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2016年加工編  法制審議会信託法部会  第13回会議 議事録
2016年01月26日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第13回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成17年4月8日(金)  自 午後1時01分

至 午後5時22分

 

第2 場 所  法務省第1会議室

 

第3 議 題

受益債権についての物的有限責任について

受託者の有限責任の許容について

受託者の権限について

受託者の権限違反の行為等について

受託者の解任・辞任等について

合併又は会社分割による受託者の変更について

受託者の任務終了事由と倒産手続の開始について

受託者が欠けた場合の取扱いについて

受託者の交代について

受託者倒産の場合における信託財産の取扱い等について

 

第4 議 事 (次のとおり)

 

 

 

議        事

 

  •  ただいまから信託法部会を開催します。

いつものように,幾つかに分けて説明してまいります。

○○幹事の方からお願いします。

 

  •  今日の進行でございますが,大きく4つに分けてさせていただきたいと思っております。

 

まず,受託者の解任・辞任等について,合併等について,任務終了事由と倒産手続の開始について,受託者が欠けた場合の取扱いについて,受託者の交代について,ここまでをまず一まとめにしてさせていただきます。

 

あと3つに分けると申しますのは,1つは,第42の受託者倒産の場合における信託財産の取扱いというところで,差止めという新しい提案をしております。あとは有限責任の問題が一まとまり,権限と権限違反行為についての問題が一まとまりということで,全部で4つでございます。

 

 

まず,第37の受託者の解任・辞任等に関する提案から御説明させていただきます。

 

 

提案内容につきましては,前回の提案から変更はございません。

 

具体的には,まず,解任につきましては,委託者と受益者の合意により,いつでも自由に受託者を解任できるものとしたこと。

 

 

ただし,受託者の不利な時期に解任されたときは,委任に関する民法第651条第2項の趣旨に従い,受託者に損害を賠償しなければならないものとしたこと。

 

 

しかし,以上はいずれもデフォルト・ルールでありますので,一定の事由がある場合に解任を制限したりとか,受託者の同意を要すべきものとしたり,あるいは解任時期にかかわらず損害の賠償を不要とするなどの特約も許されること。

 

 

さらに,合意による解任ができない場合に備えまして,現行法第47条の趣旨に従いまして,受託者に任務違反等の重要な事実があるときには,受益者又は委託者は裁判所に対して受託者の解任請求をすることができるとしたことなどでございます。

 

 

辞任については,信頼を受けて就任した受託者が自由に辞任できるとすることは相当ではないとの考えのもとに,辞任方法を特約辞任,承諾辞任,許可辞任の3つの場合に限る現行法第43条と第46条の趣旨を維持するものとしております。

ポリー

「予備の受託者を定めておく必要がありますね。」

 

 

新受託者の選任につきましては,委託者と受益者の合意により選任できることを明確化するとともに,利害関係人が新受託者の選任を裁判所に請求できるとする現行法第49条の趣旨を維持しております。

以上が第37でございます。

 

 

続きまして第38の合併又は会社分割による受託者の変更についてという提案でございます。

 

 

 

 

 

これも提案内容は,前回の提案から変更ございません。

若干具体的に申しますと,法人または株式会社が合併し,又は会社分割された場合におきましては,債権債務関係のみならず契約上の地位も含めて,新会社に全部あるいは部分的に包括承継されることになりますので,法人又は株式会社が受託者であった場合についても,受託者の任務は終了せず,新会社にそのまま任務が包括承継される。

 

 

番人

「年月日受託者合併(分割)による変更の所有権移転登記が必要だね。任務を引き継ぐってってことか。」

 

 

この場合におきまして,受益者や信託財産に責任を限定された信託債権者は,商法上の債権者保護手続の対象とはならないものとすることなどを提案するものでございます。

 

 

 

続きまして,第39の受託者の任務終了事由と倒産手続の開始についてでございますが,これも前回提案と異なるところはございません。

 

 

 

要するに,受託者について破産手続が開始した場合には,原則として受託者の任務は終了しますが,「破産手続の開始が任務終了事由とならない」との別段の定めを置くことも許容されるとする趣旨でございます。

 

 

続きまして,第40の受託者が欠けた場合の取扱いについてでございます。

 

これは,受託者の任務終了事由の発生により受託者の全部が欠けることとなった場合におきまして,新受託者又は信託財産管理人が事務を処理することができるようになるまでの間,信託自体は継続することになる観点から,だれが,いかなる内容の義務を負うことになるかについて提案するものでございます。

 

 

 

まず,提案の1でございますが,これは前回提案から変わるところはございません。

 

すなわち自然人である受託者の死亡,審判による後見開始,審判による保佐開始,または法人受託者の解散─なお,合併の場合等に関しましては,先ほど言いました,任務が終了せず新法人に承継されるということを提案しておりますが,それを除く,法人受託者の合併等以外の事由による解散による任務終了の場合には,それぞれ相続人又はその法定代理人,成年後見人,保佐人又は清算人が,いわば緊急避難的に信託財産の保管と事務の引継ぎに必要な行為,この2つを行うこととするものでありまして,基本的に現行法第42条第2項と同じ趣旨でございます。

 

 

 

 

 

次に,提案の3でございますが,これは,前受託者が任務終了しながらもなお,原則として,広く受託者の権利義務を有することとなる場合でございます。

 

ところで,前回提案におきましては,1による任務終了の場合と解任による場合を除いて,辞任による場合,信託行為に定めた任務終了事由の発生による場合は,すべてこの3の類型に含まれることとしておりました。

 

 

 

 

これに対し今回の提案では,辞任のうち現行法第43条に相当する特約辞任と承諾辞任の場合に限って,3の類型に含むことと改めております。

 

 

 

 

これは,次に申し上げます提案4の場合と異なりまして,特約辞任又は承諾辞任の場合につきましては,受託者側に非違事由,あるいはやむを得ない事由,換言いたしますと信託事務遂行上の支障となる事由があったとは原則として考えられないわけございますので,受託者の管理を排除するまでの緊急性に乏しく,むしろ受託者としての権利義務を認め,信託事務の処理を継続させることが受益者の利益になると考えられますので,現行法第45条の趣旨を維持することとしたものでございます。

 

 

 

これに対しまして,提案の4でございますが,これは前受託者が原則として3の類型よりも狭く,信託財産の保管,信託事務に関する計算及び事務処理に必要な事務引継ぎを原則として行うにとどまることとするものでございます。

 

 

 

 

 

ところで,前回提案におきましては,解任による場合のみが4の類型に当たることとしておりましたが,今回の提案では,解任による場合に加えて許可辞任の場合,信託行為に定めた任務終了事由の発生による場合も4の類型に含むこととしております。

 

 

 

このように変更いたしましたのは,前回提案の下では,例えば信託行為で定めた一定の解任条件が成就したような場合につきまして,これは果たして解任による任務終了の場合に当たるのか,それとも信託行為に定めた任務終了事由の発生による任務終了の場合に当たるのか,前回提案ですと,それによって3か4か変わってきますので,どちらなのか判然としないと思われました。

 

 

それで,改めて提案内容を見直したわけでございますが,その結果,受益者,委託者側のイニシアチブで受託者を解任した場合,あるいはやむを得ない事由があることを事由に受託者が裁判所による許可を得て辞任した場合,あるいは信託行為においてあらかじめ定めておいた任務終了事由が成就した場合のいずれにつきましても,原則として,受託者にその信託事務処理を継続させることは妥当ではなくて,最低限の事務処理を除いて受託者の管理を排除することが,信託当事者の通常の意思に沿うものと考えるに至ったものでございます。

 

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

 

なお,第6回会議における指摘を踏まえまして,提案の3及び4におきまして,前受託者が有する権利義務の内容は,いずれもデフォルト・ルールであることを記述上も明確にしております。

 

 

具体的には,3では「信託行為に別段の定めがない限り」という文言が入っておりますし,4につきましては,16ページの頭に「④その他信託行為に定めた事務」と書いてありまして,デフォルト・ルールであることを明らかにしているわけでございます。

 

 

 

これは,任務終了後の受託者がいかなる権利義務を有するかにつきまして,ニーズに応じて信託行為により定めることを排除する必要性はないと考えるからでございます。

 

 

 

最後に,第41の受託者の交代について御説明申し上げます。

 

これは現行法第50条から第55条に対応いたしまして,受託者の交代に伴う信託財産の帰属,信託に関する権利義務の承継,新受託者への事務の引継ぎなどにつきましての提案でございます。

 

 

提案内容につきまして,資料中,20ページの<説明>の冒頭を見ますと,受益者に対する補償請求権に関して新たに19ページの丙案を書きました。

 

 

前回,丙案については支持が少なかったのですが,前回提案したこととの平仄を合わせるために今回も丙案を書いたというにとどまります。

 

 

その他,資料中には特段の変化はないと記載してはおりますが,実は,実質的には修正と言うべき点が2点ほどありますので,まず,その点について御説明したいと思います。

 

 

 

 

まず第1に,任務終了により受託者の全部が欠けた場合につきましては,先ほど御説明いたしました受託者の任務終了に関する第40におきまして,前回の提案を改めまして,前受託者が引き続き受託者の権利義務を有するのは特約辞任と承諾辞任の場合に限ることといたしましたので,これと連動する形で,第41の提案1の(3)及び提案の3におきまして,特約辞任と承諾辞任のときのみ信託財産管理人または新受託者就任の時点をもって信託財産の所有権を含む信託に関する権利義務が新受託者に承継されるものと見なすこととしております。

 

 

 

 

1の(3)のイをごらんいただきますと,「新受託者は,信託財産管理人又は新受託者が就任した時に」権利義務を承継する。それまでは受託者としての権利義務をずっと持っているからという理由でございます。

 

 

これに対しまして,それ以外の場合,例えば解任等の場合には,まさに任務終了時,すなわち解任時,許可辞任のとき,その他任務終了事由が発生したとき─死亡ですとか後見開始ですとかそういうことですが,そのときに,このような承継が新受託者にされたものと見なすこととしております。

 

 

1の(3)のアをごらんいただきますと「任務が終了した時に」権利義務を承継するという形,新受託者が選ばれますと,任務終了時に遡って権利義務の承継がされたと見なす,このように移転の時期を定めています。

 

 

 

 

第2に,共同受託者の一部が任務終了により欠けた場合につきまして,前回提案では,やはり任務終了事由によって承継時期を区別するかのような提案内容となっておりましたが,他に受託者がいる場合には権利義務の承継時期を遅らせる必要はないと思われますので,特約辞任,承諾辞任の場合を含め,すべての任務終了事由について,原則として任務終了事由の発生時に直ちに他の受託者に対する承継がされることとしております。

 

 

 

太字の2をごらんいただくと,そのような記述になっているわけでございます。

 

 

なお,第6回会議におきまして,かつて提案した信託継続中の受託者の受益者に対する補償請求権行使の要件の方が,今回の任務終了後の前受託者の受益者に対する補償請求権行使の要件よりも緩やかになっていることについて,疑問が提示されました。

 

 

 

この点につきましては,任務終了後の場合と異なり信託継続中の受託者につきましては,信託目的達成の妨げになる場合や信託財産を処分する権限が付与されていない場合には,信託財産に対する補償請求権の行使が制約されるという提案をしておりますので,それだけ受益者に対する補償請求権の行使を認める必要性が相対的に高いと考えられることに鑑みまして,両者の要件について差異を設ける提案を維持しているわけでございます。

 

 

具体的には,19ページの4の(5)で「(1)又は(2)の権利を行使することによっても補償を受けられない場合に限り」と,ここまでいかないと,補償を受けられないと判明しないと補償請求できませんが,通常の補償請求の場合ですと,その蓋然性が高い場合であればいけるということで,緩いわけでございますが,先に申し上げましたような違いがあることに鑑みまして,このように提案内容を異ならせているということでございます。

以上で一応の説明を終わらせていただきます。

 

 

 

 

 

  •  ただいまのところまでの議論をお願いします。

 

 

  •  第37の4ですが,委託者又は受益者からの裁判所に対する解任請求のところで,信託の種類によっては,委託者からの解任請求が必要とされる状況というのはあるかとは思うんですけれども,流動型の信託で,投資家の知らないところで,軽微といいますか,与り知らぬところで受託者が解任されることに対する懸念がなきにしもあらずと思います。

 

したがいまして,これは信託行為に別段の定めがあれば委託者の解任請求権はないといった例外規定も含み得ると読むこともできない─3の例外は1と2だけですから,裁判所に対する解任請求をデフォルト・ルールとして考えることはできないでしょうか。

 

 

 

 

  •  第37の4と言われましたか。

 

 

  •  はい。受託者の任務違反のときに「委託者又は受益者」という……。だれに解任請求権があるかという論点です。

 

 

 

  •  事務局といたしましては,裁判所に対する解任請求権というのは,基本的に委託者にも付与されるという位置づけにはしておりますが,他方,訴訟契約のようなものを信託行為の中で定めておけば,それによって裁判所に対する請求権を遮断することは可能かなという考えでおります。

 

 

 

  •  その辺,実務的な感覚はわかりませんけれども,先ほど言われたのは,受益者あるいは投資家でしょうか,そういう方が知らないところで,言い換えれば,委託者の方のイニシアチブで解任されるのはどうかということですか。

 

 

 

  •  はい。現実的にそういった作業かどうかは別として,格付け的な視点からも,この受託者が扱うところの投資商品はという観点から格付けもされているかと思うので,ですから,一たん投資商品化した後は,委託者の関与はなるべく排除したいと考える次第です。

 

 

 

 

 

 

  •  ○○幹事から今,説明がありましたように,何をデフォルトにするかなんでしょうけれども,契約でもって委託者からの─それはしかし,契約ではだめなのかな。裁判所に対する請求権ですからね,だめですかね。

 

 

 

  •  委託者の権利がどこまでかというのは,また後日,検討いたしますが,基本的に,裁判所に対する請求権はあるというのがまず前提でございまして,その上で,しかしながら,今,申しましたように,訴訟契約のようなもので,恐らく委託者と受託者が信託行為で,委託者には受託者の裁判所に対する解任請求権がないことを定めて,訴訟上主張すれば,現在の考え方では,それによって請求が排斥されるのではないかと思います。

 

 

すみれ

「訴訟にはなっちゃうんだね。家族信託の場合は合意で信託終了かな。」

 

 

  •  今,○○幹事から申し上げたとおり,訴訟契約のようなものとしての効力が認められるだろうという限度でございます。

 

 

 

 

その結果どうなるかというのは,学説はいろいろ,争っているところはあるのですけれども,そのような契約の効力が有効であることは間違いないわけです。

 

 

その結果,格付け上も,そのような委託者の申立ては無視されるのが普通ではないかと,今のところ考えております。

 

 

  •  それは,受益者の場合も同じですか。つまり,受益者が受益権取得時にそういった訴訟契約を締結すれば,受益者からの解任請求も排除され得るということでございましょうか。

 

 

  •  受益者は信託契約の当事者ではございませんが,別途,個々の受託者と契約したという場合でございますか。

 

 

それだと,その契約がどこまで公序良俗に反しないかという問題はともかく,任意にやれば有効と言わざるを得ないのではないかという気がいたします。

 

 

  •  「別途」とおっしゃいましたけれども,もちろん,極端に言えば受益証券に書いた場合にどうなるかという問題もありますし,それ以前の,第1次的な売り出しの段階で,例えば三面契約などで信託が設定されて受益者が定まるといったことになりますと,その中に書いておけば,それで受益者の解任請求権もなくなるのかという感じがいたしまして,そうすると,何か歯どめがないと,訴訟契約が締結されればよいということにはならないのではないかという気がするのですが。

 

 

 

 

 

  •  あらかじめ信託行為に書いておいて,それを受益者が承知の上で受益権を取得したわけだから,その効力が及んで解任請求が解除される,そういう筋書きになるのではないかということですよね。

 

 

 

 

  •  それは第2の筋書きで,第1の筋書きとしては,受益権を取得する際の,例えば証券管理でもいいんですが,最初に自益信託として委託者がすべての受益権を取得して,それから販売される形をとってもいいわけですが,そのときに,例えば三面契約をとって受託者を契約当事者に加えた形で受益証券を売却すれば,その売買契約の中の情報の効力によって,そういうことが起こり得るのではないか。

 

 

 

さらに受益証券の中に記載した場合どうなるかという問題は2番目にありますが,1番目の問題の方が,よりプリミティブな問題として存在するかと思います。

 

 

 

 

 

  •  おっしゃるとおり,プリミティブに考えると,それで請求権が排除されることになりかねないんですが,受益者に対する解任請求権というのは監督の非常に重要な権利の1つでございますので,何らかの制限が必要かなという気もいたします。1度検討したいと考えております。

 

 

すみれ

「プリミティブ?」

 

 

  •  もちろん根本的には委託者,これはもとの条文の何条でしたか,現行法でも委託者が入っていまして,そういう意味では現行法と変わらないわけですが,果たしてこの場合,委託者が出てくるのがいいのかどうか,新しい信託法のもとで見直す必要があるのかもしれませんね。

 

委託者はどっちみち信託契約の当事者になるから,委託者の権限を入れようと思えばいろいろな形で入れることもできるでしょうし。

 

 

 

では,この点はもう少し検討するということで。

ほかに,いかがでしょうか。

第37は前回と変わっていないわけで,先ほどのような問題点はなお検討するとして,大体よろしいでしょうか。

--第38以下は,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  第38について2点御質問なんですが,1点目は,この受益者に対しては,合併とか分割の通知とか公告とか,そういうものがいくというか,その対象になる--公告の場合は対象というのはないのかもしれませんが。

 

2点目は,この受益者には,合併とか分割無効の訴えの原告適格は与えられるのでしょうか。

 

 

  •  そこはまだ検討しておりませんでしたので,今の御指摘を踏まえて検討して,お答えしたいと思います。

 

 

  •  合併無効みたいなものは……。どうなんですか,こういうのも,やはり規定がないと。

 

 

  •  現在の商法第415条に,たしか「合併を承認せざる債権者」とか書いてあるはずなんですが,これはそもそも保護手続の対象にならないような人は一体どういうことになるのかといったことなんですけれども。

 

 

 

  •  受益者も受益債権を有する者ですので,言葉を読めば入るんですが,御指摘のとおり,受託者が合併しても信託債権者は特に害されることはないだろうということで,債権者保護手続から外しております。

 

 

そうすると,合併無効の訴えというのも,どうもそれとの連動では難しくて,むしろ不服があれば合併後の受託者に対しての解任請求という形でいくのかなという気もしております。

 

 

しかしながら,合併無効の訴えの適格になるかどうかは検討はいたしますが,少なくとも解任という形,自由に解任できますので,一たん合併は仕方ないな,しかしやめさせようということになるのかなということはあり得ます。

 

 

 

  •  第38のところで,これは第27の物的有限責任の議論とも絡んでしまうんですけれども,受益者の第19条の債務に係る債権というものは,信託行為の中で,委託者と受託者の間で受益者に対する権利ということで,信託元本とか収益以外のいろいろな取り決めをした場合の債権のようなものは,特に入らないという理解でしょうか。

 

 

 

 

  •  受託者の固有財産におけるものは入らないと考えております。あくまで信託財産を責任財産とする信託債権がここでの対象でございます。

 

 

 

  •  受託者の破産手続開始の場合の記述について,信託行為に別段の定めがある場合に任務を継続するというのはいいかと思うんですけれども,一般に,受託者が破産したときは通常時に比べて信託財産が危うい状態にあると言えるのではないかと思います。

 

 

信託行為,信託契約をする際に,受益者はこれにかかわることができないことを考えますと,こういった信託行為で受託者の任務継続を認める場合にも,現実的に破産となった場合には,それを受益者に知らせる手だてがあってもいいのではないかと思いますので,そういった点も御検討いただけないかと思います。

 

 

 

  •  受託者が破産したことを,受託者自らが,あるいは破産管財人が受益者に通知するという制度ですね。その点については考えてみたいと思います。

 

 

 

  •  先ほどの○○委員からの問題提起に対して,御考慮いただくときに考えておいていただきたいことなんですけれども,1も2も債権者保護手続などから外しているのは,第19条の債務に係る債権に限定されておりますので,受託者が個人として莫大な責任を負うシチュエーションがあり得ますので,そういう種類のもの……,つまり,債権者保護手続から外しているのはそれだけですので,合併その他,組織再編についての債権者の地位を考えるとき,そうではない部分を無視していいかということがポイントだということだけ付加させていただければと思います。

 

 

  •  では,第39もよろしいですね。

第40は,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  第41にも若干入りますが,第40の今回の御提案によりますと,先ほど○○幹事からのお話では3と4に該当する枠組みを変えているということですけれども,この点については,実務的な観点からして余り違和感がないのかなという気がいたします。

 

 

 

ただ,4のところで,例えば受託者が悪くないのに解任される場合も当然あるわけでして,そのような場合について,例えば信託債務の弁済であるとか補償請求,これが当然,この規律によるとできません。

 

 

ただ,今回の御提案に,④その他信託行為に定めた事務というのが入っていますので,もちろん書けばいいというお話かもしれませんけれども,非常に書きづらい部分もあります。

 

 

ポリー

「書きづらそうですね。」

 

 

この部分の変更というよりも,これを受けて第41なんですけれども,例えば信託財産管理人が選任された場合に,信託財産管理人との間でうまくいかなくて,強制執行をかけたいということもあるのではないかと思うんですが,その場合において,自分の財産に強制執行をかけるようなことになりますので,この辺のところがどうなのか。

 

 

 

できるものなのかどうか。できなければ何らかの手当てをお願いできないかということでございます。

 

 

 

  •  御指摘のような問題は事務局も認識しておりまして,信託財産管理人が被告になるとはいっても,勝訴判決をとっても,実際に信託財産がまだ前受託者,自分の名義にとどまっている限りは強制執行できるのではないかという問題がありまして,2つ考えられるのですが,1つは,とにかく新受託者を選んで名義を移して,そして承継執行文でやってくれと。補償請求を受けるために新受託者を選任するという嫌味はありますし,時間もかかりますが,ともかくそういう手当てもあるでしょう。

 

 

 

しかし,それでは余りにもおかしいので,むしろ端的に,前受託者がまだ名義を持っている段階でも強制執行できるという規律を考えるという手だても一つの選択肢としてはあると思います。

 

 

かつて補償請求のところで検討しておりましたのは,配当要求については,普通は自分名義の財産に配当要求はできないけれども,例外的に信託財産について強制執行手続が開始された場合には,そこに補償請求権の行使のために配当要求できるという規律を設けるという提案をしておりまして,それとの関連で,ここでも極めて例外的にそのような手当てをすることも考えられますが,いずれにしても,かなり稀有な事例の1つでございますので,そのためにそこまでするかという点,まだこちらでも,どういう手だてをしたらいいか十分考えておりませんので,関係当局とも相談の上,なお検討したいと考えております。

 

 

 

  •  第40は,今,○○委員が言われた問題のほかに,先ほど説明があったように3と4のところで切り分けの仕方が少し変わったわけですね。これもそんなに違和感はないのかもしれませんけれども。

大体よかろうという御感触なんでしょうか。

--それでは,第41はどうでしょうか。ここら辺は,かなり細かい問題が多いのですが。

 

 

 

 

  •  もしもう確認が済んでいたらお詫びしますけれども,第41の2等にある「承継する」という意味なんですけれども,不動産の場合などは,登記を経由しなくても対抗できるということでしょうか。

 

 

番人

「特定承継だと、対抗するには登記が必要な感じがする。」

 

 

関連して,有価証券の場合に,今後のことを考えると社振法がいいと思うんですが,社振法上の口座の振り替えはしなくも対抗できるのか,それから,例の公示ですね,社振法で言うと第75条,信託の受益者が口座において記載または記録をしなければ第三者に対抗できないというのがあるんですけれども,こういうこととの関係はどうなるのか。

 

 

 

  •  細かい議論をした記憶は私もありませんが,いかがでしたかね。

 

 

  •  まず,御指摘のあった社振とか保振の関係につきましては,実は公示一般の問題を後日扱いますので,そこで対応させていただきたいと思っております。

 

 

登記を経るという点につきましては,承継とは書いてありますけれども,やはりここは公示を具備することが必要ではないか。所有者が変わるわけですので,それに即した移転登記が必要になってくるのではないかと考えております。

 

 

 

  •  今の○○幹事のような考え方ももちろんできるわけですけれども,法律上,移転しているんだと考えると,対抗要件がなくてもいいという考え方もあり得るかもしれませんね。

 

 

  •  受託者の交代が包括承継か特定承継かよくわからないということは事務局も考えておりまして,しかしながら,ずっと登記なしというわけにもいかないのではないかという気がしまして,登記はするのではないか。

 

 

特に,合併とか分割の場合は任務が承継されるという形をとっておりますが,一般的な受託者の交代の場合には任務終了して新たに受託者が就任するという形をとっておりますので,そういう意味で言うと,包括承継というよりは,一たん断絶があるということで,登記による移転の公示が必要ではないかという気がいたしております。

 

 

 

 

なぜ合併の場合と交代の場合で分けているかといいますと,合併の場合には,まさに任務等が一括して包括承継されるのに対しまして,交代の場合には新受託者が有限責任の限度でしか責任を負わない。

 

 

 

前受託者は責任を無限で負うというように責任の中身に違いもございますし,それから,合併とか分割の場合には受託者のイニシアチブでやるだけで,受益者がそこに関与することは考えにくいんでございますけれども,受託者の交代の局面ですと,任務終了,新受託者の就任のあたりで受託者の関与があり得るであろうということで,第38の場合と第41の場合では違うのではないかと考えております。

 

 

そうしますと,少なくとも第41の場合には,一たん交代といいますか,やはり終了,就任という行為が入るので,公示が必要だと。

 

 

 

その関係でいきますと,合併の場合はどうかということですが,それはやはり交代の場合にも登記がある以上は,そこは特定承継的に考えて,合併,包括承継の任務分割の場合にも,受託者が新たな人になった,変更があったことについて公示があった方がいいのではないかというのが今のところの考えでございます。

 

 

番人

「合併なども特定承継的に考えるんだ。」

 

 

 

 

 

  •  公示があった方がいいんでしょうけれども,任務が終了した前受託者は権限がなくなるわけですね。

 

 

したがって,あり得ないのかもしれないけれども,例えばそこで前の受託者が権限なしで処分をする。そのときは,いわゆる受託者の権限違反の問題ではなくて,およそ権限がない者が処分している。

 

 

 

  •  どこか別のところで議論があったかと思いますが,例えば複数受託者がいて,そのうちの受託者が全く権限がないのにやってしまった。

 

 

 

 

 

それは,どちらかというと権限外行為として,後ほど説明いたします権限外行為の規律に従っていけばいいのではないかというのが個人的な感じでございます。

 

 

  •  いろいろな問題に関連しそうですね。

 

 

  •  包括処分,例えば不動産の場合は,登記なくてというのはわかりやすい気もしないではないんですけれども,債権の場合ですと対抗要件を具備しなければいけないということですね。

 

 

 

 

 

また,譲渡禁止特約とか譲渡制限特約があった場合に受託者の交代が困難になるとか,もし事業型の信託を考えたときに,ライセンスとかそういうものの承継ができなくなるということですね。

 

 

受託者の交代で全信託財産が移っていくわけですから,あえて特定承継と結論づけると,やはり幾つか問題が生じる場面があるのではないかと思います。

 

 

 

 

  •  債権の場合も含めまして,もう一度こちらで検討させていただければと思います。

 

 

  •  ほかに,いかがでしょうか。--よろしいですか。大体のところはよろしいという御判断だと思います。細かいことでまだいろいろありましたら,また後で御指摘ください。

それでは,次にいきましょうか。

 

 

 

  •  第42の受託者倒産の場合における信託財産の取扱い等についてでごさいます。

 

まず,提案1は,前回提案と変わるところはございません。すなわち信託財産は破産財団を構成いたしませんが,便宜上の観点から,破産管財人に対して信託財産の一時保管義務を課すものでありまして,現行法第42条第2項の趣旨を維持するものでございます。

 

 

 

次に,提案2でございますが,これは受益者等が信託財産を確保するための手段につきまして,前回提案では,破産管財人に対する信託財産であることの確認の訴えという形式をとっておりましたが,これを,破産管財人に対する信託財産の処分の差止請求の形式に改めることを提案しているものでございます。

 

 

ところで,前回提案におきまして,このような確認の訴えの形式をとることを提案いたしましたのには何点か理由がございまして,まず1つは,受託者が破産した場合には一時的に受託者が不在となることがありますが,その間に,破産財団である受託者の固有財産に混入してしまった信託財産を破産管財人がうっかりといいますか,売却処分してしまうおそれがあることに鑑みますと,信託財産の倒産隔離をより実効的なものとする観点からも,受益者には信託財産を確保するための手段が認められる必要性があると考えられます。

 

 

 

他方におきまして,受益者は信託財産について所有権等の物権を有していないことに鑑みますと,破産管財人に対する物権的請求権を観念することは困難でありまして,受益者による信託財産確保のための権限を法定することが相当であると思われます。

 

 

 

もっとも,その結果といたしまして,受益者に対してまで信託財産の引渡しを認めるのは,信託においては本来,受託者が信託財産の管理・運用をすべきものであることに鑑みますと行き過ぎであって,妥当ではないと考えられます。

 

 

このような諸点を考慮しまして,前回は確認の訴えの形式を法定することを提案したわけでございますが,その上で,受益者による確定判決の効力は,新受託者及び信託財産管理人に対してもその効力が及ぶこととして実効的なものとするとともに,その前提といたしまして,受益者複数の場合には当該財産が信託財産であるか否かを全受益者間で合一的に確定しておくことが必要となりますので,訴訟告知あるいは必要的共同訴訟とする等の手続的保障措置をとることによって,他の受益者にも確定判決の効力が及ぶものとすることを併せて提案していたわけでございます。

以上は前回の提案でございます。

 

 

 

 

 

 

 

このような提案をしましたところ,前回の会議におきましては,このような手続的保障措置は,受益者が多数に及ぶ場合には実務上ワークしないのではないか,また,破産管財人による信託財産の処分を速やかに阻止するには判決の確定を待っていては間に合わず,保全処分を仕組む必要があると思われるが,そのためには確認訴訟を本案とする等の形式では困難ではないか等を中心とする批判的な御指摘をいただきました。

 

 

 

そこで,今回の提案におきましては確認の訴えという形式を改めまして,各受益者が破産管財人に対して信託財産の処分の差止請求権を有することを法定することといたしました。

 

 

 

これは,個別執行の場面におきましては,現行法第16条において,異議の訴えにより各受益者に信託財産の換価を阻止することが認められていることに準じまして,包括執行としての性格を有する破産手続の場面におきましても,各受益者に差止請求権を認めることによって信託財産の処分を阻止する機能を営ませることを意図したものであります。

 

 

この局面では,受益者が前面に出てきてもいいであろうという判断でございます。

 

 

 

このように,差止請求権という形式をとることによりまして,受益者に差止請求権を被保全権利とする仮処分を経て,破産管財人による信託財産の処分を速やかに阻止することが可能となると思われますし,新受託者,信託財産管理人あるいは他の受益者に対する判決効の拡張の問題も回避することができることになりまして,前回会議でいただきました問題点の指摘がおおむね解消されることになると考えているわけでございます。

以上でございます。

 

 

すみれ

「すごい。色々考えているんだね。」

 

 

  •  この点はかなり変わりましたので,御意見をいただきたいと思います。

 

 

 

  •  そもそも論をさせていただきますと,破産管財人の信託との関係での第三者性とか,あと,仮に第三者性を認めるとしても,信託の公示との関連で,どの程度のことを要求するのかという議論もあると思います。

 

 

 

要するに,破産管財人は,どういう制度をとろうとしても利益相反的な地位に立つことは明らかでございまして,御提案自体,信託財産管理人が任命されるまでの間のことであるのは了解しているんですけれども--ということで,倒産関連の実務家の方とも,この辺どうあるべきかということで少し議論しました。

 

 

 

破産管財人を任命すると同時に信託財産管理人を職権で任命するような--信託財産管理人ですから,もともと違うところの提案自体が,任命できるんですけれども,破産管財人の任命と信託財産管理人の任命との時間的間隙を制度的にも極限まで減らして同時にすることによって,差止請求の議論とか,その他,破産管財人がある財産以外に,果たして債権者のためなのか信託なのかといった判断に迷わなくて済むようにする意味においても,信託財産管理人を同時または非常に近接した時期に任命するような制度的手当てをするような方向があってもいいのではないかという意見です。

 

 

 

 

  •  おっしゃるような考え方はあり得ると思いますが,差止請求権を認めるのと信託財産管理人を直ちに--常につけるんであれば,もう差し止めの問題は生じないのかもしれませんけれども,どちらがよろしいという御意見ですか。

 

 

 

  •  どちらかというと,差止請求は訴訟法的にも細かい議論に入っていく可能性がある。

 

 

また,受益者の差止請求については,手続的な議論とは別に実効的な議論としても,「管財人が処分しようとする時」をどうやって把握するのかとか,なかなかわかりにくいのではないか。

 

 

その2つの面から,どちらかというと,とにかく初めから信託財産管理人を,破産管財人が当初,任命されるがごとく裁判所の職権で任命されれば,その間において,どれが信託財産でどれが固有財産かということで分別されていくのではないか,このような議論なんですけれども。

 

 

 

 

 

  •  今のは大変合理的な意見だと思います。本来は,これは裁判所の方がどうやってできるかという問題かなと思うので,裁判所の方の御意見を伺いたいと思

います。

 

 

  •  まず,確認させていただきたいのは,破産を管轄する裁判所において,破産手続開始決定と同時に信託財産管理人を選任する,そういう御趣旨だと伺ってよろしいでしょうか。

 

 

 

  •  信託財産の管財人は,東京で言うと20部ですか。何か大阪だと9の……,あ,8部ですか。特に同じ裁判所ということですね。

 

 

 

  •  非訟の事件を扱う裁判所と倒産事例を扱う裁判所が分かれているということもあるんですけれども,それ以前の問題として,もしこういう立法をする場合には,信託の受託者について,破産をするときには,裁判所は破産法のコンテキストの中で破産手続開始決定と同時に,破産管財人の選任ですとか債権届出期間の指定ですとか,そういった同時処分がいっぱいあるんですが,それと同時に信託財産管理人についても選任しなければならない,そういった御趣旨だと伺ってよろしいでしょうか。

 

 

 

  •  具体的な制度提案としては,そういうことです。

要するに,信託財産が破産申立ての際にわかっているとき,その時点で信託財産管理人を選任すれば,その後の混乱はかなりの程度防げるのではないだろうかという提案です。

 

 

 

  •  仮に破産管財人兼信託財産管理人というようなものを構想する場合に,信託財産で信託の公示を欠くものがあった場合に,その人はどういう行動をとるべきなのか。

 

 

 

  •  「兼」ではなくて,別の人ですということですね。

 

 

番人

「信託財産管理人は受益者に聴いたりするのかな。」

 

 

  •  そうすると問題は,今,おっしゃるとおり,裁判所がそれを把握できるかという問題に尽きるということでしょうかね。

 

 

 

  •  そうですね。後でわかるケースも当然あるかとは思うんですけれども,当初わかっている状況において,信託財産管理人が任命されるまでの間,破産管財人にある一定の職務を負わせるよりも,信託財産管理人が当初から任命されてもよろしいのではないかという議論です。

 

 

 

 

  •  その限りで,非訟事件の管轄がずれるというか,横出しになるというか,そういう感じになるんでしょうかね。つまり,信託に関しては信託固有の管轄の裁判所があるわけですけれども。

 

 

 

  •  何か,大阪では同じ部が……。

 

 

  •  それ以前に,多分,破産事件の管轄と信託に関する事件の管轄自体がずれている可能性があるという点が問題なのではないかと思われます。そこはやり方次第かもしれませんけれども,その点が問題になり得るかと思います。

 

 

 

もう一つは,先ほど○○委員もおっしゃったとおり,実際に,破産の手続開始決定をする段階で信託財産があることを把握できる場合もあるし,把握できない場合もあり得るかもしれない。

 

 

破産手続の実務の観点から言って,信託財産があるかどうかを申し立てあるいは開始の段階で常に気をつけていなければならないということがどれぐらい生じるのかといったあたりが,問題になるとすれば問題になるのかなという気はいたしますけれども,今の段階では,もうちょっと検討してみないとわからない。

 

 

 

ただ,破産管財人を2人選任するようなものだと考えれば,実務上,絶対できないことではないのかなという気は,個人的にはいたします。

 

 

 

 

  •  破産管財人の選任と同時に信託財産の管理人も破産事件を担当する裁判所が選任するとして,その場合には,第42の2に係るような差止請求権は要らないという御趣旨でしょうか。

 

 

ダブッても別に構わないのではないでしょうか。

 

 

  •  そういう例外的なというか,間隙ができる事例がどうしてもあると思うので,恐らく制度的には,受益者保護のために必要ではないかと思うんですけれども,真っ向からこれがどうしても必要だということで議論すると,実効性とか,手続的なところでかなり細かい議論が必要となってくるのではないかということで,議論が急展開したというのが1つなんですけれども。

 

 

 

 

  •  御趣旨はよくわかります。ただ,特に破産が債権者申立ての場合に,債務者に関する情報が申立て段階で十分裁判所に伝わらないことは十分考えられるので,全件御提案のような形で処理できることが保障できるならともかく,信託財産管理人の選任がおくれるとか,あるいはその事情がわからない場合のために,御提案のようなことをとるにしても,差止請求権は残しておく方が穏当ではないかという気がしたということです。

 

 

 

  •  信託財産の管理人を同時に選ぶことについては,もうちょっと裁判所サイドからの検討をお願いしたいと思います。

ほかに,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  今,若干出ていたと思うんですが,差止請求というのは処分するときまでしかできないんですか。

 

 

もしそうだとすると,知らなかったらやりようがないので,例えば処分しようとするときには2週間前までに通知・公告するとか,何かそういう規定を置いておかないとどうしようもないのではないかと思うのですが。

 

 

 

 

  •  信託財産であることがわかっていながら処分する場合は,恐らくそういうことを設けてもいいのかもしれませんけれども,破産管財人の方は,信託財産であることがわからないで処分している場合もあるかもしれないですね。

 

 

 

  •  これは解釈論になるのかもしれませんけれども,そういう場合であれば,仮にわかっている場合には2週間前に受益者に通知しなさい,そういうルールであれば,わからなかった場合には受益者も知らなければとめようがないわけですから,これは事後的な無効とかいうことを認めざるを得ないのではないでしょうか。

 

 

 

いずれにしても,少なくともわかっていて処分する場合は何らかの通知等がないと,せっかく受益者の保護が与えられていても,気がつかないことになるのではないでしょうか。

 

 

 

  •  受益者の立場からすれば,それ自体はもっともな気がしますけれども,どうですか。

 

 

 

  •  素朴な疑問ですが,破産管財人としては,わかっていたら処分できないのではないかと思うのですが。

 

 

これは破産財団に入っている財産ではなくて信託財産であることがわかっているにもかかわらず処分するというのは,違法な処分行為であって,およそ許されない行為ではないかという気がいたします。

 

 

 

ただ,逆にわからずに処分するということはあり得て,そのときに受益者はわからないではないかという問題は確かにあると思うんですが,わかっていたら手出しできないはずではないかという気がいたしますが。

 

 

 

 

  •  それは全くおっしゃるとおりだと思うんですけれども,もしそういうふうに整理するのであれば,むしろ財産を処分するときには受益者に通知するということにでもしませんと,受益者はどうしたらいいんですか。

 

 

 

差止請求制度というのは,制度としてはいいと思うんですけれども,結局,実際問題として全然行使できないのではないでしょうか。

 

 

  •  実効性を持たせるために,どうしたらいいかという御提案だと思いますけれども。

 

 

  •  おっしゃるとおりかと思います。我々の仕切りとしては,わかっていたら処分できないはずで,わからずにやってしまったときに受益者はどうするんだということで,そうしますと,たまたま受益者にわかればできるだろうから,少なくとも制度としての意味はあると思うんですが,わからないでやられたときに,どうするんですかね。

 

 

それは別途,管財人の責任を追及するとか,不当利得を請求するとか,何か事後的な対応をせざるを得ないのかなという気がいたします。

 

 

 

  •  わかっていて処分すれば,おっしゃるとおりだと思うんですけれども,私は,よくわからないけれども処分するということだと思うんです。それが1点。

 

 

それから,今,おっしゃったように事後的に,事前にどうしようもないような場合に事後的な何かの手当てがあるということであれば,それはそれで一つの制度だと思います。

 

 

 

  •  実際の適用の仕方のイメージは余りよくわかりませんけれども,要するに,破産管財人が管理している財産ですから,前受託者の固有財産であるか信託財産であるかですよね。

 

 

信託財産の可能性があるけれども,よくわからないというので,要するに,全財産が恐らくそういうふうになってきてしまうんでしょうけれども,その財産を処分するときに,全部の受益者に何らかの通知をしなくてはいけないというのは現実的なのか,感覚としてよくわかりませんね。

 

 

 

 

 

  •  破産管財人というのは当然,財産を処分することを仕事としている者であって,そういう意味では,財産を処分することについては破産の関係の債権者なりには全く別に,通知しないで処分をやっているということですし,特に受益者が多数に上る場合もあり得ることも考えると,財団と思っている財産すべてについて受益者に通知をすることは,破産管財人にとって余りにも大きな負担になることは間違いないのではないかという気がいたします。

 

 

 

  •  何らかの形で実効性を持たせるようにした方がいいというのも,おっしゃるとおりだと思うんですけれども。

 

 

  •  信託財産に属するかどうか,仮に属することが明らかであっても,信託の公示がないといった状況もあると思うんですね。

 

 

なおかつ信託の公示としてどの程度を要求されるかとか。だからここの,これは条文ではありませんから要旨なんでしょうけれども,信託財産に属する財産としては認識しているけれども,信託の対抗要件を具備していない財産とかですね,そういう場合とか,それは今後の解釈論に委ねられるとすると,差止請求をする側も,処分する破産管財人も結構窮地に陥って,どうしたらいいのかわからない状況になるのではないか。

 

ですから,わかっていて処分するというのは,公示がないからわかっていて処分するケースもあり得るのではないかと思います。

 

 

  •  破産管財人の第三者性との関係で,非常に問題が大きいところだと思います。

 

 

 

  •  ○○幹事に教えていただきたいんですが,破産管財人が処分するときは,多くの場合,裁判所の許可が必要になるのではないかと思います。

 

 

そのときに信託財産であることがわかっていれば,当然そのことを裁判所にも言わなければいけない。

 

 

そうした場合に裁判所は許可しないのではないかと思うんですけれども,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  おっしゃるとおりでございまして,破産管財人側から出された資料等によって信託財産であることがわかれば,裁判所は当然許可しないと思います。

 

 

 

ただし,一定額--100万円以下の動産等については,今回の破産法改正と破産規則の制定によって,その許可が不要となっておりますので,そういった破産管財人の裁量に委ねられている部分については,裁判所の許可によるチェックは及ばないことになろうかと思います。

 

 

 

  •  そうしますと問題は,今,おっしゃった裁判所のチェックを逃れるような部分について,どう対応するかということになるでしょうか。

 

 

  •  あとは,許可の段階で,信託財産であるという認定がどこまでできるかというところであろうかと思います。

 

 

  •  同じような問題で,第三者の立場はどうなるかという話なんですけれども,善意取得者が生じた場合,すなわち信託財産が有価証券とか動産であった場合に同じような論点が出てくるのではないかと思っております。

 

 

 

その際,今までの議論に合わせて,差止請求自体が善意取得を遮断する効果がないのであれば,例えば執行官保管とか,そういう制度をつくる必要があるのかどうかという議論にも及びそうな気がしております。

 

 

 

ただ,この点については,恐らく財産取得者と受益者と,どちらをおもんばかるかという判断もあると思いますので,この点についても御整理いただければありがたいと思っております。

 

 

 

  •  執行官保管は先程お話した仮処分というところででもできますので。それ以外にどういう制度というのは,もうちょっと検討しないと必要性などもどこにあるのかすぐには分かりませんが。

 

 

 

 

  •  今,差止請求権について別に否定的な意見があったわけではなくて,こういうものは受益者の保護としていいのではないか,そういう御意見だったと理解しました。

 

 

 

ただ,それを実効性あらしめるためには,ほかにもいろいろ手当てをしないと意味がないのではないかという御意見で,通知をするというのもその御提案の1つであるということです。

 

 

 

それから,差止請求権以外に受益者の保護としては,信託財産の管理人みたいなものを早急に選任するという御提案がございました。

 

 

 

受益者の立場の保護としてどういうことをしたらいいかということは,引き続き事務局の方で総合的に検討してもらうことにしたいと思います。

 

 

 

  •  第39で,破産手続が開始したときは受託者の任務が終了するわけですが,完全になくなるのかという話です。

 

 

 

現行の破産法を私,十分理解できていないのかもしれませんけれども,破産者は財産について,破産管財人に対して何も言わなくてもいいんでしたっけ。

 

 

 

どんな財産があるかということ。そういう義務は破産法上は存在していないんでしょうか。

 

 

もし破産法上そうだと仮定しても,信託財産が破産財団に属していないとなりますと,今度は破産財団に属さない財産についての話になりますので,これまでの破産法の考え方で律することができるのか,まだ頭の中が整理できていません。

 

 

 

そうしますと,今までいろいろなされてきた議論の前提として,破産管財人に対しての説明義務みたいなものを観念する必要はないのかということも,併せて御検討いただければと思います。

 

 

 

  •  破産法上,何かというお話ですが,破産者の説明義務が第40条に新しくできる,そのお話でございましょうか。

 

 

 

 

  •  ええ,第40条を見つけられなかっただけなんですが,第40条であったとして--破産に関し必要な説明ということでございますので,何でも含まれていると言えばいいのかもしれませんが,例えば,第41条の重要財産開示義務に対するものに関しましても,これは破産財団に属する財産についての義務として観念されているんだと思うんですね。

 

 

 

そうすると,信託に関しては「これは破産財団に属さない財産ですよ」という説明を考えなければいけないわけであって,それは現行の破産法の条文の解釈によってできるのか,それとも信託法に,破産によって任務が終了した後にもなお残存する義務としてそういったものを規定した方がいいのか,私,にわかに判断できなかったものですから,破産法の規律と併せて御検討いただければと申し上げた次第です。

 

 

 

 

 

 

  •  任務が終了しているので--ゼロになっているかどうかわかりませんけれども,受託者としては,そういうことを言う義務がありそうな気がしますね。

 

 

 

それはまさに信託財産を管理していて,それを保護しなくてはいけない立場にあった者の義務として。

 

 

それは破産法との関係で,破産管財人に対してうまく言えるようなことになっているのか,そこは私,わかりませんけれども。

 

 

 

  •  御指摘の点,破産法の射程がどこまでかというのは検討いたします。

思いつきですが,受託者にそういう説明義務を課すことができるのであれば,それは一方では破産管財人に対して,他方で受益者に対してもそのような説明を課すことができれば,先ほど○○委員がおっしゃった差止請求を実行する方向にもつながるのではないかということで,有益なご指摘だと思います。

 

 

 

  •  ほかに何かお気づきの点,ございますでしょうか。--よろしいですか。

それでは,次にいきましょうか。

 

 

 

  •  続きまして,権限の問題をさせていただきたいと思いますので,第33の受託者の権限と,第34の受託者の権限違反の行為等について御説明申し上げます。

 

 

 

まず,受託者の権限について,資料7ページからでございます。

 

提案内容は,前回と同じでございますが,提案の趣旨をもう一度かいつまんで御説明申し上げます。

 

 

まず,現行法第4条に「受託者ハ信託行為ノ定ムル所ニ従ヒ信託財産ノ管理又ハ処分ヲ為スコトヲ要ス」とある点から見ますと,受託者の権限が信託財産の管理または処分に限られるようにも読まれかねませんので,そうではなくて,受託者は,広く信託目的の達成のために必要な行為であればできる権限を有することを,文言上,明確になるようにいたしました。

 

 

 

他方,受託者は,信託目的の達成のために必要な行為であれば,これを行い得るとはいいましても,例えば利殖を図ることを目的とする信託における投資対象の財産についての限定がある場合,あるいは共同受託の場合において,信託事務の処理に当たっては共同受託者全員の承諾を有するという制約がある場合,これらはいずれも受託者の権限に対する制限であるという理解を前提といたしまして,この趣旨を明らかにするための規定ぶりとして,甲案と乙案の2案を併記したものでございます。

 

 

 

 

ここでの問題は,信託行為の定めと申しましても,信託目的も形式的には信託行為の定めに含まれますので,意味がダブッてしまうのではないかという懸念があることでございまして,このような懸念をなるべく解消すべく,甲案は「信託行為の定めに従い」との文言を用いることによりまして,意味がダブッてはいなというニュアンスを出したものでございまして,乙案は,ただし書きとすることにより,本文の信託目的とただし書の信託行為の定めとは意味がダブっていないとのニュアンスを出したものでございます。

 

 

 

 

甲案の方が何となく,印象ですけれども,ちょっと縛りが原則かかっている。乙案は,ぼんと広いけれども,ただしちょっと狭めるよという,気持ちの違いかなという気もしますが,理論的に御検討いただければと思います。

 

 

 

それから,※の点でございますが,一方におきまして,借入れや信託財産に対する担保権の設定などの行為は,信託財産を毀損しかねない行為であるという性質にかんがみますと,それにもかかわらず,緊急のために必要があるときは借入れ等を行うこともできる旨を確認的に規定しておくべきであるという考え方もあるでしょうし,あるいは,このような行為については信託財産を害する危険性がありますので,特別に規定を設けて規制しておくべきであるという考え方もあると思います。

しかし,他方におきまして,規制対象となるべき行為を技術的に特定することが困難である--デリバティブなどですね。

 

 

 

あるいは借入れといっても,では物を購入したときに債務を負った場合は,信用取引を行うときはどうかとか,そのような場合につきまして,結局特定することが困難であると考えられることにも鑑みますと,不明確な規定によって過剰な規制に陥りかねない危険を冒すよりは,善管注意義務や忠実義務などの規定に委ねる方が望ましいという考え方もあり得ると思います。

 

 

 

 

 

 

このような種々の方向の考え方があり得ることを踏まえまして,借入れ等の行為につきまして,特別な規定を設けるべきか否かを問うものでございます。

 

 

 

第5回会議に引き続きまして,甲案,乙案のいずれの書きぶりがよいかという点,併せて※の点について御審議をいただければと思います。

 

 

 

 

続きまして,第34でございますが,これは受託者の権限違反行為の取消しに関する現行法第31条ないし第33条に対応する提案でございます。

 

 

 

まず8ページ,提案1の①と④でございますが,これは前と同じでございます。その要点をかいつまんで申しますと,現行法と同じ点といたしましては,まず,取消権行使をとるとしたこと,それから,取消権者を受益者のみに限るとしたこと,第三者側の保護要件としては善意(無重過失)を要するとしたことでございまして,他方,現行法と異なる点といたしましては,取消しの対象を処分行為に限らないとしたこと,取消しの可否について登記登録を問題にしないとしたこと,信託の本旨についての違反という基準を用いないとしたことが挙げられます。

 

 

 

このうち前回提案時からさらに検討を加えた点といたしまして,まず,前回提案時においては,取消権者の範囲につきまして,現行法と同様に受益者のみとすべきか,それとも受益者の利益を可及的に図るという観点から,委託者,実際に権限外行為をした受託者自身,共同受託の場合の他の受託者についても含めるべきかについて,要検討事項であるとしておりました。

 

 

 

今回の提案におきましては,資料の9ページ上段に記載させていただきました理由から,取消権者につきましては当該信託に最も大きな利害関係を有する受益者の判断に委ねるべく,受益者に限ることとしているものでございます。

 

 

 

また,信託の本旨についての違反という現行法の基準を用いないこととの関連では,第5回会議におきまして,受託者の善管注意義務違反の行為についても取消しの対象に含めることとすべきところ,受託者の権限に属するか否かという基準,あるいは切り口によるときは,それが困難になるのではないかといった御趣旨の議論があったかと存じております。

 

 

しかし,この点につきましては,受託者の信託事務遂行義務のような,いわば内部的な関係を規律する局面とは異なりまして,信託外の第三者との,いわば対外的な関係を規律する局面におきまして,信託の本旨という柔軟性のある基準を用いることとするときは,取消権を行使し得る範囲,すなわち対外的な効果帰属の有無が問題となる範囲が不明確となって,取引関係の安定性を害するおそれが大きいと思われることに鑑みますと,やはり取消権を行使し得る範囲を画する基準としては,受託者の権限に属するか否かという,より客観的な基準を用いることが適当であると思います。

 

 

 

 

 

そして,受託者の善管注意義務違反の行為が取消権の対象となるか否かにつきましては,抽象的に決することは困難でありまして,具体的事情のもとにおける当該義務違反の内容,程度に応じ,権限違反とまで言えるか否かについての事例判断とならざるを得ないのではないかと考えているわけでございます。

 

 

なお,第三者の保護要件に関しましては,事務局といたしましては現行法下の解釈と同様に,基本的に幅広い権限を有する受託者の行為が権限に違反するものであることを第三者側において認識することは容易ではないと思われることに鑑みまして,受益者側において第三者の悪意・重過失を立証すべきと考えているわけでございますが,第5回会議におきましては,実際に取引に関与していない受益者が立証責任を負うのは酷ではないかとの御指摘がなされたこともありまして,改めて御意見があれば伺いたいと思っております。

 

 

 

 

 

以上に対しまして,提案1の①と③は,現行法と同様に取消権構成をとることとしたのを踏まえまして,受益者複数の場合の特則を定めた現行法第32条,取消権の消滅期間を定めた現行法第33条に,それぞれ相当する記述を設けることを新たに提案するものでございます。

 

 

なお,現行法第33条では,取消権の消滅期間を一月,それから1年としているわけでございますが,これについては余りにも短過ぎるとの批判がありますので,これをいかなる期間とすべきかについて御意見を伺えればと思います。

 

 

 

ちなみに,信託法改正試案ですと,民法第126条の取消権と同じように5年と20年にしておりますし,民法の詐害行為取消権ですと2年と20年としておりますが,このような点も参考にしていただきまして,御意見があれば,ぜひとも伺いたいと思っております。

 

 

 

 

 

 

最後に,提案の2でございます。

これは権限違反の局面とは若干異なるわけでございますが,前回提案時にも指摘いたしましたとおり,現行法には,受託者と第三者との間での取引の効果帰属先についての認識が異なる場合に関する規定がないために,受託者の認識によって決せられることになると解されますが,このような考え方は取引の安全の観点から問題があり得るということに関しまして,相殺の局面に関してのみ,第三者からの相殺禁止の例外として,第三者の正当な信頼を保護する内容の記述を設けることを提案するものでございます。

 

 

具体的な提案内容につきましては,資料の本文あるいは説明を御参照いただければと思うわけでございますが,ここで,第三者の信頼を一般的に保護することまではせず,あくまでも相殺の局面に限って保護する規律を設けることとしている趣旨でございますが,信託財産の安全を確保すべき要請もあることに鑑みますと,第三者の信頼を一般的に保護することまでは行き過ぎであると考えられるわけではありますが,相殺の局面におきましては,第三者としては既に引き当てとなる債権債務のあること,当てがあるということを前提にいたしまして,受託者との間でさらなる債権債務関係に入ったものでありまして,いわば,新たな債権債務と相殺とを一体として,債権を請求されたときの決済に充てるべきものと考えていると見ることができると思います。

 

 

 

 

このような点におきまして,相殺の局面は,民法第478条の準占有者に対する弁済の場合と類似の法律関係にあると言うことができますので,全く新たに債権債務関係に入るよりも,第三者の信頼を保護すべき必要性が高いと思われまして,このように,相殺の例外の取り扱いを規律してはどうかと考えるわけでございます。

 

 

 

なお,第三者の保護要件といたしまして,提案では「信じるに足りる相当な理由」と民法第110条と同様の文言を用いておりますが,既に申し上げましたように,ここの規律では第三者の信頼一般を保護するわけではなくて,あくまでも相殺の場合についてのみ,準占有者弁済と同様の考え方から第三者を保護しようとする趣旨でございますので,民法第478条と同様に,第三者の善意無過失,すなわち信託財産または固有財産に帰属すると信じたことと,それについて過失がなかったことを要するとの趣旨であると御理解いただければと考えております。

以上で説明を終わらせていただきます。

 

 

 

  •  それでは,今の範囲で御議論をお願いいたします。

 

 

 

  •  まず,第33については両案併記されておりまして,違いがよくわからないところもあるんですが,信託の管理事務の適正確保の観点からは,甲案の方が望ましいのではないかと感じております。

 

 

 

この規律の仕方によって,局面によっては立証責任が変わってくる場合があり得るのか,あり得ないのか,その辺について,もし御検討されている点があれば教えていただければと思います。

 

それから,第34の受託者の権限違反の行為については,第三者の主観的要件と立証責任について若干意見を述べさせていただければと思います。

 

受益者が第三者の悪意・重過失を立証するという御提案があるんですけれども,それをやらないと信託財産を取り戻すことができないというのは,やはり受益者の立場からすると負担が重いと思います。

 

 

 

例えば,不動産の管理,賃貸を目的として当該不動産を信託に付した場合において,受託者が同不動産を処分してしまった場合に,受益者の側としては,そういった受託者と第三者の取引には全くかかわっていないわけですから,不動産の処分の事実を知った時点では,その事情は全くわからない。

 

 

 

 

 

では,それを関係者に聞いてみようということで,受託者に聞くことになるのかと思いますけれども,その場合に,権限違反を行った受託者の協力が十分得られるか,あるいは受託者の説明義務や帳簿閲覧請求権に関してよほどの整備がないと,受益者の方で有効な情報を得ることはなかなか難しいのではないか等々を考えますと,やはり受益者の立証という点では重いのではないかと思われます。

 

 

 

 

 

翻って,こういうふうに,権限違反の場合に受益者の方で信託財産を取り戻しにくいとなると,受益者としては,よほど信頼できる受託者でないと信託を利用できないことになりかねない。そうすると,かえって民事信託等,一般の利用を狭めることにならないかが懸念されます。

 

 

すみれ

「家族に受託者をお願いする方向になるのかな。」

 

前回の御提案の御説明の中では,民法の表見代理あるいは理事の代理権の制限に関する規定,虚偽表示の第三者保護規定等に鑑みて,民法第54条の規定と場合が似ているので,この規律に従ったらどうかという形で主観的要件の御提案がされていたかと思うんですけれども,民法第54条では,一応その判例上は--その後もし変更があれば御指摘いただければと思いますけれども--取引の相手方の方に善意の立証責任があるとされているのではないかと理解しております。

 

 

また,ほかの表見代理や虚偽表示等の立証責任と,主観的対応の中身を見たとしても,例えば,表見代理の場合には相手方の過失を立証すれば足りるという記述になっておりますし,虚偽表示や詐欺の場合には第三者側が善意の立証となっていて,そういった規定との関係から言っても,受益者の方に悪意,重過失を立証せよというのは,やや違和感を感じるところです。

 

 

 

商事信託の場合には,会社法の規制に従って悪意,重過失の立証責任という発想が出てくるのはよくわかるんですけれども,民事信託の場合には果たしてそれでいいのか,そういった場合に受益者の方に酷にならないかということは御検討いただけないかと思います。

 

 

 

番人

「家族信託の場合で利用する場合はないと思うけど。でも受益者保護の規定はあった方がいいかな。不動産の場合、信託目録で受託者の権限を具体的に限ることで、他の人から見ても分かるようにするかな。あとは処分や担保設定は受益者の同意が必要と記録しておくとか。」

 

 

こういった観点から,もし悪意,重過失という主観要件とするのであれば,これは第三者側に立証責任ということを御検討いただきたいですし,もし立証を受益者側にさせるのであれば,主観的要件については,むしろ過失を立証すれば取り消しを主張できるというような規律についても併せて御検討いただけないかと思います。

 

 

 

 

もし,この主観的要件について悪意・重過失として,かつ立証責任について,取引安全の見地から受益者に課すことを維持すべきだということであれば,受益者の権限違反行為が生じにくいような他の規定の整備はぜひお願いしたいところです。

 

 

 

つまり,損失てん補責任ですとか忠実義務,特に帳簿閲覧等請求権の規定で,受益者の監督権限が行使しやすいといいますか,きちんとそれができるような制度としていただくことを特にお願いしたいと思います。

 

今のは1の関係ですけれども,2について1つだけ質問します。

 

2の(イ)(ロ)について,主観的要件について先ほど若干御説明がありましたが,この「信じるに足りる相当の理由がある場合」というのはいつの時点で考えるのか,もし御検討されている点があれば教えていただければと思います。

 

 

  •  御意見にわたる部分については御議論したいと思いますけれども,今の質問事項については,いかがですか。

 

 

  •  質問のうち最後の点,立証責任の時期については,これは相殺に供すべき債権ないし債務関係に受託者が入ったときということで,一般に記名式定期預金がある場合の貸付けなどで議論されているわけでございますが,それと同じで,例えば受託者が貸付けをしたときとか受託者が借入れをしたときの時点をもって,相手方の信頼に相当な理由があったかどうかを相手方が立証することを考えているわけでございます。

 

 

 

 

あとはおおむね御意見だったと思いますが,第33の甲案,乙案で立証責任についてどうかというのは,今まで余り考えていなくて,どちらの書きぶりがいいかを中心にしていたわけでございますが,甲案ですと,恐らく「権限内」と主張する方が信託行為の定めの範囲であることを立証することになるでしょうし,乙案ですと「権限外であった」と主張する方が別な定めがあったことを立証するのではないかというのが,文章からも素直ではないかという感じがしております。

 

 

 

 

  •  今の甲案,乙案,どういう意味を持つかについて重ねての御質問ですが,これは第34の方で,権限違反の行為が実際に行われた場合を想定しますと,受益者の方から言うべきこととしては,本来,信託財産に属することと,処分を受けた者が占有しているなり公示を有しているなりということを言えば足りるわけであって,そうすると,処分を受けた側の人間としては,これは権限違反の行為でも有効だというのが前提ですから,多分,受託者等から「処分を受けた」と言うだけでいいのではないかと思います。

 

 

 

そうすると,構造上,受益者が「これは権限の範囲外の行為である」と主張,立証する必要が出てくると私は理解しました。

 

その場合に,甲案,乙案なんですが,権限の範囲外であることを主張,立証しようとしますと,要するに,受益者としては「目的達成のために必要な行為とは言えない」と言うか,あるいは「信託行為に別段の定めがあって,そこからするとできない行為である」そのどちらを言うことになるんだろうと思います。

 

 

そうしますと,乙案が何か妙な案でして,むしろ甲案の方が素直なのかなと。

 

 

 

つまり「信託行為の定めに従うとこれはできない行為だ」と言うか,あるいは「目的達成に必要な行為とは言えない」どちらかを言えばいいという形になる……。

 

 

 

ちょっと先ほどの御説明が,権限外の行為であることを主張,立証する必要が受益者の側にあることを前提にしますと,何かもう少し説明が要るのかなと思いました。

 

 

 

もう一点,先ほどの意見に重ねて言いますと,今の場合に「権限の範囲外だ」と言うだけでは全然だめでして,取り消すことをしないといけない。

 

 

 

その際に,悪意あるいは重過失まで主張,立証する必要があるのかという点ですけれども,考え方としては,現行法ですとそうなのかもしれませんけれども,考え方としましては,権限の範囲外の行為は確かに有効ではあるけれども,原則として取り消すことはできるべきものだという考え方はあり得るだろうと思います。

 

 

ただ,取り消すことは原則としてできるけれども,相手方が善意だった,あるいは過失がない,あるいは重過失がないと言うかどうかは別としまして,相手方の方で,つまり処分を受けた側でそのような事由を述べることによって取消しを阻止することができるという考え方も,十分に考えられるのではないかと思います。

 

 

 

 

権限外の行為は原則取消可能だというルールを立てるのは,立証責任の公平という観点以前の問題としても言えるのではないかという気がいたします。

 

 

 

 

 

 

  •  前段の点ですが,先ほどの私の説明を改めさせていただきたいと思います。

 

 

今の御指摘を踏まえて考え直したのですが,やはり権限外であることを主張する方が立証責任を負うという前提で甲案,乙案どちらがいいかお考えいただければということで,改めさせていただきます。失礼いたしました。

 

 

ポリー

「受益者はとりあえず、権限外だ、っと言って取り消せばいいのですね。」

 

 

  •  証明責任の点は既にクリアされたので,1点だけ,実質が違う可能性がある本当に些細な点を申し上げますと,乙案のような書き方をしますと,信託目的の達成のために必要ないことをやれるということを信託行為に書けるかのような含みが出てくるという意味で,今までも乙案の方が評判悪いですけれども,今までの意見に加えて,テクニカルにも甲案の方が自然かなという気はします。

 

 

 

もし言われていることが,目的等にかなり抽象的なものがあって,具体的なものでそれに縛りをかけるようなことを念頭に置かれている限りは,甲案の方が自然だと思います。

 

 

 

  •  甲案,乙案の差がそれほどないという前提ですと,余り差はないのかもしれませんけれども,商事信託の場合には,いずれにしても信託行為で詳細を規定されると思うので,民事信託を前提に置いての議論の方が,甲案,乙案の選択のときにはより適切ではないかと思います。

 

 

 

その場合には,今後,弁護士が高齢者の財産管理とか,親なき後の子の財産管理という形で関与することがあると思いますし,また,弁護士でなくても,まちのボランティアの方が何らかの形で関与することがあると思うんですけれども,そのときに,信託行為自体が要式性があるわけではなくて,また,そういう場合は期間的にも相当長いタームで考えることになると思うので,受託者の違反行為,責任は,善管注意義務とか忠実義務違反というところで問うことができますし,また,第34で議論しているところの権限違反行為でもとらえることができますから,もし乙案の方が受託者としての裁量に基づいて最も適切な行動がしやすいものであるという理解が正しければ,特に民事信託という側面においては,受託者にもう少し自由度を与えた方がよろしいのではないかと思います。

 

 

乙案が余り評判よくないということに対しての反論的な意味合いなんですけれども。

 

 

番人

「市民後見人みたいな、市民受託者も想定されていたのかな。」

 

 

 

  •  自由度を与えるというのは,乙案の方がいいだろうという御趣旨ですね。

 

 

  •  そうですね,乙案の方が広いであろうと。要するに,信託目的が「このために最善を尽くしてくれ」ということであれば,場合によっては不動産を処分することもあり得ると思うので。

 

 

 

  •  ○○委員が民事信託のことを言われましたけれども,商事信託におきましても,当然のことながら受託者の自由度が高い方がいいので,そういう観点からは乙案の方がいいのかなという気もします。

 

 

もちろん,何らかの問題があるということであれば考え直しますけれども,それよりも,もともと我々の方で一番気にしていますのは,※のところに出ています借入れのところでございまして,補償請求の部分の規律がどうなるかまだ決まっておりませんけれども,どうもなかなか難しいということであるとすると,資金繰りを安定的に供給するためには,基本的には常に借入れできるような体制にしておかないと,信託事務を円滑に運営できないというところがありますので,基本的に,もちろん信託の目的の範囲内においてですけれども,信託行為に書かなくても借入れ等の資金調達ができる,そういう形にだけはしていただきたい。

 

 

すみれ

「常に借入れできるような体制か。大変だね。」

 

 

もちろん甲案でもそういう解釈はできると思いますけれども,そういう観点から乙案の方が整合的かなと思って,前回も乙案と申し上げたんですが,甲案でもそれができるということであれば,それはそれで構いません。

 

 

 

  •  ○○幹事からも,ほかの方からも御意見がありましたように,乙案の場合はそういうものが入ってきて,信託目的達成のために必要な行為ということで,入るという解釈が素直に出てきそうですけれども,甲はちょっと狭い感じがしないではないですね。

 

 

番人

「信託目的と受託者の権限の関係が今ひとつ分からないんだよな。」

 

 

○○幹事が言われた,信託行為の別段の定めというのが乙案に入っていて,これが目的の範囲を超えてもできると使われると困るというのは,確かに形式的にはあり得るかもしれないけれども。

 

 

本来,信託目的が明確であれば,その範囲内でしかできないと考えれば,信託目的と信託行為の上下関係は明らかになりそうな気がしますよね。

 

 

 

書きぶりとしてどちらがいいかという問題と,○○委員が指摘されましたように,借入権限について,この2つの案との関係でどう考えるか,あるいは,そのことを考慮したときにどちらの方がいいかという問題点についても御意見をいただければと思います。

 

 

 

  •  先ほど○○委員が言われた民事信託の関係なんですけれども,信託行為に書かれていない場合に比較的いろいろなことがやりやすいということで,乙案の方が望ましいという見方もなるほどなと思うんですけれども,他方で,書かれていない場合に,そこで受託者も一応考えるというか,場合によっては受益者と相談した上でやるということを確保することが大事な場合もあり得るのではないかという気がしていて,民事信託の場合に,乙案,甲案どちらがいいかというのは,いろいろな見方で局面があり得るのではないかという気がするんですが。

 

 

 

ポリー

「受託者に広い権限を与えておいて、権限行使の場合は受益者又は受益者代理人の同意をもらうという、2つセットにすると上手く回るかもしれませんね。」

 

 

 

  •  受益者が子供とか高齢者という前提ですから,受益者が自分で財産管理できるときにわざわざ受託者が財産管理するという前提での議論は,余りしなくてもいいのではないかと思います。民事信託で何を観念するかによって全然前提が違うんですけれども。

 

 

 

 

 

 

  •  御議論の中にもありましたように,商事の信託を念頭に置くのか民事の信託を念頭に置くのか,また,それぞれについていろいろなタイプがあり得るので,なかなか難しいんですけれども,一般的な考え方としてどういう立場をとるかということですね。

 

 

 

今までは,甲案の方が評判がよかったんですか。

 

  •  前は乙案をおっしゃっていた方が1人いただけで,ほとんど議論はなかったので,改めて今回,結論をいただければと思っているんですが。

 

 

  •  先ほど○○幹事がおっしゃったことに関係するかもしれないんですけれども,確認の意味で。

 

 

乙案のただし書は,狭める方だけではなくて広げる方も含んでいるという趣旨ですか,もともと。

 

 

 

言葉を変えて言えば,狭める方だったら,そういう書き方が可能ですよね。本文に対して信託行為でこれをさらに--「てにをは」はともかくとして,制限してもいい。

 

 

ただ,もちろんその制限は,善意の第三者にどうなるのかというのは別ですけれども。

 

 

 

  •  今までの御議論を正確に覚えていないけれども,例えば借入れの権限などを入れるために,わざわざこのただし書を乙案のもとで使う,そういう議論ではなかったような気がしますね。狭める方向で議論していたのではないんですか。

 

 

 

  •  事務局といたしましては,この乙案というのは,言ってみれば本文が最大限書いてあって,これより広げることは考えにくいので,気持ちは狭める方です。

 

 

文言だけ見れば,もちろん広げる方もあるんですが,本文との関係では狭める方だけと御理解いただければと思います。

 

 

  •  お一人しか主張がなかったと言うけれども,乙案で,今のようにただし書の方を狭める趣旨であれば,そんなおかしくないような気もするけれども。

 

 

  •  別にこだわるつもりはないんですが,単に狭め方が広い,狭いではなくて,いろいろなタイプの権限の行使の仕方についての制約みたいなものがあるので乙案の方が書きにくいとすると,甲案の方が書き方としては自然なんですね。

 

 

 

だから,乙案で狭めるというのはあり得るんですけれども,狭い議論ではない部分のことを考えると,乙案でそれをやるのは難しいかなという印象は持っております。

 

 

 

ただ,これは純粋に技術的な問題ですが,サブスタンスの方が狭めるという前提であれば,甲案,乙案,実質的には余り差はないと思います。

 

 

すみれ

「サブスタンス?」

 

 

ただ,それを強調しますと,○○委員や○○委員が言われたことは,乙案をとったからといって何一つ解決されるわけではないということにもなってしまうんですけれども,むしろサブスタンスをまず固めていただければ,あとは自然な文言をとればいいだけだと思います。

 

 

 

 

  •  先ほど○○委員が信託の借入れの議論をされていましたけれども,商事信託でもあるし,本当に商事信託でデリバティブ云々というのは信託行為に書くべきことだと思うんですけれども,民事信託の場合,何らかの形で受託者が立て替えなければいけない。

 

 

 

 

 

自分で立て替える分には別に構わないのかもしれませんけれども,それを借入権限がない限りは借り入れられなくて,不動産を扱っていて,その不動産が修繕とか万が一のときに,場合によっては資金が必要だと思うんですね。

 

 

 

 

 

そのときに,甲・乙案の差が余りないのであればいいと思うんですけれども,こういう立法過程での議論等も踏まえると,やはり信託行為に,特に借入れなどは書いていなければいけないかもしれないという保守的な解釈が出る。

 

 

番人

「借入れ、借り換えは信託目録に受託者の権限として書いておくか、担保設定の登記が受理されないような時は、事前に信託の変更、登記が必要じゃないかな。」

 

 

受託者になった方は責任をとりたくないかもしれませんから,そういう保守的な解釈に立った場合は,信託が幅広く利用されようとすることに対して制約的になっていくのではないか。

 

 

 

ですから,借入れを絶対するなとかデリバティブをするなというのは,やはり信託行為の中で,遺言信託であれば遺言の中で借入れはしてはいかん,あくまでも不動産の管理の中でやればいいとか書けばいいのかもしれませんけれども。

 

 

これはどういう信託を念頭に議論するかによりまして,絶対乙案がいいというわけではないんですけれども。

 

 

  •  甲案と乙案の違いがあるかどうか,具体的にお伺いしたいのですけれども,例えば,受託者に一定の投資権限を与えて株式には30%まで投資していいという中で,31%の投資をしてしまった場合,甲案だとそれはもう権限がないことになるのに対し,乙案では,全体の信託契約の趣旨,目的にかんがみ,それくらいの権限はあるという解釈があり得るのかどうか。

 

 

 

それとも,その辺の実質は全く変わらず同じなのか,その点を御確認させていただければと思います。

 

 

  •  そこは,どちらも権限外になるのではないか。実質は変わらないと理解しております。

 

 

 

  •  実際の年金などではあり得ないことではないと私自身,認識しているんですけれども,それは意図的云々ではなくて,計算の仕方とか時差の問題とかいろいろな要素がかみ合って,例えば今の1%,大幅に違うものをやるのはあれかもしれませんけれども,あり得るのではないかと思うんですね。

 

 

番人

「商売でやっている時に、自分の裁量で上限を超えるって怖くないのかな。」

 

 

今の1%だけではなくて,いろいろなポートフォリオで細かい指示がどこまであったか。

 

 

 

要するに,信託行為自体に要式性があって,きっちり紙に書いてあればいいかもしれませんけれども,電話等のやりとりにおいて何らかの設定をしたときに,それが違反だったかどうかとか,それはかなり紛争性があると思うし,それが権限外ということで取引の第三者にまで影響してしまうと,信託と取引する相手方はかえって不都合で,不都合でもいいではないかというと,今度,信託の運用の方にかなり影響を与えてしまうのではないかと思うんですけれども。

 

 

 

 

  •  今の前提は,○○幹事の挙げられた例で言えば,30%以内でしか投資ができないことが信託として明確になっている,あるいは信託行為で明確になっている場合の話ですね。○○委員が言われたのは,仮にそういう場合であっても,ちょっとオーバーしたぐらいについては,少なくとも対外的な権限の問題としては救済がないかと。

 

 

 

ですから,甲案,乙案の比較の問題ではありませんね。

 

  •  ちょっと違うかもしれません。

 

 

  •  ○○委員がおっしゃったこと自体は,また一つの問題だという気はいたします。特に対外的な権限との話ではね。1%を超えた部分については,それは取消しの対象になってしまうかということになると……。

 

 

ただ,これは取消権の要件の問題である程度は解決できるのかもしれない。相手方の悪意・重過失とかいうところの要件で,権限外であっても取消しの対象にならない場合がある。

 

 

 

  •  甲案,乙案,どちらがすぐれているということには考えても結びつかないんですけれども,途中で議論があった幾つかの事柄について,一言発言させてください。

 

 

 

目的達成のために必要な行為を,乙案をとった場合には別の定めで広げることはないだろうという御意見が幾つかあったように思いますので,実務の方々への質問なんですけれども,私が推測するに,そうではないのではないかと思います。

 

 

 

目的のために必要と裁判所が判断するかどうかはわからないけれども,したがって,これこれはできる,これこれはできる,これこれはしてよい,権限を与えるというのを信託行為の中で定めるというのは,あらかじめ受託者が何ができるかを明らかにしておくためにはあるのかなと思います。

 

 

他方で,もちろん目的達成のために必要だと客観的に考えられる行為であっても,この信託ではそれはやってはいけないと委託者,受託者間の信託行為であらかじめ定める場合もあろうかと思います。

 

 

 

そしてこの第33の,先ほどの○○幹事の言葉を使うと,サブスタンスとしては,やはりどちらも承認すべきではないかと私は思います。

 

 

 

したがって,甲乙どちらがいいかというところには必ずしも結びつかないんですけれども,途中での御議論に対しては,やや疑問,異論がございます。

 

 

 

 

 

  •  広げる場合の方が問題なんでしょうけれども,信託行為で個別に「こういうことはできる」と書くことによって,恐らく信託目的の解釈が広がっているのではないかという気がするんですよね。

 

 

だから,信託目的はここまでだけれども,その範囲を超えていろいろなことができるというのは,何かおかしな感じがするんですが。

 

 

ポリー

「信託の目的を超える権利を受託者が持つのはおかしい感じがしますね。」

 

 

 

  •  最後はそうなるんだろうと思うんです。信託行為に明らかに逸脱しているけれども,書いてあるからいいというのか,それとも,具体的に信託行為に定めがあるから,そこまで目的に含まれているかというのは先生のおっしゃることなのかもしれませんが,しかし,具体的にそれが争いになったときに,先生のおっしゃっているようなソフィスティケートされた議論をするよりも,別段の定めに定められている,まさにそれに当たるんだから,これは権限内ということになるのではないかと思うんです。

 

 

 

だから争い方としては,さらに,しかし,書いてあるけれども,文言上は確かに当てはまるようだけれども,信託全体の趣旨から見ると,やはりそれは外れるのではないかとか,そういう議論はあり得るのかもしれませんが,まさに信託行為の別段の定めを置くというのは,1つは,やはりそういうことをあらかじめ考えて,将来のトラブルを防ぐためにやるのではないかと思いますので,それはなるべくスムーズに,問題解決のときに使えるように考えるのがいいのではないかと思います。

 

 

ポリー

「将来のトラブルを防ぐためにやるとすれば良いですね。」

 

 

  •  よくわかります。

 

  •  どちらがいいというわけではなくて,今のように広げる方向もあり得るとしたときに,それがどういう意味を持つか,またちょっと証明責任の話をしますと,「別段の定めがある場合には,この限りでないものとする」には2つあって,制約する方向と広げる方向と両方あり得ると考えたときに,先ほど言いましたように,受益者の側としては,権限の範囲外の行為だと言わないといけないわけですね。

 

 

 

その場合に,さっきも言いましたように「目的達成のために必要とは言えない」と言うか,あるいは「必要かもしれないけれども,別段の定めがあってこれはできないことになっている」と言うか,どちらかだと。

 

 

 

その限りでは,本文ただし書になっていますけれども,どちらについても受益者の側がいずれかに当たることを主張,立証しないといけないわけですけれども,ただ,恐らく広げる方向もあり得るとなりますと,考え方としては,受益者の方は「これは目的の達成に必要とは言えない」と--これを広げればまた別なんですが,限定的に考えますと「必要とは言えない」と言うのに対して,むしろ処分を受けた相手方の方が「いや,別な定めがあるではないか,だからこれは権限の範囲内なのだ」ということを,また主張,立証することになるのかなと。

 

 

わかりやすく考えると,恐らくそうなるのかなという気がいたします。

 

 

そうしますと,これは規定の書き方がすごく難しくなるんですが,制約する側か広げる側かによって,別段の定めの立証責任の所在が変わってくるのではないかという気がいたします。

 

 

すごく書きづらいだろうなとは思いながらも,しかし,ここは立場決定の問題ですから,いろいろお考えの上,決めるべきことかと思います。

 

 

 

 

  •  甲案,乙案については,今の証明責任の問題も含めていろいろ検討したいと思いますが。

 

 

 

  •  御検討の際に,信託行為を委託者が決めるというイメージでいくか,それとも受託者が実際には決めるというイメージでいくかで変わってくるのかなという気がするんです。

 

 

 

 

受託者が実際に信託行為を決めるということですと,受託者の権限を限定するという意味で甲案の方が親しみやすい気がするんですけれども,委託者だということだと,そのままでいくと乙案になるだろう。

 

 

そうすると,民事信託を考えると,それは委託者が書くのだから乙案でということが,多分,○○委員などのイメージとしておありだろうと思うんですけれども,理屈の上ではそうかもしれないんですけれども,実態が本当にそうなのだろうか。

 

どういう信託をイメージするのかと関係してくると思うんですが,どちらの案をとった場合に,どういう当事者の行動に結びつきやすいかという面からの検討も必要かなと思います。

 

 

 

  •  もう十分御指摘が出ていると思うんですけれども,確認の意味でベーシックな点をもう一遍発言させていただきますと,どういう類型の信託を考えるにせよ,信託についてどういうルールを考えるかが今,問題だと思いまして,○○幹事がおっしゃったように,もし別段の定めをすれば目的達成のために必要でない行為もできるという立場をとるのであれば--それを俗に広げると言っているんですけれども,甲案では読めないですよね。

 

 

 

ですからその場合には,サブスタンスの問題として言えば,甲案をとるのか乙案をとるのかで全然違うと思います。

 

 

 

私は,実際の効果という意味では信託のタイプによって違うと思うんですけれども,どういう類型であれば,今ここでは,信託というものについての受託者の権限をどう考えるかが問われているんだと思いますので,どちらかでいくのかはっきりさせた方がいいように思います。

 

 

 

  •  おっしゃるとおりですね。

 

 

信託目的と信託行為の定めの関係とか,これはしかし,本来,信託目的--いや,そう簡単に言ってはいけないな。

 

 

信託目的が一応上のものであって,それを具体化するのが信託行為であって,そういう意味では,信託目的の範囲を超える行為を定めるというのは何か私は理解しにくんだけれども。

 

 

 

それはともかくとして,いろいろな御指摘がございました。

 

 

最終的にはどちらの方が--これはまだ条文という形ではありませんけれども,条文として書いたときにどういうものが好ましいのかという観点から,もうちょっと文言については詰めておきたいと思いますけれども,さらに検討しておかなくてはいけない点があれば御指摘いただきたいと思います。

 

 

  •  先ほど信託目的と信託行為についてというお話が出ていましたけれども,実務上からいきますと,信託目的というのが,確かに信託の目的をあらわした形で信託目的という箇所に入っているかがはっきりしていなくて,信託のタイプによっては,ただ単に形式的なものだけ書いてあって,結局その信託がやるべきこと的な話は全体の条文,信託行為を全部見て,その中で読み取るといったこともあるのではないかと思いますので,「信託目的」という言葉の使い方も,「信託目的」という言葉のところに出てくる話なのか,全体の文意から読み取るものなのかというところの決定も必要ではないかと思います。

 

 

  •  それは先ほど申し上げたように,個々の条項を見て,信託行為に別段の定めがあっていろいろ書いてあれば,それを見て信託目的も一緒に解釈するんだろうと思いますね。--わかりました。

 

 

それでは,これはまだまだ御議論があるかもしれませんけれども,切りがないところもありますので,第33についてはそういうことで。

 

 

第34の方もまだ重要な問題がございます。ただ,時間が中途半端なので,これから15分間休憩して,引き続き第34を御議論いただきたいと思います。

 

(休     憩)

 

  •  そろそろ時間になりましたので,再開したいと思います。

(関係官の異動紹介省略)

それでは,先ほどの続きをしたいと思いますけれども,第34,受託者の権限違反の行為等について,若干は御議論いただきましたけれども,なお御意見があれば。

 

 

 

  •  4点ほどあるんですけれども,第1点は,悪意・重過失の立証責任がどちらにあるかというのは,まだ確実に決まっていないのかもしれませんけれども,仮に受益者側にあると仮定したときに,善管注意義務違反の行為であるということについて,当該第三者が悪意であるということまで立証できたとするにもかかわらず,なぜ当該第三者を保護しなければならないのかがよくわからないんですね。

 

 

 

つまり,善管注意義務違反があったことについて,知らなかったことを第三者に立証せよというのは,何となく酷である。

 

 

 

権限内であることが言えればそれでいいはずであるというのはわかるんですけれども,善管注意義務違反であるとわかったということまで受益者側で立証できたのに,なお取引の安全のためにと言う必要がどこにあるのかがよくわからない。

 

 

 

4点あると申しましたけれども,内的には大体関係しておりまして,第2点目は,9ページの<説明>のところで民法第644条が挙がっているところでございます。

 

 

 

民法第644条のことが書かれていながら「対外的効果帰属については,単純に受任者の代理権の範囲内にあるか否かで考えることとされ,」と書いてあるのが私にはよくわかりませんで,つまり,第644条の受任者の義務内容が規定してあるところは,別に代理権が付与されていることを直接前提にしているわけではなくて,また,委任によって代理権が発生したと考えましても,そういう通常の場合でありましても,代理として法的効果が本人に帰属する範囲と,代理人が委任を受けている受任者であるとして行動できる範囲,そして,それにかかった費用を求償していける範囲はおのずから異なる別の話であって,ここを代理の範囲内にあるかどうかで考えるというふうに続けるのはいかがかと思います。

 

 

 

 

仮に,それでも代理と密接な関係があるではないかと言われると,まことにもっともでありまして,その限りではおかしくないんですが,その代理と密接に関係があることを前提としてこの案を考えたときに,代理に関しまして権限外でありますと,それは無権代理であって,保護される側が正当の理由を主張,立証していかなければならないことになるわけで,仮に受益者側で悪意・重過失を主張,立証していかなければならないと仮定しますと,それは代理ならば代理権濫用と言われるタイプのときの立証責任の分配であって,そうなりますと,これは権限の範囲内であっても自己又は第三者の利益を図るためといったことで行えば,本人への行為の効果帰属を否定することができるわけであって,やはりここでも,善管注意義務違反などというものを一応範囲の外に出したということにいたしますと,やはり悪意・重過失の立証責任を受益者側に課するのは無理がある,ないしは他の法制度の部分との間でアンバランスがあるのではないかと思います。

 

 

 

 

第3番目は,自分も全くわからないことをこれから申しますので恐縮ですが,大上段の話であります。取消しの効果というのは何なんだろうかという話なんですね。

 

 

 

もちろん,ある不動産が第三者に対して処分された。

 

それが権限の範囲内である,範囲外であることが問題となって,取り消すという話になりますと,これは当該売買契約が効力を失うんだと思います。

 

 

もちろん相対的取消,絶対的取消といった話がさらにあるかもしれませんけれども,一般的には,当該売買契約が効力を失って,信託財産に戻るんだと思うんですが,ところが,権限範囲外の行為というのは,そういった不動産を売却するといった信託財産を逸失させる行為とは限らないわけであって,単純に,何らかの契約をするようなものもいろいろあるわけであります。

 

 

 

その場合に,仮に信託財産に責任を限定する特約があったりする場合を考えますと,場合によっては,第三者としては,取り消された方が有利な地位に着く。

 

 

つまり,あるいは相殺もそうかもしれません。

 

 

信託の業務の執行であるということになりますと,さまざまな制約が相手方の権利の内容にも及んでくるのに対して,取り消されて,それが仮に受託者個人と行った行為であるというふうに性質が転化されますと,かえって有利になるということもあるのではないか。

 

 

 

今はちょっと思いつきで申し上げただけなんですけれども,取消しによってどうなるかについて,お考えがあればお聞かせ願いたい。

 

 

私個人としては,現行法の第31条が処分行為に限ってそういう規律をしているのには,一定の合理性があるのであろうとなお考えているわけであって,それは信託財産の逸失行為だけを対象としているととらえることができるのではないかと思うわけであります。

 

 

 

 

第4番目は,実は第33に若干戻るような形になるんですけれども,第33における「信託の目的達成のための」という話を厳格に解しますと,いずれにせよ,権限外とされる範囲はかなり広くなってくるわけであります。

 

 

 

そうなりますと,これは私が今まで申し上げていることと逆の立場からの発言になってしまうかもしれませんけれども,全体としては,第34の規律は,相手方の保護とか取引の安全を図ろうという形ででき上がっているのに対しまして,第33について厳格に解しますと,いずれにせよ,安定的だとは言えない法制度になるのではないかと思うわけです。

 

 

 

これに対しては,第33によって定まる権限というのは一般的,抽象的に定まるものであって,あるときにある行為をするに当たって,それが適切でない,ある時点におけるある具体的な行為が目的を達するのに適していないと判断されたとしても,それは善管注意義務違反等々の問題であって,権限としてはそれが否定されるわけではない。

 

 

 

 

権限というのは,もっと抽象的に定まるのだというのが恐らくは正しい回答になるんだと思いますけれども,もし仮にそれが正しい回答だとすると,本当に第33において,目的によって権限を縛ることに何らかの実質的意味があるのか。

 

 

 

 

つまり,例えば30年にわたって子供を扶養するために信託を設定するといたしましても,それは通常では,ある不動産が信託財産であるときに,30年にわたって扶養しようということになりますと,これは賃貸をするなりして安定的な収入を得た方がいいということになって,土地の処分権限は否定されることになるのかもしれません。

 

 

 

しかし,場合によっては,土地は値下がり傾向だから売却をして何かに変えた方がよいとか,あるいは今現在,大変困っているので,それを救うためには土地を売却した方がよいという場合もあるかもしれません。

 

 

そうなりますと,目的からは,土地の処分権限というのはなかなか否定しがたいような気がするんですね。

 

 

 

 

抽象的に「その目的を達成するために必要な行為」ととらえた場合に,本当に第33が権限を制約する法理として働くのかという問題が,第34の前提にもなお存在しているのではないかと思います。

 

 

 

番人

「33とか34の中身はよく分からないけど、目的で受託者の権限を広げて、信託契約の条文で制限するってことかな。」

 

 

すみれ

「信託の目的は、受託者の利益だけになることが書かれていなければいいんじゃないの。」

 

 

ポリー

「信託の目的は、なぜ、わざわざ信託をするのかを書くんじゃないでしょうか。」

 

 

 

 

  •  いろいろな論点がありましたが,それぞれ難しい問題だと思います。全部一遍にはなかなか議論できないと思いますけれども,順次議論していただければと思います。

 

 

そうですね……,一番最後の方が記憶に鮮明に残っているので。

 

要するに,目的によって権限が確定されるのか,されないのかという問題ですよね。

 

これはいろいろな場合があるんでしょうけれども,要するに,抽象的な目的を定めても,それによって直ちに権限が定まらないという意味での権限が定まらないという問題もあるんでしょうけれども。

 

ただ,○○幹事のお話,一番問題となりそうなわかりやすい例としては,当該信託においては信託財産を処分する権限があるのか,ないのかというのが比較的わかりやすい例で,例えば,ある特定の家屋とかこういうものを維持するために,それがそれなりに価値があるので,古い建物だし,維持するために信託を設定しているんだといったときは,これはその値段がどうであれ,とにかく維持することが目的なんですから,その信託においては当該家屋を処分することはできない。

 

 

1つぐらいしか今すぐには例が思い浮かびませんけれども,かように目的によって権限が定まる場合もあるのではないかと一番最後の問題については思うんですが。

 

 

 

ポリー

「その場合は、信託の目的と信託財産の管理方法に処分という字を入れないことになると思います。もしくは処分できないという字を入れることになるかもしれません。」

 

 

すみれ

「利用する人がやりたいことは、信託の存続とか受託者の義務違反とかじゃなくて、資産の引き継ぎだからね。」

 

 

 

2番目,3番目あたりは少し難しい問題なので。

第1番目の問題は前から○○幹事が主張されている点だと思いますけれども,善管注意義務違反というものが権限に全然関係なくていいのか,簡単に言うとそういう問題ですか。

 

 

受託者が善管注意義務違反の行為をしていることを相手方が知っているようなときに,善管注意義務の問題は権限に関する問題ではないから,第三者との取引の効力に影響を及ぼさないというのは適当でない,そういう御趣旨ですよね。

 

 

  •  そうですね,1番,2番あわせてそうであると言っていただいても構わないかと思います。

 

 

  •  これはいろいろ御議論があるところだと思いますけれども。

 

私自身も,善管注意義務違反の問題は全く権限と関係ないとは必ずしも思っていなくて,場合によっては,善管注意義務違反というのはある種の重要な権限と結び付くことがあるんだと思います。

 

 

ただ,どういう善管注意義務違反が権限に結びつくのか,あるいは相手方が知ってさえいれば,どんな軽い善管注意義務違反であっても,今度は逆に権限外のことになるのかとか,そういうふうに考えると,どうもそう簡単ではないような気がして,そこで,権限の問題はやはり権限の問題として,善管注意義務違反の問題と切り離して考えたらどうかというのがここでの原案なんだというふうには理解しています。これは私の理解です。

 

 

 

  •  その立場は非常によくわかるんですが,その立場が実効的といいますか,実際的であるためには,第33の規律によってしかるべく権限の範囲が制約される。客観的にですね。

 

 

 

それがあると,そう言えると思うんですよ。第33によって権限範囲が制約されているんだから,それを超した行為をどうするかをまず問題にしようと。

 

 

 

最後に申し上げたことは,第33の規律によって権限というものがある程度,まずは小さくなると言えるのかということなんですが,もしそれが,第33の規律では権限範囲をある程度狭めるといった効果がもたらされないとなりますと,結局,第34は野放し的になりかねないような気がするので,第33と第34は,その意味ではすごく密接に関係していて,第33がどれだけ実効的に縛れるかということと関係しているのではないかと思います。

 

 

  •  第33で問題にされているのは信託目的による制限であって,信託行為による制限は構わないわけですね。

 

  •  そうです。

 

 

 

 

  •  信託目的というのは抽象的な場合もありますので,これで直ちに,客観的に権限が明らかになるということは,そう多くはないんだろうという気がします。ちょうど法人の目的と同じようなものだと思いますけどね。

 

 

番人

「信託目的が抽象的な場合は、受託者に要求される権利と義務のレベルが高くなるような感じがする。」

 

 

 

ただ,では全然意味がないのかというと,必ずしもそうではないので,そういう意味で,ここでは一応,信託目的によっても権限が画される場合があると。

 

 

 

ただ,それが明確でなければ,つまり目的の範囲に入るのか,入らないのか,そういうことがよくわからなければ,これは逆に権限外であることが主張できなくなるのではないですかね。

 

 

信託目的についてはそうですが,ただ,甲案,乙案はさらに,甲案であればさらに明確ですけれども,「信託行為の定めに従い」ということなので,そこでは非常に明確な権限が定められていることがある。

 

 

その点,乙案の方が少し明確ではないのかな。甲案でいけば,少なくとも受託者の権限を画することになってくる。

こういうのが第33についての理解ですけれども,ほかの皆さんはいかがでしょう。あるいは事務局の方で。

 

 

 

  •  善管注意義務違反については,御指摘のような問題があり得ると思います。

 

 

 

すべてがセーフというわけではなくて,教科書などでは「重大な」といった規律もしております。

 

 

 

それはまた何が重大かという問題になってきますけれども,善管注意義務違反によってもケース・バイ・ケースで,場合によっては取消しの対象になるであろうという理解をしておりまして,一律に善管注意義務違反だったらどう,忠実義務違反だったらどうという理解は難しいだろうということですので,この文言でも,善管注意義務違反の程度によっては権限外というところに昇華してくることはあり得ると事務局は認識しております。

 

ただ,どんな軽微な善管注意義務違反でもいいかというと,それはさすがに,100万円で売るものを105万円で売ったら権限違反かというと,そこは難しいのではないか。

 

 

しかし,100万円のものを1万円で売ったら,これはちょっと問題があるのではないかとか,そういう程度問題かなと認識しているところでございます。

 

 

 

  •  先ほど○○委員が言われました--ちょっと違うのかな,30%のところを1%超える,そういうのが軽微な違反なわけですけれども,この30%というのは権限の問題として書かれているので,○○幹事の言われる善管注意義務違反の問題とちょっと違うかもしれませんけれども,かように,非常に軽微なものについては,幾ら相手方が知っていても,それをすべて取消しの対象にすべきだということになるのかどうか,少し問題があるような気がします。

 

 

すみれ

「30%のところは上限が明らかだったんだよね。」

 

 

 

  •  その限りでは全くそのとおりだと思いまして,私も,非常に軽微な善管注意義務違反まですべて取消しを認めろと言っているわけではないつもりなんですが,そうしたときの立法の技術といいますか,仕方の問題として,善管注意義務違反というのは曖昧である,しかるに権限は客観的に決まる,したがって,権限に属しない行為についてだけ取消しの対象としようという流れでいっているにもかかわらず,大きな善管注意義務違反だったら「さすがにそこまでは権限がないだろう」という非常に実質的な概念だとすると,実は客観的には決まっていないわけであって,それは現行法における信託の本旨に従わざる処分というものに,かなり近づいているのではないか。

 

 

 

 

 

私自体は,それが悪いことだとは思わないわけであって,○○幹事の説明はそのとおりだと私も思うわけですが,そうすると,ここの説明等において客観性が大切なんだ,権限外のときだけやるんだということを余り強調しますと,今後そういうふうな,ある意味では明らかに本旨に反し,相手方がそのことを十分に認識していた,ある意味では通謀的なものであるという場合にも,形式的に権限内であるならばそれで構わないという話になってしまわないか。

 

 

ポリー

「それはあるかもしれませんね。」

 

 

その辺をもう少し,第34の言葉の問題あるいは第33の権限の問題として考えることができないだろうかということであります。

 

 

 

 

 

  •  重大な善管注意義務違反という形でもって,どういう場合が権限の問題に入り込んでくるのか明確でないために,せっかく客観的な基準をつくってもグズグズになってしまうという問題があることは私もわかります。

 

 

  •  グズグズになっていいという立場なんです。

 

 

すみれ

「今日は散歩に行けなくてグズってたよ。」

 

 

 

  •  仮に客観性を維持するという立場からすると,完全には維持できないのかもしれないけれども,重大な善管注意義務違反をもうちょっと限定して,○○幹事はさっき権限濫用タイプと言われましたけれども,そういうものについては,これは権限があるという前提で,しかし,権限濫用と言えるような,受託者が自分の利益を図るためにやっているような場合が典型でしょうけれども,そういう場合には,やはり相手方が知っていれば効力を否定しようというところでは,単なる客観的な権限の問題に尽きないものが入ってくる。そのぐらいはあってもいいのかなという感じはいたします。

 

 

 

  •  今の御議論の前提で,言うまでもない自明の,しかし教科書的なことの確認だけさせていただければと思います。

 

 

 

先ほど○○幹事がおっしゃいました「重大なものであれば権限の問題になる場合もあり得るであろう」という説明と,民法や商法で従来言われていることとの関係がどうなるのかという点の質問なんですが,今,○○委員からも御説明ありましたように,権限濫用の問題に関しましては,昔からずっと議論のあるところで,主として忠実義務を想定しているんだと思いますけれども,内部的な義務違反があった場合に,それは権限外の行為と見るのか,見ないのかという議論がずっとございまして,何が問題かといいますと,つまり,忠実義務を守ることが権限の範囲を画していると見るのか,見ないのかという議論がずっとあるところで,一部の有力な考え方は,忠実義務に従うということは権限の範囲を画しているのだ,したがって,そのような義務違反の行為があった場合には,これは権限濫用の問題ではなくて権限外の問題だという考え方があるわけですけれども,御承知のように,通説的な判例を含めた見解は,やはり内部的な義務は権限とは別だと。

 

 

 

権限というのは内部的な義務とは別に,客観的に決まるべきものだという前提で,権限外か,権限内だけれども義務違反,権限濫用だという仕分けを一応してきたと思うんですね。

 

 

 

ただ,この議論の主たる場面というのは,権限の範囲がかなり包括的な場面を想定してきただろうと思います。

 

 

会社の場合もそうでしょうし,あるいは法定代理などを想定しているとはいえ,しかし,通常の一般的な代理についても同じような考え方を民法でもとってきたんだろうと思うんですね。

 

 

 

それがいかん,おかしいという御主張が○○幹事には若干あるのかなと思いますけれども,しかし,その理論は置いておいて,信託については重大な善管注意義務違反の場合には権限外だと簡単に言って大丈夫なのか。

 

 

やはりもう少し整合的な説明を併せてつけ加えないと波及するのかなという気がいたしました。

もう自明の前提だとは思いますけれども,念のため。

 

 

 

  •  理論的にはなかなか難しいところなんですけれども,ただ,流れとしては結局,忠実義務違反行為は権限外になるんでしたよね。これは前回,前々回でやったのかもしれないけれども。
  •  忠実義務違反は……
  •  明確になる。

 

 

 

  •  ……と考えておりますけれども,ただ,例えば商法などでは,一般的な忠実義務に反したら直ちに権限外ではないけれども,自己取引などに違反した場合は権限外とか,忠実義務だから常に権限外と言えるかというと,全くそこも,本当に一律に決めていいかちょっと疑問があるところでございまして,そうしますと,結局,権限外ということについて客観性を余り強調するのはどうかという○○幹事の指摘は,まさに我々としても痛いところでして,信託目的というのも,ある意味では多少あいまいなところもありますし,そもそも信託事務遂行義務も「信託の本旨」という言葉を入れて膨らませているわけでして,それに対応する権限というのも,ある程度の膨らみがあるでしょうし,重大なものかどうかということで,ある程度の基準ができてくるということになると,権限の内外というのは信託の本旨よりは客観性がある気がいたしますが,極限的には,どうしても事例判断によらざるを得ない。

 

 

 

ただ,今,○○委員が言われましたように,忠実義務は,善管注意義務違反に比べれば,基本的には権限外という可能性が強いだろうと認識しているところでございます。

 

 

 

 

  •  理論的には難しい問題がたくさんありますけれども,もう一つ○○幹事の言われたことがありましたね。

 

 

 

取消しの効果というのは結局何だろうということで,場合によっては,取り消された方が相手方にとって有利であるという……。

 

 

これは受託者に責任がある,そういう前提での話ですね。常にあるとは限らないので。

 

 

 

  •  ○○幹事の指摘とかみ合っているかわからないんですが,我々のここの取消しというのは,前から言っているように絶対的取消しだと考えておりまして,信託財産にも効果が帰属しなくなりますし,固有財産にも効果が帰属しないという意味で,行為の効果がすべて消えるというのが,ここでの取消しの効果と我々は認識しております。

 

 

 

 

 

 

それが御疑問に答えているかどうかはともかく,そういう取消しの効果と考えているところでございます。

 

 

  •  よくわからないまま発言して大変恐縮なんですけれども,それというのは,受託者が主観的に「信託事務の執行である」という気持ちをもってしたら,外形的に判断したときには,それが信託事務の執行であるといった形をとっていなくても必ず信託事務の執行としてのみの性格を有し,仮にそれが権限の範囲外であって,相手方がそれを重過失で,例えば知らなかったという場合には,形の上では,受託者個人がただ単に受託者の名前で借入行為をしようとしているという形なんだけれども,しかし,全く当該契約の効果は失われてしまうことが前提になっているんですよね。

 

 

 

 

 

  •  はい。

 

 

  •  そうなんですかね。

結局そうすると,受託者が「いろいろあるけれども,これは自分のためにやった」と一言言えば,これは自分のもののことになるんですかね。余りうまく言えませんで,すみません。

 

 

 

 

 

  •  前から○○幹事が気にされている点だったと思います。

 

 

この会議で前に議論したのか,あるいはほかのところで議論したのかわかりませんけれども,つまり受託者が,主観的には自分に効果を帰属させるつもりだけれども,外形的には信託事務のために行っているという……。

 

 

 

  •  本来は逆なんですけれども。つまり,受託者の信託事務の執行形態というものは,信託財産に責任を限定する特約を締結する等々のことをしない,つまりアズ・トラスティという形でしない限り,受託者個人の名前で出て,相手方とある一定の法律行為を行うにすぎないわけですよね。

 

 

それが信託事務の執行としての性格を取り消されたということになりましても,それはただ単に,受託者の個人的な契約としては存続すると考えるのが筋なのではないかと私は思うのですが。

 

 

またそのバリエーションとして,それではアズ・トラスティと言った場合はどうなるのかという問題が出てくるんですけれども。

 

 

すみれ

「アズ・トラスティ?」

 

 

  •  わかります。完全に人格が違う代理の場合と違って,信託の場合には受託者が,いわば行為者であって,信託のための行為であるという性格が消えると本来の受託者個人としての--受託者個人の名前で取引しているわけだから,それが復活するというのか,生きてくるのではないかということだと思います。

 

 

ポリー

「受託者は個人で取引する時は個人の名前で借入れて、信託の受託者として取引する時は(委託者)受託者○○の名前でするんじゃないでしょうか。」

 

 

  •  ○○幹事の御指摘されている問題に全面的には答えられないんですが,一部に対応する形で発言させていただきますと,第34の1の①に書かれていない前提があるのかもしれないと思います。

 

 

 

といいますのは,①で,この要件に当てはまって取り消すことができる場合というのは,受託者が主観的にといいますかね,受託者の意図として信託事務処理として行った行為で,かつ--そこは多分,○○幹事も前提にしていると思うんですが,もう一つがよくわからないんですけれども,かつ相手方である第三者も受託者の行為が信託事務処理として行われていることを知り,しかし,受託者の権限に属しないことを知っていた場合--ちょっと重過失は落とします--そのときには取り消すことができるのであって,第三者が信託事務処理として行われていることを知らなければ,たとえ権限に属しないことを知っていても,まさに固有財産で取引をしていると思っていたというときには,取り消せないだろうというのがおっしゃっていることの一部ではないかと思うんですが,それでよろしいですか。

 

 

  •  そうです。

 

 

  •  その場合に取り消せるのか,取り消せないのかというところを,まず考えないといけないんだろうと思うんです。

 

 

この1の①から解釈でどちらかというのではなくて。どういう解決が望ましいのかを考えないといけないと思います。

 

 

番人

「取り消せない気もするけど。」

 

 

それは,ちょっと十分に考えていないんですけれども,○○幹事の意見にも私も賛成……,今のところ,賛成したいと思います。

事務局がそうであるのかないのか,私もお伺いしたいと思います。

 

 

  •  前回の説明資料でその点を論述してあったのですが,受託者の取引の相手方が,受託者の信託事務の遂行として相手方と売買していると認識している場合であれば,信託財産に対して売買代金に係る債権を執行できるという期待は保護に値するにしても,取引の相手方が,受託者が信託事務の遂行として当該相手方と取引していると必ずしも認識していない場合にまで,当該相手方の信頼を保護して取引の効果を信託財産に帰属させる必要はないのではないかという指摘もこれまであったところでございます。

 

 

 

結論だけ申しますと,相手方が信託財産だと認識していないときは,これは取消しはできなくて,取引の効果は信託財産に帰属して,信頼は保護されるということであります。

 

 

 

そのようにする妥当性はどういうことかなのですが,例えば,受託者に対して既に財産が交付されて,受託者もこれについて信託財産の中から支払の全部または一部を履行している場合ですとか,受託者に既に交付された財産が信託のために用いられている場合には,既に得た財産はもう信託財産に帰属させるとした方が問題の解決には資するのではないかと思われます。

 

 

 

 

 

御指摘の懸念というのは,主として受託者が自らの債務を全く履行していなくて,取引の対象となった財産が信託のために用いられていなかったという限定的な場面で問題になるにすぎないのではないかと。

 

 

番人

「その場合は受託者と受益者の内部関係だよね。」

 

 

それから,取引の相手方が受託者の行為は信託の事務の遂行であることを必ずしも認識していない場合でも,受託者の行為が権限内の行為であれば相手方は信託財産に対して執行することが可能であるところを,こういったケースと先ほど申し上げた権限違反の行為がなされたケースとでは,相手方の認識状況,すなわち受託者の行為が信託事務であるかについての認識状況ですとか,それから,相手方が交付した財産は信託のために用いられているんだという点については全く同様であるにもかかわらず,たまたま受託者が行った行為が権限外であった場合には信託財産について執行することができないというのはバランスを失しているのではないか等々から考えまして,先ほど申し上げたような結論でどうかという考えを前回は述べさせていただいたところであります。

 

 

 

 

  •  誤解のないように補足いたしますと,相手方が信託として取引していると認識している場合であろうが,相手方が信託として取引していると必ずしも認識していない場合であろうが,その場合は取り消せないというのが前回の我々の考え方でございまして,その理由は今,説明がありましたけれども,権限内であれば効果が帰属するなら,権限外であっても同様な結論をとっていいのではないか。

 

 

 

確かに権限外であるということであれば,受益者の利益は害されそうであるけれども,他方,取引の相手方も権限外であることについて善意無重過失で保護されるということもあると,保護される場合と保護されない場合とで結論を異ならせるような理由はないのではないかというのが前回の提案の説明でございます。

 

 

 

  •  確認のための質問なんですが,代理の場合で言いますと,相手方が,本人ではなくて代理人に対して法律行為をしたので履行せよとか何か言ってくる場合には,代理人としては,いや,自分は代理人として契約をしたんだ--民事の場合ですと顕名をしたということを言えば,その履行請求は拒むことができるんだろうと思います。

 

 

 

それともし同じように考えるならば,権限の範囲内かどうかは別として,これは受託者個人としてやったことではなくて信託事務の履行としてやったんだ,あなたもそれを知っていたでしょうということで,先ほどの代理と同じような履行請求なり何なりを免れることができる可能性を認めるかどうかというのが,多分,○○幹事あるいは○○幹事がおっしゃっているようなことなのかなと一瞬思ったんですが,その点はいかがなんでしょうか。

 

 

 

つまり,取り消せるかどうかではなくて,権限の範囲外だということで取り消せるというのは,ルールとしてはある。

 

 

しかし,それ以外に今,言いましたように,いや,これは信託事務の履行としてやっているわけであって,あなたもそれを知っていたでしょうというようなことで免責があるのかという点は,いかがなんでしょうか。そこを併せて説明いただくと,わかりやすいかと思います。

 

 

 

 

 

  •  信託ということを認識している場合は,その信頼を保護して信託財産に効果は帰属する。

 

 

信託の取引であることを認識していない場合であっても,権限外について善意無重過失であれば,やはり信託財産に効果は帰属するというところで,同じように考えているということでございます。

 

 

 

 

 

  •  私は○○幹事のより,むしろ相手方も,受託者の方も信託事務処理とは考えていなかった場合には,これはもう信託財産にはかかっていけない。そこは代理と同じように考えるんだろうと思っていたんだけれども,違いますか。

 

 

  •  受託者も思っていない場合,それは信託財産にいかないのではないでしょうか。
  •  いかないでしょうね。

 

 

  •  受託者は思っていた,相手も思っていたんであれば,いく。受託者は思っていた,相手は信託とは思っていなかったというときでも権限内であればいくんだったら,権限外であっても善意無重過失ならいく,そういうような話でございますが。

 

 

 

  •  仮に相手方が信託事務だと思っていなかったから,その場合,信託財産に帰属しないんだといっても,例えば信託財産に属する特定物の売買などをしたときには,どちらにしろ信託財産に帰属すると考えて執行できると考えていかないと,話の辻褄が合わなくなるのではないかとも思ったのですが。

 

 

 

 

  •  もう一度言い直しますと,さっき私が申し上げたような問題は別にあるとして,今の問題に即して言いますと,代理の場合ですと,代理人が代理行為を相手方と行った,にもかかわらず本人に履行請求が来たときに,これが本人のための代理行為として行われているのであれば本人は履行を拒むことはできないわけですけれども,代理行為として行われたわけではない,民事ですと顕名がないということであれば,もちろん履行する必要はないというようなお話が出てくるわけです。

 

 

それに対応した問題だという位置づけで,しかし,先ほどの御説明ですと,権限の範囲内かどうかでこの問題は一律に扱わないと不公平になる,そういう御理解なんでしょうか。

 

 

 

  •  今,○○幹事がおっしゃったように,効果意思というんでしょうか,代理士と同じように受託者にも信託事務を処理しているという……,効果意思が必要だというところは同じでございます。そこから先が,権限内外とか認識によって区別しないと。

 

 

 

  •  受託者の側で……,代理人行為説みたいな発想ですね,一種の。

 

 

  •  効果意思は必要ということです。受託者側ですね。
  •  そこで決めるということですね。
  •  第一義的には,そこで決めます。

 

 

 

  •  権限内の行為の場合のときに,相手方が当該取引が信託事務の執行であると思っていても思っていなくても,いずれにせよ信託財産に対して執行していけるんだ,だからという話なんですが,そこは「だから」なのかというのがよくわからないところであります。

 

 

 

つまり,信託事務の執行行為であるというときに,信託財産に対して相手方が執行していけるというのが,どのようなメカニズムによって起こっているのかということなんだと思うんですね。

 

 

 

それは,受託者が当該取引に信託事務の執行であるという色をつけたからという理屈で考えますと,それはそのとおりで,受託者が行為時に色をつけたならばそうなるんだということになってしまうんだと思うんですけれども,やはり私は,それほど単純な話ではなくて,受託者はもちろんそういう主観的な意図をもって色をつけたわけだし,それで,相手方がそれを色をつけて信託事務の執行であると考えていた場合には,その信託財産が引当てになると考えたであろうと思われますし,仮に信託事務の執行であると思っていなかったと仮定した場合には,受託者の行為によって色がついたからというんではなくて,やはりそこは利益衡量の問題で,相手方に信託財産に対する執行を認めてよいのか。

 

 

 

それは信託事務の執行としてなされている話であって,かつ権限内のものなんだから,受益者にそれによって信託財産から直接とらせても,受益者に損失をこうむらせるものではない,だから相手方に信託財産に対する執行を認めよ,そういった利益衡量の判断の中でなされている話ではないかという気がいたします。

 

 

 

 

 

受託者が色を塗ったからである,それだけの理由によって信託財産への執行が認められるに至るんだということになりますと,今の○○幹事等の御説明のとおりであろうと思うんですけれども,そこは私は,疑う必要があるのではないかと思います。

 

 

そして,実質的に考えたときに,確かに権限内の場合には執行を認めたってだれも困らないわけですけれども,権限外のときに執行を認めてあげる必要が,相手方をそこまで保護する必要はないし,他方,受益者はそれによって損失を被るわけですから,必要性がないと私は思います。

 

 

 

  •  権限外の場合はだめなんでしょう,信託財産。

 

 

唯一違っているのは,受託者はとにかく,今,色をつけるという言い方をされたけれども,信託事務の処理として行っている。

 

 

相手方は,そういう意図ではなかった。そのときに,権限外であれば,やはり信託財産にはかかっていけないけれども,権限内であれば信託財産にかかっていけるとするか……,やはりだめだと。

 

 

  •  権限内であれば,それはできていいんですけれども……。

 

 

  •  相手方は,そういう意図で取引しているわけではないから。

 

 

  •  それはそうですけれども,現在の建前でも,信託事務の執行の場合には,信託財産に対して執行していけるとなっているわけですよね。

 

 

別にそこを今,変えるべきであるといった主張をするつもりはないんですが,権限外の場合であって,かつ○○幹事は,権限外の場合で,相手方がそれが信託事務の執行だと知らない場合も,悪意または重過失ならば保護が断ち切られるんだ,取消しの対象になるんだとおっしゃいました。

 

 

 

それは理屈の上ではそのとおりなんですけれども,当該取引が信託事務の執行であると思っていない人が,なぜそれが権限外であることについて悪意または重過失であるということがあり得るのかというと,それは基本的にはあり得ない話ですよね。

 

 

番人

「登記・登録がない財産の場合はあまり思い浮かばないな。」

 

 

 

そうすると,悪意または重過失の場合には保護されないんだからバランスがとれているでしょうという話にはならなくて,当該取引が信託事務の執行であることを知らない第三者は,受託者が色をつけたときには,当該取引が信託事務の執行であると意図したときには常に保護され,その取り消しは行われないことになるというのが現実的な整理だと思うんですね。そして,その必要はないのではないかと思うんですが。

 

 

 

  •  仮に○○幹事の立場をとると,ほかの問題もいろいろ入っているけれども,幾つかの枠組み,権限外かどうかという言葉は残すとして,要件としては何が,あるいはこの原案から何を外すことになるんですかね。

 

 

 

  •  それは恐らく○○幹事がおっしゃったことに関係しているんだと思いますけれども……

 

 

 

  •  意味をつけ加える。要するに,これが適用される前提条件を明確にするということですよね。
  •  そうですね。

 

 

 

 

 

 

  •  とんでもない思い違いをしているかもしれませんが,受託者も当然信託事務のつもりでやる前提で,相手方も信託事務だと思っていた。

 

 

 

その信託財産に属するものを何か売りましょうという処分行為をして,それで権限外であることについて相手方は善意(無重過失)であったというような場合は,現行法だって別に,これは有効に信託財産に帰属するわけですね。

 

 

 

その前提があるとすると,ここはちょっと分かれるのかもしれませんが,信託事務であることは認識していて,だけど権限外であることまではわからなかったという第三者と,まさか後ろに信託というものが構えているとは知らずに,これは多分,普通に取引しているんだろうなと思っている第三者が登場して,したがって,善意(無重過失)かというようなことを調べようもないわけですけれども,そういう第三者が登場したときに,後者の方が,突然外から「ごめん,これ信託財産だったのでアウト。さようなら」と言われて,その取引の安全というのは考えなくていい,前者の方は考えるべきだということになるのかどうか,そこのバランス論が……。

 

 

 

私は,前者が保護されるなら後者だって当然保護されるのではないかと考えたのですけれども。

 

 

 

 

 

  •  私も当然だと思います。だからこそ,現行法第31条は処分に限定しているんだと思います。

 

 

 

今,特定物の売買の話を出されるので突然そうなるわけであって,例えば,何でもいいんですけれども,借入行為でもいいかもしれませんが,そういったものを,特定物の売買だけがかなりの特殊性を持っているのが,現行法が処分行為という概念を入れて第31条の適用範囲を制限している理由ではないかと私は考えているんですが。

 

 

 

では,借入行為をした場合に,なぜ執行ですね,これは受託者個人で借りていると思っている第三者が,その信託財産に対して執行していけるということになるのかが私にはわからないんですけれども。

 

 

 

ですから,ちょっと私,バランスを判断するときの例として,特定物に係る売買契約その他,処分行為がかなり特殊なものではないかと思うんですけれども。

 

 

 

  •  論点整理させていただければと思うんですけれども,この権限違反の行為についての扱いとして,ここで提案されている第34が適用される場面が,今,問題になっているわけですけれども,一番問題ないのは,受託者の方も,これは信託事務の処理,そういう行為として,これは処分だけではなくて処分以外の行為であってもいいと思いますけれども,行っている。

 

 

相手方も,信託事務の処理として行われているという前提で,しかし,権限外であったというときにどういうふうに保護するかというのが,第34の問題である。

 

 

 

ここは仮にそういうふうに限定して,先ほどから,受託者の方が信託事務の処理のつもりで相手方がそうではなかったという例などが挙がっていますが,ちょっとそれについては別に--最終的にまたこの中に組み込むかもしれませんけれども,後者についてどういうルールで,どういうふうに解決したらいいかというのは独自に検討して,それで,最終的に第34と統合させて考えるのか,あるいは別個何かルールを考えるのか,そういうふうに分けて議論した方が,どうも生産的なような気がするんですね。

 

 

今,第34の中にすべてを入れて議論すると混乱する可能性があるので,そういう議論の仕方はいかがでしょうか。それ自体は,○○幹事は別に反対はされないだろうと思いますけれども。

 

 

 

  •  今の整理に賛成です。

その上で,もう時間がないので相殺のこととも絡めて申し上げたいんですが,よろしいでしょうか。

 

 

 

 

 

結論的には,相殺の問題についても,今の「別に考える」という中で取り上げていただければいいのではないかと思います。

 

 

今回のこの相殺の取り扱いについて,今の議論をお聞きしながら感じた問題が3点ほどあるんですが,1つは,相当の理由があったときにはというような主観的要件を課しているけれども,しかし,その中身は善意(無過失)であるとおっしゃっていた。

 

 

 

そうすると,何か正当な理由の方が自然な感じがするのに,なぜあえて「相当」という言葉を使っているのか。

 

 

 

2番目に,2の①では(イ)と(ロ)という2つの類型を挙げているのだけれども,2の②では1つの類型しか挙げていなくて,逆に言うと,1つが落ちていることになる。これはなぜなんだろうか。

 

 

3番目に,これは冒頭に○○幹事がおっしゃったことですが,基準時が債権発生時か相殺時かについて,これは債権発生時であるとおっしゃって,そうなると思うんですが,であれば,この時期を明確にした方がいいのではないかと思います。

 

 

そうしますと,時期を明確にすると,これは債権発生時における信頼の保護ということですから,それを債権の準占有者に対する弁済から持ってくるのはやや迂遠な感じがいたします。

 

 

つまり,債権の準占有者に対する弁済から,預担貸しを通じてここに至るわけですが,その債権の準占有者と預担貸しの関係について周知の議論がありますし,さらに,預担貸しとここでの状況が同じかどうかについても問題があると思います。

 

 

 

今,出てきた議論との関係では,取引の効果帰属がどちらにあるのかということと,むしろ関連してくるわけでして,取引の効果は帰属しないけれども,なお相殺を認めるという,何か隙間みたいに埋めている感じがするんですが,実はそれは,さっき○○委員がおまとめになりました「別個考えてみる」という中で論じられるべき一側面ではないかと思います。

 

 

 

  •  既に違うところで議論されているのかもしれませんが,まず基本的なことを1つ教えていただきたいと思います。

 

 

「受託者として」ということを明示しなくても,内心の主観的意図だけでよいという議論がすべての出発点でして,現行法もそういう解釈なのかもしれませんけれども,通常,信託銀行が取引するときでも--貸付信託の場合しないかもしれませんけれども,それ以外の場合ですね。

 

 

流動化でも民事信託でも,「受託者として」ということを明示しないことが,それでいいんだ,それ自体が受託者としての義務違反にもなっていないところが,それがあったとしてもという議論で根本的な解決にはなりませんけれども,少なくともそういうことを明示する義務があるということになれば,取引の相手方の保護としても「では,あなたの権限は何ですか」というところで次のステップに入れると思うんですけれども,それ自体もう根本的に必要ないんだというところから始まると,心の中で何を考えていたんだろうかとか,相手方も何を考えていたんだろうかというところで何かわからなくなるというところを疑問に思っていまして,法律論ではなくて常識的な議論になってしまいますが,その辺をどうとらえるのかということ。

 

 

 

 

あと,ちょっと違いますけれども,ちょっと前の議論で,動産云々というのは信託の公示の議論であって,他人物売買をしたみたいなところだけれどもというような解決なのかなと。

 

 

要するに,信託自体,準法主体説ではないという前提でのすべての出発だと思うんですけれども,何かもうちょっとわかりやすい割り切り方で議論していかないと,この議論は発展していきがたいのではないか。

 

 

 

準法主体的な,でも自分でやる以上は受託者としてという顕名をして,そして効果意思はこっちに帰属する,しないときには自分としてやったんだというふうに認識するとかですね。

 

 

 

そして,こっちで執行するときには対抗関係としてとらえるとかいうふうに割り切っていかないと,議論としてもついていきがたいところもあるし,権限の議論についても,取引の相手の立場だったりするとなかなかついていきがたいところがあるといいますか。

 

 

 

 

ちょっとまとまっていませんけれども,何かもうちょっと割り切った整理が出発点としてあった方が,いろいろな問題点が解決しやすいのではないかと思った次第です。

 

 

 

 

 

  •  前半の部分は,受託者としてという意思を表示しなくても,現在,取引もされているし,その場合にどう考えるかという問題として,私,さっきは○○幹事がさっき議論されていたことに少し賛同したので少し矛盾しているかもしれませんが,そこは完全に代理と同じではないところが多々あるんだろうという気がするんですね。

 

 

 

 

受託者がとにかく取引をしているわけですけれども,それは受託者として行為をしていれば,もちろん信託財産に効果は帰属するけれども,それを明確にしていないといいますか,そうではない地位で取引をしていたときに--ごめんなさい,そうではないというのはちょっと変だな。

 

 

 

代理だと代理人が本人に効果を帰属させるけれども,権限がない場合があって,代理人にも効果が帰属しない,本人にも効果が帰属しない,そういう場合が生じるんですけれども,信託の場合,それを認めていいのかどうか,ちょっと疑問がなくはないんですね。

 

 

信託の場合には,信託財産に効果が帰属するか受託者個人に帰属するか,どちらかと考えるべきではないかということも私は前提として考えているんですけれども,いずれにせよ,その部分についてどういう共通の理解をするかが余り明確ではないことが問題だということですね。

 

 

 

  •  そういう,顕名しないときには,いずれも可能なんだということが議論の出発点になれば,それはそれで。

 

 

  •  その出発点も含めて,帰属の問題については,最後は権限違反の問題にもかかわってきますけれども,ここで言う権限違反の問題とは別に考えてみたらどうかというのが先ほどの御提案なわけです。

 

 

 

今,○○委員が指摘されたようなことも含めて,出発点から少し考え直したいということですね。

 

 

 

  •  私は相殺について,先ほど○○委員がおっしゃったことと若干関係して意見を述べたいと思います。

 

 

 

前半の○○幹事の意見に反するようなことを申し上げることになると思いますが,要は,相殺する場合の相手方の保護を重視すべきではないのかということなんですが,そこで,いえば善意無過失の挙証責任というのが,この御説明であれば,例えば①のロでは債務者にあると整理されていると思います。

 

 

理屈的な話は別として,実務的な話としては,例えば受託者がいまして,銀行取引をしている。

 

 

銀行は受託者からお金を預金として受け入れて,金を貸しているといった状況で,仮にその預金が信託財産から来た場合はどうなのかという話なわけですけれども,仮にそれが後で相殺できないとなると,これは銀行にとっては非常に問題だと。

 

 

 

 

 

先ほど○○幹事の御説明の中で,相殺がなぜ特別に2として切り出されるかというと,やはり相殺というのは金銭の取引に関する引当財産になるということで,非常に保護されるべきだという価値判断があったと認識しているわけですけれども,やはり相殺の期待は実務的に非常に大きいですし,逆に,もしそれができないということであれば,繰り返しになりますけれども,例えば銀行としては,お金を受け入れるときに「あなたは一体だれの立場としてやっているんですか」と聞かなければならない,そういう煩雑さが実務的な問題として出てくるのではないかということでございます。

 

すみれ

「通帳の名義で判断することは難しいのかね。」

 

 

○○幹事は,民事信託について考えると非常に酷ではないかといったことをお話しされましたけれども,第三者と受益者との引っ張り合いのときに,どちらを保護するのかという価値判断だと思うんですけれども,その価値判断レベルの話としても,やはり第三者を保護するべき方に傾くのではないかということです。

 

 

理由は2点ございまして,1つは,先ほど○○委員がおっしゃられたことですけれども,法律的にどうなのかは別として,べき論としては,受託者が「この資産はだれのものである」と明確にすべきではないのか。

 

 

それをしないのは,やはりその責任を第三者に押しつけるわけではなくて,受託者に受託者を通じて受益者ということになりますけれども--に負ってもらうのが妥当ではないのかということです。

 

 

2つ目は,それにつながるんですけれども,第三者と,それから,かかる受託者が適正に開示をしなかったことに連なる受益者と,どちらを保護するかというと,やはり直接受益者と受託者との関係が,委託者と違って信頼される関係にはございませんけれども,ただ,グルーピングとしては,やはり受託者,委託者,受益者と,それから第三者というふうに分かれるわけですから,どちらを保護するかと考えれば,やはり第三者の方に傾くのではないか。

 

 

そう考えますと,やはり挙証責任ということも基本的には受益者が負うべきではないのか。それは,①の(ロ)についても同じことではないかと思います。

 

 

 

 

  •  第三者の保護に関しては,第34の①の場面で問題となっているようなところで,第三者保護をどういうふうにするかという問題があるわけですが,先ほどの御提案は,その問題と相殺の問題とは一応切り離して議論したらどうかということなんです。

 

 

 

相殺の問題というのは,先ほどの私の整理で言えば,当該行為--受託者が相手方と行った行為が一体どこに帰属する行為なのか余りはっきりしていないときに,相手方をどうやって保護するか。

 

 

相殺の例が典型ですよね。相手方が信託銀行というか,銀行本体に預金をしているときに,信託銀行から貸し付けを受けた。

 

 

それが信託財産から貸し付けられているのか,つまり受託者として貸し付けているのか,固有財産として貸し付けているのか,それがよくわからない。そういうときの相手方からの相殺を保護しよう,そういう御趣旨ですよね。

 

 

 

これは先ほどの整理で言えば,どこにその行為の効果が帰属しているかについての相手方の誤解あるいは信頼を保護するという問題で,これと典型的な権限違反の問題とは一応切り離して整理して,もう一回御提案したらどうかということです。

 

 

  •  ○○委員がおまとめになったような形で検討することが適切であると考えるのですが,その検討の際に御留意いただきたい点を1つだけ申し上げさせてください。

 

 

具体的には,相殺についての取扱いの,例えば①の(ロ)ですけれども,「信託事務により生じたものであると信じるに足りる相当の理由がある場合」という話と,権限違反か,権限外かどうかといったことに関連して,このあたり,一体どういう概念を持っているのか整理する必要があると思います。

 

 

 

もともとこれは効果帰属の問題としてとらえられていると思うのですが,例えば(ロ)の局面というのは,信託財産に属する債権を第三者が,実は固有財産に属するものであるにもかかわらず,信託事務により生じたものであると信じるということで,第三者の主観からすれば,どちらも信託債権・債務ということで相殺するような局面だと思うのですが,そういったものについて,権限外かどうかということとは別概念であり,ここでそれを区分けした場合に,既に議論がされていますけれども,別途権限外かどうかというのが立つのだとすると,なお権限外であるということがあり得ると思います。

 

 

 

信託事務として借り入れるんだろうと思っていたけれども,でも,そういう権限がないことはわかっているといった場合があり得るわけですが,そういったときの取消しがさらにできるのか。

 

 

 

これまでのお話ですと,1の場合は効果帰属の面で,少なくとも受託者が信託財産の方の効果帰属であると決定している場合を前提にしているということですが,2の想定されている場面というのは,そこが,そもそも受託者はそうではないとされているときですので,取消しとの関係を整理していくときに,取消しができるのか。

 

 

 

できないとすると,一方で非常に問題ではないかと考えるのですが,できるとしたときに,その効果がどうなるのかということで,これも既に議論になっているかとは思いますが,こういった場合も,およそ絶対的に効果がないということでいいのかどうか。

この点も一つの具体的な問題として御検討いただければと思います。

 

 

 

 

  •  御指摘のとおり,1の問題と2の問題と,ちょっと性質が違うものをとりあえず取りまとめて提案しているところでございますが,今後,分けて検討の対象としたいと思っております。

 

 

ただ,○○委員がおっしゃった基本的な構造というのは,我々の認識としては,やはり受託者が信託財産の所有者であって,受託者がした行為の効果は,もちろん受託者には帰属するわけですけれども,現行の信託法第16条で,特に「信託事務ノ処理ニ付生シタル権利ニ基ク場合 」については信託財産にもいけるというところを前提に議論してきておりまして,特に「これはおかしい」ということがあれば別として,なかなか基本的な構造ということは,こういう前提でいろいろ組み立ててきていることを御理解いただければと思います。

 

 

 

  •  それは十分理解しています。

その場合に,権限の議論といいますと,ある受託者が持っている財産というのは,信託の公示は別として,通常取引するときには,その方が一切権限を持っていると逆に認識--だから権限の議論になるのですけれども,そういうところが出発点になり得るのか。

 

 

だから,権限はかなり広くとらえるところから,逆に制限的に議論していかないと,権限を持っていて自分名義なんだけれども,実はこれは信託財産でしたというところで,善管注意義務とか,別に開示されて公開されていないところの信託契約の中の規制とかが出てくる,そこの整合性がちょっとと思った次第です。

 

 

 

 

 

  •  大分御議論いただきましたけれども,ある程度整理の仕方については,その中身はまた別として,大体御了解いただいたと思います。この点はなお検討させていただきたいと思います。

それでは,次にいきましょう。

 

 

 

すみれ

「行きましょう。」

 

 

  •  では,最後に受託者の有限責任に関する問題について御審議をいただきたいと思います。

 

 

一番最初の資料,第27と第28でございます。

 

 

第27は,現行法第19条に相当する規定の見直しでして,提案内容は,前回から変更はございません。

 

 

 

現行法第19条の趣旨につきましては,受益債権の場合については,信託財産に対してのみ執行できるということ。

 

 

換言しますと,信託財産のみが責任財産となることを規定したものであると解されておりますところ,その趣旨を明らかにすべく規定ぶりを改めた,物的有限責任であることを明示したということでございます。

 

 

 

 

続きまして,第28は,受託者の有限責任性を原則とする信託に関する提案でございます。

 

 

まず,提案1でございます。これは前回は提案2としていたのを1にしたわけでございますけれども,信託取引上の債権に基づく履行責任に限らず,例えば民法第717条の所有者責任など法定の原因による無過失責任も含めて,責任財産が信託財産に限定されることとなる新たな信託の類型の創設を,このような物的有限責任を認めるにふさわしいと思われる債権者保護手続・措置を設けることとあわせて提案するものでございます。

 

 

 

 

第5回会議におきましては,このような新たな類型の信託を創設することの当否について審議をいただきましたが,財産の独立性を確保した上で,柔軟な制度設計のもとに所有と経営の分離を図ることが可能となりまして,資料3ページの冒頭に記載いたしましたとおり,種々のビジネスを初めとする目的でのニーズに応えることができるのではないかとの観点から,総論として賛成との意見が多数を占めたものと認識しております。

 

 

 

 

そこで,今回の提案におきましては,受託者が有限責任となる新たな類型の信託を設けることを前提に,債権者保護の措置としてはいかなる規律を設けることが適当かを問うものでございます。

 

 

すなわち,提案におきましては,1の(2)※1のア,イ,ウとありますとおり,大別して3点。1つは信託財産の確保,もう一つ,イは受託者の第三者に対する責任,ウとして予見可能性の確保のための措置を設けてはどうかとしております。

 

 

 

このうち,アの信託財産の確保のための措置としましては,商法の配当規制に関する規定などを参考に,いわゆる財産分配規制と,違法な財産分配がなされた場合の受託者及び受益者の責任についての規律を設けることを提案しております。

 

 

 

この分配規制をかけるに当たって基準となる額につきましては,とりあえず,アの①のとおり「一定の金額」とのみしてありますが,この金額としていかなるものを要求すべきかについては,さまざまな考え方があり得るところですので,御意見を伺えればと思っております。

 

 

また,予見可能性確保の措置といたしましては,ウでございますが,受託者と取引をする場合には,この新たな信託類型の信託の受託者であることを明示することによって,取引相手方に責任財産が信託財産に限られることを了知させることとしております。

 

 

 

このほか,投資事業有限責任組合に関する立法例などに倣いまして,当該信託が新たな受託者有限責任類型に属する信託であることについての予見可能性を作出する手段といたしまして,登記等の公示制度を設けることの当否について御意見を伺えればと思っております。

 

 

 

なお,事務局といたしましては,有限責任類型の信託における債権者保護措置としましては,この提案に書いてありますア,イ,ウをもっておおむね足りるのではないかと思っておりますが,なおほかにも検討すべき措置があれば,ぜひとも御指摘をいただければと思っております。

 

 

 

 

次のページ,2でございますが,これは受託者の無限責任を原則とする既存の原則形態の信託におきまして,受託者が信託取引をするに当たり一定の事項を明示することによって,取引上の債権については信託財産のみを有限責任とすることとする規律を導入することに関するものでございます。

 

 

 

 

 

 

第5回会議におきましては,資料5ページの最後に書いておきましたが,基本的にかかる規律を導入するとの方向で御提案しましたところ,部会での議論によりますと,賛否両論が相半ばしたものと認識しております。

 

 

 

そこで,今回提案1のように,種々の債権者保護措置のもとに,原則として,債権の種類を問わず信託財産のみの物的有限責任とする信託の類型を新たに創設することを前提とした上で,さらに提案2に係るような規律を導入することとすべきか,仮に導入することとした場合には,いかなる債権者保護措置を設けることとすべきかについて,御審議いただければと思います。

以上でございます。

 

  •  それでは,御議論いただきたいと思います。

 

 

  •  新たな信託の類型と既存の類型,2点意見を申し上げたいと思います。

まず,1点目の新たな信託の類型でございますが,これにつきましては,第5回の会議でも申し上げましたが,有限責任性を原則とすることからしまして,ビジネスを行う上で柔軟に意思決定できるということも併せまして,非常に魅力を感じているということで,方向性としては賛成です。

 

 

ただ,これについては既存の制度とは別立ての形で創設していただきたいということでございます。

 

 

あと,これも第5回の会議で,受託者の不法行為についての有限責任性について議論があったと思いますけれども,一般の不法行為につきましては,当然,受託者の故意,過失によって起こりますので,これについては受託者が責任を負わないといけないと考えておりますけれども,例えば工作物責任等の無過失責任につきましては,これは受託者が責任を負わないような形態にしていただきたい。

 

 

この点が,新たな類型の信託の特徴ではないかなと思っておりまして,これが2の既存の有限責任の信託との大きな相違点であろうと思いますので,ぜひともお願いしたい。

 

 

 

あと,※1の債権者の保護策につきましては,先ほど申し上げたように,特別の類型である前提にいたしますと,基本的な方向性としては,この程度の保護策は必要なのではないかと考えております。

 

 

ただ,①の「一定の金額」というのが,先ほど○○幹事から意見をということでしたけれども,よくわからないところでございまして,この一定の金額というのは,絶対額として法定されるような性格のものなのか,それとも,例えば純資産等の割合で幾らぐらいといった形で決められるようなものなのか,それとも,例えば指摘1に委ねられて信託契約に書くというようなことで決められるようなものなのか,その辺のところをお教えいただきたい。

 

 

 

それによっては,例えばその額が非常に硬直的で過大なものであるとしますと,やはり実務上なかなかたえられないなという部分もございますので,場合によっては,ここは反対させていただくこともあるのではないかと思います。

 

 

 

 

あと,登記等の公示の制度なんですけれども,これも先ほど述べたように,特別の取引関係にない人に対しても影響を与える制度であるとすると,やはり何らかの公示制度は必要ではないかと考えております。

 

 

 

ただ,当然その姿勢は理解いたしますけれども,簡便で低コストな形のものをお願いしたいと考えております。

 

 

 

もう一つは,2番目が既存の類型の信託でございますが,この信託につきましては,信託の取引が特約のないデフォルトの状態では,そもそも無限責任であることを前提に,特定の信託の受託者である旨と,特定の信託に係る信託財産に責任が限定される旨,これを明示したときに有限責任の世界に入っていくということでございますので,これについては,アメリカにおきましては当然アズ・トラスティということだけで有限責任となるというところの平仄から考えても,あとは日本の今までの実務慣行等を考えた場合においても即した規律ではないかと思いまして,基本的には提案に賛成したいと思います。

 

 

 

 

ただ,有限責任を明示することによって,一方的に有限責任にさせられるであるとか,債権者として交渉が不利になる懸念があるといった御意見もありましたので,そういうことであるとすれば,我々としては,明示すれば入ってくるといったことに特にはこだわりません。

 

 

基本的には合意でも,そこのところは構いません。私どもの方としては,既存の有限責任特約が締結されれば受託者の固有財産に対して強制執行等ができなくなる,これは現行の実務でございますけれども,これが踏襲されて明示的に認められるということが一番必要なわけでして,それに基づいて,お互いの合意によって柔軟に,自由に有限責任の制度を利用していくことができればいいなと考えております。

 

 

 

 

その際に,契約に当然のことながらいろいろな縛りが入るということで,現行においてもいろいろな縛りが入っておりまして,債権者保護が図られていると思いますけれども,ただ,何もないというのもどうかと思いますので,前回,法務省からの提案がありましたように,受託者の第三者に対する責任というものぐらいは最低限入れておいて,これは結構柔軟な規定であると思いますので,そのほかの部分についてはお互いの合意によって契約で入れていくという形にすればいいのではないかと考えております。

 

 

 

 

  •  私の方からは,後者の既存の信託の有限責任化についてコメントを申し上げます。

 

 

以前,この件に関しまして2つの資料を配付させていただいたかと思います。

 

1つは,2月25日の会合で配付させていただいた「国際銀行協会による信託の法定有限責任制度の導入に関する意見」という資料,あと3月11日の会合で配付させていただいた「流動化・証券化協議会準備会合による信託法改正に関する要望事項」,こちらの紙なんですけれども,まず,国際銀行協会のペーパーの趣旨から説明いたしますけれども,こちらの立場は,既存の類型の信託に関しての,明示による有限責任化に関しては基本的に反対ということでございます。

 

 

 

理由としましては,このような提案により,債権者側が責任財産限定特約といったものに,これまで同意することがあったのに,債権者側の同意が不要で受託者側からの一方的な表示あるいは通知により有限責任化が可能になるということが,これまで築かれてきた取引の枠組みに悪影響を与えるのではないか。

 

 

あるいはまた,有限責任化に伴うリスクを十分理解していない債権者が,これまでどおり,受託者の固有財産も責任財産になっているんだといったことを前提として取引を行って,損失を被る可能性であるとか,あるいはリスクがあることを理解したとしても,それを把握することが容易ではないといった可能性があるのではないかと考えています。

 

 

 

こういった制度を導入することによって,むしろ信託財産との取引を行おうとする者が減少して,結果的に,例えば年金等の運用においてヘッジコストが増加するといった可能性もあり得るのではないかと考えております。

 

 

 

すみれ

「ヘッジコスト?」

 

 

 

あと,海外での事例として英国の事例を紹介しているんですけれども,イギリスでは,従来,対受託者あるいは対信託財産での債権者が,有限責任になっているわけですけれども,これは債権者の権利の保護が十分ではないという議論が続いているという事例を紹介しております。

 

 

その中で,97年及び99年に出されたトラスト・ロー・コミュニティのレポートを紹介しております。

 

 

 

引き続き,英国においてはこの件,すなわち有限責任であるがゆえに債権者の権利の保護が十分ではないではないかという点については,引き続き議論が行われている状況だそうです。

 

 

 

次に,流動化・証券化協議会のペーパーの方ですが,こちらの9ページ,5のところに責任財産限定特約の有効性の明文化という要望事項があるんですが,こちらの趣旨は,流動化・証券化実務で行われているような,責任財産を信託財産に特定した貸出しというんでしょうか,受託者側から見れば借入れですね。

 

 

 

この合意が有効であることを明確化してほしいという趣旨でございまして,これが必ずしも信託法のどこをどう改正しろといった内容にはなっていませんで,必ずしも信託法の改正という形で対処すべき問題ではなくて,むしろ解釈の定着ですとか,あるいは場合によっては倒産法とか,そういった分野の問題であるかもしれません。

 

 

 

 

 

現行実務において,責任財産を信託財産に限定するという合意のもとに,ローンという形で,アセット・バックト・ローンと呼ばれる場合が多いと思うんですけれども,行われているわけですけれども,流動化・証券化実務の観点からは,それが有効であることが確認できればそれでいいのかなと考えております。

 

 

 

また,責任財産限定特約を置きつつも,これが合意によって特約という形になっていますので,受託者の責任が限定されないような場合を当事者の合意によって,個々の契約において特定しているところでございまして,一律に,信託法において受託者が固有財産でといいますか,個人責任を負担する場合を規定してしまうのは,むしろ弊害があるのではないかという気もしております。

 

 

 

したがって,合意により受託者の責任の範囲を確定するといったことが,実務の観点からも望ましいんではないかと考えております。

 

 

 

したがって,第28の後半の提案,通常形態の信託に関しましては,一義的には廃案にすることを希望いたしますし,あえて入れるのであれば,「明示して」ではなくて「合意して」という形で御検討いただきたいと考えております。

 

 

 

  •  私は,原案に対して方向性としては歓迎する立場で,前回も同じようなことを申し上げたんですけれども,ただ,その個別論として,問題提起を差し上げるという意味でお話ししたいと思います。

 

 

 

まず,第1の類型でございますけれども,前回もどういう必要性があるのかという点について問題提起して,それについて一部御回答がありましたが,ただ,いま一度内部で検討したところ,本当にビジネスニーズがあるのかというと,それほどあるのかなという感じでございました。そのことについて,まずは御報告したいと思います。

 

 

 

すみれ

「本当にこれから出てくるのかな。」

 

 

 

いずれにしても,選択肢を増やすという意味では,こういう類型を1つ置くことは有意義だと個人的に思っておりますけれども,仮にそうした場合に,では,どういう要件にするのかというところで,ここで議論が出てきますように,債権者保護制度をどうすればいいのかという話が議論されるところでございますけれども,この点について意見を述べさせていただきますと,まず,ア,イ,ウの話なんですが,アについても,やはり一定の財産分与規制が必要ではないかと思っております。

 

 

ただ,具体的にどういうものが必要なのか,規模等いろいろございますので,そこがなかなか悩ましいところかなと。

 

 

 

新会社法には300万円という基準があるようでございますけれども,そのような金額も,一定の意味はあるかもしれませんけれども,一定硬直的なのかなとも思っておりまして,まだ悩んでいるところでございます。

 

イについては,必要かなと思っております。

 

ウについてでございますが,やはり一定の公示制度は必要であるかと思っております。

 

 

具体的にどういうものが必要なのか考えますと,LLP--今,上程中でございますけれども--との平仄を考えますと,やはり登記というのがあればいいのかなと思っています。

 

 

ただ,先ほど○○委員の御発言もあったように,やはりこれは簡便で安価なものが望ましいと思っています。

 

 

 

 

 

このほかにどういうものが必要なのかということですが,これは前回の議論でも出てきましたけれども,やはり開示だと思っております。

 

 

計算書類というのが会社法のことと並べてもいいのかもしれませんけれども,一定の書類の債権者に対する開示があるといいのではないかと思っております。

 

 

ただ,そのときに,前にも若干述べたことがありますけれども,会計基準が信託においては余り明確でないと認識しておりますけれども,もし開示をするということであれば,どういう会計基準が妥当なのかも併せて議論する必要があるのかなと思っております。

1については,以上のとおりでございます。

 

 

既存の類型でございますけれども,これも私の方から,特に「明示して」というところで御議論を差し上げたところでございます。

 

 

業界内で議論したところ,いろいろな意見がございまして,原案に賛成という意見もございましたし,やはり「明示して」というところは問題があるかなという意見もございます。

 

 

 

その中で,前回の意見を繰り返し言いますと,「明示して」ということの問題点は2つありまして,1つは少なくとも事実上,曖昧になってしまうということ。

 

 

2つ目には,交渉機会を事実上,失ってしまう。

 

 

あるいは後出しじゃんけん的なところで,契約直前に言われても困ってしまうということもございますので,やはり何らかの明確性,証言を要求するとか,そういうことが必要である等を申し上げたところでございます。

 

 

その意見に敷衍して考えますと,先ほど○○委員から合意ということが出てきましたけれども,それも私,個人的にはいいのかなと思っています。

 

 

アメリカの例をお引きになったわけでございますけれども,アメリカのユニフォーム・トラスト・コードですか,コントラクトの中でアズ・トラスティと書いたときにはということでございますので,そういうものも1つ参考になるのではないかと思っております。

 

 

すみれ

「ユニフォーム・トラスト・コード?」

 

 

あと,それで足りるのか,2の(2)のところでほかにどういう債権者保護が必要なのかということでございますけれども,これは,やはりどういう交渉機会があるのかというところによるのかなと思っています。

 

例えば,合意ということで,十分に交渉機会があるのであれば,やはり開示とかそういうところも決めていくことができる。

 

 

 

そうでないのであれば,やはり一定の,強行法規的なものも含むかもしれませんけれども,債権者保護の規定が必要になってくる。

 

 

とすると,結局は1と非常に近くなってくるのかもしれない。とすると,よくよく考えると本当に必要なのかしらということもあるのかなとも思っております。

 

 

 

そこで,まだ私自身,結論はないんですけれども,やはり1と2の平仄と,それからどういうときに使うニーズがあるのか,それから交渉機会のことを総合的に勘案して決定すべきことだと思っております。

 

 

 

  •  結論として,1も2も提案どおり,債権者保護については別途述べますけれども,必要だと思います。

 

 

その理由をお知らせしますと,まず,有限責任信託,1の方ですけれども,やはり80年に1度の信託法改正という視点からしますと,また,これまでの議事録等を見ましても,事業型の信託ということも考えていらっしゃいますし,あと,証券化の分野でいけばWBS--事業の証券化が似ていますけれども,また,先ほどどなたかおっしゃっていましたけれども,土地信託においても工作物責任のようなことがあり得るというような,商事信託の分野においても当然必要な領域だと思いますし,私は弁護士からの委員ということで,民事信託の分野においても,善意の受託者がたまたま預かっていた不動産において何らかの責任を負うという状況は,逆に信託が使われなくなるような状況になるのではないか。

 

 

もちろん選択肢の1つですから,これを使わないことも自由なわけですから,ですから,今後のことも考えて,特に必要だと思います。

 

 

 

番人

「工作物責任などの無過失責任を負わないっていうのは大きいかも。大きな商売をされる方とか。」

 

 

 

弁護士会の議論でよく例として挙げられるのが,阪神・淡路大震災の際に,破産管財人が管理していたビルといいますか,処分対象だったビルが倒壊しそうになったということで,倒壊の撤去費用をだれが負担するんだということがあった。

 

 

ですから,決してあり得ない話ではなくて,建物等を受託者として扱った場合,崖が崩れた等の多少の過失がある工作物責任とは違って,地震とかいろいろな状況において,こういう信託制度がないと,そういうものを受託者として預かることは民事信託において極めて難しいという議論になってしまいますから,制度としては必要ではないかと思います。

 

 

ポリー

「災害があった時もそうですね。限定責任信託でお互い良かったということがあるかもしれません。」

 

 

 

 

あと,先ほど○○委員がおっしゃいましたけれども,信託会計を前提としての信託財産確保のための措置というのが全体的な流れ,ある意味では会社法的な発想だと思うんですけれども,その辺を新たに制度化するということであれば不可能ではないかもしれませんけれども,信託会計というのは実質慣行会計かもしれないし,もちろん信託契約の合意でも自由に設定できるし,それは信託の収益を計算するための基準であって,もともと配当をするための原資とか,ちょっと趣旨も違ってきますから,恐らく信託財産を確保するための措置というのは,受託者に対する何らかの規制とか措置みたいなことを考えると--その具体的な案は何もないんですけれども,ここで余りがんじがらめに信託財産の確保の措置ということを使ってしまいますと,例えば300万円という議論は,非常に高額な物件であれば300万円でも足りないかもしれませんし,小さな民事信託を管理するときに300万円ということになると,受益者は全然配当が受けられないことになるかもしれませんし,また,商事信託的なものを考えると,将来的に資産が出ても,その時点における財産がなければ受益者に配当もできないことにもなってしまいますから,ですから,ここは信託の柔軟性をぜひとも確保していただきたい,かように思います。

 

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

あと,先ほど議論になっている後者の方,契約における責任財産限定特約の有効性なんですけれども,やはり現状,流動化等においてこれは頻繁に使われておりますけれども,ごく数年前まで,その有効性については疑義があるとも言われていましたし,これは法律上,ぜひ確認していただきたいと思います。

 

 

 

それが明示なのか,契約なのかという議論がございますけれども,少なくとも取引に入る--IBAの意見書は内容としては非常に読みごたえのあるものではありますけれども,基本的な疑問として,取引に入る自由を持っているわけでして,そこは気の毒な消費者等を対象とした議論ではありませんから,取引に入る自由の中で,また,受託者との間で自由に契約ができる,また信託財産についての開示を求めるとか,受託者の責任,受託者に対するコメラナンズとか,場合によっては受託者の信託財産を担保にとるとかですね。

 

 

 

 

ですから,取引に入ろうとしている第三者の議論なもので,なおかつかなりアームズレングスの取引ができる当事者の議論なものですから,細かいところの議論は,なかなか説得力があるところもあるんですけれども,だからこの制度が要らないというのは,やはり信託制度の中で責任財産限定特約を明確にするという趣旨においては,やはり必要ではないかと思います。

 

 

すみれ

「アームズレングス?」

 

 

また,そもそも論として,先ほど来のテーマのときにも確認させていただきましたけれども,受託者として,別に事業行為者として入るわけではなくて受託者として入るところで,受託者の併存的な,連帯債務的な責任が生じてしまうのかもしれません。理屈上。

 

 

 

ただ,実質的に考えると,やはり信託の債務であって,本来,受託者が固有財産--民事信託的には先祖代々の固有財産等で負担しなければならないものではないはずであって,要するに,受託者となることによって本来,信託だけが負うべき債務を受託者の固有財産まで,包括根保証の議論ではありませんけれども常時負担していかなければいけない制度--これはもう,制度の立てつけとしてしようがないのは理解しますけれども,それに対しての出口を法的に明確にする必要は,やはりあるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ただ,他方において,債権者保護のための方策がその場合には必要であるという議論が強く出てしまいますと,何もない現状の方がかえっていいのではないかという議論にもなると思いますので,この辺はぜひとも,特に契約でステップを決めるということですから,柔軟に,特に民法では,債権者保護のための方策というのは受託者に対する何らかの義務といいますか,受託者としての責任ということで対応すればよくて,会社法的な発想を少し取り入れての,受益権に対して収益の分配をしてはいけないとか,そういう最低資産,純資産のような発想でしたら,くれぐれも入らない方が信託の柔軟性は確保できるのではないか,かように思います。

 

 

 

 

 

  •  私は,債権流動化の関係から述べさせていただきます。

 

今の○○委員のお話とほとんど重なると思うんですけれども,現状,債権の流動化の実務の中では,契約の中で,受託者の有限責任についての条項を設けて対応しているのが実情でございます。

 

 

ただ,これについて特に問題が起きているということではなくて,かなり安定的にやれているのかなとは思いますけれども,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,若干疑義があるという意見もございまして,今回,このような形で明確に受託者の有限責任を規定していただけるということであれば,さらに債権流動化の安定に資するのかなと歓迎しております。

 

 

 

ただ,実際に,現状,契約の中で安定的に取り扱われているという状況の中で,例えば新たな類型の信託の中では※1のアからウまでの債権者保護手続が検討の俎上に乗っているわけでして,例えば最初に書いてありますような,受託者に一定の金額を超えての支払いをさせないといった規定が考えられているようですけれども,これについては,債権の流動化の中では,例えば信用補完,流動性補完のためのさまざまな措置が講じられておりまして,それはスキームに応じた形でつくられておりますので,これを法律の中でかなり固定的にされるようなことであれば,やはり先ほどお話ありましたように,信託の柔軟性が損なわれることにもつながりますし,スキーム自体うまくいかないこともあり得ると思われます。

 

 

 

したがいまして,ここについてまだ具体的な検討をきちんとやっているわけではないので,今日詳細にコメントはできないんですけれども,このあたりの債権者保護のあり方については,そういった点を考えていただいて,慎重な御検討をお願いしたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  1番の新たな類型の信託につきましては,ぜひこれを導入していただきたいと思います。

 

 

今回の信託法の改正の中で,事業についても信託することを認めようかという方向で,今,検討されていますけれども,それが一歩進んだ形でできる,やりやすくなるという意味では,やはり受託者が有限責任になるということが非常に重要なことで,それによって事業信託,いろいろなケースが考えられると思いますけれども,いろいろな形での信託を使って新しい事業に入ってくるということが,よりやりやすくなるのではないかと思います。

 

 

 

当然,有限責任ということになりますと,債権者保護手続みたいなものを考えなければいけませんけれども,それはこちらで,今回提案がなされていますア,イ,ウということであれば,債権者保護手続が十分図られているということになって,受託者有限責任にしても弊害はないのではないかと思います。

 

 

 

  •  恐らく補足の御意見もあると思いますけれども,今,賛成の御意見が多かったので,ちょっと。

 

 

私,必ずしも反対というわけではありませんけれども,少し違った観点から個人的な御意見を申し上げたいんですが,私は,この有限責任の信託というのはもちろんあって構わないと思っているんですが,しかし,この信託法の中にうまく入るのかどうかは気になっています。

 

 

 

ビジネストラストということを典型的に考えると,ちょっと違うタイプの信託で,信託の1類型とはちょっと違うのではないかとも思っているんですが,ただ,信託法の中に入れることもできなくはないと思います。

 

 

 

その際の考え方としては,この信託は,先ほど○○委員も言われたように,個人も使える,民事の信託としても使えると考えれば,これは信託一般法の中に入っても構わないと思いますけれども,もしこれが法人にしか使えないんだということになると,果たして信託一般法の中でそういうのがいいのかどうか,ちょっと気になっております。そういうことで,これを入れるんであれば個人も使えるということ。

 

 

 

それから,公示制度というのはあった方がいいと思いますけれども,その公示のところで法人に限定するということになると,また困りますので,そういう意味では公示のところも注意する。

 

 

 

いろいろな利用があると思いますけれども,将来,公益信託などについても個人が受託するという場合があり得て,公益信託ですからなおさら,フィーを当てにして信託をやるわけではないので,信託財産だけで処理する,責任はそこに限定するということも意味があると思いますので,そんな点を考えたらいいのではないかということです。

 

 

番人

「ちゃんと将来のことまで考えられてるんだ。」

 

 

 

もう一点は,受託者の不法行為責任,基本的には受託者が,工作物責任は別として,第709条の責任,それから使用者責任も入るんだろうという気がしますけれども,そういうところは受託者が不法行為責任を負う。

 

 

 

同時に,この有限責任信託の場合には信託財産が責任を負うことになるんだと思いますが,この信託財産も責任を負うというところは--そうではないのかな。

 

 

いいんですね--これは一般の信託の方で議論があって,まだ決着がついていないと思いますけれども,受託者の不法行為があったときに信託財産にかかっていけるのかということについては,○○委員が反対されていると思いますし,何人かほかの方も反対されていると思います。

 

 

 

そのこととの関係で,つまり一般の信託と有限責任信託との間の今の理論的な違いというか,そろえてしまえばいいんですけれども,あるいはそろえないときにはどう違うのかとか,なぜ違うのか,そこら辺の整理をする必要があるのかなという感じがいたしました。

個人的な意見を表面に出して,申しわけございません。

 

 

 

 

  •  2番の,既存の類型の信託の有限責任化について補足させていただきます。

 

 

○○委員がおっしゃったように,責任財産限定特約の有効性の明確化という点では大賛成です。

 

 

 

ただ,私がこれに関して問題だと考えていますのは,受託者が明示して取引をした場合に有限責任になるというところが問題だと考えておりまして,これが合意あるいは契約であれば何の問題もない。

 

 

 

責任財産限定特約,これは実際に行われていますけれども,合意によって成立しているからこそ,アームズレングスといいますか,責任財産を信託財産に限定する見返りに,例えば信託財産に関する情報を債権者側に提供せよといった条件交渉ができるわけで,それを合意の内容に盛り込むことができる。

 

 

結果的に,自然に債権者保護的な枠組みが個別の取引においてつくられていくわけですけれども,受託者側の一方的な明示によって一律有限責任化ということになれば,○○委員がおっしゃったようにそういった交渉の機会を奪うことにもなりますし,もちろん債権者としては取引に入らないという選択肢がありますので,こういったことでリスクがあるということで,取引を萎縮させてしまうような効果すらあるのではないかという気がいたします。

 

 

 

 

したがいまして,私,既存の類型の信託の有限責任化,現状の提案については廃案にするか,「明示して」の部分を「合意」と申し上げましたけれども,基本的には変わりないんですが,責任財産限定特約について,もし信託法の方で何らかの手当でより明確化できる--現状であれば,ただ単に私的自治の原則でそういう合意がなされているんだからいいんだろうということですけれども,それ以上のコンフォートが得られるようなことができるのであれば,それについても賛成したいとは思っております。

 

 

 

 

 

  •  ○○委員及び○○委員に関連することで,先ほど言い忘れたことをコメントいたします。

 

 

そもそもこの法律を信託法の中に入れるのかということですけれども,業界内の議論では,ある意味,民法と,今,国会に出ています有限責任事業組合契約法ですか,LLP法のように,たとえ1の類型をつくるとしても,同じ信託法の中に法定して入れるべきなのか,それとも別にするのか,そういう議論があったことを御報告したいと思います。

 

 

 

なんとなれば,従前から一方で我々は柔軟化,柔軟化と申し上げておりまして,今回こういう強行法規的なものが必要だと言っておりまして,やはり有限責任ということになった場合に,債権者保護ということが出てくるわけですので,そういう意味で,通常の信託と相容れないものがあるのではないか。

 

 

 

 

また,実際の債権保護手続を考えますと,いろいろな細かいことも規定化しなければならないわけですので,そうすると,落ち着きというところなのかもしれませんけれども,主観的なものかもしれませんけれども,たとえつくるとしても別の法体系にした方がいいのではないかという意見もあったことを御報告したいと思います。

 

 

 

  •  やや水を差すようですけれども,むしろ意見のバランス的に申し上げたいと思います。

 

 

 

私自身は,1の創設は非常に難しい問題ではないかと考えております。<説明>のところに,第5回会議においてこういった積極的な評価がされたと書かれておりますけれども,私自身はかなり消極的な,ネガティブな評価もあったと理解しております。

 

 

 

理由は幾つかあるかと思いますが,1つは,やはり一般信託の制度との異質性ということが,どうしてもあるのではないか。

 

 

今,○○委員から,法律の形式として一般信託法とは別形式にならざるを得ないのではないかという御指摘がありましたけれども,法形式とは別に,理論的な体系化というか,その観点からしても,かなり違うものではないかと考えております。

 

 

 

どういうことかと申しますと,信託の場合の責任財産のあり方ですけれども,私,個人的に理解するところでは,もともと信託というのは受託者のみが法人格を持つ主体として,受託者個人として行動し,その行動に基づく各種の結果,責任財産自体は受託者の固有の責任財産で全面的に負おうとするのはもちろん一般の場合と全く同じで,法人格を持った主体が自分の財産をもって責任財産とする。

 

 

 

ただ,信託になっている場合は,信託財産がいわば守られている形で,受託者の名義になっているにもかかわらずかかわっていけない。

 

 

 

もともと歴史的に申しますと,信託事務処理に関する債権であってもかかわってはいけない,受託者の有する求償権的な権利の代位構成によってしかいけない,いわば奥の院に守られているような,そういう構造であったのではないかと考えております。

 

 

 

それがしかし,直接にかかわっていることを日本の信託法は認めているわけで,さらにそこに責任財産限定特約の形で,当事者が合意するなら信託財産に直接かかわっていけるということがあるのであれば,固有財産にはかかわっていけないことを合意ベースでやるならいいでしょうというところまで来ている状態で,これをさらに,およそ受託者の固有財産は責任財産とはならないという信託を一般法理としてつくり出すのは,もともとの信託制度からすると,もう劇的な転換。

 

 

 

番人

「そうなんだ。日本は特別なんだね。」

 

 

そういう意味では非常に異質なのではないかと考えております。

 

 

 

 

 

それが必要である,ニーズがあるときに,それにどう応えていくかということは別途あって,そういうニーズのためにこの信託という器を使えないかというのは十分理解できるところですけれども,そうだとすると,一般の信託法の中でごくごく一般的な制度としてこれをつくる,法形式はどうあれ,これをつくるということではなくて,そのニーズに応じた「こういうものであるから」という形でつくっていくことになるのではないか。

 

 

 

もし1のような創設を考えるとすると,そういった方向であるべきではないかと思います。

 

 

 

LLPができているではないかということですけれども,LLPは,私自身は非常に例外的な制度であると考えております。

 

 

 

法人格に伴う責任財産というのは非常に重いものではないかと考えており,構成員課税を実現したい,ベンチャー育成のためにそういったことをしたいという要請があって,そこから,そういう範囲においてどういうものがつくれるかという検討ではなかったかと理解しておりますので,アメリカ法などを見ましても,現在の受託者の地位をどう考えるかというときに,それが信託財産の管理人に近い制度になっているという指摘はありますけれども,それは逆に言うと,もともとは信託財産の管理人にすぎないということではなくて,そうではないというのが本質にあるからではないかと理解しております。

 

 

 

 

ですから,それをやるのであれば,一般的につくるのであれば,むしろもう法人とかそういう制度を利用するのが筋ではないかという考え方を持っております。

 

 

 

 

そういう見地からいたしますと,非常に一般的な,限定のない対象ですとか目的の限定のないものとして1をつくるとすると,むしろ1との割り振りというのは,1がプリフィクストメニューで,2はカスタムメイドでといったことになるのではないか。

 

 

 

むしろ取引債権者にとって,有限責任信託ですという一言さえ言えば,もう有限責任になってしまうというようなタイプで,なぜならそれは債権者保護の措置が全部用意されているからということになるのに対して,2の類型は,これは合意ベースで好きなようにつくってくださって構わないと。

 

 

 

それで,2の問題が出てきたときの一番最初は,こういった責任財産限定特約の効力がそのまま認められるのかということに問題があったわけですから,そこの合意は合意ベースでやってくだされば大丈夫です,そのためのいろいろな保護措置は,それも自分たちで考えてくださって結構です,そういうようなタイプになるか,それとも,1は非常に限定された,特別な,異質の制度であるという位置づけでつくっていったときに,最低限何が必要かということで考えていくことになるのではないかと思います。

 

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

  •  ○○幹事のおっしゃったことをもう一度陳述します。それが第1点。

第2点目は,これは非常に細かい話なんですが,債権者保護手続のイについて確認させていただきたいんですが,これは受託者が民法第709条の要件を満たしている行為を行った,つまり,民法第709条に基づいて受託者にその責任を追及していくことが妨げられる条文ではないんですよね。

  •  それはそのとおりです。

 

 

 

 

  •  ですよね。これは商法にも規定があるのであれですけれども,こう書きますと,何か責任が,普通の過失の場合には負わないような感じがしてしまうんですが,そうではないということを確認させていただければ,それで結構です。

 

 

 

  •  ここは両方併存するという理解です。

 

 

  •  繰り返しみたいなんですけれども,前回,総論的に1について賛成だったというおまとめをいただいたんですが,必ずしも,信託法の中につくることについてはそうでもなかったのではないか。きょう御欠席の○○委員,あるいは○○委員などが,信託法の中に置くことについては非常に積極的な反対意見を述べておられたように思っております。

それぞれ理由は違っていたかもしれませんが,さらに先ほど○○幹事が詳しく説明されたようなことも踏まえますと,現実のニーズにこたえる必要はもちろんあるとしても,それは別途できるのではないか,信託法の中に入れると,かえってそのニーズにも応えにくくなるのではないかという気もいたします。

非常に細かいことをあと1つつけ加えますと,1の(2)のアの①で「一定の金額を超えて,受益者に対して受益債務の弁済をすることはできない」とあるんですが,受益債務の弁済をできないというのは一体どういう意味なのか,私はよく理解できないんです。債務があるのに弁済してはいけないのか,債務がそもそもないのか,債務がないんだったら,それは信託行為で決まっているのではないかと直感的に思いまして,恐らくこれは,財産運用規制の一般的なものをここに持ってきたから何かはっきりしないようになっているのかなという気もいたしまして,そういうことも踏まえますと,この制度については別途独自に考えていくのがいいのではないかという気がいたします。

  •  1につきましては,(3)のところで補償請求権について規定されております。原則として請求できないことになっておりますけれども,逆に,信託行為に別段の定めがある場合にはできるという規律になっているのではないでしょうか。受益者の立場からしますと,受託者が有限責任である場合に,受益者の方に信託財産を超えて請求があるということはやはり納得がいかないのではないか。

それと,これが認められる場合には,例えば信託債権者がいる場合に,信託財産に対してかかわっていった場合には,必ずしもその債務の全額を回収できない場合に,例えば受託者から立替払い等を受けて,それを費用償還できるといった形になるとすれば,実際上,そこで優先弁済を受けるという問題が出てしまうのではないか。こういった点も含めて,(3)の,別段の定めを許すかどうかについては慎重に御検討いただけないかというのが1点です。

もう一点は,先ほどちょっと出ました工作物責任との関係で,この点については意見というよりも疑問なんですけれども,この有限責任信託や特約を定めた場合に,それによって工作物責任の責任が限定されるのかどうかについては,工作物責任との規定との関係で,どういった読み方をすればそうなるのか,あるいはならないのかについて,もし今日は時間がないということであればまた別の機会でも結構ですけれども,御教示いただければと思います。

  •  今の工作物責任の責任限定というのは,1の話ですね。
  •  はい。
  •  2の方は同意といいますか,不法行為責任はそうならないということだったと思います。
  •  ○○幹事,○○幹事,○○委員という著名な民法の先生が,そもそも信託の根本に反するとおっしゃっているところが,実務家としては「そうかな」と思うところがございまして,今回の議論の中でも,あたかも--準法主体説みたいな議論はしませんけれども,あたかも信託財産に対して受託者が請求権を持つとか,あたかも信託財産に対する債務を負うとか,そういう形で,決して完全な契約説的な発想では議論しては--従前からもそうですし,特に今回の信託法改正の議論においては,そういった前提でいろいろな議論を,本日の議論でもいろいろあったと思います。

 

 

 

 

ですから「信託の根本は受託者の名義であって」というところが,そもそもこの80年に1度の大改正であったとしても変えられないというのは,民法の先生方はそうおっしゃるかもしれませんけれども,必ずしも説得はされなかった。

それから,事業型の信託については別でいいでしょうと。確かにデラウェアのとか,ビジネス・トラスト・ローとかありますけれども,私も先ほど申し上げましたように,民事信託,公益信託において,あたかも包括根保証のように受託者が連帯債務を負うという今の信託法の立てつけをきっちりと制度的な手当てをし,信託の公示をし,それによって新しい類型をつくりましょうということに対しては,そこまでやったとしても民法の,また信託法の根本原則に反するんだというのは,○○幹事に一生懸命お話しいただいても必ずしも説得はされなかったということだけ残しておきたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  恐らく基本的な考え方のところで対立しているんだと思いますけれども,今のお話で申しますと,例えば受託者が連帯債務を負うというとらえ方自体が,信託の場合はそうではない,むしろそうではないところから出発し,そういうものとして制度がまず展開しているのではないか。

それから,ここだけではなく,いろいろなところで法人との比較がされておりまして,組織法制の一環として信託がとらえられていますけれども,そういう考え方もあり得ると思います。それはしかし唯一の考え方ではないですし,そういう法人パラレルのとらえ方自体にも非常に問題があるのではないかと私自身は考えておりますので,この原案に対しては,そこの基本的な部分に対して疑問を呈しているということで御理解いただければと思います。

  •  信託の一般議論との関係で言うと,四宮教授の「信託法」などで,まさに信託財産に実質的に法主体があるかのように扱って,ですから信託財産の債務だとか信託財産の権利だとか,そういうことで議論を進めているわけですけれども,いつごろからなんでしょうか,むしろ最近の信託法の研究者には,そういう考え方に否定的な考え方を主張される方が多くて,むしろ法主体は受託者自身にあって,信託財産というのは受託者が管理している財産にすぎない,そういう立場に--私からすると,そういう発展方向でいいのか少し疑問はあるんですけれども--そういう考え方,つまり受託者に法主体がある。○○幹事が言われたのもまさにそういうことで,確かに伝統的な信託の考え方なんですけれども,そういうものからすると非常に違和感を感じるということではないでしょうか。

一般論は,もう余りここではいたしませんけれども。

 

 

 

 

  •  信託というのはそもそも何なのかという議論になると,私,不勉強でわからないんですけれども,これだけ世の中が劇的に変わっている,経済環境等も短期間ですごく変わっている,こういう世の中のニーズに対して,やはり法制度も利用しやすい,利便性の高いものを準備していく必要があるし,そのニーズが現にあるのではないかと思います。

ですので,信託とはそもそもこういうものだという議論も大切だとは思いますけれども,清水の舞台から飛び下りるというか,そういうようなところも持っていただいて,ではきちんとした,一方で債権者保護手続のような手当をしていけば,そういうものは乗り越えていけるのではないだろうか,ちゃんと利用価値の高いものを設計できるのではないかといった視点から考えていくことも必要なのではないかと思います。

 

 

 

 

  •  制度が必要かというのと,それに「信託」という名前をつけなければならないかというのは別問題だと思うというのが第1点。

第2点目は,○○幹事がおっしゃったことが極めて重要なところを突いているような気がして,もし仮にこういう制度をつくるとしたときに,工作物責任なども制約されるんだよというのが皆さんの前提になっていたんですが,ここの規律だけでは,実は工作物責任の制約は起こっていないのではないかと思うんです。もし仮に,私は「信託」という名前をつけることには反対ですが,もしつくって工作物責任も制約しようとするんだったら,何か別の条文がどこかに必要なのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

  •  ○○幹事が言われた別段の定めによって補償請求権が入っていいのかという点も,先ほどどなたも応対されませんでしたけれども,かなり問題がありそうな気がしますね。
  •  私のこれまでの信託の理解ですと,受託者の有限責任を認めることは,有限責任組合に有限責任を認めるよりはよほど理論的に説明しやすいのではないかと思っていたのですが,逆に,組合であるにもかかわらず組合員に有限責任が認められる根拠を,ぜひ教えていただければと思います。

 

 

すみれ

「言われてみれば。」

 

 

  •  確かに,組合の場合も有限責任をというのは,なかなか説明しにくい気がいたしますね。

 

 

先ほど○○幹事は多少信託の方に焦点を合わせて発言されたので,組合の場合に多少政策的な観点があり得るということだったのかもしれませんけれども,あくまで政策的な観点であって,理論的にああいうものがそう簡単にできるかというと,そこはやはりそんなに簡単ではないでしょうね。

 

 

ただ,あそこは一応民法の組合と,切り離してはいないけれども,特別法で強引にやったという……。ちょっと言い過ぎですか。

 

 

  •  私は門外漢なのでわからないんですが,多分,組合の場合には,やはり組合員がいて何らかの定めがあり,責任財産もありというようなところで,組合とはいえ一種法人に近いところ,組織に近いところがあるというのが,まず一つの前提になるのではないかという気もしたんですが,そうではないんでしょうか。

 

 

 

  •  それは,組合員という人がいるからということですか。財産があるということであれば,信託でも組合でも同じなんですけれども。

 

 

 

 

  •  1点だけ事務局の原案の確認をさせていただきたいんですが,数字で財産分与規制を設けるといったことは,1の類型のものを認めるとそれは信託になるのか,別の類型にするのかはともかく必要だと思うんですが,前提として,例えば計算書類の精度とか,あるいは計算書類の適正さを確保するある種の精度ですね,株式会社ほどガチガチのではないと思いますけれども,この①は,そういったものを全部前提とした上での提案なのか。それによって,全然その後の想定の仕方が変わってきますので。

 

 

 

ここで幾つか挙がっている,中間法人法も有限責任組合法も,いずれも計算書類の精度があって,なおかつ期間的なものを加えている,そんなものもパッケージの信託として一応法定されているのかどうか,確認させてください。

 

 

 

  •  計算書類につきましては,そういうきちっとしたものを前提として考えておりますが,それ以外の機構的な責任担保の制度まで用意しているかというと,そこはまだ検討しているところでございます。

 

 

 

  •  いろいろ御意見は出たと思いますが,なおまだ新しい議論としておっしゃっていないことがあればお聞きしたいと思いますけれども。--よろしゅうございますか。

 

 

この制度は,半数ぐらいの方は望ましいという御意見であり,そういう意味で,今後さらに検討していきたいと思います。2と1との関係とか,1の中の仕組み,2の仕組み,まだいろいろ検討することがあるかと思いますので,また次のラウンドで進めていきたいと思います。

 

 

もしほかに御意見がなければ,きょうはこのぐらいにしたいと思いますが,よろしゅうございますか。

では,これで終わります。

どうもありがとうございました。

 

─了─

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。琴奨菊和弘さんおめでとうございます。」

ポスト123