1つあると思うんです。

 

 

 

それを一方当事者が,あるいは第三者が自由に変更できるということになると,内容の確定性との関係が問題となってくるだろう。

 

 

 

その場合の対応の仕方としては,内容が不確定であるがゆえに無効になるという考え方と,それとは別に,有効なんだけれども確定の仕方によって,それが濫用にわたるときはその効力を認めないという2つの方向が比較法的にもあるのではないかと思うんです。

 

 

 

この場合に,もし有効とした上で濫用を限定するという発想でいった場合には,何が濫用かの基準として,例えば今の消費者契約法の発想も出てくるでしょうし,さらに根本的に言えば,信託の構造というものがそれを画する基準になるのではないかというような,より一般的な整理の仕方もできると思います。

 

 

 

 

  •  今のは,いわば変更権を行使する段階で制限がかかってくるというふうに理解しましたけれども,必ずしもそういう意味ではありませんか。内容が不確定になるので無効になるとおっしゃった方の問題点が残されていると思いますけれども。

 

 

 

 

  •  もともと内容が全く確定していなくて,「何かいいものをあげる」という合意は,契約としては効力がない。

 

 

一応「何かをあげる」とした上で,あげる内容は一方的に,自由に変更できるとなると,それ自体効力がないという対応も可能であろう。

 

しかし,そうではなくて,一たんそれを有効とした上で,その決定の仕方が濫用的な場合はその効力を奪うという方向もあるわけでして……

 

 

  •  やはり権限行使の段階での話ですね,後者は。

 

  •  そうですね……。段階というよりも,特にフランスでは,もともと代金を決めていない契約は無効だというのがあったんだけれども,それを一方的に無効にするのではなくて,濫用の問題だというように変わってきたということがありまして,それをヒントに考えてみたわけです。

 

 

 

 

 

  •  私も乙案に賛成の立場から,○○委員のお話について意見を述べたいと思うんですけれども,○○委員が想定されているケースとはちょっと違うのかもしれませんが,流動化の場合で,実務上,乙案のような規定があった方がいいと望むのは,今,お話になられているような,かなり広い権限といったものを望んでいるわけではありません。

 

 

要するに,受益者の同意を取りつけるのは実務上,非常に大変だというところはもちろんあるんですけれども,今までの信託契約の変更例などを見ましても,具体的な変更の必要性が出てきたとき,想定していなかった事態になったときに,受益者の利益に適合することが明らかかどうかといったところが,やはりこれ,いいのではないかという議論と,いや,ちょっとでも利益に抵触するようなことになると問題になるのではないかということで,やはり委託者と受託者の間でかなり議論になってしまうということがあるわけですね。

 

 

 

その中で,今までであればかなり慎重を期して,受益者も含めて合意するというような形でやっているわけですけれども,そこのところが明確な範囲,ある程度の裁量権があれば,もっと安心してこれを使えるなといったことがあるので,乙案のような形を非常に望んでいるということでございます。

 

 

したがって,今,問題になるような幅広い権限というのは望んでいないし,○○委員が書かれた現代信託法にも,余り広い権限を認め過ぎると当然,受益者はこれを利用しないだろうということが書いてございますけれども,当然そういう事態,後から市場によって規律されるところもございますし,流動化の場合は当然,受益権について格付とかそういったものを付与しておりますので,そういったところで余りにも広いものがあれば,当然受益権が不安定なものになるわけですから,当然これは許されない。

 

 

したがって,そういう市場とか格付の圧力によって大きな権限を与えるということには当然ならないと思われますので,そういった場面も想定していただいて,ここの議論を進めていっていただいたらいいのではないかと思います。

 

 

すみれ

「市場と格付けの圧力、か。」

 

 

  •  結論はちょっと違うところもあるんですが,論点は今の○○委員と近いです。

 

そもそも論のところで,一応3者合意となっていますけれども,多数当事者の契約変更をどうするか,実務でよく問題になりますけれども,この場合,受益者は一種の第三者のためにする契約の当事者のようなところがありますから。

 

 

ただ,1の例外としては,ある意味では2が一つの現実といいますか,委託者に絡むところは委託者の同意が必要でしょうし,基本的には受託者と受益者の間でできるという,2がどちらかというと現実的な原則に近いのかなとおります。

 

 

ですから,2が書いてあることによって多くの問題は解決できるのかなと思う反面,この2の要件の中で,信託の目的ということが一つのメルクマールになっていますけれども,以前にも議論されているようですけれども,実際の信託契約の中で,信託目的というのは非常にシンプルに書かれているだけでして,それを信託契約と全体ととらえてしまうと,ちょっとでも直すと,今度は信託の目的に反するのではないかと。

 

 

ですから,解釈論といいますかね,現実的に変えようとするときに,2の原則といいますか,当事者の括りとしての原則は,ある意味では2が現実的だし,民法の原則にも反していないのではないかと思うんですけれども,他方において,2で書いてある要件のところの目的とかいうところで,今,○○委員がおっしゃったように,信託行為に別段の定めが必要になってくるのではないかと思います。

 

 

 

やはり○○委員もおっしゃったように,実際にはそういうことをしないでしょう,マーケットの目もありますからというのは,そのとおりだと思うんですけれども,一方的に受益者の利益--という,また非常に曖昧な概念を持ってきてしまうと今,言ったことと矛盾するかもしれませんけれども,丙案で一定の限度というのを,今,○○委員がおっしゃったような,ある意味で信託法上の常識的な限度を設ければ,今,議論したことの多くは解決できるのかなと。

 

 

もちろん,そこに何らかの限度を設けることによって,また解釈論が分かれてしまって,結局,全当事者の同意が必要だとか。

 

 

実際に流動化などで信用補完分を入れかえるといったときに,例えばキャッシュに入れかえるといったときに,全く価値としてはその方がいいかもしれませんけれども,しかし,それを好まない人もいるかもしれないとかですね。

 

 

ですから,どうしても信託契約の変更が必要な場合というのは出てくるんですけれども,ただ,その場合でも受益者の利益とか,違う何らかの要件をうまく持ってくれば,ある意味では,乙案と丙案の議論というのは究極的には同じところに到達するのかなと感じたんですけれども。

 

 

ポリー

「受益者の利益が保護されていれば、変更の制限も落ち着くところに落ち着くということでしょうか。」

 

 

 

  •  先ほどの○○委員のお話に対してですけれども,○○委員がおっしゃったような弊害が起こり得るんだろうなということはよくわかるんですけれども,基本的には,我々の求めているのは,やはり基本的には自由な設計といいますか,理念的なものが非常に大きな要因でして,弊害がある部分について,当然取り除く工夫はしないといけない。

 

 

 

それについて,例えば典型的な例でいくと,受託者が事業者で受益者が消費者だというんであれば,それはもう典型的な業法の問題になろうかと思いますので,一番懸念される部分というのは,そういう部分で排除されるような話だなという気はいたします。

 

 

あと,だれに授与するかという部分を抜きにしますと,内在的なところで変更内容をどうするかという部分については,先ほど○○幹事が「委託内容による」と言われましたけれども,これは以前,聞いたことがあると思うんですけれども,多分それは信託契約,それも多分,上位概念である信託目的というものに,契約の内容ですから,そこに拘束されるとすれば,信託目的に拘束されることにもなるのではないかと考えております。

 

そういうこともありまして,考え方としては,一つの整理の仕方というのはあるのかなと思っております。

 

 

  •  今のは,○○委員の発言も結論的には少し似ているところがあると思いますけれども,簡単に言えば,信託目的による制約みたいなものはかかるということですよね。

 

 

それは一つの考え方だと思いますので,もうちょっとここら辺は書けるかもしれませんが。

 

 

 

  •  遅れて来て申しわけありません。もしかしたら既に御議論なされているか,あるいはもう既に決着している問題かもしれませんが,私も非常に重要なポイントだと思っておりますので,発言させていただければと思います。

 

 

 

まず第1に,この信託の変更権を,例えば第三者なり,あるいは英米ですと,多分,一番念頭に置かれているのは委託者に変更権を留保しておくということだと思うのですが,その前提として,信託の撤回権というのはどう考えられているのか,まず御確認させていただければと思います。

 

 

信託契約の中で定めておけば,もちろんもう撤回だって自由だという前提で,それとのつながりで信託の変更権というのも出てきているのか,あるいは信託,いわゆる英米の撤回可能信託というのは,この議論の中ではどう扱われているのか。

 

 

もし仮に撤回可能信託まで認めるという趣旨ではないとすると,私は,信託の変更権を第三者に与えれば,それは決めれば自由でしょうという話では必ずしもないのではないかと理解しております。

 

 

 

その場合,また2つ考え方がございまして,変更権はとにかく権利として第三者にあるんだという場合は,恐らく受託者は,変更権の行使が受益者に何らかの不利益を与えるときには,やはり信託をディフェンドする義務があるのではないか。

 

 

 

番人

「権利っていうと債権てことかな。」

 

 

そうすると,そこでまた非常に難しい問題が生じて,変更権の行使と,それから受託者が信託を守る義務との間でさまざまなコンフリクトが生ずると思われますし,他方,もう一つの考え方としては,この変更権というのが本来,受益者に帰属するものなのだけれども,受益者から授権されている。

 

 

すみれ

「受益者って、最初の受益者かな。それとも受益者になる人全員ってことかな。」

 

 

そういう意味では,むしろ受益者的な立場でこの権限を行使するんだ,こういう2つの考え方に分かれようかと思いますけれども,当然には認められないという前提に立った場合は。

 

 

そのときには,この御提案は2つの方向のどちらを指向されているのか,あるいは全く別の考え方なのか,ぜひ教えていただければと存じます。

 

 

 

 

 

 

 

  •  前段の,信託の撤回権の問題につきましては,変更権の延長といいますか,それも認めている,視野に入れていることでございますので,信託を撤回することを委託者が留保することも十分可能ではないか,信託行為で定めればできるのではないかと考えております。

あと後段は,すみません,どういう点でございましでしょうか。恐縮ですが。

 

 

  •  この変更権というのがまさに権利としての性格を持っているとしたら,その権利の行使と,あと,受託者としては受益者を守る,信託を守るという義務があると思いますので,それとの関係と整理するのか,あるいは,変更権というのは本来受益権から生じていて,受益者から委託というか,受託されているものだと。

 

 

逆に,変更権の行使に当たって何らかの注意義務がかかると考えられているのか,あるいはそのどちらでもないのか。

 

 

 

  •  必ずしも受益者に対する注意義務とは考えにくいので,その変更権をだれが与えたか,あるいは変更権を与えられた趣旨によって,その変更権者が行為するに当たっての注意義務の相手方は決まってくるのではないか。

 

 

 

そうしますと,今の御質問の答えとしては,端的には,それは場合によるとしか言えない。常に受益者の方を向いていなければいけないとは言えないのではないかと考えております。

 

 

 

  •  いろいろ重要な問題提起があったと思いますけれども,ここで変更ということでイメージしている中身が,どうも人によって少し違うかもしれない。

 

 

変更の主なる場面というのは流動化のときで,○○委員が例を挙げられましたけれども,いろいろな事情で変更せざるを得ない。

 

 

ポリー

「主なる場面として想定されていたのは、流動化のときなのですね。」

 

 

そのときに,いちいち受益者の同意を得ていたのではなかなかできないし,そういうものを,あるいはその変更のための要件のところでも,限界的な場合もあるかもしれないから,そういう意味で,簡単に変更できる--というのはちょっと語弊がありますけれども,必要な変更ができるようにしておきたいというのが1つであったと思います。

 

 

 

こういう場面での変更と,○○幹事が言われたような撤回まで含めた場合の変更とは,ちょっと需要が違うかもしれませんよね。同じ要件で果たしていいのかどうか,ちょっと気にはなりますね。

 

 

そのほかにもあったかもしれません。そもそも変更権というものがどういう権限といいますか,○○幹事が言われたように,受益者の方から来るのか,あるいは委託者の方から来るのか。受託者固有というのは,本当はないんだと思いますけれども。委託者か,あるいは受益者ですかね。

 

 

そんなふうに,どうもこの変更が問題となる場面が違うために,議論もいろいろなところに向いていますし,なかなか「こうあるべきだ」という姿も見えてこないのかなという感じがしますが,引き続き示唆をいただけるような御意見があれば。

 

 

 

 

あるいは,この点だけに集中しないで,裁判所の変更のところの問題も,今の議論にも関係していると思いますので。

 

 

 

  •  今回2点として,要件を目的の関係にしたということと,それから,乙案というものが新たにできたという点があるんですが,いずれも問題点があると思っておりますので,御指摘させていただきたいと思います。

 

 

まず,乙案でございますが,裁判所による変更の範囲として明らかに無限定かつ広過ぎるということで,反対せざるを得ないと考えております。

 

 

前回は,財産分配の方法に拡大するかどうかが検討課題とされておりましたので,実体権にかかわるかどうかという観点から申し上げておりましたが,今回の案によりますと,受益債権の変更を除くあらゆる事項が対象となりえる。

 

 

 

信託行為において,いろいろなことが何でも設定できるとすれば,受益債権の内容にかかわらない限り,すべてが変更し得るということになるわけですが,それでよいのでしょうかということを申し上げたいと思っております。

 

 

 

例えば受託者の義務の範囲,報酬請求権や補償請求権の範囲といったもの,一つ一つ何が信託行為で任意的なのかというところを私,検討したまいったわけではありませんが,強行法規に反しない限り,何でもかんでも裁判所の判断によって変更できてしまう。

 

 

 

非訟手続でございますので,当事者には手続保証もされていないということでございまして,そのようなことは裁判所にとっては若干,本当にそんなことでよいのかという印象を持っております。

 

 

例えば,こちらの資料の例でございますが,予想されなかった技術の進歩があった場合の自己執行義務の緩和ですとか,予想されなかった決議事項が生じた場合の多数決制度の導入というものが挙げられておりますが,これらについても,真に裁判による変更が必要なものかということについて,極めて疑わしいのではないかと考えております。

 

 

 

 

 

 

例えば,前者につきましては,そもそも今回の法改正においては,相当な場合に他人に委託できることにしておりまして,あえて信託において自己執行義務を課した。

 

 

さらに,これを合意によらずに変更する必要性が一体どこにあるかがわからないということでございます。

 

 

 

また,自己執行義務の緩和は,受託者の責任の範囲を選任・監督責任に限定するという意味では,実体権の変更といった観点からも,本当にそれでいいのでしょうかということを申し上げたいと思っております。

 

 

 

さらに,実務的な観点から申し上げますと,当初,信託行為の当時,予想されなかった技術の進歩ということでございますが,信託行為の当時にどのような技術を想定して自己執行義務を課したかといったことを,どうやって判断できるのか。

 

 

 

先ほど○○委員からも御発言がありましたとおり,信託目的等についても簡略にしか書かれていない。

 

 

ましてや自己執行義務を課した理由などが書いてあるはずもないということでございまして,そのような,この自己執行義務の問題だけを見ても,本当に機能するのだろうかということについても極めて疑問に考えております。

 

 

次に,後者の決議事項の問題でございますが,これにつきましては,信託管理人についての審議のときに申し上げたことと同じでございますが,受益者の内部的な意思決定の方法を裁判所が定めること自体,おかしいのではないか。

 

 

そのような制度の例がほかにあるのか。会社との比較で言いますと,会社の意思決定の方法を,裁判所が突然定款を変更して変えてしまうというようなことがあっていいのだろうかということでございます。

 

 

 

こちらにつきましても,当初予想されていた決議事項というのが何かということについても,かなり実務上も問題があるのではないかと考えておるところでございます。

 

 

そもそも契約を裁判所が当事者のイニシアチブによらずに変更すること自体,ある種,異常な事態であるということを,まず前提に考えていただく必要があるのではないかと考えております。

 

 

多数当事者の契約においてデッドロックに陥るということは,他の契約類型においてもあり得ることでありまして,信託だけ,なぜということを考えております。

 

 

 

 

 

 

現行法の管理方法の変更というものが要らないというまでの根拠も,実際に事件がないものですから,ないわけではございますが,管理方法の変更以上に変更の範囲を拡大するのであれば,どのような局面で裁判所の関与が真に必要なのかということについて,やはりもうちょっと,具体的なニーズがあるかどうかということも含めて根本的に検討をお願いする必要があるのではないかと考えておるものでございます。

 

 

 

次に,「信託目的に適合しないとき」という要件の問題でございますが,確かに,資料などを見ましても,終了との関係で相応の明確性を有しているとの評価を得たという記載がございます。

 

 

 

ただ,今回の提案も拝見いたしまして,改めて考えてみますと,目的を判断の材料とすることについても問題はあるのではないかと考えておりますので,指摘させていただきたいと思います。

 

 

 

つまり,信託目的に適合しないということを判断基準とする場合には,信託目的の範囲をどういうふうにとらえるかが問題だということになるわけでございます。

 

 

前回,終了との関係で御説明がありましたのは,子の学資に充てる目的で信託をしていたところ,当該子が進学せずに就職したというような場合が目的に適合しなくなった例だというふうに御説明を受けました。

 

 

ただ,この場合には,学資目的というものが,ある程度明確な目的であるということが前提であったのではないかと考えております。

 

 

例えば「収益を上げること」といった非常に抽象的な目的である場合には,目的に適合しないかの判断も不明確なものとなったり,あるいは,目的が非常に幅広くとらえられるので,それに適合しない場合は稀であるといったように,判断のぶれが生じてくる場合もあるのではないかと考えておるものでございます。

 

 

 

特に信託財産の管理方法の場合について考えてみますと,信託目的が「収益を上げること」のみであるような場合では,例えば,現在の管理方法Aでは収益が上がらないが,他の方法Bであれば収益が上がるといった理由で管理方法の変更が申し立てられる。

 

 

 

そのような場合に,裁判所が投資判断のようなことをして変更の可否を判断することとなるのか,そういった裁判所の判断として,適切な対象なのかといったことも含めて,もう少し御検討いただければと考えている次第でございます。

 

 

 

すみれ

「裁判所は大変そう。」

 

 

  •  裁判所の変更についても,やはり要件の方は明確に書いてありますけれども,どこまで変更できるかについての意見はいろいろあり得ると思います。

 

 

契約とどこが違うのかなどというのは,根本的な問題。契約とは,やはりちょっと違うところがあるのではないかと思いますけれども,いかがでしょうか。

 

 

ここに限定しないで,先ほど○○幹事から説明のありました合併の方まで含めて,御意見いかがでしょうか。

 

 

  •  確認したい点なんですが,併合,分割というのは,あくまで同じ受託者,「1つの受託者内における」と書いてあるんですが,これ,違う受託者間ということは考えていらっしゃらない,または,それをやるときには信託の変更--変更でもなかなかできないかもしれませんけれども,その辺はどういうお考えでしょうか。

 

 

 

  •  ここで考えている併合,分割というのは,あくまで同一受託者の中でございまして,受託者をまたぐ場合は,それを組み合わせて信託の受託者の変更の手続をすればいい。

 

 

 

両方一体としてやって,受託者も変えつつ信託の併合も合わせるということは,もちろん両方組み合わせればできますけれども,ここで考えている原則は,あくまで1つの受託者の中で分ける場合を念頭に,資料を作成させていただいております。当事者の変更と組み合わせればいいだけではないかと。

 

 

  •  要するに,そうすればできるということですね。

 

 

  •  はい。なお,付言しますと,裁判所の件につきましては,おっしゃるとおり,裁判所としてはなかなか判断が難しいという点は,理解できるところでございます。

 

 

 

しかし,デッドロックになったときに何らかの改善措置はないか。特に信託法においては,裁判所の関与がほかの契約類型とは異なって認められているところを発展的に,乙案のような形で根づかせることができないかという観点で,乙案を提示させていただいているわけです。

 

 

 

ただ,「信託の目的に適合」では,なかなか不明確だと。この前のお話ですと,「受益者の利益に適合」という要件でも,なお不明確だと。では,逆にどういう要件だったらいいかというのをぜひ出していただけると,こちらとしては助かるのですが。

 

 

 

  •  それは,なぜ裁判所による判断が必要なのかというところから導かれるべきものであって,そもそも裁判所がそれを云々して,裁判所自身が裁判所にとって都合がいいからというところで要件を提示するというものではないのではないかと考えております。

 

 

 

 

  •  信託財産の管理方法については,現行法でも認められておりまして,少なくともこれは維持していいのではないかというコンセンサスはあると思いますが,この要件は,今,現行法では「受託者の利益に適合」云々ということになっておりまして,これはそのままでいいのか,これについてはどのようなお考えでいらっしゃるかという点ですが。

 

 

  •  それ自体も不明確であるということは,前回ときに申し上げたはずでございます。

 

 

  •  不明確だったら,どうしたら明確になるかという……,事務局としてもいろいろと考えているところでございますが,裁判所側の意見として,では,どういう要件だったら判断がしやすいんだろうかという,何かこちらに教えていただける点があると非常に助かるんですが。

 

 

 

 

  •  そこは,少なくとも最高裁判所の,当局の内部では全く検討しておりません。

 

 

個人的にはいろいろ考えるところもありますが,ただ,先ほど申し上げましたように,なぜ裁判所の関与が必要なのか,一体この制度はそもそも何なのかということをまず考えないと,要件というのも出てこないだろうと考えております。

 

 

番人

「できるだけ利用しないよう必要なのかな。」

 

 

 

例えばでございますが,信託財産が非常に急速に毀損しているような場合に,その毀損をとめるために必要な場合というような形で例えばの要件を仕組むことはできるわけですが,それは,例えばほかの法制度などを見て,そういうものが,例えば倒産などで保全処分とかそういったものの要件を見て,それに類したものを考えることはできるわけですが,しかし,それは本来,裁判所が提示するものではなくて,何のために管理方法の変更が必要なのかということがあって,まずそこから導き出されるものかと思いますので,そういう意味で,裁判所から要件を御提示するということ自体,不適切なのではないかと申し上げているものでございます。

 

 

 

  •  わかりました。

あと範囲の問題につきましては,また御議論を踏まえて検討したいと思いますが,○○委員もちょっとおっしゃいましたように,範囲の問題と行使の問題は別に考えることもできるのかなという気がしておりまして,確かに授権の範囲については,もちろん目的に反するものはだめだとか,消費者契約法の精神ですとか,それが反映される公序良俗とかの問題はあると思うんですが,それは非常に仕切りが難しいとすると,授権の範囲については信託法上は特に制限はしなくて,あとは一般的な規定に縛りを委ねるというようなこともあり得るのではないかという気がしております。

 

 

他方,行使につきましてもやはり問題になるわけでして,目的に反する行使,あるいはそもそも忠実義務を全部なくしてしまうというような行使の仕方,あるいは公序良俗に反するような行使の仕方というのもあって,それについてもまた別途,その行使自体が無効という考え方もあるでしょうし,行使の局面については,私が冒頭ちょっと申し上げましたが,そのようなものは非常に受益者の利益を害するということで,変更を無効とする選択肢のほかに別途,受益権取得請求権の方での解決というのも行使についてはあるのではないかと思いますので,一つの選択としては,範囲は信託法上は無制限で,行使については,受益権取得請求権を強行的に入れていくというような解決策もあり得るのではないかというのが事務局として考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  私,前回この問題をやったときにどういう意見を述べたか全然記憶にありませんで,全く前回と違うことを申し上げるかもしれませんけれども,先ほどから問題になっております裁判所による変更の話で,現行法の第23条というのは,もう言うまでもないことかもしれませんけれども,当事者間による変更方法についてクリアな規定がないところに裁判所による変更方法があるわけで,当事者による変更方法が定められた後に5としてこういうものが置かれるというのは,恐らく現行法とは大分性格が異なるものになるんだと思うんですね。

 

 

 

それでは,何のために5を置くのかという話なんですが,先ほどから,デッドロックに乗り上げたときとか,説明の文書によりますと,当事者間で容易に調整がつかないときというふうに書いてあるわけなんですが,その状況のもとに裁判所が介入することを認めるためには,受託者や受益者や委託者といった変更の当事者になる─これは2のところで,当事者は場合によって異なるわけですが,当事者になる人たちが,信託目的というものを考慮しながら変更に応じなければならないという義務を措定するということがないと,できないのではないか。

 

 

つまりこれは,自分がどう思おうが自分は勝手なことを言えません,信託目的というより崇高なものに従って,それに適合するんだったらそういうふうな形で合意をしなければならない。

 

 

それにもかかわらずしないものだからうまくいかないというときに,裁判所が強制的にやるというふうに考えなければならないと思うんですね。

 

 

しかし,本当にそういう義務があるのかということになりますと,これは疑問でありまして,疑問どころか,○○幹事が先ほどおっしゃった,例えば第三者が変更権限を持っていて,その人はどういったことのためにやらなければいけないのかというときに,目的に従ってということにはなるのでしょうから矛盾はないのかもしれませんけれども,そういう人に専権が与えられているときに,果たしてその人の交渉方法がおかしいといって裁判所に請求できることになるのか。

 

 

 

目的というものをより崇高なものとして置いて,そちらに従わなければならないということになりますとできそうなんですが,本当にそうなのか,私はかなり疑問な気がいたします。

 

 

 

結論から申しますと,やはりこれだけ柔軟な形で変更権限を認めて,かつ,そのときの判断について義務性を認めないのならば,5の規律は置けないのではないかという気がしてならないんです。

 

 

ひょっとして私,こういう発言をしようと思いながら,ひょっとして前回,私は5を置くべきだと言ったのではないだろうかみたいなことを思って,ちょっと心配になっているんですけれども,議事録は匿名でしかございませんので発言させていただきました。

 

 

 

 

  •  理論的なことではなくて,今後,もし民事信託に弁護士が関与することになったときに,受益者の捕捉とか受益者間における何らかの,本来,信託とは違うところでの争いとか,または,今日の議論に遺言信託における相続に足る委託者の地位というのがありますけれども,もし仮にそういうふうに,本来,利害関係にある当事者が委託者として登場するとかいったときに,信託は確かに1契約類型かもしれませんけれども,信託法がこうやって議論されるほどのものですから,他の1契約にしかすぎないということは全くなくて,そういうような紛争案件で,本来どう見てもいろいろな要件,信託の目的にも受益者の究極的な利益にも資するような状況のときに,やはり裁判所の後見的な役割を期待できる制度であった方が,ほかの契約でも当事者間の紛争があれば紛争するんだからというよりも--の方が,恐らくいいのではないのか。裁判所が困るということはあるかもしれませんけれども。

 

 

 

ちょっと類型は違いますけれども,実際に非訟事件手続法というのがあって,私,借地非訟をやっておりますけれども,信託が実際に多く使われるようになれば,紛争の類型とか,また,それに対して裁判所としてどういう方から--借地非訟の場合には鑑定人という形で意見をとりますけれども,どういう方からどういう意見をとったらいいかとか,抽象的議論をしていると何でもかんでもとなってしまいますけれども,実際に民事信託ということであれば,この説明には商事信託の例が書いてありますけれども,ある幾つかの民事信託の類型を考えることはできますから,その中での紛争形態というのも考えることができると思うので,そうすると,多少判断基準等が出てくるのではないか。

 

 

 

ですから結論的には,理屈云々よりも,裁判所の後見的解釈というのは,信託においては今後とも維持されるべきだと思いますし,なおかつ信託法改正においては,今回の乙案のような形で,従前の法律よりも多少なりとも明確になっている。

 

 

より何か基準を明確にするのは,今後の信託の使われ方とか手続の進展に委ねればよろしいのではないかと思います。

 

 

すみれ

「今の使われ方と手続の進展はどうかな。」

 

 

 

  •  借地非訟の点がありましたので,その関係で1点だけ申し上げますと,借地非訟については長い歴史があり,借地についての紛争の歴史があって初めて,「契約を裁判によって変更しない」というのが民法の原則であるにもかかわらず,現在のような形になっているのではないかと思うわけでございます。

 

 

信託については,実際にそういうことが現在起こっているのだろうかということでございまして,そういう意味で,それだけの立法事実があるのかということを申し上げたいと思っているものでございます。

 

 

 

  •  理論的ではなくて実際的なことを考えろということなんですが,やはり理論的なことを考えざるを得ないので,借地借家法の問題に関しましては,これは当事者が給付の均衡をとった形での契約条件にしなければならない,こういう義務を措定して,例えば賃料増減額請求権というものを認めてあれするわけですよね。

 

 

この信託において,だれとだれとの給付の均衡がとられることになるのかとなりますと,ちょっとこれは借地借家のときの話とは一緒にできないのではないかと思います。

 

 

 

もう一つ,後見的な話が出ました。これは極めて重要な話だと思うんですね。

 

 

かつ,私が思いますに,第23条で念頭に置いていたのは,まさにそういうふうな後見的な話が第1と,もう一つは,だれの目にもこういうふうにすればよいのは明らかであるという形なのに,その変更する手続がないのでできない。

 

 

 

しかし,勝手にやることはできないので裁判所の許可を求めるというふうな場合なんだと思うんですね。

 

 

後者に関しては,手続ができたならそれでいいではないかというふうなことは,私がさっき申し上げたとおりですが,前者に関して後見的な介入をすべき場合というのがあるのかがポイントになるんだと思います。

 

 

 

そうなりますと,これ,2のエなんですよね。だけれども,2のエというのも,考えようによってはちょっとおもしろいところがございまして,つまり,この受益者というものに,例えば未成年者でもいいですし何でもいいですが,生活保持のために給付を受けるという人を位置づけたといたしますと,受益者が「私の生活を守るのが信託の目的なんだから,給付額を増やすということはとってもいいし,かつ受託者の利益は害さないんだからいいではないか」といって勝手に変えられるということになりそうなんですが,ここら辺が結局,裁判所の関与がどういうふうに効いてくるのかというのが最後,生きてくるところかなという気がしていまして,受益者が本当に勝手に変えられるんだろうか,それとも受益者が裁判所の許可を得て変えることになるのだろうか。

 

 

 

後見的な場合に,その必要性があり得るのではないかと○○委員がおっしゃるのは,全くそのとおりだと思うんですが,そのあたりをもうちょっと詰める必要があるのではないかと思います。

 

 

 

  •  今,出てきている問題は,まず,立法事実としてそういうニーズがあるのかという話で,ここは私もよくわからないところです。

 

 

 

 

したがって,少し別の観点から今の点,この57の5を考えてみたいのですが,先ほど○○幹事からお話があったのは,非訟事件ということで徹底すると,裁判所は新しい法律関係を形成することになる。これが果たして裁判所の役割として適切か,そういうお話であったかと思います。

 

 

 

私も,まるっきり白地で預けられたら裁判所も困るだろう。これ,ずっと継続的にその信託を見ているわけでもなく,民事雑事件としてポンと上がってくるものについて,いちいち内容を精査して適切な法律内容を形成するというのは,確かに非常に大変なことだろうと思いますが,資料30ページの下2行ぐらいから31ページの上3行ぐらいに書いてあることは,理念的には全然違うことを書いてありまして,今,○○幹事から「許可」という言葉が出てきましたが,まさにそうなのではないか。

 

 

 

 

変更申立てをする場合には,まず変更の内容を申し立てろ。それについて裁判所は,許可をするか,しないかだけだと。

 

 

 

もしかしたら,ほんのちょっとのところで一部認容みたいなことをするかもしれませんが,基本的に,違うベクトルをつくり出すことはしないで,それについて認めるか,認めないかだけだと。

 

 

 

別な言い方をしますと,当事者は何となく変更の申立てをして,あと裁判所が白地からつくるという姿ではなくて,当事者がなされるべき裁判内容を限定する権能を持っている,いわば処分権主義的な発想で制度をつくり,裁判所はそれに特化するか,しないかだけだ,そういう仕組みだとすると,白地から法律関係を形成していくという問題は極小化していくんだろうと思います。

 

 

 

 

もちろん,そういう許可,不許可だけだって大変だというお話はあるかもしれませんが,そういうものになりますと,ほかの実定法規の中に特定の法律関係だけ切り出して裁判所に許可を求めるというような類型のもの,例えば,会社法案はどうだったかよく覚えていませんが,社債権者集会の決意の認可みたいなものとか,ああいうものはあったような気がしますので,そういうものが増えてくるのがいいかどうかはわかりませんけれども,少なくとも30ページの下2行から31ページの上3行ぐらいまでは,今,議論されていることについて1つ解決の道筋を示すものではないかなと拝見する次第です。

 

 

 

 

 

  •  根本的なところでの問題提起がされておりまして,これにも恐らくこたえる形でもって提案せざるを得ないんだろうと思います。

 

 

2のところでもって,かなり簡易な形で変更できるようなルールになっている。

 

 

その上で5がどういう意味を持つかということですね。いろいろな御意見もあったと思いますし,ここで2当事者,例えばイなどですと--アか--ですと,一応受益者と受託者の合意が必要なわけですけれども,しかし,やはりこれがいろいろな理由でもってできない場合が考えられて,そういうときに5が機能する。

 

 

ただ,そのときは,なぜ5が機能していいのかということについて説明が必要だ,そういう御意見だったと思います。なかなかこれも簡単には答えにくい,難しい問題であるような気がいたします。

 

 

 

これは私の個人的な意見ですけれども,ある種の,この規定は「予見することができない特別な事情」という,ちょっと広い要件で書いてあるかもしれませんけれども,やはりある種の緊急性といいますか,もちろん当初から予見はできなかったし,それから現在,ほうっておくとどんどん財産が目減りするとか,そういう緊急性のあるもとで,しかし合意がうまく形成できない,そういうときに機能すべきものとして位置づけることができるのではないかと思います。もうちょっと理論化は必要ですが。

 

 

 

これ自体についての根本的な疑問が出ているところでありますので,もうちょっと検討した方がいいと思います。

 

 

 

  •  5についてですけれども,考え方としまして,最初,○○幹事が言われたところとの関係をあえて言えばということなんですが,57の1で,あくまでも合意がある場合に変更ができるのであって,2の例外というのも,合意を形式的な意味で要求する必要がないときには緩和してよいという趣旨だろうと思います。

 

 

 

それに対して5というのは,やはり基本的には事情変更の原則をベースにした考え方でして,事情変更の原則の要件を満たすことによって,合意の有無にかかわりなく契約の改訂権限ないしは解除権が発生すると考えますので,1,2とは別系統のものとして,やはり5というのは位置づけられる。

 

 

それだけに,要件をもうちょっとしっかり特定する必要があろうとは思いますけれども,位置づけとしては,そういうものだと思います。

 

 

 

その上で,先ほど来のお話で甲案,乙案というのが出ていますけれども,これ,事情変更の原則についての議論との関係では非常に,学者風に言いますとおもしろい議論が出ているところでして,といいますのは,従来の事情変更の原則で契約改訂を認めた裁判例というのは,ほとんどない。

 

 

少なくとも最高裁レベルで全然ないわけではありますけれども,理論としては認められると言ってきている。

 

 

 

そのときに,どう考えているかといいますと,事情が変更した結果,今この変更した状況下あるべき契約内容というのは,ある種,決まっている。

 

 

それを裁判所が読み取って「これが契約内容です」というのを確定するという考え方をとっているんだろうと思います。そして,借地借家の問題などでも,第32条等でも同じことを考えているんだろうと思います。要するに,ある種,確認的なものを考えているのではないかと思います。

 

 

 

そして,甲案というのもやはりその延長線上にある考え方でして,「こういう状況下ではこういう信託行為の内容」というふうに,もう変わっていると考えるべきで,それを確認して宣言するだけだと。

 

 

そこまで裁判所に要求されたら非常に困るというのはよくわかるところではありますけれども,考え方としては,そうだと思います。

 

 

 

乙案の変わっている点といいますのは,この考え方を必ずしもとっていないということだと思います。

 

 

つまり,一定の要件を満たしたときに,一方当事者が--当事者かどうかは別として,一方当事者が契約なら契約の改訂提案権というんでしょうかね--を持つと考えて,改訂提案権に基づいて改訂を提案して,裁判所は,あくまでもその実体権である改訂提案権の当否のみを判断するというような構造になっているんだろうと思います。

 

 

 

改訂権限までを一方当事者に与えるわけではなくて,提案にすぎないのかもしれませんけれども,これは多分,比較法的に見ればすごくユニークな制度を導入しようとされているところで,ただ,ユニークだからだめだというのではなくて,むしろ客観的に何か契約内容が,この状況下でこうなっているのを確認するという考え方自体が,ちょっと問題があるところで,しかも,それを裁判所に委ねるのはより一層問題ではないか。

 

 

それに対して,こういった形であくまでも当事者のイニシアチブに委ねて,その当否のみを裁判所が判断するというのは,あり得る一つの考え方かなという気はいたします。

 

 

 

 

 

そういう意味では,評価に値するところではないかなとは思いますけれども,ただ,この要件が本当にこれでいいのかというあたりは,もう少し絞る余地なり何なりはあるのかなという気がいたします。

 

 

さらに言えば,ここには何もありませんけれども,いきなり一方当事者が裁判所にこういう内容で改訂せよというような請求を立てるのが本当に望ましいのかという面もあって,もう少し手続的なところなども含めて要件設定を考えていく--書くならば考えていく余地があるのかなという気がいたします。

非常に研究者的な,突き放したような言い方になって申しわけないですけれども,問題としては,そんな感じかなという印象です。

 

 

 

  •  私も,これは基本的には事情……,少なくとも現在の法律は事情変更の原則を信託の場面で認めたものであると思いますし,この新しい提案も,基本的にはそういう線に乗っているものだと思います。

 

 

 

先ほどから幾つか出てきた意見は,契約の場合にはこういうものがないのに,信託だけなぜあるのか。

 

 

それに対して,今,○○幹事が言われましたように,契約については,法律の中になくても,一般論としては事情変更の原則というものが認められていて,そういう意味では,契約の分野でも事情変更の原則というのはあるんだ,契約を改訂するという効果をもたらす事情変更の原則はあるということで説明されたのであろうと私は理解いたしました。

 

 

 

それでいいんだと思いますけれども,もう一つ,やはり信託の場合だけさらにもう少し広くというんでしょうか,こういうものを設けることの意味は,○○委員がさっき言われたことと少し関係するのかもしれませんけれども,やはり信託の場合には,必ずしも契約の当事者ではなくて,受益者が利益を受けているので受益者と受託者が合意するという形で変更する,そういう枠組みにはなっておりますけれども,変更,改訂についての交渉をするのに受益者が常に一番適した人間かどうか。

 

 

 

特に「交渉する」という意味での一番適した人間かどうかというのは,必ずしもはっきりしない。いろいろな受益者がいる場合に,そういう能力がない受益者もいるかもしれないし。

 

 

 

 

 

 

したがって,信託の場合には,合意で変更するというのは意外と難しい場合もあって,だからこそまた,信託については5のように,裁判所が改訂をするということが特別にというか,契約よりはプラスアルファで重要性がある,そのような説明もあるのかもしれません。

 

 

大分御議論いただきましたけれども,何かここら辺でまとめて……,大体いろいろな論点は尽きたかと思いますので。

合併の方は,いかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  1点だけ。今まで言っていなかったことを今,言うのも恐縮なんですが,やはり2のイとエというのが何か,卒然と読みますと,受託者は勝手に……

 

  •  単独でできるやつね。

 

  •  単独でできる。受益者も勝手に単独でできるという感じがしまして,もちろん--これならば,まさに書いておくべきなんですよね。

 

 

受託者はこういうふうに変えられるという話を。これは信託行為に書いてもいないときの規定ですよね。そのときに,受託者ができる,あるいは受益者ができるというのも何か妙な感じがするんですよね。

 

 

まさにこれ,反しないで,かつ受益者の利益に適合するということなんだという,かつ,ここは多分,予見することができない事情があったということが多分,必要になるような気がして,イとエの許可を与えるという制度で裁判所の許可というのは,何といいますか,模様替えできないものだろうかという気がいたします。

 

 

 

 

  •  それはそれで1つ考えられるかもしれません。現在の甲案,乙案はちょっと違うところもありますが。

 

 

それでは,大分御意見いただきましたので,また争点を明確にする形で整理した上で,今後も検討していきたいと思います。

 

 

この問題で大変労力を使ったと思いますので,まだ早いかもしれませんけれども,休憩にしましょうか。それで鋭気を養った後で再開したいと思います。

 

(休     憩)

 

  •  再開したいと思います。

それでは,次へいきましょうか。

 

 

 

  •  引き続きまして,信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限と,受益者複数の信託の意思決定問題と,それから受益権取得請求権の問題をあわせて,御説明いたします。

 

 

最初に,第48でございますが,前回提案におきましては,権限違反行為に対する取消権以外の単独受益者権については制限を許されず,取消権についてのみ制限の可否が問題となり得るとしておりました。

 

 

 

この点につきまして,今回の提案では,後で述べます受益者多数の信託について特例を設けるべきか否かという点を除きまして,前回会議における意見ですとかその後の検討を踏まえまして,取消権についても単独行使に対する制限は許されないとすることを提案するものでございます。

 

 

 

その理由は,資料の1,2ページに記載しておりますが,一般的には,権限違反行為の抑止という観点からは,取消権の行使を優先すべきであって,少数の受益者による濫用的な取消権行使に対しては,権利濫用等の一般法理により対処することも可能であることですとか,受益者間の意見対立や信託事務の停滞のおそれ,あるいは権利濫用のおそれを過大視して単独受益者権の制限を認めるのは,受益者保護の観点から妥当ではないと考えられるからでございます。

 

 

 

これに対しまして,資料2ページの注に記載しておりますが,受益者が多数の信託については,別途の考慮の余地もあり得るのではないかと思われます。

 

 

 

典型的には,受益権が有価証券化されている信託の場合におきますように,受益者が多数の信託におきましては,相互に緊密な関係にはない価値観の多様な受益者が大量に参入してくる可能性がありまして,受益者間におきます意見対立のおそれですとか,差止請求による信託事務停滞のおそれ,あるいは濫訴による信託財産の減少のおそれ,すなわち濫訴に対応した訴訟費用が信託財産に求償されるということによって,信託財産が減少するおそれなどは,受益者が少数の信託に比べて類型的に高いと言うことができそうだと思います。

 

 

 

このような観点からしますと,受益者が多数に及ぶ信託については,信託違反行為の是正に係る単独受益者権について,一定の制限を認めることも許容できると考えることもできるのではないかと思われます。

 

 

 

そこで,次に問題になるのは,当該信託が受益者が多数の信託と言えるか否かのメルクマールをどこに設けるかという点でございますが,この点については,ある程度の明確性と実質性が求められるところでして,ただいま例示いたしましたとおり,例えば受益権が有価証券化している信託か否かという点をメルクマールとしてはどうかと考えるわけでございます。

以上の点につきましての御審議をお願いしたいと思います。

 

 

次に,受益者が複数の信託の意思決定の方法というところでございます。

 

これは,信託行為に定めを置くことにより,受益者の全員一致にかえて多数決による意思決定を可能とすること,契約締結の行使のコストと削減等の観点から主要な意思決定方法として受益者集会や書面による決議について標準的な規律のセットを提供することを主眼とする提案でございます。

 

 

以下におきましては,前回の会議における指摘などを踏まえて事務局において検討した事項のうち,特に重要と思われるものに限って御説明申し上げます。

 

 

まず,前回会議におきまして,信託法に定めのある事項以外の事項については多数決をもって決定することができるのか,できるとした場合には,その決議方法はいかなるものかとの指摘がされました。

 

 

この点につきましては,4ページの提案(1)②に書いてございますが,信託行為に定めを置くことによって,信託法に定めのある事項以外についても多数決で決定することができる--「任意決議事項」と書いてございますが,このようなことを明記しますとともに,その場合の決議方法につきましては,2の(2)のイに書いてありますとおり,信託法又は信託行為に定めのない限り,普通決議によるものとしております。

 

 

次に,議決権の算定基準につきまして,前回提案におきましては,デフォルトルールとしては頭数により,1受益者につき1議決権としておりましたが,今回の提案では,5ページの提案2の(2)のアに書いてございますとおり,デフォルトルールとしては,各受益者の有する受益権の個数によって算定することとしております。

 

 

 

前回の提案は,受益権の金額や価額を基準としたときには算定に窮するおそれがあるのに対しまして,受益権の頭数については算定が単純かつ容易であるということに鑑みたものでございます。

 

 

 

しかし,同じ1人の受益者でも,受益権を多数有する者の方がこれを少数有する者よりも大きな発言権を有するのが公平かつ常識的であることは多言を要しないと思われますが,受益権の個数については,なお算定することが可能であると思われることにかんがみまして,デフォルトルールとしては,いわば持分に相当する受益権の個数をもって議決権の算定基準としてはどうかとの考え方に改めるものでございます。

 

 

 

 

最後に以前より問題となっております受益者集会の決議方法等について,受益者保護の観点から何らかの強行規定を設けるべきか否かという点に関する,事務局の現時点での考え方について御説明申し上げます。

 

 

前回の提案におきましては,受益者集会の招集手続,例えば通知期間を短縮するとか,個別の通知ではなく公告で足りるとすることですとか,決議方法,例えば見なし承認決議を採用すること,あるいは決議要件,例えば定足数や可決要件など,あるいは受益権の種類に応じた種類受益者集会を設けること,これらについて2案提示しておりまして,信託行為で自由に定めることができ,それに伴う少数派受益者の不利益については受益権取得請求権をもって対処するという考え方と,受益者保護の観点から一定の限度で強行規定を導入し,あるいは種類受益者集会の制度を設けるべきであるとの考え方,この両方があるとの考え方を提示いたしましたところ,前回会議においても,これに対応する両様の見解が示されております。

 

 

 

 

 

 

この点につきまして,なかなか難しい選択ではございますけれども,信託行為の定めによって第三者や特定の受益者に意思決定権限を付与することを原則として可能であると--先ほど議論になりましたが,これを可能であると考えることを前提とすれば,受益者集会に関する規律において強行規定を設けることの意義は疑問であるということ,それから,例えば受益者集会の定足数について強行規定を導入したとすれば,かえって決議が成立しにくくなって信託事務処理が停滞し,受益者にとって不利益となる事態も想定されるということ,あるいは一定の事項に限定されている種類株式の場合と異なりまして,受益権につきましては信託行為によって多様な種類,内容の受益権を自由に創設することが可能でございまして,種類受益者集会を設けるといいましても,その類型化の基準は不明確であって,現実的には困難であること等の事情に鑑みますと,受益者集会の招集手続,決議方法,決議要件,種類受益者集会の要否等については信託行為による自由な定めを許した上で,後ほど御説明します受益権取得請求権を一定の範囲で強行規定とすることによって,少数受益者の保護を図るという方法によることが現実的かつ適当ではないかと現時点では考えております。

 

 

なお,前回の提案においては,株主総会決議取消の訴えに類似した制度を設けることを提案しておりました。

 

 

 

ところで,株式会社の場合におきましては,招集通知の時期及び方法ですとか定足数や決議要件などについて,厳格な強行規定が存在するわけでございまして,法律においてこのような厳格な要件を課している以上,これが遵守されたか否かを裁判所が事後的にチェックできるとすることが,終始一貫したスキームのあり方だと言えると思われます。

 

 

 

これに対しまして受益者集会につきましては,既に述べましたところですが,事務局の現時点の考え方,すなわち決議要件等について,信託行為による自由な定めを許すというわけでございますと,いわば入り口において自由な定めを設けて認めているにもかかわらず,出口において裁判所による判断という厳格な規制を課すのは整合的ではないと思われるわけでございます。

 

 

そこで,今回の提案におきましては,決議取消の訴え等の制度を設けることは不要ではないかと考えているものでございます。

 

 

以上の諸点,特に受益者集会の決議に関する強行規定の要否の点を中心に,御審議をいただけるとありがたいと存じます。

 

 

続きまして,第60,反対受益者の受益権取得請求権の提案について御説明申し上げます。

 

 

受益者全員の合意する事項について,多数決による意思決定を認める場合ですとか,特定の者に対して信託の変更に関する権限を与える場合におきましては,多数派受益者の意思や第三者の決定に拘束されることとなる受益者に対して,合理的な対価を得て当該信託から離脱する機会を認めることが公平にかなうと考えられることに基づく提案でございます。

 

 

 

以下,前回会議における指摘を踏まえて事務局において新たに検討した事項について,順次御説明を申し上げます。

 

 

まず,受益権取得請求権に関する規律を強行規定であるとする点についてでございます。

前回会議におきましては,「信託の柔軟性を強調して任意規定とすべき」との意見と,「少数派受益者への公正な配慮を強調して強行規定とすべき」との意見と双方の見解が示されました。

 

 

 

この点につきましては,資料ですと39から40ページに書いてございますけれども,受益権取得請求権が認められる主体及び要件を限定した上で,その限度では多数決制度を採用することの前提とする必要最低限の規律であると考え,強行規定であるとの見解を維持したものでございます。

 

 

 

 

 

第2に,受益権取得請求権を付与される場合に当たる信託の変更の内容につきまして,前回提案におきまして,受益債権の内容を変更する場合というのを挙げていたところ,その外縁が不明確であること等を理由とする反対意見が示されました。

 

 

 

この点につきましては,確かに同一内容の受益債権の内容が変更されることによりまして,一部の受益者ではなくすべての受益者が,その有する受益権の数に応じて一律に不利益を被るような場合,あるいはもともと受益債権の内容に差異のある場合において,信託の変更が,そのような差異を反映したものであるにとどまる場合などにつきましては,不利益を被る受益者に受益権取得請求権を与えて保護するまでの必要性はないものと思われます。

 

 

 

そこで,もともとの受益債権に存した内容の差異の有無,程度を超えて信託の変更により特定の受益者にのみ不利益を生じさせた場合に限って,当該受益者に受益権取得請求権を付与すべきであるという考え方をとることとしまして,これを表現すべく「受益債権の内容の変更であって,受益者間の衡平を害するおそれがあるもの」という要件を設けてはどうかと考えるものでございます。

 

 

 

さらに,受益権取得請求権が認められる場合をしかるべく限定するという観点からは,一つの案ではございますが,ここで言う「受益債権の内容の変更」とは,受益債権の内容を直接変更する場合,例えば配当率を減少するような場合でございますが,そのような場合に限られるのであって,信託条項の変更によって間接的に受益債権の内容が変更される場合,例えば株式と社債の投資についてのポートフォリオを変更するような場合は含まれないものとしてはどうかとの考え方を示しております。

 

 

もっとも,当該変更が受益債権に対する直接的なものか,間接的なものか判断が微妙な場合もあり得るといたしますと,今回の提案では前回と異なりまして,受益債権の変更によって受益権取得請求権が認められる場合を,変更一般についてではなく,受益者間の衡平を害して特定の受益者についてのみ不利益が生ずる場合に限っていることをもって満足し,それ以上に,受益債権に対する直接的な変更か,間接的な変更かを問わないという選択肢もあり得ると思われるところでございます。

 

 

 

第3でございますが,受益権取得請求権を行使できる受益者については,前回提案においては,一律に「決議に賛成した受益者以外の受益者」としておりましたが,決議に反対する機会が個別の通知によって与えられている受益者についてまで,賛成しさえしなければ取得請求できるとの広い保護を与える必要はないものと考えられます。そこで,今回の提案におきましては,37ページの※2に書いてございますが,よりきめ細かく,変更内容についての事前の通知の有無によって,取得請求権を有する受益者に当たるか否かを分けることといたしました。

 

 

 

なお,この権利を行使できるのは,当該変更によって損害を受けるおそれがある受益者に限られることを明記しております。

 

 

第4といたしまして,受益権取得請求権が発生する場合において,一たん変更の意思決定がなされたにもかかわらず,事後の状況から判断して受託者が変更を中止できるとするための条件を設定することに関しまして,前回の提案におきましては,信託の変更の箇所において,合意の主体を明らかにしないまま「条件を明らかにしなければならない」とのみしておりました。

 

 

 

この点に関しまして,前回会議におきまして,受益者と受託者が合意の当事者となる場合以外の変更の場合はどうなるのかとの疑問が提起されたことを踏まえまして,今回の提案においては,変更に関与すべき当事者のみで合意または決定すれば足り,受託者の関与を必須とする必要はないと考えるものでございます。

 

 

 

なお,前回会議におきましては,受益権取得請求権の原資を信託財産とするか固有財産とするかにつきましては,信託の変更に際して受益者と受託者との間で合意すべき事項であると説明しておりましたが,今回の提案においては,合意または決定することができるとしていますので,その主体の如何とは別の問題として,このような合意または決定がされなかった場合の原資等についてはどうなるのかという問題がございます。

 

 

 

 

 

この点につきましては,デフォルトルールとしては原資は信託財産であり,ただし,受託者も関与した合意がなされれば,一部または全部を受託者の固有財産ともできること,そして,受益者において受託者の固有財産を原資とする合意をし,あるいは変更の中止に関する合意または決定をすることが可能であったにもかかわらず,これをしなかったものである以上,受託者としては,いかに多数の受益権取得請求権が行使されてこようとも,信託財産をもってこれに応じればよく,その結果として信託財産の規模が縮小し,信託の継続が困難または不可能となったとしても,注意義務違反の責任に問われることはないと考えてはどうかと思われます。

 

 

 

 

最後に,手続的な点について2点だけ補足して申し上げます。

 

 

第1に,前回の提案におきましては,受益権取得請求権の通知期限,請求期限,裁判所に対する申立ての期限などの手続的な進行に関するメルクマールとして,効力発生日という概念を用いることを提案しておりました。

 

 

しかし,変更を中止するか否かを受益権取得請求権に係る出えん総額の多寡によるとしたときには,結局,当事者の協議または裁判所の決定を経て取得に要する総額が判明することによって,ようやく最終的に変更を中止するか否かが確定することになるわけでございまして,後日の中止の可能性を含みながら事前に効力発生日を決定しておくというのは背理でございまして,効力発生日をもって手続進行上のメルクマールとすることはできないと思われます。

 

 

 

そこで,今回の提案では,※10に書いてありますとおり,効力発生日については種々の場合があり得ることを認める一方で,信託の変更の合意または決定がなされた日をもって「合意日」との概念を用いることとし,その後の手続的な進行については,この合意日を始期として順次,一律に定めていってはどうかと考えるものでございます。

 

 

 

もう一つでございますが,今回の提案におきましては,受託者は合意日以降に反対受益者に対し決議または決定内容等を通知しなければならないものとしておりますが,一部または全部の受益者に対する通知を怠った場合についての法的処理いかんという問題がございます。

 

 

この場合,通知を怠った受益者との関係でのみ受益権取得請求ができる最終日を動かすといたしますと,結局,裁判所に対する価格決定の申立てができる期限についても受益者ごとに動かすことになってしまいまして,裁判手続の一律性,安定性の要請から妥当ではないと思われます。

 

 

 

このような観点から,通知を怠った場合には変更が無効となるとの考え方を38ページの※6で示しておりますが,これをより正確に申し上げますと,通知を怠った瑕疵の程度によりまして,瑕疵の程度が小さければ変更自体は有効とした上で,通知を怠った受益者との関係でのみ損害賠償をもって対処することとし,瑕疵の程度が大きいときには,そもそも変更自体を無効とせざるを得ないのではないかという考えを示したものであることを付言させていただきます。

以上でございます。

 

 

 

  •  それでは,ここまでの議論をお願いいたします。

 

 

  •  まず,48について簡単に申し上げます。

 

信託事務に関する重要な書類及び受益者名簿の閲覧・謄写権ということがございますけれども,これは一応別なものであるという理解ですか。

 

 

そのように,2ページにどのように考えるかが検討の課題として挙がっておりますけれども,一応そこは,この48の規律とは別のものとして考えていただきたい。

 

 

すなわち,これは先般の議論のように,基本的にはデフォルトルールとしておきたいということを申し上げたいと思います。

 

 

 

それから,49の複数の信託意思決定の方法についてでございますけれども,これについては,前回の会議において私の方から問題提起しました任意決議事項であるとか,決議方法のデフォルト化であるとか,あと議決権のデフォルトの原則がどちらであるのかということについて非常に御配慮をいただいておりまして,これは歓迎したいと思っております。ぜひともこの方向性を維持していただきたいと思っております。

 

 

 

片や60の買取請求権についてでございますが,これは前回の会議におきまして,基本的には,49の議論とともにデフォルト化を追求していきたいという立場を申し上げましたけれども,これはいろいろな意見があるということで,やはり受益者に対する一定の保護のバランスの問題が重要だと思っておりまして,そこには一定の限界があるのかなとは思っております。

 

 

 

その観点からして今回の提案は,先ほど必要最小限のものを残すという御説明がありましたけれども,その方向性としては評価できるものではないかと思っております。これで十分なのかどうかは,まだ留保させていただきたいんですが。

 

 

 

そこで,これも前回,一番大きな問題として問題提起しました1の(1)の6の受益債権の内容でございますけれども,ここも一定の制限を加えていただいたということでございまして,方向性としては歓迎したいと思っております。

 

 

 

ただ,やはりこの内容がメルクマールとして非常に明確なのかということについては,若干の疑義がございます。

 

 

これは,やはりその中身,精神に鑑みまして,「衡平」という言葉をどうしても使わざるを得ないという御苦労も理解できるところでございます。

 

 

 

つまり,やはりこういうものは,いろいろな状況に応じて判断されるということでございますものですから,こういう言葉が出てくるのかなと思っておりますけれども,ただ,やはりその解釈の基準について一定のコンセンサスをとる,ないしは明確化することが実務的には必要なのかなと思っています。

 

 

 

その点,この御説明のところで41ページを中心に,先ほども御説明ありましたけれども,例えば信託債権の内容の変更というのは直接的なものである,つまり信託条項の変更により間接的なものというのは含まないであるとか,例えば優先劣後の構造を当初からとっていたものについては,その構造を前提とした差異は当たらないと,41ページの下のところから読み取れると私は認識しているんですけれども,そのようなことについて,この場においてももちろんコンセンサスをとれればと思っていますし,また,法文上に反映できるならば反映していただきたいですし,そうでなければ,少なくとも中間試案の補足説明等において具体的な事例,いろいろな事例も含めて明確化していただきたいと思っています。

 

 

 

できれば事務局の方から,この衡平というところについて,いろいろなパターンについての御議論があったと思っておりますけれども,それについて一部御紹介していただければ,この衡平という中身がより明確になるのではないかと思っておりまして,もしそういう事例を御開示いただけるのであれば,ぜひともお願いしたいと思っております。

 

 

 

最後に,受益権取得請求権が発生した場合に,それが信託財産に限られるのかどうか,ないしは受託者個人の負担になり得るのかという論点について御説明がありましたけれども,私はちょっと理解ができなかったわけなんですが,基本的にはデフォルトとして信託行為に定めることができる,つまり,ある意味,信託財産に限るということを書けば,受託者個人の負担にはならないというようなことができる,そういう理解でよろしいんですか。

 

 

そうした場合にでも,例えば,特に不動産信託等,信託財産が部分的に処分できないものについて,片や一部の取得請求者が出てきた場合に,支払期日が決まっているわけですから,その結果として,事実上,受託者がいわば立替払いの形で金銭を出さなければならない場面も出てくるのではないかと思っております。

 

 

 

第1に,そのような立替払いということもデフォルトというところで,そういう換価できない場合には支払いはできないと決められるのかどうか。第2に,もしできないとするのであれば,その立替えをしたものは,これは前回の補償請求権の議論と同じでございますけれども,有益費,必要費ということで全額かつ優先的に回収できるのかということについて,事務局の御見解をお聞きしたいと思っています。

 

 

 

  •  いろいろ質問もありましたけれども,少しまとめて御意見を伺ってからにしましょうか。

 

 

 

  •  まず,48の信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限でございますが,基本的には受益者多数の場合についてということですけれども,こういう場合については基本的には,複数の種類に分かれているものも当然ございまして,その中には単独受益者権の行使を想定していないような受益者もあるのではないか。

 

 

また,受益者の権利の濫用の防止とか,また競合する他のビークルとの平仄であるとか,あと,やはり効率性を一番重視しないといけないような信託,そういうタイプの信託もあるのではないかと思いますので,そういう観点から,やはり単独受益者権を制限する方がいいものもあるのではないか。

 

 

 

そういう場合については,御提案の一部にありますけれども,その制限の内容を信託行為に書いて,受益者の実質的な了解を得た上で制限を行うといったことがあってもいいのではないかと思っています。

 

 

 

ただし,何でもかんでもいいということではなくて,その制限については,やはり慎重にしなければいけないといった考え方も持っていまして,例えば,別途のバランス策が講じられているような信託,例えば前回御提案がありました,受託者監督員が選任されているようなものに限定するとか,あとは単独受益者権の範囲についても,取消権であるとか差止請求権であるとか,損失てん補の請求であるとか,そういうものを限定するとか,あとはそれを組み合わせるとか--すみません,「こういう形がいいですよ」という提案,提示が今,できないんですけれども,何らかの工夫によって,その辺の組合せを行って制限することも必要ではないかと考えております。

 

 

 

 

もう一点,先ほど○○委員からもお話が出ていましたが,信託事務に関する重要な書類の閲覧・謄写請求権を信託行為の定めにより制限することにつきまして,帳簿閲覧請求,こちらの方はどうしても仕方がないのかなという気はしているんですけれども,この重要な書類については,いろいろな種類の書類がございますし,範囲をなかなか明確には言えないということもありますので,受託者の営業上のノウハウであるとか,あとは,例えば取引先との間の契約であったりすると,営業上のノウハウだけではなくてプライバシーにかかわるようなことが流出してしまうおそれもありますので,1つは,閲覧の拒否事由が明記されておりますので,これで対処できるという考え方もあるとは思いますけれども,信託契約の定めを置くことによって受益者との間のトラブルを避けるということもありますので,そういう方向で御検討いただければと思っております。

 

 

 

  •  単独受益者権の制限等については,まだいろいろ御意見があるところだと思いますけれども,いかがでしょうか。

 

 

  •  これ特約で,実際には自益信託が多いでしょうから,当初,委託者兼受益者であるところの当事者が特約で制限することは,訴訟契約でもOKであるということからすると,構わないということなんでしょうか。

 

 

 

それでも,その受益権が点々と譲渡されたときには,また別途合意が必要だという議論なのか,場合によっては,そういう特約であるから構わないという議論もあり得るのかなということが1つ。

 

 

あと,排除となると確かにいけないのかなと思うんですけれども,合理的な,または正当性のあるような制限まで一切合切いけないという--書きぶりからすると,そういうふうに読めないこともないんですけれども,そうすると,場合によってはちょっと強いのかなと。

 

 

それで,それに対する例外が多数の場合ということで,その多数の議論の仕方にもよると思うんですけれども,先ほどの御説明によりますと,有価証券化が一つの事例であって,他の例を特におっしゃらなかったんですけれども,今後,有価証券化がほとんどのケースで使われるようになれば,それで済むのかもしれませんけれども,現状ですと--現状,資産流動化は有価証券化できますけれども……,何だ,違うな。

 

 

ちょっと言い方を変えます。有価証券化しないようなものも多数であり得るのかなと思うので,ですから,その多数のとらえ方によると思います。

 

 

多数の他の例,それが適切かどうかわかりませんけれども,自益信託を分割してというようなことが他の法律にありますけれども,要するに,分割予定の受益権の例などが,別の一つの多数ということのとらえ方の例ではないかなと。

48に関しては,以上のような意見を持ちました。

 

 

 

 

 

 

 

  •  閲覧・謄写請求権について,意見を申し上げるのがなかなか難しいところもあるんですけれども,1つ確認したいのは,今回,信託の柔軟化を図るという前提のいき方からすると,情報提供の義務といいますか,責任というのは,やはり重要であろうと思います。

 

 

 

ですから,例えばこういった情報提供の義務を緩めるのはかなり慎重にやらないと,一部のニーズにこたえるがためにかなり広くこの制限を認めるということになると,やはりこの情報提供の義務が持っている意義が失われてしまうのではないかということを強く懸念いたします。

 

 

 

前回,この義務に関しては会社法の議論とは違うのではないかと申し上げておいて会社法を引き合いに出すのは,ちょっと気が引けるところではあるんですけれども,会社法の議論でも,定款自治というようなことで柔軟化が図られた方で,公正さとか透明性ということが言われているかと思います。

 

 

 

 

これは恐らく,適正化ですとか効率化ですとか高度化のためには,そういった公正さ,透明性が重要だという認識も含むような議論なのではないかと思います。

 

 

 

信託においても,やはりそのような観点を重視して制度を考えるべきではないかと思います。

 

 

 

それで,この制限を考えるときにどういった形で,これ,個人的には本則において制限することはできないという考え方をとるべきではないかと思いますけれども,ただ,多数の場合に,ある程度こういったことを制限することはあり得ることかというふうには確かに思います。

 

 

 

ただ,そこにおいても幾つか考えなければならないと思うのは,1つは,信託契約書について見られないということになると,これはやはり受益者としては困ったことになるだろう。

 

 

それから,基本的には説明の請求ができることになっていると思うんですけれども,この説明請求ができなくなるというのは,やはり困るだろうということで,ある程度要件を課して,一定の数があるものとかそういったものに限定するということは,あるいはあり得るのかもしれませんけれども,そういったことができなくなるというような形での制限のつけ方というのは,やはりまずいのではないかと考えております。

 

 

 

ですから,この閲覧請求権,情報提供の問題に関しては,ぜひ慎重な規律といいますか,そういったことで御検討いただければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

  •  重要な御指摘であると思います。

さっき出てきた幾つかの御質問に対して,お答えしますか。

 

 

 

  •  では,記憶のある範囲で順次お答えいたしますが,最初に,第48について,自益信託の場合に,特約をすれば単独受益者権を制限できるのかという点については,委託者としての権利についてはそのようにできると思うんですが,それには吸収されない受益者の権利については,御指摘があったように,受益権が譲渡される可能性などもありますので,そのように,あらかじめ信託行為で放棄することによって受益者の権利がないと--個人的に放棄するのは構いませんが,それによって受益権がない,受益権に基づく受託者に対する監督がない受益権が発生すると考えるのは難しいのではないか。

 

 

そういう意味で言えば,個別の放棄はいいですが,一体的な放棄はできないのではないかと考えております。

 

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

それから,○○委員から御指摘があったうち,衡平とはどんなものを考えているのか,議論があったかというと,言ってみればこれは,みんなが損するなら仕方がないでしょうと。

 

 

 

1人だけ抜け駆けをするのはだめだけれども,ある特別な1人が損する場合は,その人は保護してあげればいいのではないかというのが基本的な考え方で,それを,この「衡平」という文言を使っているわけでございまして,先ほど申し上げましたように,例えば,同一内容の受益債権の内容を変更することによって一部の受益者が不利益を被る場合は,その人が請求できる。

 

 

 

他方,すべての受益者が,その有する受益権に応じて不利益を被るような場合はだめであるというようなことですとか,もともと受益債権の内容に差異がある場合において,変更がその差異を反映したようなものであるときは,これは並行的に差がふえるわけですから,それは全員だめだと。そういった考え方を文言に反映させているつもりでございます。

 

 

 

ですから,補足説明等でそこら辺をもう少し丁寧に書くべきであるということであれば,それは対応できるかと思いますが,文言としては,こういう感じかなと考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから,取得請求権ができないという信託行為の定めができるかということでしたでしょうか。

 

 

 

例えば,事務局の考えとしては,取得請求権は強行規定ですので,信託行為で一律に,その信託においては取得請求権があらゆる受益者にないということを定めるのは難しくて,ある特定の受益者が個人的に放棄するのは構わないわけでございますが,およそその財産の性質によって取得請求権がないというような信託を設けることはできないのではないかと思います。

 

 

 

 

そういうときに,では,受託者が代わりに払ってやったときの補償請求権はどうなるのかということでございます。

 

 

 

それは今まで余り考えてはいなかったんですが,恐らく,債権の性質をもって考えるというのが前の考え方だとしますと,受益権取得請求権というのも一種,受益債権であろう。

 

 

そうすると,これは普通の信託債権よりも劣後してしまうのではないかという気がするところでございまして,受益債権は,例えば信託の終了の局面でも,信託債権があって受益債権があって,残りが残余財産帰属請求権にいくという規律をしておりますので,受託者にはちょっと酷なようですが,代位弁済をした場合に取得する取得請求権というのは,受益債権に準じて劣後するのではないかというのが個人的な考えでございます。

 

 

 

ただ,それは,換価できないものについて代位弁済するからでありまして,こういう場合は,もうそれはそれによって,中止の要件を定めていれば中止すればいいわけですし,冒頭に言いましたように中止の要件を定めていない場合には,もうそれは,どうするんですかね,取得請求権に応じることによって信託財産がなくなり,もう信託が終了せざるをえないということかなという気がいたしますけれども。

 

とりあえず,記憶のある範囲ではその限度でございます。ほかに何かありましたら,また。

 

 

  •  一番最後の点で,もしそうであるのであれば,受託者にとってちょっと酷な場面もあり得る--もちろん工夫の余地はあるかと思いますけれども,その点について何か工夫があるかどうかという点について,なお検討していただければと思っております。

 

 

 

  •  1点目は,反対受益者の受益権取得請求権の(1)の①で「信託の目的の変更であって,受益者を害するおそれがあるもの」という要件となっております。

 

 

 

こちら先ほど御説明を聞き落としたのかもしれませんが,「受益者を害する」というのは経済的利益を害するという趣旨でしょうか。

 

 

問題意識としては,目的の変更というような場合に,商事であればともかく民事のような場合に,経済的利益自体は変わらないけれども,やはりこの信託にとどまることは困るというような場合はないのか。

 

 

 

 

そういったものを,「受益者を害する」という要件をどう解釈すればよいのか,ちょっと疑問に思ったところでございます。

 

 

もう一点は,受益者間の衡平というところでございますが,最終的には,取得価格の決定の手続のときに裁判所が何を判断すべきかということともかかわるんですが,前提問題として,やはり取得請求権があるかどうかということを判断せざるを得ないようにも思われるんです。

 

 

 

そのときに,衡平を害するかどうかというところで,実体的な請求権の有無自体をまず判断しなければならないということになりますと,決定の手続についてもかなり重い負荷がかかってくるのではないかなというところで若干懸念をしているものでございまして,可能であれば,何かもうちょっと明確なメルクマールがないのかどうか考えていただきたいというのがコメントでございます。

 

 

 

  •  なかなか具体化も難しいところがあるんですよね。
  •  前段の御質問でございますが,ここは経済的な利益と考えておりまして,結局,取得請求権という金で解決する話ですので,信託の受益者を害するというのは,あくまで経済的な利益を害するおそれのつもりで書いているということをお答えさせていただきます。

 

 

 

  •  今の「経済的な利益」というところに関連して,もう少し広い話をさせてください。

 

 

第60の反対受益者の受益権取得請求権を強行規定にするために,いろいろ工夫をされたというふうに,拝聴して理解をいたしましたが,しかし,それにしては成立要件が厳し過ぎると思います。

 

 

具体的には,ちょっと小さなところから言いますと,損害を受けるおそれというのが第60の1の(1)の柱書きにありながら,かつ幾つかは6号までの中に重複して入っているというところを,まず指摘したいんですけれども,そこはうまく整理したとしても,やはり基本的に,この強行規定としての受益権取得請求権は,損をする人には出ていってもらえるという思想になったんだろうと思うんです。

 

 

しかし,本来あるべき姿は,損をするかしないかにかかわらず,基盤となる重要な法律関係,受益者が置かれているですね。

 

 

 

その変更に対して反対の者は出ていっていい,そして,それに対する対価は公正な価格で補償すべきだ,その立場があるべきではないかと思います。

 

 

比較すべき対象としてどういうものが適当なのか,よくわかりませんが,現行の会社法,現行の商法の反対株主の株式買取請求権,あるいは建物区分所有法の建てかえのときの,何というんでしょうか,私は建てかえには参加しないから買ってくれというもの,どちらも損をするから出ていっていいですというのではなくて,そういう方針に反対だからというふうに仕組まれている制度だろうと思いますので,ここも,全体として柔軟な信託の中で,強行規定としてどういうふうに残せばいいかというところに御配慮があったことは理解しておりますが,しかし,これでは狭過ぎるだろうと思います。

 

 

 

とりわけ今,○○幹事からお話があったことに対する○○幹事のお答えであるところの,1号の受益者を害するおそれ,経済的な損害だというお話がありましたが,例えば,社会的責任投資ですか--という投資の受益者だったけれども,もうそういうことは考えずに自由にやるんだというときに,自由にやって,あなたは損をしないから出ていけないというのでは,やはりおかしいのではないか。

 

 

そういうふうに変えるのは構わないと思いますが,今までの信託だから受益者として入っていたけれども,そういう重要な基盤となる法律関係の変更に対しては出ていっていい,それをやはり強行法的に保護すべきではないか。

 

 

 

私の考えでは,それが多数決で問題を解決できるということに当然に伴うべき保障措置ではないかと思います。

 

 

 

  •  今の○○幹事の意見に全く賛成で,同じようなことなんですが,先ほど,ポートフォリオを変える場合は,受託者間の衡平を害するものではないから当たらないといったお話がありましたが,例えば私募投信など,リスクレベル1のものを,これからはリスクレベル5の運用をしますと言われて,それではたまらんから自分はやめたいと言っても買取請求ができないというのは大変困る話ですので,やはり要件が狭過ぎるという結論は,全く賛成です。

 

理屈の面でも,全員の合意を要すべき事項を多数決でいいとしたこととセットで出てくる反対受益者の取得請求権ですから,反対した人が請求できるとしてもらわないと,制度としてはおかしいと思います。

 

 

番人

「たしかに。」

 

 

  •  先ほど来,出ています反対受益者の受益権取得請求権の成立要件のところでございますけれども,これは前回からいろいろと工夫していただいて,それに対して,まだ非常に狭いのではないかとか,不明確ではないかといった御意見が出ていますけれども,受託者的な立場というか,営業の受託者的な立場からいくと,これを規律していっても,多分,明確にしていくのは非常に難しいのではないかなと思います。

 

 

そうしますと,結局のところは,反対受益者についての買取請求をやるというようなことに実務上はなるのではないかと思っておりますので,その目安になるようものを今,御提示いただいておりますので,もちろんもっと工夫していただいて,明確化を図っていただく必要があると思うんですけれども,なかなかそれ以上突っ込んでいくのは難しいのではないかなという心証を持っています。

 

 

 

 

番人

「あらかじめ、買取のお金を用意できるものだけ変更するのかな。」

 

 

ただ,1点だけ確認させていただきたい事項がございまして,成立要件のところについては,第49の,受益者複数の場合の意思決定方法における受益者全員の合意事項という,これ別表になっているところがあるんですけれども,この中の信託行為の変更に関するものだけが抜き出されているような感じがいたしまして,その他の部分については,1つは,取得請求権は不要だという理解のもとで入れられていないのか,それとも,また別の規律を考えられているのかというような感じもしますので,その辺のところを教えていただきたいと思います。

 

 

あと,※2の反対受益者の範囲についてですけれども,この規律によりますと,事前の個別の通知を行いますと,反対の意思表示をしない場合には,定足数に入れた上で賛成したものと見なすという,いわゆるみなし賛成制度をとった場合でも,反対の意思表示をした人だけに取得請求権を認めると理解しているんですけれども,これでよろしいんでしょうか。

 

 

 

 

あと,通知ではなくて公告でみなし賛成制度をとることも可能であろうかと思いますけれども,この場合には,ある一定の期間内については,すべての受益者に取得請求権を認めるというようなことに最終的にはなってしまうのではないかと思いますが,それはそういう理解でいいのか。

 

 

 

そうであるとすれば,みなし賛成制度というのは我々の方からずっと要望していた件ですので,これが認められるということについては非常にありがたいなと考えております。

 

 

ただ,さらにつけ加えて言わせていただくと,同様の考え方で公告についても認めていただけたらなと思っております。

 

 

公告を行った場合には,決議そのものには賛成したこととなる受益者にも取得請求権が発生して,ある一定の期間内については,すべての受益者に取得請求権を認めることになってしまうので,何となく違和感があるという感じがいたします。

 

 

 

あと,※6の通知ですが,ここについては公告でもいいと思っているんですけれども,それでよろしいでしょうかということでございます。

 

 

 

それと,前回の本席におきまして,受益者複数の意思決定方法については,自由度を高めるためにデフォルトルールにどうしてもしてくださいというお話をして,その代わり,先ほど来,出ていますように,受益者保護というのは反対受益者の取得請求権を強行法規化するということで,これについてはもうやむを得ないと私どもは考えております。

 

 

 

 

ただ,とはいえ,これも前回申し上げたと思うんですけれども,流動化等で信用補完をするためのオリジネーターがあり,劣後受益権を保有しているような場合,これで取得請求をやってしまうとストラクチャーが瓦解してしまうというようなことがあります。

 

 

 

これで実務上の工夫をしないといけませんねというのと同時に,法制度の手当てもお願いできませんでしょうかとこの前,申し上げました。

 

 

 

これについては先ほど○○幹事からもお話が出ていますけれども,受託者と受益者との間の相対での取得請求権のあらかじめの放棄といいますか,こういう形態である程度は対応できるのかなと思っていまして,これについても基本的には,「公序良俗に反しない限り」といった限定がつくんだと思いますけれども,この辺のところ,条文上に書くような話ではないかもしれませんけれども,明確化していただけたらなと思っております。

 

 

 

 

  •  第60のところで,もう既に議論されているかもしれませんけれども,弁護士会で議論したときに,この受益権を受託者が取得するのではなくて,他の受益者が取得するようなケースを認めてもいいのではないかみたいな議論が出まして,考えてみると,これは取得請求権だから,多分自己株式の取得のようなことを前提としていて,その後に受託者はそれを消却するのか,場合によっては他に譲渡するのかもしれないですねみたいな議論をしました。

 

 

 

その取得請求の法的性質というんでしょうかね,ですから,まだ受益権はそのままとどまっていて,その受益権がさらに,要するに,信託の一部解除ではないのかどうかということをお伺いしたい。

 

 

それから,今,○○委員がおっしゃったことと関連するのかもしれませんけれども,受益債権の内容変更で,衡平を害しない場合。

 

 

 

当然濫用,悪用でなければそういう形になって,反対請求が起こらなくて済むのかと思うんですけれども,種類受益権集会の議論が他にあるのか何か,ちょっとわかりませんけれども,ある種類の受益者の受益債権の内容については一定の変更をする,それは一律に適用があるというときに,ただ,他の種類との関連でどうのと言うと,結局この衡平を害するという議論が出てきてしまって,取得請求が出てきてしまって,その信託自体のキャッシュフローとかマネジメントが非常に混乱するというようなこともあると思うので,その辺も含めて,強行法規性ということで一切変更できないということになると,いろいろな問題が出てくるケースもあるのかなと。

 

 

 

 

ですから,基本的な原則としてこういうことであってもよくて,ただ,それぞれの商品とか信託の特性に応じて多少のバリエーションを認めるような記述が何かあっても,かえって紛争を事前に防止できるのではないかと思いました。

 

 

 

  •  先ほど来,第60の要件について,この限定では狭過ぎではないかということについて私の意見を述べたいと思います。

 

 

 

先ほど述べたとおり,基本的には最小限の要件を立てるべきではないのかという話でございまして,もしその商品,その信託の内容に応じて取得請求権がやりやすいようなハードルをつくりたいというのであれば,※4に書いてございますように,基本的に受益権取得請求権の付与のことをそこで書けばいいということでございますので,信託の柔軟性から考えますと,ここでは最低限のことを書けばいい。

 

 

 

これは先ほど会社法の議論が出ていましたけれども,やはり信託独特における政策的な判断だと思っておりまして,そこを考えますと,その柔軟さに加えて,やはり信託の継続性であるとか受益者同士の一団性等を考えますと,強行法規性というのはできるだけ制限した方がいいのではないか。そして,必要であればデフォルトということで加えればいいのかなと思っております。

 

 

 

 

あと,受益者を害するおそれということで,○○委員からリスク1からリスク5という話がございましたけれども,この点については私も,受益者を害するおそれがあるものについて,衡平と同等に,なお現実には不明確だという思いはあるわけなので,そういう意味で,衡平と同様に明確化を,明文化ないしは補足説明等で御説明いただきたいとは思っております。

 

 

 

 

ただ,先ほどの事例だけ考えますと,リスクが変わっていくということは,①であれば信託の目的の変更ということもあわせて考えれば,現行提案の案であったとしても,「害するおそれがあるもの」ということで受益者は保護され得るのではないか。

 

 

 

何となれば,実際にリスクが高くなれば害するおそれがあるわけだからということで,この内容であっても一定の保護は図られるのではないかと思っております。

 

 

この「害するおそれ」ということについて,何か解釈とか御議論があれば,御開示いただければありがたいと思っております。

 

 

 

  •  幾つか御質問をいただいた中で記憶があるものですが,○○委員がおっしゃったのは,これは受託者ではなくて他の受益者が買い取ることを認めてもいいのではないかという御質問ですね。

 

 

 

  •  そうです。一たん受託者が自己株式の取得のように買って,それを一回転売する,そういう前提での議論なのかどうか。

 

 

  •  それはできると思います。一たん受託者が買った後どうするかというのは,それは別に受益権を処分するということでもいいし,消却してしまう形でもいいですし,そこら辺は信託行為の定め方次第ではないかという気がしております。

 

 

 

それから,○○委員の質問の中で,まず,一番最後におっしゃったのは,※6は公告でもいいかという点でございますが,これはやはり個別に通知をすることが重要だと考えております。

 

 

 

公告では反対受益者に対する通知をしたことにはならないのではないかというのが現時点での考えでおります。

 

 

 

※2についても公告ではどうかということですが,これも個別の通知をすることこそ反対の機会を付与するための重要な礎になるんだという考えに基づいておりますので,たとえ内容を含んだものであっても,公告によって反対の機会を付与したことにはならないのではないか。

 

 

 

 

そうしますと,公告したというだけでは,なお積極的に賛成した者以外は受益権取得請求権を行使できるのではないかと考えているところでございます。

もう一つは,1の中が信託の変更の場合だけのように見えるとおっしゃいましたか。最初,ちょっと聞き忘れたんですが。

 

 

 

 

  •  信託の変更以外の,例えば忠実義務違反の行為の承認であるとか,解任とか新受託者の選任とか,そこら辺の部分が複数受益者の決議のあれになっているんですけれども。

 

 

 

  •  受託者の変更等につきましては,これは積極的に付与しておりません。というのは,誰が受託者かによって受益権の中身が変わるわけではないという考え方でございますので,例えば受託者が更迭されたことによって変更請求,取得請求は生じないという考えでございます。

 

 

あと,忠実義務を解除するとかというのは,それは信託の変更ではなくてですか。忠実義務をなくしてしまうわけですか。

 

 

  •  はい。違反があったときに,当然のことながら,承認すれば免責されますけれども,その意味合いの承認であるとかですね。

 

 

 

  •  承認したときに,その承認に反対の人に取得請求権があるか。
  •  はい。

 

 

  •  例えば受託者が信託違反行為をした。それに対して受益者が損失てん補請求権を有しましたという場合に,受益者の多数決によって免除するというようなケースもあるかとは思うんですけれども,ここではそういうものまで含むという趣旨ではなくて,信託の変更で,例えば受託者の責任を軽くするとか,譲渡性を制限するとか,そういう重大なものに限って,原則としては,強行規定として反対受益者の取得請求権を認めようというふうな提案でございます。

 

 

 

  •  ……ということは,全く今ここに書かれているものに限定して,反対者の取得請求権の要件というのは考えればよろしいわけですか。

 

 

  •  そのとおりでございます。
  •  極めて細かい点なんですが,先ほどの話を,例えば中間試案とかそういう形で書く際に,個々の受益者というのは自らの受益権の価値が減少するとか,あるいは受けられるべき給付が受けられなかったことによって,不法行為とかそういうことの損害賠償請求権というのは存在するわけですよね。

 

 

 

信託法上の損失てん補とかそういうものはない,請求しないと決めれば,それに拘束されるという話ですよね。

 

 

多分それは,どこかに明示していただかないと,絶対にないんだと信託業界は主張し出すと思います。不法行為法上はあるんだということは,はっきりさせておいてほしいと思います。

 

 

 

  •  わかりました。

ほかに,よろしいでしょうか。大きな枠組みについては,それほど御異論はなかったと思いますけれども。

それでは,次にいきましょうか。

 

 

 

  •  すみません,今の第49についてちょっと。

集会の話なんですけれども,2点ほどございまして,これは私の実務家としての感触的な部分もあるんですけれども,デフォルトルールとしての集会手続規定というのは法律にあってもよいのではないか。

 

 

そうでないと,信託契約で詳細な手続規定を毎回書くようになったりとか,それぞれによって違ってきたりとか,ですね。

 

 

それと,手続規定があれば,場合によっては決議取消の訴えとかそういうものも可能だということであれば,デフォルトルールとしての,それにのっとった場合には,裁判所に対して決議取消しとかそういうものができる,そういう選択肢もあって,なおかつ,そうすれば信託契約ごとにバリエーションがあったりとか,受益者が個々に細かいチェックをしたりとか,場合によっては決議に瑕疵があってもそれは争う手段がなかなか見出せないといったようなことにならなくて済むのではないか,そんなふうに思ったことが1つ。

 

 

 

 

あと,デフォルトルールとしての個数なんです。これもいろいろ検討された結果,出てきた議論のようですけれども,デフォルトルールで書いていないから,個数といっても,なかなか信託契約の中で個数を認定するというのは難しいのではないか。

 

 

 

既に議論された結果の個数という議論のようではありますけれども,流動化法とか議論が出ていたと思うんですが,元本基準とでも言うんでしょうかね。

 

 

 

恐らくこういうところは社債型の受益権をイメージしての議論だと思うので,そうすると,元本基準,持分基準みたいなものがまだ例としてもあってもよいのかなと感じました。

 

 

 

  •  先ほどの私の質問の,受益者を害するおそれがあるものについて何か議論があるか,御説明いただければという話で,繰り返しになって恐縮ですけれども,とりわけ先ほどのリスクが変わるというときに,一つの考え方としては,期待利益は変わらないわけだから害さないという考え方もありますし,もちろんリスク幅が多くなるわけだから害するという考え方,いろいろ考え方があると思います。

 

 

そのときに,具体的にどういうふうにお考えなのかという,この点について,今この場においてコンセンサスをとっておいた方が,恐らく次の議論の役に立つのかなと思っております。

 

 

 

すなわち,もしそれが「おそれがある」ということであれば,恐らくは,先ほど○○委員がおっしゃったような懸念への回答になるかもしれませんし,そうでないのであれば,また別の議論が出てくるだろうと思いまして,それゆえに,この「害するおそれがあるもの」の具体的な中身,またイメージが重要になるのではないかと思っております。

 

 

 

  •  そこは抽象的に,やはり「害するおそれがあるもの」でないと取得請求権を認める必要はないだろうということで,要件を被せているというぐらいのことでございまして,具体的にはいろいろな場合があり得るというぐらいのことでございますが。

 

 

 

 

  •  これはむしろ皆さんの方でいろいろ御議論いただく……。

 

 

一応こんな基準でどうかということで御提案申し上げているので,これだとこんなものも入って具合が悪いとか,そういうことがあればまた基準を考える。

 

 

 

また事務局の方でも少し考えるということではあると思いますけれども,今の段階では,そういう抽象的な基準だということですね。

 

 

 

 

  •  第49に関しての質問なんですけれども,これは任意規定として,具体的なイメージを教えていただきたいんですが,例えば,5ページの(2)議決権の数・受益者集会の決議のイで,「信託行為に別段の定めがない限り,普通決議によるものとする」これは要するに別段の定めというものが,これは定足数ではなくて,議決権について別段の定め,こういう趣旨なんでしょうか。

 

 

 

  •  いや,定足数でも別にできますし,決議要件でもできると思います。もちろん2分の1以上ですが,それ以上にしたければ特別決議でもできると考えております。

 

 

 

  •  別段の定めというのは,例えば2分の1を増やす方向でしかないということですか。

 

 

 

  •  決議要件は,過半数ないと……
  •  決まらないですね。
  •  2分の1がミニマムだと思っておりますから,それを増やすことはできるということです。

 

 

 

  •  ちょっと細かいところで恐縮ですが,第49で,まず1点目は,受益者集会の招集の請求のところです。

 

 

※5ですけれども,今般の提案でいきますと,一部の受益者からの請求によって,例えば受益者集会を開いて協議するまでもないような,こう言ったら悪いですけれども非常につまらないような事項についても,すべて受益者集会が招集されることになってしまいまして,受益者集会を開催しますと当然費用がかかる。

 

 

 

それがすべて受益者の負担になるということがありますので,たしかこれ,前回の御提案では裁判所の許可というのが入っていたのではないかと思うんですが,今回これが入っていませんので,許可だけということではないんですけれども,例えば裁判所の許可といったフィルターを通すとか,あとは,議案が否決された場合の費用は,例えば請求した受益者が持つとか,そういった弊害防止策みたいなものが要るのではないかと思っております。

 

 

 

それと,※6の受益者の正確な個人情報が把握できない場合ですけれども,これについては前回も申し上げましたように,受託者が把握できない場合も結構ありますので,公告による招集はぜひとも認めていただきたいと思っております。

 

 

 

それと,9ページの下の方になりますが,信託行為の定めによって議決権のない受益権をつくることができるかということにつきましては,受益者集会の制度設計を信託行為の定めに委ねるというような考え方でやるとすれば,当然,議決権のない受益権をつくることも可能ではないかと考えられますし,実務的な観点から見ましても,受益権を複層化した場合について,先ほどもちょっと申し上げましたけれども,例えば流動化における信用補完のためのオリジネーターが持っているような劣後受益権であるとか,今度は逆に,ほぼデッドに近いようなもの,こういった受益権であるとか,あとは収益受益権で本当にわずかなものしかもらえないようなもの,こういったものについては議決権のないような形にしてもいいのではないかと思いますので,その方向で御検討いただけたらと思います。

 

 

 

 

  •  ありがとうございました。

まだいろいろ御意見があるかもしれませんけれども,大きなところでは御賛同いただいていると思います。なお,今日議論が出た点についてはさらに詰めたいと思いますけれども,何か答えておくべき点がありますか。よろしいですか。

では,まだ少し残っておりますので,次に進みたいと思います。

 

 

 

 

  •  次は,委託者の関係と,遺言信託の関係についての御説明に移らせていただきます。

 

 

まず,第55でございますが,提案内容は,前回提案と変わるところはございません。本日,特に御意見を伺いたいのは,22ページの(注2)に記載させていただいておりますが,委託者の地位の移転に関する規律を明確化すべきかという点でございます。

 

 

 

現行法には規定がなくて,学説上は,一定の類型の信託や自益信託に限って例外的に移転ができるという見解と,そもそもできるという見解とがあるところでございます。

 

 

事務局といたしましては,23ページの(注3)に書いてございますとおり,委託者の属人的な要素を強調するとしても,受託者や受益者の同意がある場合ですとか,スキームの維持のために委託者の地位の交代が効率的な場合においては,委託者の地位の移転を否定すべき合理性も必要性もないのではないか。

 

 

 

委託者の地位には,移転に値する経済的な価値がないとまで言えるかは疑問であり,少なくとも地位の移転を否定すべき根拠とはならないのではないかなどの観点から,委託者の地位の移転は,原則として一般的に可能と考えることが相当ではないかと考えているものでございますので,御意見を伺いたいと思います。

 

 

次に,第56の方でございますが,これは委託者の相続人の権利・義務に関しまして,前回と同様に,両案を提示しているものでございます。

 

 

 

もっとも前回会議におきまして,結論としては,委託者の相続人は,原則として信託法上の権利・義務を承継しないとする乙案の考え方が大方の支持を得たと認識しております。

 

 

しかし,事務局としては,乙案をとることについてはなお,24ページの説明2以下に記載したような種々の問題点があると認識しております。

 

 

 

この懸念を敷衍して申し上げますが,第1に,乙案のように委託者の地位の相続性を原則として否定した場合の問題点といたしまして,まず,前回会議で指摘されましたように,委託者の相続人は報酬支払義務の方は相続することとなっても,受託者の信託違反行為等を是正する権利の方は相続しないことになりますし,自益信託の場合にも,受益者の地位の方は相続するけれども,この受益者の地位には吸収されない委託者独自の権利については相続しないことになりますが,このような結論は,信託当事者の合理的な意思に合致するものと言えるかどうかという問題がございます。

 

 

 

2点目といたしまして,委託者の地位には,信頼関係に基づく属人的要素が相当程度あることは否定できませんが,委任とは異なり,信託は信託当事者の死亡によっても終了しないことに照らしますと,相続性を否定する根拠として,委任と同様の観点から,委託者の地位の一身専属性を強調することは困難ではないかという感じがいたします。

 

 

 

3番目といたしまして,前回会議におきまして,委託者の相続性を認めた場合の弊害として,法律関係が錯綜するということも挙げられましたが,相続による法律関係の複雑化のおそれは,信託の委託者の場合に限った問題ではございませんし,そもそも信託行為によって相続人の関与を排除するなどの対応が可能ではないかという点も指摘されるところだと思います。

 

 

ポリー

「受益者指定・変更権って、信託行為で委託者の地位は相続しないって書くと亡くなった場合消えてしまうんでしょうか。誰かに委任していた場合。」

 

 

 

第2に,この信託行為による対処が可能であるという点に関しましては,前回会議におきまして,乙案のように相続性を否定した上で,特に必要があれば信託行為をもって相続人に一定の権利・義務を認めればよいではないかとの方向性が示されております。

 

 

しかし,このように,信託行為をもって相続人に一定の権利・義務を認めるという点につきましても,前回会議でも指摘がございましたが,そもそも理論的に,これは信託行為によって相続人による権利・義務の相続を認めるというものなのか,それとも,相続性は否定した上で,信託行為に定める範囲において委託者の地位の全部ないし一部の譲渡を認めるものなのかという問題がございます。

 

 

 

相続を認めるものだとしますと,相続人の関与のないまま,被相続人たる委託者と第三者たる受託者の合意のみで相続財産の範囲を決めることができることになるわけですが,そういうことが相続法上,果たして許されるのであろうか。

 

 

 

これが委託者の地位の譲渡,これはいわば相続人を第三者とする,第三者のためにする契約だと思うのですが,これを認めるものだとしますと,相続性を否定しながら譲渡性を認めるというのは矛盾ではないのか。

 

 

 

むしろ先ほど申しましたように,相続人の関与による弊害に対処できる方法があるのであれば,相続性の有無の範囲に関するこのような複雑な議論にあえて立ち入るまでもなく,一般原則どおり,相続は許されると原則に従った上で,信託行為の定めをもって相続人の関与を排除することができれば足りるのではないかと思われるところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上を踏まえまして改めて,甲案,乙案のいずれが適切か御審議いただきたいと思っております。

 

 

同じ問題が,第67の遺言信託でもございます。46ページでございますが,相続人の権利・義務につきまして,やはり両案を提示しております。

 

 

 

なお,信託は遺言でもできるということは明記するつもりでおります。その上で,相続人の権利・義務が問題になるというところでございます。

 

 

遺言信託における遺言者の相続人の権利・義務の問題につきましては,法律構成上も,理論的にも結論的にも,基本的には契約信託の場合と同じように考えれば足りるのではないかということを,この資料の冒頭から書いているところでございます。

 

 

 

すなわち,遺言信託の場合におきましては,確かに信託の効力発生時点においては,委託者たる遺言者は既に死亡して不在ではありますが,教科書などを見ますと,やはり遺言者が委託者であると考えられておりまして,したがって,法律上は契約信託における場合と同様に,遺言者は委託者としての権利・義務を一たん取得した上で,この権利・義務を相続人が相続することとすべきか否かと法律構成することができると考えられます。

 

 

 

 

もっとも,契約信託の場合に比べまして,遺言信託の場合には,委託者の相続人と受益者の利害対立というのはより直接的でございますので,遺言信託における相続人には受益者の利益のための権利行使の可能性は一層期待できず,委託者の権利・義務の相続を認めるのは不適当ではないかとの指摘もあり得ます。

 

 

 

この点につきましては,生前信託においても委託者の死亡を効力発生時期とする死因贈与類似の信託設定も可能であることですとか,生前信託であれ遺言信託であれ,委託者において仮に相続人が関与することに不安があれば,信託行為をもって相続人が有する権利を排除していくことが可能であることなどに鑑みますと,委託者の権利・義務の相続性の有無に関するデフォルトルールを定めるに当たりまして,契約信託と遺言信託であえて異なった結論をとることを必要とするほどの違いとまでは言えないとの反論もあり得ると思われます。

 

 

 

 

 

 

ところで,前回の会議におきましては,遺言信託というのはそもそも相続人の意向を排除するところが大きいとの指摘がありましたほか,契約信託の場合と遺言信託の場合とで特に取り扱いを異にするのはおかしいとの観点から,相続人には権利・義務が原則としてないとする乙案が大方の賛成を得たものと認識しておりますが,相続性を否定した上で,特に必要があれば遺言をもって相続人に一定の権利・義務を認めればよいとする見解によりますと,これを相続と見るのか,それとも,委託者としての権利・義務を原始的に付与するというのは特殊な行為と考えるのか,相続人としては,このような権利・義務を有することを免れるためには,相続でない以上,相続放棄とは言えないわけでして,どうしたらいいのだろうかというような困難な問題が生ずることが懸念されるわけでございまして,このような観点から,やはりこちらについても改めて,甲案,乙案のいずれが適当か御審議いただきたいと思っております。

 

 

すみれ

「義務もあるもんね。」

 

 

  •  かなり理論的な問題があると同時に,もちろん実際的な考慮も必要な点です。いろいろ御意見が対立する可能性がありますが,いかがでしょうか。

 

 

  •  第56で甲案をとるというのは極めて論理的だと思うんですが,遺言信託に関しましては法的に同列に議論しなくてもよいのではないか。それについては両論ありということで,既に議論されていますけれども。

 

 

というのは,遺言信託というのは,まさしくその名前が物語るように,相続法の議論なんですね。

 

 

ですからある意味では,遺言において遺言執行者がいる,遺言信託においては受託者がいるという規律というのは,別にそれはそれで,デフォルトルールをどちらにするかというだけの議論なのかもしれませんけれども,特におかしくないのではないかという議論と,そういうふうに申し上げる背景としましては,今後,遺言信託がさまざまな形で利用されていく過程において,今,御報告がありましたように,委託者というのはもう必ず,遺言信託をするということは,法定相続とは違ったことをするということですから,信託類型として,初めから利害が反する方が委託者になっているということがデフォルトルールになるわけですから,第56の議論との論理的整合性から,契約に書けばよかったのかもしれないけれども書いていないときに,あえて紛争性を惹起するような類型をデフォルトルールとして残す必要がどこまであるのかなと,弁護士会でも議論したところです。

 

 

 

 

 

 

あと,ただいまの御説明で明確なんですけれども,書き方として,第56の方は「原則として」という言葉が入っているんですが,第67の方は,今の報告の中ではデフォルトルールで信託契約の中に書けばいいという話だったと思うんですが,「信託行為で別段の定めがない限り」といった形にはなっていないので,表現ぶりではありますけれども,ちょっと気になったところです。

 

 

あともう一点だけ。以前議論されているようですけれども,後継ぎ遺贈が相続法上,または物権との議論でできるかできないか。

 

 

 

多分できないという議論だと思うんですけれども,他方において,遺言信託においては,過去の議論ですと,それは受益者の変更権との両方の組み合わせによってできるというような議論のようですけれども,遺言信託は,まさしく相続法の1類型としての信託法の中の取り扱いですから,その後継ぎ遺贈に類似するところの,何というんですかね,○○委員の本にもちょっと触れてありますけれども,その辺も議論として明記していただくことが,ある意味では,「遺言」ではなくて「遺言信託」をあえてするというところの意義として出てくるのではないか。

 

 

すみれ

「遺言信託は相続法の1類型なんだ。」

 

 

そうでないと,遺言と遺言信託は結局遺言で済んでしまうという議論に相変わらず引きずられてしまうのではないか,かように思ったところです。

  •  質問なんですが,第56と一番最後のところで,まず一括して考えてみようということですけれども,これも,とりあえずまず第一段落はアメリカの話。

 

 

アメリカでは,今の議論と重なっていると思いますが,アメリカにおけるいわゆる民事信託の利用法は,相続からの隔離というか,相続のところへいかないために信託をというのが,この二,三十年の間,極めて発展してきたということになっていると思うんですね。

 

 

 

だから,相続制度をどう考えるかというのと非常に密接に関連しているので,なかなか難しくて,アメリカはアメリカの相続制度に物すごくいろいろな意味で欠陥があるので,そういう形で使っているのだと。

 

 

 

 

我が国の民事信託というのがどういう形で発展するのか,これは今後を見てみないとわからないので,現状の相続法との関係が非常に重要だというのはわかるんですが,アメリカでも1点だけ相続人が出てくるところがあります。

 

 

 

1点だけというのか,もしかしたら私がいろいろなところで見落としているかもしれないんですけれども,つまり,いわゆる復帰信託というやつですけれども,日本で言えば帰属権利者ということになりますが,いざ長い期間の後で信託が終了してしまって,受託者として「これはどうしたらいいだろう」というときに,信託条項に何も書いていない場合ですけれども,何も書いていない場合は復帰信託という形になって,どこへいくかというと,委託者に戻る。

 

 

 

委託者が生きていなければ委託者の相続人に戻るということで,ここで初めて出てくる。これ以外は多分,出てこないような仕組みをとっていると思うんですね,アメリカでは。

 

 

 

ここで,例えば第56の甲案なら甲案でもいいんですが,今のお話だと,委託者の相続人は原則として承継するんだけれども,信託条項で一切承継しないと書けばいいというような御趣旨なんでしょうか。

 

 

 

 

 

それで,同じことがこの遺言のところでも,遺言で信託を設定しておいて,それで,この信託に関係しては相続人は一切関係ないものとする,こうやって書いておくと相続の方にいかないということになるんでしょうか。それは我が国の相続法の--いやいや,私きっと説明がわかっていないと思うので,その点をもう一回はっきり御説明いただけますか。そういうことが可能なのかどうか。

 

 

 

すみれ

「我が国の相続法じゃなくて信託法の話だよね。その関係かな。」

 

 

 

  •  とりあえず申し上げますと,それは相続できるかできないかというよりも,相続人に権利・義務を与えるかどうかという観点の問題でして,相続者の有無を信託行為で決めるということではございません。

 

 

 

  •  それで,第三者のために契約だとか……,相続を介しないで相続人に権利を与える意思表示をするという説明の仕方をさっきしたんですね。

 

 

  •  相続人に与えないための条項というのを,どういう形で。

 

 

  •  例えば「信託の変更は,受託者と受益者の同意ですることができるものとする」というようなことを信託行為で書いておけば,相続人の関与は排除できますので。それは相続を認めないというよりも,関与を直接的に外すというやり方。

 

 

 

  •  つまり,大きく相続とは関係ないようにするよという1条項を入れるのではなくて,一つ一つ書いておけということなんですか。

 

 

 

  •  それは「委託者の権利は有しないものとする」と書けば,包括的に排除できるんだろうと思うんですが。「相続できないものとする」と書くのは,それは難しいのではないかと思います。

 

 

 

 

 

  •  そのときに,今の書き方なんですけれども,私の相続人は,私が今,委託者なんだけれども,「委託者の権利を承継する者にはならない」と書いておけば,遺言信託である生前信託であれ,第56であれ,排除できるんですか。
  •  「承継」という言葉を使うと,まずいんでしょう。
  •  「承継」はだめ。では,権利を……
  •  承継するとかしないとか,そういったところを信託行為でいじるのは相続法の観点からして問題があるというのは,そのとおりなんです。

 

 

 

 

すみれ

「承継はだめなんだ。消滅、発生、移動、権利は有しない、が使われているんだ。」

 

 

 

そうではなくて我々は,先ほどから○○幹事からも申し上げておりますけれども,信託の変更については委託者が関与しない,あるいは信託の併合でもよろしいんですけれども,そういうものに委託者は関与しないということはできますので。

 

 

それでは,それを一個一個書かなければいけないのかと先ほど言われましたけれども,それは契約書の書き方の問題であって,その契約書の趣旨から言って,変更もできません,併合もできませんというのをバッとまとめて書くことはできる。それはできるんですが,では,それは何を決めているかというと,相続する,しないというのを決めているのではなくて,あくまでも委託者死亡後における委託者の地位をどうするかを個別的に,信託の任意規定として書いているというふうには説明はできると思います。

 

 

ただ,それはあくまでも相続するか,しないか決めているのではないと言わざるを得ない。

 

 

 

  •  それでいいんですけれども,やはり個別に書かなければいかんのですか。うまく一文で書けるような表現があるんですか。
  •  「委託者の権限を与えない」とかね。
  •  「委託者の権限を与えない」と書けばいいんですか。

 

 

 

  •  いや,何か書き方はありそうですが。
  •  「委託者の権限は,甲の死亡により消滅する」と書けば,それで終わりだと思いますが。

 

 

すみれ

「そっか。」

 

 

 

  •  それはもう一切権限を消滅させてしまうんですね。

その相続をさせるかどうかという構成の問題と,今,○○委員が最初の方に言われましたけれども,私もどっちがいいかと迷っている問題は,やはり信託のいろいろな権限ですね,これを与えてもいいのかどうかという問題と,それから,法定の帰属権利者というのがあって,相続を一切否定して,そうすると法定の帰属権利者の地位も,どうも飛んでしまうような感じがするんですよね。だけれども,英米でもそこは残しておく。--というと,それはどうしたらいいだろうかというのが,相続を否定した場合に残る問題でしょうね。

 

 

 

  •  消滅するといっても,同じようになくなってしまいますよね。
  •  「それを除いて」とか言えば……。

 

 

  •  委託者の地位というのは分割して承継というのはできなくて,まとめなければいけないんでしょうか。

 

 

私は,ポイントとしては,やはり監督権能は初めから締結に期待できないし,逆にいろいろと邪魔されるだけみたいだけれども,帰属権利者というのは経済的な信託の終了のときの枠組みだと思うんですけれども。

 

 

 

  •  まさに私も,実態としてはそういう監督的な権能,特に遺言信託の場合などは,それは相続人に与えないというのはいいと思う。

 

 

 

ただ,法定の帰属権利者の地位は残っていてもいいのかな。本当に,相当長い年月がたってから戻ってくることはあるかもしれませんけれども,それにしても,別に国庫にいく必要はないだろうということで,行く先がないときにも戻ってくる。それをうまく両立させる法律構成ができればいいのかなと思っていますけどね。

○○委員は,その両立させるというのは。

 

 

 

  •  まさしく遺言信託という類型である以上,ここだけの特別規定があっても,他の信託と同じレベルで議論しなくてもよろしいのではないかなと思ったんですけれども。

 

 

 

 

  •  それは1つ,もう思い切ってそういうふうにしてしまうということでね。

ほかに,いかがでしょうか。

 

 

先ほど遺言信託の場合に,私,実質は,やはりその場合にも一たんは相続するんだというのが何か嫌な感じもするんだけれども,といって帰属権利者の地位を飛ばしてしまうのもどうかと思うので,なかなか苦しいところですけれども。

 

論理的に,本来は,やはり突き詰めると相続しかあり得ない,それが先ほどの説明ですよね。

 

 

 

  •  そういう構成しか考えにくいのではないか。非常に特殊な単独行為なものですから。

 

 

すみれ

「特殊な単独行為、か。」

 

 

 

契約であれば,契約上の地位の移転という説明ができるんですけれども,あるいは相続というのができるんですけれども,遺言の場合には契約上の地位でもないですし,相続以外にはちょっと説明がつきにくいからということでございますが。

 

 

ただ,生前信託と遺言信託では利害対立の状況が大分違いますので,そういう観点から,○○委員がおっしゃったように,仮に契約信託では甲案だとしても遺言信託では乙案ということもあり得るかなという気はしております。それは,あくまで利害対立を重視しているからでございますけれども。

 

 

 

  •  理論的な説明はちょっと飛ばしてということになるのかな。もう遺言信託というのはそういうものなんだという……。

 

 

 

  •  問題の整理は余りついていないんですけれども,○○委員がおっしゃったように,やはり性質の違うものがあるのではないかという感じがしていまして,財産の帰属関係の話は,まさに相続にも馴染むもので,最後に戻ってくる帰属権利者としての主体というのは,そういう点から考えられるんだと思うんですけれども,適正な信託をチェックする,そして当初設定者としてのそれへの関心の観点から見ていくという地位は,どうもある仕組みの中で監督等ですとか運営等についてかかわっていくという地位で,それは相続とは馴染まないと言うこともできるのかなと。

 

 

 

ただ,そうしますと,委託者の地位の中で恐らく3つぐらいに性質が分かれてきて,財産の最終的な帰属として残っている地位と,信託の中で監督的なことをやっていく,変更等,あるいは終了等,それからもう一つは当初契約の当事者の地位というのがよくわからないのですが,詐欺取り消しですとかそういうような話がどうなるか。

 

 

 

 

それから遺言信託のときも,例えば遺言によって信託が設定された場合に,その財産を受託者に引き渡す義務を負う立場というようなものは,これは当初契約における履行をする地位と考えると,そこは相続人が継承して,だけれども,一たん渡したものについて,変更などについて同意をするかというのは,また違う地位かと思われるんですが,その3つがそれぞれ分かれることに伴う複雑さもあって,それをどう考えたらいいのかというところも気になっております。

 

 

 

 

もう一つ,ただ,遺言信託と契約信託を全く同じに考えなければいけないのかというと,相続するという構成もできなくはないという説明ではないのかという感じがしているわけですが,それとの関係で,今度は逆に,信託行為に書けば委託者が留保できる権能が幾つか設けられていると思うんですけれども,遺言信託でそういうことを書くことが想定されるかどうか,非常に細かい問題なんですが気になっておりまして,当然,相続人にかかっていけるものならば,そういうものを書くことに意味はあるんですけれども,そうでなければ,そういうものを書いてもそれは全く無意味な記載で,無効というような,そういう理解でよろしいんでしょうかね,そちらは。

 

 

 

 

  •  今の○○幹事のお話は,遺言信託の場合に,財産的な地位は別として,遺言者の相続人には信託法上のいろいろな権能がいかないことを原則として,ただ,場合によっては与えることもあり得るのをどう考えるかということだったと思いますけれども,そういうことですよね。

 

 

 

  •  その考え方を詰めると,契約信託の場合も実はそういうことになるのではないかという感じはしているんですけれども。

 

  •  それでできるのであればということですね。
  •  はい。

 

 

 

  •  ちょっと関連して,思いつきですけれども,やはり相続が入ってくると,なかなか難しいことになる。

 

 

生前信託だって,委託者は「私」ですが,相続人というのはいっぱいいるんですね。

 

 

急にその人たちみんなが委託者の地位を相続して,何だかんだと入り込んでくることを「私」が考えているかというと,普通は考えていないと思うので,この2つを分けないで,できるだけ簡明にした方がいい。しかし,相続法という怖いものがありますよね。強行法。

 

 

 

 

 

ですから,やはり○○幹事のような発想でやれるんだったら,そういうものに,つまり「相続」という言葉を使わないで,原則はというか,別段の定めがない限り,まさに「別段の定めがない限り,委託者が有していた信託法上の権利は,委託者の死亡とともに消滅する」そう言ってしまっておいて,あと帰属権利者の方は,帰属権利者の規定のところに「帰属権利者は,委託者である。委託者死亡のときは相続人のところへいく」と書いておけば,それはそれでもう別の話になってという,そういうことの方が簡明なのではないかと思うんですけれども,しかも相続法とも喧嘩もしないし,どうでしょうか。

 

 

すみれ

「相続法って怖いのかな。強行法は一番強いって意味かな。」

 

 

ちょっと思いつきだけですので,いろいろな点が問題はあると思いますが。

 

 

  •  理論的な説明としては,委託者の契約上の地位--○○幹事はそれにも2つぐらい意味があるとおっしゃったけれども,単純化して,委託者のいろいろな監督権を含むという意味での地位というのは,任意的な譲渡はあり得ていいかもしれないけれども,本人が死亡すれば,一身専属性なのかな,そういう意味で消滅させる。

 

 

だけれども,帰属権利者としての財産的な地位は,それは財産的な地位なので,相続されると言ってもいいのかもしれない。これは○○委員も,相続でも構わないわけですね。帰属権利者の方は1人でなくていいわけだから。

 

 

 

 

  •  帰属権利者が受益者とどう違うかといった話に,最後また戻ってくると思うんですけれども,財産的な権利がもう都度あるんだよと言ってしまうと,そこから何らかの監督権能が発生するような気がしますけれども,それはしないんですか。

 

 

  •  そこは,だから監督的な地位と財産的な地位とを分ける。

 

 

  •  それなら,財産的と言ったって,本当にあるかないかわからない帰属権利者のところだけで書いておけば。

 

 

 

  •  法的な帰属権利者ですから,もう一番割り切れば,もともと本来,当然に委託者にいくというものでもないので,こういう場合の遺言信託の場合というか,委託者にいくと書いてあるわけだけれども,それも,相続などを介した場合には,法律の定めがあるから委託者の相続人とかそういうところにいくんだという理解をすれば,相続を介しないで帰属権利者に財産を与えることも不可能ではないかもしれないですね。

 

 

 

ポリー

「ここから「残余財産の」帰属権利者って言葉ができたんでしょうか。」

 

 

 

  •  委託者たる地位を,例えば遺言の中で,もしかしたら法定相続人の中で長男は立派だといえば,長男に委託者たる地位を与えるとか,場合によっては,全然流動化とは違いますけれども,受益者に委託者たる地位を承継させるとか,ちょっとデフォルトルールではない議論になってしまいますけれども,それは可能という理解ですか。

 

 

  •  それはできますね。

 

 

  •  相続されないという前提をとった上でも,それはやろうと思えばできるということですね。

 

 

  •  仮に乙案をとった場合も,できると思っております。

 

 

  •  恐らく今の議論の全般的な状況というのは,仮に契約でやる場合につきましても信託は信託であるので,普通の契約とは少し違うところがあって,委託者の地位というのは一部相続されないというのが妥当なんだということかと思いまして,それは確かに,アメリカにおける遺言あるいは遺産の承継との絡みでの使い方であれば,私はよくわかるところはございますけれども,他方で,今の我が国における使われ方を見ますと,もちろんそういうものは余り主流ではありませんので,一体どちらをデフォルトにするかというときに,やはり日本の状況をデフォルトにした上で,アメリカ的な使い方にももちろん対応できるのだというところを重視していく。

 

 

 

特に,遺言のかわりということですと,よく考えて契約をつくると思いますので,先ほども一個一個置くのですかということもございましたけれども,それを期待することがそんなに難しいことなのかということはあると思いますし,いずれにしても,むしろ日本の状況を見た方がいいのではないだろうかというのが一つの発想としてはあるところでございます。

 

 

 

  •  私もおっしゃるとおりだとは思うんですけれども,ただ,日本で,例えば自益信託が主流ですねと言うと,委託者の方はいなくても,受益者の方は当然相続という話になりますから。

 

 

 

受益権の方は。だから,余り心配ないのではないかとは思うんですが。日本のような状況を前提にしても。

 

 

 

  •  それはそうなんですが,委託者の地位というのはなくなってしまうので,いい。

 

 

 

それで多くの場合は問題ないかもしれませんけれども,個別に見て本当に問題がないと言い切れるかというのもございますし,他益信託が,余り日本ではないかもわかりませんけれども,だれかのためによかれと思って他益信託を行ったんだけれども,それが受益者と受託者との間でなかなか正常にはいっていないというときに,自分の親がやった信託があって,その相続人などが,あれを何とかしてあげたい,あるいは受託者がとんでもないことをしているので介入してあげたいというようなこと,それをあえて否定しにかかるようなことを言わなくてはいけないのかどうかでございます。

 

 

 

  •  相続人が入ってきてうまくいくというのが……

 

 

  •  大変細かいことを申し上げて恐縮ですが,○○委員がおっしゃったことに関連しまして,例えば,私が生前に信託を設定していて,死亡すると仮定しまして,受益権に非常に財産的な価値があるのは認識していますから,遺言をしようと思えば遺言をして,ある特定の子供に取得させるといったことはすると思うんですね。

 

 

 

 

では,そのときに,自益信託の委託者の地位があるではないか,委託者の地位について何か手当てをすることが期待されるかというと,なかなかそれは一般的には期待できないというのが第1点。

 

 

 

第2点に,それが相続の法理によって承継されるのではないのだとしますと,では,どういうふうにしたらいいのか。

 

 

 

つまり,恐らくある特定の相続人に受益権を帰せしめるということになりますと,その人が単独で委託者たる地位を持たないと,委託者たる地位は共同相続されていろいろな人が行使するけれども,受益者たる地位が1人で持っているというのは,当事者の意思に反するような気がするんですよね。

 

 

 

ですから,例えば自益信託のときには受益権……,自益信託も後から変わりますから軽々には言えないんですが,ちょっと片方は相続の法理ではないのだということを強調すると,つまり,委託者の地位に関しては相続の法理ではなく承継されていくのだということを強調すると,ちょっとまずいときが起こるかもしれないので,では相続の方にしろと私は言っているわけではなくて,何か手当てが必要なのではないかという気がします。

○○委員の発言に触発されて,ちょっと考えたところですが。

 

 

 

 

 

  •  私は,基本的には○○委員のに近いかもしれないけれども,受益権の相続さえ認めれば,普通の問題は恐らくそれで解決する。

 

 

先ほど補足の説明がありましたように,しかし,受益者がうまく行動できないときに委託者が出てきてと言うんですけれども,それは何か,もちろんそういう善意の委託者ばかりではないし,出てくることの弊害を考えると,やはり委託者が出てくるのは適当でないだろうという気がします。

 

 

 

ただ,もし委託者の相続人というのが出てきてよさそうな場面があるとすると,これは委託者にどういう権限を与えるかですけれども,唯一公益信託,要するに受益者がいないタイプの信託で,信託を設定した人が死亡して,その後,公益信託に何か口出しをしたいというか,少し管理をしたいというときに,その相続人が出てきてもおかしくはないかもしれない。

 

 

 

 

ただ,それもどこまでそれを認めていいのかというのは,財団法人であれば拠出者というのはもう一切手を引くわけだし,ちょっと危惧を感じるところですね。

 

 

いろいろ御意見はあるところですが,いろいろなレベルで対立していまして,理論的に相続を認めるか認めないかというところの問題と,もうちょっと実質的なレベルで,少なくとも遺言信託については別に扱った方がいいのではないかとか……。

 

 

もうちょっと整理しますか。何か収斂するというような状況ではないですよね。

 

 

 

  •  整理のために1点だけ申し上げますと,先ほどの○○幹事の発言に関連いたしまして,例えば契約信託を設定した場合の詐欺取消の権限と。

 

 

 

この話は,やはり委託者の地位の問題と明確に区別して考えるべき話であって,ここで言っている委託者の地位というのは,設定された信託という一つのスキームから発生する権利・義務の問題であり,詐欺取消しの問題というのは信託設定契約の問題であるというふうに仕分けをしないと,それも一遍に「委託者の地位」という言葉でやろうとすると,何か混乱が生じるのではないかと思います。

 

 

 

もちろん,○○幹事の発言の中で,信託設定契約の契約上の地位というものは共同相続されて,委託者の地位は1人に相続されて,またここで分離が起こるのは変だという話もインプリケーションとしてはあるのかもしれませんが,一応その点は区別して整理をしていただいた方がよろしいのではないかと思います。

 

 

 

  •  仮に相続に乗るとして,2つがそれぞれ違う相続法理になるのはおかしいと思いますね。片方は相続を否定して,片方は認めるというのはあり得ると思いますけれども。

 

 

 

 

  •  おっしゃるとおりです。

 

 

 

  •  私も○○幹事と同じ性格の発言で,○○幹事の発言の中で強調したいところが1点ありますので,最後に少し時間をください。

 

 

遺言信託のときに,相続人は受託者に対して信託財産を引き渡さなければならない。

 

 

それはもう,いかにしてもそのとおりであって,ほかの解決はないと思うんですね。

 

 

その点を根拠にして,遺言者の相続人に委託者と同様の権利・義務を与えるということに広げてしまうという議論がもし第67のところにあるとすると,それは違うだろうと思います。

 

 

引渡義務は,もうどういう立場をとってもそれはあると言わなければ,そもそも成り立たない話だろうと思います。

 

 

 

  •  単に整理するだけの話なんですが,多分3つの層があって,1つは,相続法理との整合性をどう考えるのか。

 

 

2番目が,いずれにしてもデフォルトですので,実際上の支障がどの程度あるのかという問題。

 

 

3番目に,委託者の権能の位置づけがあると思うんです。委託者の権能の評価について,どうも積極的に評価するのと,そうでない,わずらわしいというのと両方あって,そこが一番の対立点だと思うんです。

 

 

 

多分,2番目と3番目は一緒に考えられるのではないか。つまり,委託者の権能をプラスに評価するにしてもマイナスに評価するにしても,それをデフォルトで外すときに,どういうふうにしたら外せるかということを詰めていけばいいだろう。ただ,第1点の相続法理との整合性ということは,これは常に問題になりますので,そこは生かしておくことになると思います。

 

 

 

 

  •  どうもありがとうございました。

これはいろいろな御意見があるので,中間試案のときには恐らく甲案,乙案という形で幾つか出した上で,また御意見を伺うことになると思います。

それでは,これはそのぐらいでよろしいでしょうか。

 

 

 

  •  それでは,最後に受益権の譲渡と,有価証券化と,それから受益債権等の消滅時効につきまして,続けて御説明致します。

 

 

譲渡については,るる書いてございますが,伺いたいのは1点だけでございます。

 

 

補償請求権の構成に関して14ページで甲1案,甲2案,乙案を提案しているところでございますが,これは従来の受益権の放棄等の提案にもかかわるものでございまして,いわば新たな提案,乙案を含んでおります。

 

 

甲案は,補償債務等は,受益者が利益を受ける反面として負担すべき性質のものと理解し,その有無は法律上の規定または信託法の定めを通じて,受益権の内容に一体的に組み込まれ,受益権の移転に伴って補償債務等も移転すると考えるものでございます。

 

 

 

甲1案というのが,現行及びこれまでの事務局提案の考え方を基本的に踏襲し,譲受人を保護するために,受益権の放棄に関する規定を別途設けることが不可欠になると考えまして,譲受人が受益権を放棄しない限りは補償債務等を負担することになるとともに,受益権譲渡については受託者の承諾を不要とすることを見返りとして,譲渡人にも一定の限度で補償債務等を負わせるというものでございます。

 

 

 

甲2案というのは,前回会議において,譲受人は,個別に同意をしない限り受益の限度でしか補償債務を負担しないという限定承認類似の考え方が示唆されたことを踏まえまして,譲受人は,受益の限度,すなわち信託財産の限度でしか補償債務等を負担せず,それ以上に個人的債務を負担させるためには当該受益者との間で個別の同意を要するとし,あわせて受託者を保護する観点から,譲渡人は,譲渡の前後を問わず補償債務等を負担するというものでございます。

 

 

 

 

 

 

以上に対しまして,新しい提案が非常に新たなのが乙案でございまして,これは補償債務等を受益権の内容から切り離しまして,補償債務等は受益権とは別個の,信託の外側の契約に基づく責任であって,あくまでも受託者が個々の受益者との間で個別に契約を締結することによって,当該受益者が負担することとなる責任に止まりまして,受益権の移転に伴って移転するという性質のものではないと考えるものでございます。

 

 

受益権譲渡人は,一たん補償債務等を負担する内容の契約を締結したものである以上は,譲渡後に生じた費用等についても,その補償責任を免れるものではないと考えるものでございます。

 

 

乙案によりますときは,受益者は信託の利益を当然に享受できるとすることの説明が容易になりますし,権利・義務とが同居することから,受益権の放棄という困難かつ特異な問題が生じてしまうことも回避することができまして,法律行為の単純化を図ることができる上に,自己の意思に反して債務を負担することはないという一般原則にも忠実であるという観点からすれば,相応の合理性もあるのではないかと思われますが,御意見を伺いたいと思っております。

 

 

 

次に,有価証券化のところにつきましては,提案5,6の甲案,乙案の両案併記につきましての御意見を伺いたいということでございます。

 

 

一言で言いますと,甲案というのは,株式型受益証券と社債型受益証券を分けて考えて,受託者がそれを必要に応じて発行することによって適切な規律が導かれるのではないかというものでございます。

 

 

 

乙案は,しかしながら,デットとエクイティは違うのであって,やはり受益権というのは,その権利行使の可能性が社債に比べれば多いのであるから,それを重視して受益者名簿は両方の場合に設けるべきではないかというふうな考え方を提示しているものでございます。

 

最後に,消滅時効については特段の変更はございません。

 

 

  •  譲渡の方の補償請求権は,いろいろ議論があるかもしれません。いかがでしょうか。

 

 

 

  •  まず,第52の受益権の譲渡における補償請求権等の取り扱いでございますが,乙案が新たに出ております。

 

 

乙案につきましては,信託財産の管理・処分に伴って発生しました補償請求権について,信託の外側で処理する,そういう考え方のものでございまして,これは今までの考え方とは大きく違うということで,理屈の面からも実務感覚からも,非常に大きな違和感を感じております。

 

 

 

また,受益者に対する補償請求権の規律のほかに,お話しありましたけれども,受益権の放棄に関する規律もなくなる可能性がありまして,これについても,やはり相当ではないと考えております。

 

 

あと,受益権が,プラスではあってもマイナスはないというお話になりますので,当然,現行法と大きく前提が変わることになりますので,受益権の譲渡に係る税制上の取り扱い,要するに,導管性みたいなものもなくなってしまうのではないかという懸念もあります。したがいまして,乙案に対しては強く反対したいと思います。

 

 

 

すみれ

「受益権の譲渡って権利が動いているのに導管だったんだ。」

 

 

 

続きまして第53の,受益権の有価証券化でございます。

 

これについては,5の受益者名簿の作成につきましては,これは前回申し上げましたけれども,投信のような,販売会社を通した販売形態をとるものについては,受託者が受益者を知らないような状況になっておりまして,無記名証券を発行した場合においても受益者名簿の作成が義務づけられております乙案には,ちょっと賛成できない。

 

 

すみません,これは物理的にできないので,賛成できないということでございます。

 

 

 

また,6につきましても同様で,乙案については受益者名簿の設置を前提とした規定でありますので,乙案についてはとれないということで,両方とも甲案を支持したいと思います。

 

 

 

あと,信託財産を引当てとする債券の発行につきましては,現行実務上,信託において借入れを行っている例が多数ありまして,借入れよりも資金調達についてメリットがある。

 

 

 

例えば,資金調達が多くの人間に対して低利で行えるといったメリットが十分にあると思われます。

 

 

 

具体的には,設計につきましては,これ「社債」と言ってしまいますと,例えば取締役会での決議が必要だとか,そんなふうになってしまいますので,そんなものではなくて,信託行為に記載されている場合には受託者の判断で発行できるような,要するに,信託の制度の中にあるような形の規律で創設できないかなということです。

 

 

 

引当財産につきましては,信託財産のみを引当にするものに限定してもいいのではないかということで,例えば受託者の信用力を要するようなものにつきましては,別途保証という形のもので付加することもできますので,信託財産のみを引当てとするというような形でもいいのではないかと思っております。

 

 

 

 

  •  記録のためにということで,私が申し上げることは,もう言わなくてもいいようなことではあるんですが,第52の,○○委員は現行法と,それからそれぞれのお立場から乙案絶対反対ということだったんですけれども,やはり(注3)(注4)をあわせて読むと,やはり受託者の立場にもいろいろな形で配慮があって,非常に合理的な感じがすると申し上げたいと思います。乙案について。

 

 

 

  •  第52の甲案,乙案についてですが,まだ明確な意見を持つものではございません。ただ,新しい乙案というのは,やはり○○委員がおっしゃったように,少なくとも受託者の立場からすると,ちょっと違和感があるということでございます。

 

 

 

それから,前回の会議において私が申し上げた懸念,すなわち,いわゆるチェリーピック的な,詐害的に使われる,例えば証券化の中でSPCに受益権があって,その受益権がマイナスになるときに,結局その受益権だけを出して,いえばもう何もない空のところに補償債務だけが残っているというような状況も考えますと,よくない使い方も出てくるのかなという気がいたします。

 

 

 

それから,第53について内部の議論を簡単に御案内しますと,細かいことですけれども,受益者名簿の有無についてはいろいろ議論があるところでございますけれども,今,保振制度とか振替制度との関係も議論があると思いますけれども,仮に受益者名簿をつくるべきだというようなことがあった場合には,やはり今の保振制度における名義人の土地制度とかいうことのインフラを整えなければ,実務は回らないのではないかという意見があったことを紹介いたします。

 

 

 

 

 

  •  補償請求権についての乙案は,ようやく今までの議論が反映されたものとして,非常に意義深いものと思います。本来の信託の姿に戻ったということと,あと,先ほど○○委員がおっしゃったように,決して受託者の方が保護されていないわけではなくて,それなりに考慮されていますし,あと,今後,有価証券化したときに補償請求権がないという議論もされていますから,ある意味では,そちらで一つの議論としての決着がついているのかなと思います。

 

 

信託銀行の方としては,今まで持っていた権利がなくなるということで,非常に危機感を感じるというのは感覚的にはわかりますけれども,制度の改正の議論をしているわけですから。

あと,全然違ったことを2点ほど申し上げます。

 

 

 

指名債権譲渡に倣って,受益権譲渡についてもこういう制度を設けようということだと思うんですけれども,あえて制度を明記するということは,ある意味では指名債権とはまた違ったといいますか,指名債権と同じであれば,ある意味では規定しなくてもいいわけですから。

 

 

 

そういうところで,多少指名債権譲渡に関連するところの制度改善があってもいいのかなと思ったりしました。

 

 

 

それは何かといいますと,有価証券化すれば問題なくなるんでしょうけれども,信託受益権の転々譲渡をするときに,現状においてもそういう仕組みになっていると思うんですが,いちいち確定日付をとるという問題といいますか,確定日付をとるのは,私の記憶が間違っていなければ,教科書的に言えば債務者と譲渡人が通謀して日付をずらすかもしれないというような議論だったかと思うんですけれども,この場合,受託者というのは定型的に,そういうことをしない方が受託者になっているはずですから,受託者に対する通知,また受託者の承諾ということで,第三者対抗要件的なものも具備している。信託法の教科書の中にはその辺も,記憶の彼方ではあったと思うんです。

 

 

 

 

いろいろな提案があるかと思うんですけれども,指名債権ではないんだという議論をしている以上は,多少指名債権譲渡に絡むところの問題点,論点というのも制度改善の議論があってもいいのかもしれないと思いました。

 

 

 

あと一点,全然違うことも申し上げますと,これも私の経験なんですけれども,この説明の中で,信託財産を引当てとする債券の発行についてのニーズとか,具体的な構造の提案はなかったようだという話だったんですが,米国などでも,信託財産が債券を発行した例を実際に見たことがあります。

 

 

 

信託財産が発行したというのは法律論としては間違っていまして,細かく見ると当然,受託者の債権なんですけれども,やはり信託財産債権ということで,受託者の社債というような─法的にはそうなんでしょうけれども,全く違った形,雰囲気のものだったことが記憶にあります。

 

 

すみれ

「受託者の債権なんだ。」

 

 

したがって,先ほど○○委員がおっしゃったように,既存の法律でも別に何々信託銀行・信託財産限定特約をつけて出せばいいのかもしれませんけれども,制度として考える場合には,信託財産債というのがあってしかるべきですし,実際に海外の市場ではそういうものが出ております。

 

 

 

  •  第52の,今,話題になっている乙案についてですが,私は,乙案にそれほど違和感は持たなかったんです。ただ,それを前提とした上で,さらに細かいことを検討する必要があるのではないかと思います。

 

 

そもそも乙案は問題にならないということですと,細かいことを議論する意味もないかもしれませんが,二,三あります。

 

1つは,乙案をとった場合に,受益者に意思能力がないときなどは,その信託の利益を享受することと,それから補償契約の効力が発生することとの間にずれが生じないだろうか。そのずれを,何かあらかじめ手当てしておく必要はないだろうかということです。

 

 

 

もう一つ,15ページの(注4)ですけれども,信託契約書の中で2つのことを決めておけば,それで補償請求ができるようになるということ,そうなると思うんですが,その場合に,当初の受益者は譲渡後も責任を負い続けるという制度だと思います。

 

 

それ自体は,どうしても受益者にとって非常にリスクになることですので,そのことを特に注意喚起する必要があるのではないかということです。

 

 

  •  今の点に関連して,最初の点なんですが,乙案によった場合に,例えばこういうことは可能かということで,あるいは第9条は任意規定と考えていいかということなんですけれども,特定の受益者が補償債務について,その負担約束をすることを条件として受益者の地位を有することになるというふうに信託行為で書くことは有効と考えてよいかという点。○○委員の御発言との可能性で,確認したいということです。

 

 

もう一つ,(注3)(注4)関係なんですけれども,(注4)について御指摘の点は,譲渡とともに,例えば放棄をしたような場合,どういうことになるかという点もあわせて問題になるかと思います。つまり,最初からセットになっているときに,セットだろうというふうに考えて,譲渡すればないのではないかと思うという問題は,放棄のときもあり得るかと思われますので,あわせてということがもう一つ。

 

 

それと(注3)についてなんですが,私は,(注3)の考え方は非常に適切ではないかと考えておるのですけれども,具体的な中身について,前払い等を受けられないときに信託を終了できるという,この構成で,さらに細部には,直ちに終了にいくかどうかという点は,1点,受益者なり委託者なり,補償義務は負っていないけれども信託の終了を望まないときに,もう少しチャンスを与えるみたいなことはさらに考えられるだろうということ。

 

 

それから,(注3)は乙案の場合にのみ考えるべき事項なのかというのも少し気にはなっておりまして,甲案的な処理をとるときも組み合わせて考えられることではないかという気がしておりますので,付言いたします。

 

 

  •  乙案について,それなりに可能ではないかという意見も多かったと思います。さらに検討しなくてはいけない点は残っているとは思いますけれども。

 

 

  •  今おっしゃった条件付の信託設定は,可能と考えております。

あと一点,○○委員がおっしゃったチェリーピッキングというのは,補償債務が生じそうになったら,譲渡して免れるという意味ですか。

 

 

  •  はい。
  •  それだとすると,仮に乙案では,一たん補償債務を負担するという合意を譲渡人がしていれば,譲渡しても免れませんので,おっしゃるチェリーピッキングみたいなことはできないというのが乙案の考え方になってまいります。譲渡したことによっても補償債務は免れませんので,その後に生じた債務についても負担し続けるということなります。

 

 

 

 

 

  •  とすると,いいものだけ取り出す者が出てくるという,ある意味で,詐害的な営業譲渡のように,例えばSPCが受益権を持っている。それで,何か補償債務を負いそうだということであれば,その受益権だけを移して補償債務だけは残しておくということも,あり得るということで,いわゆる詐害的な譲渡みたいなことが生じるのではないかという話なんですけれども。

 

 

 

 

 

 

  •  それはあるかもしれない。補償債務が具体的に発生する前に受益権自体を売ってしまうというわけですよね。

 

 

  •  チェリーピッキングという言葉は間違いかもしれませんが,クリーニングみたいなものだと思うんですけれども,いわゆる債務を置いてきて,いいものだけを取り出すということが,この乙制度ではできるのではないかということです。

 

 

 

  •  確かにそういうことはあり得るのかもしれないけれども,ただ,基本的には補償債務自体は,受益者というよりは信託財産でもって填補されるということで,詐害的な取引がどれほど意味があるのかというのは,疑問がないわけではないと思います。

ただ,おっしゃることは,抽象的にはあるかもしれない。

 

 

 

 

 

  •  あと,○○幹事がおっしゃった指摘につきましては,終了に当たっての手続的な整備は,恐らく同じように入れていくと思いますが,ほかの点については,ちょっと検討させていただきたいと思います。

 

 

 

  •  ほかに御意見ございませんでしょうか。

まだ御意見があるかとも思いますけれども,期日があと2回ですね。今までの中で,まだ論じ足りない点がございましたら,事務局の方に書面等でお送りいただければ,反映できるものは反映することにさせていただければと思います。

もし御議論がなければ,本日はこれぐらいにしたいと思います。

─了─

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。玄関の注連縄を外しました。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA